不動産売却で「瞬間査定」と「一括査定」をオススメしない理由を宅建マイスターが解説します!
AIを使った瞬間査定(自動査定)や一括査定のサイトがすごく増えましたね。ゆめ部長はこのシステムを完全否定するつもりはありませんし、今後の発展に期待しています。しかし、不動産売却を考えているお客さまに対しては「迷いが生じるだけなので不要」だとお話しています。
この記事では、不動産売買の最前線で戦い続ける宅建マイスターとして、まだAI査定がオススメできない理由と一括査定を否定する理由をまとめてみますね。
不動産業界15年・宅建マイスター・2級FP技能士の「ゆめ部長」が心を込めて記事を執筆します!それでは、さっそく目次のチェックからいってみましょう~
「AIを使った瞬間査定」とは…?
AIを使った瞬間査定(自動査定)というのは、成約事例などを大量に蓄積し、AIがそのデータを駆使して瞬時に査定金額を算出してくれるというサービスです。
売却する不動産の情報を入力すれば査定金額をすぐに教えてくれるので、ゆめ部長も便利なサービスだなぁ~と思っています。特に、マンションであれば、マンション名・階数・バルコニーの向き・専有面積(パンフレットに記載されている壁芯面積)の4つだけ入力すればOKという気楽さもメリットだと言えるでしょう。
サイトの数は20とか30とかあるみたいです。試しに全部利用してみようかと思いましたけど、数が多すぎて断念してしまいました (笑) こんなに似たようなサービスが乱立するあたり、ITの人たちから見ると、不動産業界は楽に稼げる印象なんでしょうね~
暇な時に自分の査定金額との違いをチェックしてみようと計画しています。やってみたら別記事で結果を報告しますね!
参考記事…
「一括査定」とは…?
一括査定とは、売却不動産の情報を登録すると、一括査定サイトを運営している会社から複数の不動産屋さんへ情報が送られ、それぞれの不動産屋さんから査定金額を教えてもらえるというサービスです。
あるサイトでは、売却査定で最大6社、賃貸査定で最大3社から同時に査定金額を受け取れることをウリにしています。(運営会社は1反響で10万円以上儲かる!!)
少し不動産屋さんの立場で考えてみましょう。
最大で同時に9社と競合することになりますよね。これ、普通に考えてやる気になると思いますか?「そんなのわからないよ~」という方のために、不動産屋さんの声をいくつか紹介しましょう。
■ 一括査定なんて負け組がやることでしょ。
■ 業者買取金額で査定して反応あったら金になるから対応するよ(笑)
■ 時間の無駄。返信すらできない客ばっかりだし(怒)
汚い言葉もあってゴメンナサイ。
一括査定の媒介取得率は「優秀な会社で7%前後」だと運営会社の営業マンから聞いたことがあります。1件単価が15,000円でしたから、媒介取得の単価を計算してみると…
15,000円÷7%=214,000円
成約率が50%だとしたら、なんと!成約1件の広告費は40万円オーバー!!そんなバカな…。倒産しちゃいます。
集客できない不動産屋さんが仕方なくやっているのが一括査定。ゆめ部長ですらサラリーマン時代の一括査定は「ハズレ反響」だと思って手を抜いていました。マジメにやっても連絡取れないし、「なんで連絡してくるんだ!」とか怒られるし…。
それと、このサービスを利用するリスクも知っておきましょう。
不動産会社は広告費と人件費を使っているわけですから、複数の会社から鬼の追客電話が来るに決まっています。(突然訪問してくることもあるそうですよ。)1度断ったとしても簡単には情報を削除してくれず、「新人の練習台」として使われてしまうこともあります。メンドウだし、怖いですよね。
一括査定がどういうものか、不動産屋さんの本音をぶっちゃけてみましたよ (笑)
参考記事…
AIによる瞬間査定・一括査定の売却査定額がズレる理由は必ず把握しよう!
