「特定居住用財産の買換え特例」を使った場合の「課税の繰り延べ」を勉強してみよう!
本日のお話は「不動産(マイホーム)を売却して得た利益に課税される税金…これを安くできる特例」の1つ「特定居住用財産の買換え特例」を解説します。
この特例はあまり使うことがないような気がしますし、計算式がわかりづらいので、なんとなく「こんな特例もあるんだなぁ~」程度に勉強すれば十分だと思います。
なぜ、そう思うかと言うと…
税金を「非課税」にしてくれるのではなくて、支払いを「先延ばし」にするだけだからです。また、先延ばしにしたら「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」を利用できなくなってしまいます。
…まぁ、気軽な感じで記事を読んでみてもらえたら嬉しいです (笑)
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
「特定居住用財産の買換え特例」とは…
「特定居住用財産の買換え特例」とは、マイホームを買換えるときに、いま住んでいるマイホームの売却利益について、再度売却する時までは、所得税と住民税の課税を先送りにしてくれる制度です。売却利益をそのまま新しいマイホーム購入へ充てられるメリットがあります。
この特例は難しいくせに勉強してもあまり使われません。簡単に説明しますから「う~ん、確かに使わないよなぁ~」ということを実感してください。具体例をイメージしながら一緒に見ていきましょう。
早速ですけど、皆さまはマイホームの買換えをしました!次の事例を自分のこととして思い浮かべてください!!
15年前に3,000万円で購入したマイホームを4,000万円で売却して、さらに5,000万円の新築一戸建てを購入したとしましょう。ステップアップの住み替えで「売却価格(4,000万円) < 購入価格(5,000万円)」です。
今回は不動産売却で利益が出ました。(やったね!)
しかし、利益があるということは「所得」があるということ。そうすると…この「所得」に対して所得税・住民税が課税されてしまいます。
■ 保有期間が5年以下(短期譲渡所得)
所得税 30.63% 住民税 9% 合計 39.63%
■ 保有期間が5年超(長期譲渡所得)
所得税 15.315% 住民税5% 合計 20.315%
■ 保有期間10年超
・利益6,000万円以下の部分…
所得税 10.21% 住民税 4% 合計 14.21%
・利益6,000万円超の部分…
所得税 15.315% 住民税5% 合計 20.315%
簡単な説明にしたいので、購入時と売却時の諸費用・建物減価償却費などを考えない前提で上記の例を考えてみます。
15年前に3,000万円で購入した不動産(マイホーム)を4,000万円で売却することができましたね。この場合の税金はいくらでしょうか…?
他の記事も読んでくれた人なら、これは簡単ですね。
( 4,000万円 - 3,000万円 )× 14.21% = 142万1,000円
この約142万円の税金については、次の3つの特例のどれを使うかを検討することになります。
1. 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
( 1,000万円 - 3,000万円 )<0円 で非課税にできます!
2. 住宅ローン控除(住宅ローン減税・住宅借入金等特別控除)
1.の「3,000万円特別控除の特例」と「選択制」になるので、住宅ローン控除を使うのであれば、所得税+住民税の142万1,000円は納税します。その代わりに、最大で273万円(一般的な新築住宅) or 140万円(一般的な中古住宅)まで、所得税と住民税が還付されます!ちなみに、夫婦ペアローンなら夫婦それぞれが還付を受けられますよ。
3. 特定居住用財産の買換え特例
今回の事例では、この特例は出番がありません。なぜなら、1番の3,000万円控除を利用すれば税金が課税されないからです。この特例の利用を検討するようなケースは、売却した不動産の利益が3,000万円を大きく超えるような場合でしょう。
例えば…
30年前に1,000万円で購入した不動産(マイホーム)を5,000万円で売却しました。子どもが2人増えたので、都心のマンションを7,000万円で購入することにしました。その後、8,000万円で売却することに成功しました。(諸経費・建物減価償却費はムシします。)
このようなケースなら検討することがあるかもしれません。解説すると…
最初の売却で4,000万円の利益が出ています。「3,000万円控除」を利用しても利益が1,000万円あり、「10年超所有軽減税率の特例」を利用しても所得税・住民税合計で142万1,000円納めなければいけません。
この事例で「特定居住用財産の買換え特例」を利用すると「3,000万円控除」を利用できなくなりますから、利益の4,000万円に対する課税がそのまま先送りされることになります。
先送りするとどうなるか…と言うと、再度売却した時の売却利益1,000万円に最初の売却利益4,000万円を合算した5,000万円に対して課税されます。
買換えから3年経過していれば「3,000万円控除」を利用でき、買換えからお正月を11回越えていれば「10年超所有の軽減税率の特例」も利用できますが、1年・2年などの短期間で売却すれば、両方とも利用できなくなってしまうわけです。
もし、1年後に売却したなら…
5,000万円 × 39.63% = 1,981万5,000円
12年後に売却したなら…
( 5,000万円 - 3,000万円 )× 14.21% = 284万2,000円
使う人がいるとしたら、次のようなケースとか…かな。
1つ目は、買換え物件(今回は新築一戸建てですね。)に自己資金を投入したらお金がなくなっちゃうよ…というケース。
2つ目は、事業を営んでいる人で、その年の所得を減らしておきたいなんらかの理由があるケース。
まぁ、この特例を利用するケースは稀だと思います。利用を検討するような案件なら、迷わず税理士先生に相談してくださいね。
上記3つの特例にはそれぞれ要件があります。詳細は次の記事にまとめました。
参考記事…
「特定居住用財産の買換え特例」を利用するための要件
ここから話がややこしなくなるので、最初の例をもう1度確認しながら用語を理解しておきます。
