不動産売買契約書と37条書面について勉強しよう!
本日のテーマは「不動産売買契約書」と「37条書面」についてです。このお話はお客さま向けではなく宅建士向けの記事になります。宅建士の勉強中ふと…気になった人、実務で疑問を持った人たちに読んでもらえたら嬉しいです。
不動産業界15年・宅建マイスター・2級FP技能士の「ゆめ部長」が心を込めて記事を執筆します!それでは、さっそく目次のチェックからいってみましょう~
不動産売買契約書の形式は自由!
近代私法の3原則の中に「契約自由の原則」があります。
不動産売買にあてはめると、売買契約に関することは当事者(売主さま・買主さま)が自由に決めることができる…ということですね。
「契約自由の原則」4つの内容を見てください。
■ 契約締結の自由
■ 相手方選択の自由
■ 内容決定の自由
■ 方式の自由
法律に違反しなければ、契約内容をどのようにしてもOKという「内容決定の自由」、売買契約は売主さま・買主さまの合意だけで成立し、形式は自由に決めてOKという「方式の自由」がありますね。
つまり…
■ 売買契約書を作成 する or しない
■ 売買契約書を作成する場合の内容
これらは、当事者の自由ということになります。
しかし、不動産は高額な商品であるがゆえに、売買契約でトラブルになるリスクが高いことは誰もが容易に想像できるでしょう。そうすると、民法の定めでは「自由」といえども、不動産取引に慣れていない人たちが自由な意思に基づいて契約を締結するべきではないことがわかると思います。
では、どんなトラブルリスクが潜んでいるのか…見てみましょう。
不動産取引は潜在的リスクがたくさん!
不動産売買では、売主さま・買主さまのどちらも気が付いていない火種がたくさん潜んでいます。
たとえば…
■ 土地100㎡で契約…90㎡しかなかった!
■ 隣地の下水道管が敷地内を通過していた!
■ 住宅ローンが組めなかった!
■ 売買契約を解除したい!
■ 住宅設備が故障していた!
などなど。
お仕事で法務系の仕事をしているお客さまでも、不動産取引の実務を経験していないと、売買契約で合意しておくべき内容を網羅するのは難しいはずです。
そこで、不動産屋さんが登場します!
不動産仲介の専門家である宅建士が契約書類を作成してくれます。この時に使用する契約書式のひな型は、膨大なトラブルを解決する過程で蓄積されたノウハウが詰まったものです。このひな型に沿って必要事項を調査・ヒアリングすれば、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。
次に、この書類について深掘りしていきましょう。
不動産屋さんが仲介すると37条書面が必要になる
「37条書面」とは…
宅建業法の第37条には「宅建業者は契約が成立したら下記の内容を記載した書面を交付しなければならない。」と記載されています。37条書面は、宅建業者が作成し、宅建士が記名押印したうえで、契約後遅滞なく、売主さま・買主さまへ書面を交付しなければいけません。
必ず記載する事項
■ 当事者の氏名・住所
■ 宅地建物を特定するため必要な表示
■ 建物の構造上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項(中古)
■ 代金の額、支払時期、支払方法
■ 引渡時期
■ 所有権移転登記申請の時期
取決めがあれば記載する事項
■ 代金以外に授受する金銭の額、授受の時期、目的
■ 契約の解除に関する事項
■ 損害賠償額の予定または違約金に関する定め
■ 住宅ローンが成立しない時の措置
■ 天災その他不可抗力による損害の負担に関する定め
■ 契約不適合責任の履行に関する措置
■ 清算金に関する事項
なお、上記内容で全てのトラブルに対処できるわけではありません。そこで、売買契約条項の最後に、下記のような「規定外事項の協議義務」が定められています。
本契約書に定めのない事項については、民法、その他関係法規および不動産取引の慣行に従い、売主、買主互いに誠意をもって協議します。
この一文、強調して、お客さまへお伝えしましょう!