AI査定の精度は±3%前後まで改善されてきている…との記事を最近読みました。5,000万円で成約できた物件であれば、査定金額は4,850万円~5,150万円となり、なかなか優秀な気がします。
しかし、大きく査定金額をハズす可能性はまだまだ高いです。
理由1…
現在の日本の不動産取引では、全ての成約事例を調査することができません。大手の仲介会社ですら、意図的にレインズに成約情報を登録していない…という情報を知人から聞いたことがあります。直近の成約事例をすべて集められなければ、精度が高まるわけがありません。
理由2…
不動産は人によって使い方に大きな違いがあります。猫屋敷・ゴミ屋敷・DV夫が破壊した部屋などの困った不動産があれば、超綺麗好き・オシャレリノベ好きな売主さまもいますからね。この評価方法を確立させないといけないでしょう。現場を見ないで査定することの限界がまだあると言えますね。
AI査定の注意点をもう少しお話しておきます。
サイト運営者の狙いは、AI査定を無料で利用できるようにすることで、他のサービスへつなげようとするのが狙いです。一括査定サイトなどの「稼げるサービス」へ誘導することが多いですけど、他のサービスへつなげることもあります。
AI査定がフロントエンドになっていて、バックエンドで収益を上げようとしているサイトが多いわけですね。
そうすると、査定金額があまりにも安いとお客さまが逃げてしまいますから、集客するためのフロントエンドは「高値査定」をしたくなってしまうわけです。
お客さまから「会員登録したらなぜか査定金額が上がったんですけど…」という相談を受けたこともあります。ホント、誠実が見当たりません…(怒)
AI査定のデメリットをまとめますよ。
■ 査定精度がまだ低い。
■ 査定金額が大きくズレる可能性はまだ高い。
■ 「無料」の後ろにサイト運営者が儲かるサービス付き。
次は「一括査定」の金額がズレる理由を説明しましょう。
一括査定サービスを「不動産屋さんへ直接連絡をしなくても査定金額を教えてくれるなんて便利だね!」と思ったなら、残念ながら、あなたは負け組かもしれませんよ…。だって、一括査定は金額が適当でバラバラになるものだからです。
2つの理由をお話しましょう。
理由1…
査定書は30分で簡単に作れるものではないですし、しっかり作れば3時間以上かかります。1度もあったことないし、現地も見たことがないし、本当に売却するかもわからないのに、マジメにやる不動産屋さんがたくさんいると信じられますか??皆さま、不動産屋さんを嫌っていますよね…?それなら、答えはすぐにわかるはずです。
理由2…
複数の不動産屋さんが媒介契約をもらうために競い合うわけですから、「とりあえず、他社より高く査定しておこうぜ!」と考えるだろうな…ということくらい、ちょっと考えればわかりますよね。Twitter見ていても「相場よりも20%高値査定したのに他社に負けたー!」なんてツイートも見られます。こんな査定書に価値はありません!
「楽して」「無料で」「たくさんの不動産屋さんに仕事をさせて」利用できるサービスなんて、どう考えても怪しさ満載だと思いませんか…?そこに気が付いてください!
不動産売却の査定額は成約事例とネット情報で大体把握できる!
