宅建マイスターが考える仲介手数料の成功報酬制廃止【不動産業界の改善点 】
不動産売買をする際に支払う仲介手数料の金額に対して「なんでこんなに支払わされなければならないんだ」と、ちょっと怒っている人が多いみたいですね。でも、不動産売買をする際、複数の不動産屋さんにタダ働きをさせていること…皆さまは自覚できていますか?
「仲介手数料の成功報酬制」を排除したい!というゆめ部長の主張を切り口にして、不動産屋さんが強引な営業を行う原因を解説するのが今回の記事です。不動産取引の最前線で働くエージェントの本音を語りながら執筆しますので、これから不動産売買する人には参考になるはずです!ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
不動産業界15年・宅建マイスター・2級FP技能士の「ゆめ部長」が心を込めて記事を執筆します!それでは、さっそく目次のチェックからいってみましょう~
不動産屋さんの報酬である仲介手数料は「All or Nothing」
仲介手数料はなかなかの金額になりますから「不動産屋さんって儲かるんでしょ~」って何度も言われたことがあります。
確かに、仲介手数料は高額です。ちょっとだけ見てみましょう。
消費税率が10%で計算してみると…
【不動産価格】 【仲介手数料額】
2,500万円 … 891,000円(税込)
5,000万円 … 1,716,000円(税込)
7,500万円 … 2,541,000円(税込)
これが両手仲介(売主さま・買主さまの両方から仲介手数料をもらう取引)だと2倍になりますから、仲介手数料の【上限】で両手仲介ばっかりやっていれば、確かに儲かる仕事なのかもしれません。
もっと見てみたい方は次の早見表をどうぞ~
不動産価格100万円~5,000万円の仲介手数料早見表【消費税10%ver.】
不動産価格5,100万円~1億円の仲介手数料早見表【消費税10%ver.】
しかし、仲介手数料は「成功報酬」のため、売買契約が成立しないと1円たりとも受領することができないものです。もし、2年かけて20回も現地を案内したとしても、契約できなければその努力は全てタダ働きになってしまいます。
売買契約できれば儲かる。だけど、タダ働きがかなりある…という事実もあるわけですね。これは、タダ働きさせている人は気が付かないところだと思います。
タダ働きは絶対イヤ!不動産屋さんが強引になるのは当然かも…
先ほど例を出しましたけど、2年かけて20回も現地案内をしたとしましょう。(ちょっと極端な例かもしれません。普通は不動産屋さんにこんな忍耐力はないでしょうから…。まぁ、参考程度に見てください。)
1回の現地案内でかかる時間を考えてみます。
■ お問い合わせへの対応 30分~1時間
■ 内覧予約 30分
■ 資料準備 30分~1時間
■ 現地案内 3時間(移動時間を含む)
■ 内覧後の追客 30分~1時間
もっとスピードを速くして効率的に仕事ができる不動産屋さんは間違いなくいます。しかし、ものすごく手のかかるお客さまもいます。だから、平均でこのくらいかな…と考えてみました。
つまり、1回の現地案内のために5時間前後はかかる可能性が高いということです。これで20回も現地案内をすれば、100時間分くらい時間を取られる計算になりますね。
この努力が報われて売買契約になればイイですけど、自社で取り扱えない未公開物件が出てきてその物件を契約されてしまったら…もう悲劇です。
こんな経験を積み重ねてきた不動産屋さんがどうなるか。想像するのは難しくないことですよね??
そうです。1回の案内で無理やりにでも買わせようとしてきます。
どんな物件でも「奇跡の物件ですね!」とか「こんなスゴイ物件始めてみました!」とか「プロの目から見ても間違いありません!」とか毎回言っちゃいます。
最近は少なくなっているようですけど、旦那さんが帰宅するのを隠れて待ち、偶然を装って突撃訪問もしかけてきます。会えなければ、夕食時とか、子どもが寝る時間とかお構いなしに電話攻撃をしてきます。
さらに、これでも契約にならなければ「新人の練習台」として扱われます。ひたすら電話をかけさせて、マグレを期待する感じ…でしょうか。
不動産仲介は「0 or 100」の仕事ですから、こうなるのは仕方がないというか、当然の流れのような気がしますよね。タダ働きをしてもらえる(=無料サービスを受けられる)メリットの裏返しとしてデメリットがあるのは当然ですよね。「タダより怖い物はない!」って言いますし。
もう少し業界の裏側をお話しちゃいましょう。
不動産屋さんが皆さまから問い合わせをしてもらう「単価」を考えたことがありますか?つまり、不動産屋さんが1件のお客さまを集客するために使う広告費のことです。
ビックリするかもしれませんけど、大手や中堅で1組10万円くらい、中小零細でも1組2万円~3万円くらいはかかっています!!suumoなどの広告費はものすごく高いですし、リスティング広告も不動産は高額になりがちです。さらに、新聞折込広告や現地販売会の開催にも費用がかかりますから、こうなってしまいます。
時間と労力だけでなく、このようにお金も大量に投入しているから、不動産屋さんの営業はキツくなる。これを理解してもらえると、この記事でゆめ部長が主張したいことに共感してもらえるようになるはずです。
情報もサービスも無料ではありません!