宅建試験のみで実務経験がない人への参考知識…
宅建試験では、35条書面(重要事項説明書)に記載しなくても、37条書面に記載しなければいけない…「○」or「×」??なんて問題がありますけど、実務では、37条書面に記載している内容は、基本的に、全て35条書面にも記載するようにしています。
それと、上記「取決めがあれば記載する事項」については、標準的な35条書面・37条書面であれば必ず記載があります。不動産会社が加盟する不動産流通団体「全日」「全宅」「FRK」の最新書式を使っていれば迷う必要もありません。つまり、暗記する意味なんて全くない!ということですね。試験問題が実務から離れすぎているのは、宅建試験のイタイところかもしれません。
実務だと売買契約書は37条書面を兼ねる
「37条書面」は、宅地建物取引業法(略して、宅建業法)が、宅建業者(不動産屋さん)に対して義務付けている書類です。
それに対して「契約書」は、当事者である、売主さま・買主さま間の取り決めですから、宅建業者は全く関係がありません。
つまり、この2つの書類は別物。宅建試験でも、実務の現場でも、37条書面 = 契約書 と考えている人が多いですけど、実は、そうじゃないわけですね。
では、なぜ、「37条書面 = 契約書」だと思っている人が多いのでしょうか…?
答えは、実務で「37条書面 」が「契約書」を兼ねているからです。
先ほど「37条書面 」の記載事項を確認しましたけど、この内容は、売買契約書で取り決めておいた方が良い内容ばかりだと思いませんか!?それなら、「37条書面 」と「契約書」を合わせて作成してしまえば、宅建業者はしっかり説明責任を果たした証拠を残せますし、当事者である、売主さま・買主さまが「言った!言わない!」のトラブルになるリスクも減らすことができますよね!
実務での売買契約の流れを簡単にまとめると…
35条書面を宅建業者が作成
↓
37条書面を兼ねた売買契約書を宅建業者が作成
↓
35条書面・売買契約書に宅建士が記名押印
↓
売主さま・買主さまが署名捺印
↓
印紙を貼付して消印
↓
手付金授受、領収証発行
↓
売主さまへ契約書交付
↓
買主様へ35条書面と契約書交付
これで、売買契約が完了したことになります!
売買契約書と37条書面を分ける場合
正直、オススメはしませんが、印紙代を節約するために、売買契約書を1通だけにして売買契約を行うことがあります。
売主さま:写し(コピー)保管
買主さま:原本保管
売買契約書は37条書面を兼ねていますから、不動産屋さんが、買主さまにだけ売買契約書の原本を交付した場合、売主さまには37条書面を交付していないことになります。
そうすると、不動産屋さんは宅建業法違反となり、業務停止処分になる可能性があるため、次のように対処することになります。
対処方法1…
住宅ローンを利用する買主さまは37条書面を兼ねた売買契約書の原本を保管。
売主さまには37条書面の原本を別途作成して交付。確定申告用に、買主様へ交付した売買契約書の原本コピーも保管してもらいます。
ちなみに、37条書面と売買契約書の記載内容はほぼ同じです。
売買契約書が37条書面と異なる部分…
売買契約書は次の一文が削除されます。「この契約書は宅地建物取引業法第37条に定められている書面を兼ねています」
37条書面が売買契約書と異なる部分…
■ 売主さま・買主さまの署名捺印がない
■ 印紙を貼付しない
■ 「宅建業法37条の規定に基づき本書を交付します。」と記載
■ 下記の文章を削除
「表記不動産の売買契約(以下「本契約」という。)を締結した。その証として、本契約書2通を作成し、売主・買主署(記)名押印のうえ各1通を保有する。」
大手仲介会社はこのやり方ですね。
対処方法2…
ゆめ部長が最近学んだ方法です。
売買契約書のコピーに宅建士が記名押印すれば37条書面として有効になります。でも、この方法だと、原本に宅建士が記名押印してありますから二重記載になりますね…。37条書面を別に作成するのは少しメンドウですけど、分けるのであれば、対処方法1の方が良い気がします。
売買契約書1通で契約するデメリットを下記参考記事にまとめてあります。お時間があれば読んでみてください!!
参考記事…
最後に…
この記事は、実務で気になっていたことを調べてまとめたものです。
印紙代を節約するために売買契約書を1通だけにする。
これは、
印紙税法上は問題ないのか?
民法上は問題ないのか?
宅建業法上は問題ないのか?
この質問に明確な根拠を示せなかったことがキッカケでした。「いつか調べよう…」と思いつつ、「まぁ、対処方法は知っているからいいか…」と先延ばししてきましたけど、やっと、納得できる根拠を調べてまとめることができました。
こういうことの積み重ねが大事ですね。
勉強を続けるコツは、自分の財産としてストックされていくことを実感する。これが1番だと考えています。ブログでも、Twitterでも、Youtubeでも、なんでも構わないので、不動産に関する知識・経験を資産化する方法を考えて日々実行してみてください!
いつか、みんなで勉強会を開催できたらいいなぁ~
そんな期待をもって、本日は終わりにします。
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