不動産売却で損をしたくない!という気持ちはよくわかります。
「損をしたくない!」「高く売りたい!」だから、いろんな不動産屋さんに問い合わせをする…という誤った判断をしてしまうのだと思います。そこで、そんなことをしなくてもOKだということを解説しましょう。
いろんな不動産屋さんに問い合わせる理由は、査定金額が正しいかどうかを確認したいからですよね?それなら次のように解決しましょう。
まず、何よりも、担当者(エージェント)が最重要です。次に、そのエージェントが所属する会社のサービスが優れているかの確認をしましょう。
Webページ・SNSでの発信・面談・メールや電話でのやり取りを通して確認しましょう。ここは手を抜いたら絶対にダメな部分です。今はエージェントをネットでも探しやすくなりましたから、頑張って相性の良いエージェント・会社を見つけてください。
この人なら安心できるぞ!と思えるエージェントが見つかったら、早速、査定書を作ってもらいましょう。物件情報・成約事例・販売中の物件情報・査定書をGETできますから、自分でこの内容を精査してください。
店舗付き住宅・二世帯住宅・注文建築などは少し難しいかもしれませんが、築年数が20年未満の木造戸建てやマンションであれば難しくはありません。
直近の成約事例、現在販売中の物件がどれくらいの期間販売しているのか?値下げしたことはあるのか?をチェックすれば、大体の相場をつかめてくるでしょう。
相場をつかめたら、査定書の金額と見比べ、自分なりの査定金額を考えてください。
ここまでできたら、その査定金額±5%で実際に販売している近隣の物件をネットで検索してみます。スーモ・アットホームなどのポータルサイトや、三井さん・野村さんなどの自社Webページでチェックしてみるのがオススメです。「自分がこの物件を購入するかな?」という視点でチェックするとわかりやすいでしょう。
簡単な具体例を挙げてみます。
築10年・3LDK・南道路接道・駅徒歩12分の自宅を5,000万円と査定しました。
4,500万円~5,500万円の物件を検索してみたら次の新築戸建がヒットしたとします。
■ 新築・3LDK・南道路接道・駅徒歩15分が5,200万円
■ 新築・3LDK・南道路接道・急行停車駅徒歩10分が5,500万円
自分でこの3件を比較したら…どれを選びますか??少なくとも、この条件だと、自分が売却したい不動産を選ぶ可能性は低くなりそうですよね。ということは、5,000万円は高いということです。
風水にこだわった家・超人気学区域にギリギリ入っているとかのプラスに働く事情がなければ、金額を下げる判断をしてくださいね。
かなり簡単な事例でお話しましたけど、資料を集めて、自分が購入するつもりでじっくり見てみたら、もらった査定書の金額が妥当かどうか…はある程度わかるものです。
なにも10社に査定してもらう必要なんてありませんよ!
逆に、10社から査定をしてもらった結果、口がうまい営業マンに依頼してしまうリスクがあります。「私は騙されない!」と思っている人の方が騙しやすい…そんな話を聞いたことありませんか?気を付けてくださいね。
ちなみに、「相続税路線価」を使って土地の金額を算出する人がいますけど…使っちゃダメですよ。不動産鑑定士とか一級建築士のサイトとかに「路線価も参考に…」とか書いていますけど、これは本当に参考でしかありません。路線価を基に計算したら間違う可能性大!!ですよ。相場の70%・80%を前提にしても間違いますからご注意を。
査定金額より高い金額で販売スタートしてOK!という当然の事実を忘れずに!
信頼できるエージェント・魅力的なサービスがある会社を選び、そこで査定をお願いします。その金額が自分の思う金額より安いのであれば、ちょっと高めに販売をスタートしてもらえるようにエージェントと相談してください。断られることはまずありませんから安心して大丈夫です!(相場+10%とかだとキツイかな…)
「希望の金額よりも査定金額が安かったから…」そんな理由で高値査定をしてくれる不動産屋さんを探す…これはハッキリ言って愚策です。
高値査定するだけなら簡単。
問題なのは「販売力」ですからね。
高値査定金額を探し求めて彷徨う売主さまがなんと多いことか…。お金が絡むと人は冷静ではいられなくなる…ということを実感させられます。
最後に…
AI査定・一括査定などの不動産テック(Real Estate Tech)をウリにした会社は「悪しき不動産業界の慣習を打ち破り…」とか聞こえが良いことを言いながら、最終的には会社・事業を売却して大金を手にすることが目的だったりします。
投資家もそこに魅力があるから積極的に不動産テックのスタートアップに投資をしているわけです。本当に不動産業界を改善したい!というなら、まずは、不動産取引を自分で100件こなしてみたらどうなの?と、宅建マイスターとしては言いたいです。
不動産業界に問題はある。
だけど、
逆にお客さま側にも問題がある時代。
こんな状況の中で双方が納得のできる取引を実現できるようにしなければいけません。このあたりを理解できる不動産テック企業なら、応援したいと思っています。
本気の想いがないのに、「不動産業界の改善」とか気軽に言わないでほしい!それを強く主張して本日の記事を終わりにします。
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