最近の日本って、なんか…狂っているような気がしています。
「お客さまとして丁寧な対応をされてあたり前!」と考えている人がかなり多くいるようです。何でも無料で良質なおもてなしを受けられるものだと本気で信じているようですけど、こういう人ってどう思いますか…?
ちょっと話は脱線しますけど、吉野家の牛丼について語ります (笑)
ゆめ部長は吉野家が大好きでよく行くのですけど、380円でアツアツの牛丼並盛がササっと出てくるだけで大満足しています。おそらく、牛丼並盛1杯しか注文しないと利益は微々たるものでしょう。そう考えると「おい!水くれ。」とか「俺は客だぞ!」なんて言えないし、笑顔で接客してくれるおばちゃんに横柄な態度をとるなんてもってのほかだと思ってしまいます。
380円の牛丼だけで満足のいくおもてなしを受けたい…。これって、支払うお金に対して求めるものが多すぎる!と言えませんか??だって、牛丼おいしいじゃん!380円だよ?結局、働いている人に苦しみがシワ寄せされているんでしょうね。
運送業界は過剰サービス・低料金化に「NO!」と言いましたよね。飲食で働くお客さまも限界だと言っていました。不動産取引も似たような状況です。
参考記事…
長くなってごめんなさい。話を戻します。
suumoに掲載している情報は、不動産屋さんが広告費を負担しています。社員が写真を撮影して、間取図を作成して、魅力を伝える文章を考えて。これを皆さまは無料で見ながらマイホーム探しをしているわけですね。
これの対価はどうしますか…?
そうです。これは仲介手数料で支払うことになります。
しつこいようですけど、日本の不動産取引での仲介手数料は成功報酬制です。だから、資料を送ってもらうのは無料だし、専門家である宅建士に回答してもらうのも無料だし、現地を案内してもらうのも無料だし、売買契約書を作成させて「やっぱ、や~めた」と言っても無料です。
こんなワガママに対する対価はどうしますか…?
そうです。仲介手数料で誰かが支払うのです。たいしたサービスを受けていないお客さまが支払った仲介手数料があるから何とかなっている状況だと言えます。そして、不動産屋さんとその家族が涙を流しながら不幸に耐えていることもお忘れなく。
ちょっとグチ混じりの本ホンネが入ってしまいましたけど、情報を提供する人がいて、サービスを提供する人がいるわけですから、無料になるはずがない!ということは理解してほしいと切に願います。
最後に情報も無料なはずがないということをお話します。
「未公開のマル秘物件情報」
「緊急値下げ物件情報」
「値下げ可能額情報」
「最速でお知らせする新規物件情報」
不動産屋さんが接待してGetした情報だったり、頻繁に情報に触れることで最新の情報を最速でお届けしていることがあります。
「不動産は一生に一度の大きなお買い物」だって皆さまよく言うじゃないですか?それなら、新鮮で価値のある情報を得るためにお金を支払ってもイイと思えませんか。
「未公開物件情報だけ教えてくれたらイイですよ。」って偉そうに言われて、一所懸命集めた情報をメールで簡単に教えたくないですし、教えてもらえないことが多いはずです。ゆめ部長は未公開物件に強いわけではないですけど、黙っていられなかったので書いちゃいました。
不動産屋さんの被害体験談
仲介手数料が成功報酬制であるがために、不動産屋さんがどれくらい被害を受けているのか…少し事例を紹介しましょう。
事例1…
新築戸建を購入したいけどエリアが全く定まっていないお客さまでした。東京に引越をしてきてばかりのため、勤務先と自宅の交通の便が良いかどうか、金額が予算内かどうかを重視していました。そこで、「物件見学ツアー」を組み、数回に分けて1日10件ほど現場を一緒に見て回ったのです。しかし…一緒に見て回った現地の中で気に入った物件を自分たちだけで再度見に行き、現地にいた不動産屋さんに丸め込まれてしまいました。その場で購入申込書にサインをして、当日中に契約を締結してしまったとのことでした。
事例2…
単身の女性でリノベーション済みの中古マンションを探していました。探しているエリアが絞れないし、買う気があるのかわからないため、他社の不動産屋さんからは全く相手にされていないようです。それでも、雑な扱いをせず、毎週毎週いろんなエリアのマンションを案内し続けていました。ところが、ある日を境に連絡が取れなくなります。メールをしても返信がなく電話をしても折り返しがありません。最後に案内した日の終わりには、笑顔で「これからもよろしくね~」とお菓子をもらったので、嫌われたわけではなかったはず…です。
事例3…
夫婦ペアローンでマイホーム購入を考えている夫婦でした。自営業者のご主人が奥さんに内緒で借金していたことが発覚してしまい、住宅ローンではすごく苦労させられました。なんとか本審査まで通すことができたのに、本審査を通した新築戸建は残念ながら他のお客さまが契約してしまいました。その後、現場をいくつも内覧。最終的に建築中の現場が気に入り、建物プレゼンを受けて購入申し込みをしました。ところが、ご主人の借金の件が再燃して夫婦喧嘩…。そしてキャンセルに…。
せっかくなので最近流行りの「一括査定」の被害も書いておきます。
一括査定を複数のサイトから依頼している人に言わせてもらいますけど、数十社から査定金額を教えてもらったなら、依頼する数社を除いた残りの人たちにタダ働きをさせたということを知っておいてください。
そもそも査定書が20・30届いたところで全部見ないですよね…?自分で不動産屋さんを探して選ぶ手間を省いてラクをしているんですから、無事に成約した際には仲介手数料を満額支払ってあげて欲しいな…と願います。
もし、自分がその数十社の中の1営業マンとして査定をさせられる立場だったら…絶対にイヤですよね。怒りますよね??