15年前に3,000万円で購入したマイホームを4,000万円で売却して、さらに5,000万円の新築一戸建てを購入したのです。今回はステップアップの住み替えになるため「売却価格(4,000万円) < 購入価格(5,000万円)」でした。
売却した不動産(マイホーム) … 譲渡資産
購入した不動産(マイホーム) … 買換資産
売却不動産の価格(4,000万円) … 譲渡代金
購入不動産の価格(5,000万円) … 買換代金
【要件】では「譲渡資産」と「買換資産」が具体的に定められています。【税金計算】では「譲渡代金」と「買換代金」のどちらが大きいかで計算式が異なってきます。
【要件】から見ていきます。
売却した不動産(譲渡資産)の要件
■ 要件1
自己の居住用(マイホーム)
■ 要件2
居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売却
■ 要件3
家屋を取り壊した場合なら、住まなくなってから3年後の年末までの範囲内で、取り壊した日から1年以内に土地を売却する契約を締結
■ 要件4
単身赴任などで、配偶者などが居住している不動産を売却
■ 要件5
共有の居住用財産を売却した場合は、共有者の持分の範囲内でそれぞれ適用できる
■ 要件6
売却する相手が配偶者、親・子などの直系血族、生計を一にする親族、同族会社等ではないこと
■ 要件7
売却した年の1月1日時点で、土地・家屋どちらも所有期間が10年を超えている
■ 要件8
通算10年以上の居住期間がある
■ 要件9
売却価格は清算金(固定資産税など)を含めて1億円以下
■ 要件10
前年・前々年に「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」「10年超所有軽減税率の特例」の適用を受けていない
購入した不動産(買換資産)の要件
■ 要件1
自己の居住用(マイホーム)
■ 要件2
買換資産を購入した日から譲渡した年の翌年12月31日までに居住すること・譲渡した年の翌年に購入したときは、譲渡した年の翌々年12月31日までに居住すること
■ 要件3
家屋の床面積が登記簿面積で50㎡以上 & 土地面積500㎡以下
■ 要件4
登記簿の新築日が「昭和57年1月1日以降」 or 耐震基準適合証明書がある or 既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定のもの
■ 要件5
譲渡した年の前年1月1日から譲渡した年の12月31日までに取得すること・譲渡した年に取得できないけれど、翌年中に取得する見込みなら税務署長の承認を得て1年延長できる
■ 要件6
「住宅ローン控除」との重複適用はできません
「特定居住用財産の買換え特例」の税金計算方法
税金計算は2つに分けて計算していきます。
■ 譲渡代金 ≦ 買換代金
売却したマイホームよりも、購入したマイホームの方が高額な場合なので、ステップアップするようなケースですね。この場合は、「特定居住用財産の買換え特例」を利用することで、最初の売却益に対する課税は先送りされます。
■ 譲渡代金 > 買換代金
売却して手元に残った売却益に対しては所得税・住民税(長期譲渡所得の税率)が課税され、譲渡代金の中から買換代金に充当したお金に対する課税は先送りされます。このケースの計算式は少しメンドウです…
税金計算(譲渡代金 ≦ 買換代金)
このケースはとっても簡単。次の具体例で解説します。
30年前に1,000万円で購入した不動産(マイホーム)を5,000万円で売却しました。子どもが2人増えたので、都心のマンションを7,000万円で購入することにしました。
譲渡代金(5,000万円) < 買換代金(7,000万円)ですね。
売却で4,000万円の利益が出ています。住宅ローンの残債がない前提で考えると、30年前に購入した1,000万円も手元に残りますから、手出しは2,000万円だけになりました。
この場合、譲渡益の4,000万円全てが買換代金に充当されますから、住み替えを実現しやすくするために、この4,000万円に対する課税を先送りしてくれるのです!
税金計算(譲渡代金 > 買換代金)
こっちは少しややこしいです。まずはメンドウな計算式を書いてみます。
( 譲渡収入 - 取得費 )× 20.315%
■ 譲渡収入とは
譲渡代金 -( 買換代金 + 購入諸費用 )
■取得費とは
( 譲渡資産の取得費 + 譲渡費用 )× 譲渡収入 / 譲渡代金
気持ち悪くなってきたと思いますけど、次の具体例で見ていきましょう。
30年前に1,000万円で購入したマイホームを8,000万円で売却しました。この時の諸経費は600万円でした。売却したその年に素敵な新築一戸建てと巡り合い、売買代金6,600万円・諸経費400万円でマイホームを購入しました。
上記の計算式に数字を入れていきますね。
譲渡収入 : 8,000万円-(6,600万円+400万円)=1,000万円
取得費 :(1,000万円+600万円)×1,000万円/8,000万円=200万円
税額 :(1,000万円-200万円)×20.315%=162万5,200円
この162万5,200円が、買換えした翌年に課税されます。
さらに!買換代金に充当した金額に対する課税は先送りされただけですから、6,600万円で購入した一戸建てを将来売却した際には、その利益と合算した金額に対して税金が課税されることになります。
つまり、このケースでは、2回に分けて税金を納めるわけです。
というわけで解説は終わりますけど、正直、よくわからなかったと思います(笑)
でも、それでイイのではないでしょうか?こんなに不動産の売却で利益が出るなら税理士先生へ相談するでしょうから、ムリに理解するような制度ではありません。
最後に…
なんだかもう…「嫌がらせですか???」と聞きたくなる内容ですよね。税金の専門家しかわからない制度にすることで、自分たちの聖域を作り、仕事がなくならないようにしているんじゃないか!?(怒)と疑ってしまうのは、ゆめ部長だけではないはずです。
まぁ、文句はこれくらいにしておき、
大事なことを再度お伝えしておきます。
「不動産取引をしたら税理士先生 or 税務署へ相談!」
よろしいでしょうか!?
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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