成功報酬制をやめたら料金表がいるのかな?
成功報酬制をやめるとどうなるか…。ちょっと考えてみました。
仲介手数料は売買契約が成立した時点で100%発生します。
ただし、媒介契約書には引渡業務のサポートも行うと書いてありますから、売買契約~引渡までしっかりやらなければ民事上の責任が発生します。そのため、大手仲介会社は売買契約時に50%・引渡時に50%としていることが多いです。でも請求権は売買契約時点で発生することは変わりません。
話を戻します。
今までの不動産取引は成功報酬制ですから、売買契約が成立しなければ、情報を提供しても一所懸命サービスしても仲介手数料は発生しませんでした。そこを変えるとなると、料金表を作成して請求していくことになりそうですね。
■ 資料送付 … 5,000円
■ 質問への回答 … 2,000円
■ 現地内覧 … 1件5,000円 3件10,000円
■ プレゼン立会 … 10,000円
■ 売買契約書作成 … 50,000円
■ 重要事項説明 … 30,000円
とか、こんな感じでしょうか。
高いと思うかもしれませんけど、不動産屋さんは1ヶ月のノルマが150万円~300万円くらいに設定されています。土曜日・日曜日・祝日が1ヶ月で10回あるとすると、1日あたり15万円~30万円の売上を立てるような仕事をしなければいけません。こうやって見ると、別におかしくはありませんね。
まぁ、正直言ってしまえば、この金額設定はどうでもいいのです。もっと安くても全く問題はありません。なぜなら「サービスは無料じゃないんですよ!」ということを理解してもらえればそれでOKだからです。
おそらくですけど…。
いつまでもマイホームを購入しないのに「私は100件以上現地を見てきた!」と堂々という人たちは、内覧が1件2,000円とかの安い金額でも有料なら見に来ないはずです。
成功報酬制廃止・仲介手数料自由化のハードル
成功報酬制があるから不動産屋さんの強引な営業がなくならない…ということは理解してもらえたと思います。次に「仲介手数料の自由化」も考えてみましょう。
これは、仲介手数料の「上限」を撤廃しよう!というゆめ部長の意見です。
不動産屋さんが儲けやすくしようというものでは断じてありません。金額が安い不動産や、権利関係が複雑で時間がかかる不動産だったとしても、不動産屋さんに面倒くさがらず対応してもらうためには、「成約価格×3%+60,000円」という上限が邪魔になっているため撤廃してほしいということです。
成功報酬制廃止・仲介手数料自由化の2つを同時に実現することができれば…
不動産屋さんの強引な営業に悩まされるお客さまが減るでしょうし、金額が安くて難しい案件でも積極的に取り扱ってくれる不動産屋さんが増えて助かる人が増えるでしょう。「安くてもいいから、とにかく手放したいのに、不動産屋さんが対応してくれなくて…」という地方の案件は東京にいてもよく聞く話なんですよ。
最後に、この2つのアイディアを実現するために越えなくてはいけないハードルを指摘しておきます。
ズバリ!「不動産屋さんの専門性アップ・モラル向上」+「お客さまからの信頼獲得」です。
現在の不動産業界を知っているから、このハードルをクリアする難しさを感じます。プロ意識を持ち、お客さまの利益を守るために仕事をする不動産屋さんでなれなければ、この2つのアイディアを悪用するかもしれません。だから、絶対に越えなければいけないハードルだと言えるでしょう。
不動産業界にとっても、お客さまにとっても、メリットがあるアイディアのはず。まずは不動産業界が襟を正し、プロの仕事を提供することから始めていきたいものですね。
理解してくれる人…増えてくれないかなぁ。
このテーマについてはこれからもっと調べて深く考えてみます。こうやって1度記事にまとめておけば、頭の中が整理されますし、アンテナも感度よく張れて効率的なので、未完成ながら記事を公開させてもらいました。
最後に…
不動産業界を改善していくためにゆめ部長のアイディアを書いてみました。あまり共感してもらえない予感はしているのですけど、1人でも「おっ!イイこと言ってるねー!」と思ってもらえたら、頑張って書いた価値があると思います。
できれば、この記事を1つのきっかけとして、不動産業界改善を多くの人が考え、実際に何らかの行動を起こしてもらえたら嬉しいです。ゆめ部長も引き続きWebページで情報発信を続けながら不動産業界改善を目指していきます!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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