外国人などの「非居住者」が不動産を売却する際に注意したいことを解説!
日本の不動産を「外国人」が売却する相談案件はどんどん増加しています。おそらく、今後もさらに増加していくことでしょう。
そこで、外国人が売主さまになる売買契約での税金関係や必要書類、日本語がわからない外国人のお客さまと締結する売買契約の注意点などをこの記事でまとめます。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
「非居住者」が国内不動産を売却すると売買代金の10.21%が源泉徴収されるかも!?
「非居住者の不動産売却における支払者の源泉徴収義務」という話を聞いたことがありますか?
これは、外国人などの「非居住者」が日本国内の不動産を売却する場合、買主さまが売買代金の中から10.21%を源泉徴収して税務署へ納税しなければいけないという義務のことです。
つまり、売主さまは売買代金の89.79%だけ受領する…ということです。
売主さまの住宅ローン残債がたっぷり残っているケースでは、住宅ローンを完済できなくなり無事に取引を完了できなくなりますから要注意ですね。
なぜ、このような定めになっているかと言うと、日本国内で発生した所得(利益)ですから、所得税を課税する権利は日本にあるわけです。
しかし、海外に送金されてしまった後では課税するのが困難になる可能性もありますから、予め10.21%だけ先に源泉徴収して買主さまが納税する仕組みになっています。
考えてみれば「あぁ…なほどねー。」と納得できますけど、不動産屋さんも「非居住者の不動産売却における支払者の源泉徴収義務」を知らないことがありますから注意してくださいね。
「非居住者」とはなんだろう…?
「非居住者の不動産売却における支払者の源泉徴収義務」でいう「非居住者」の定義を確認しましょう。
「非居住者」とは…
日本国内に住所がなく、かつ、現在まで引き続いて1年以上日本国内に居所がない人のことを言います。
外国人だけでなく、海外に1年以上長期転勤中などの日本人も「非居住者」に該当しますが、日本に住んでいる外国人は「居住者」として扱われます。
税理士先生の研修で聞いたお話では、売主さまが日本人だったのでウッカリ源泉徴収するのを忘れてしまい、延滞税・過怠税も併せて課税されるケースが実際に起こっているそうです。
許してくれてもよさそうな感じがしますけど、「高額な不動産取引を行うわけだから、相手方について十分に調査するのがあたり前」という考えのもと、許してはくれないとのことでした。(いやぁ~厳しいですね。)
また、日本国内に主たる事務所や本店がない「外国法人」も同様にこの規制の対象になります。
最後に「非居住者」まとめておくと…
■ 外国人
■ 外国法人
■ 転勤などで海外に1年以上でかけている日本人
などの人たちです。
源泉徴収の税率・納付方法などを確認しよう!
非居住者が所有する国内不動産を購入する買主さまは、
売買代金の89.79%は売主さまへ支払い、
残りの10.21%を源泉徴収します。
なお、税金の本を読んでいましたら、手付金を支払う場合も源泉徴収しなければいけないと書かれていました。
例えば、売買代金2億円の売買契約を手付金10%で契約したとすると、源泉徴収する金額は次のようになります…
手付金支払い時に、 2,042,000円
残代金支払い時に、18,378,000円
この源泉徴収したお金は、手付金や売買代金を支払った月の翌月10日までに、銀行や郵便局で買主さまが納付しなければいけません。
なお、売主さまに支払い過ぎた所得税があれば、翌年の2月16日~3月15日までの期間で確定申告をすれば還付を受けることができます。
そのため、次のような場合には確定申告が必要であることを覚えておいてください。
■ 還付金を受け取ることができる場合
■ 不動産売却で利益が出た場合
■ 「居住用の3,000万円特別控除」を利用したい場合
3,000万円特別控除は「居住用」の不動産に利用できる制度ですけど、自分で居住しなくなってからでも、3年後の年末までに売却していれば利用できる可能性があります。
詳しいお話は税務署・税理士先生への確認をお願いしますね。
忙しくて確定申告を自分で行えない場合、税理士先生を「納税管理人」に選任して代理で手続きしてもらうことがあります。親族を選任することもあるようですけど、税金に関することはプロにお任せすることをゆめ部長はオススメします。
次に、税率を確認しておきましょう。
日本に居住していないから「非居住者」となるわけですよね。日本に住んでいなければ「住民税」は課税されません。
通常、不動産の売却益(譲渡所得)には「所得税」・「住民税」の2つの税金が課税されますけど、この記事のお話では「所得税」だけになるわけです。
ちなみに、数字が10.21%になっているのは、東日本大震災の復興特別所得税(所得税×2.1%)を含めているからです。
源泉徴収しなくてもOKな2つのケース
次のようなケースでは、買主さまは支払う手付金・売買代金から源泉徴収をする必要がありません。
ケース1…
不動産の売買代金が1億円以下であること。
1億ちょうどは不要ということですね。不動産の所有者が複数いる場合、共有者の持分ごとに1億円を超えるかを判断してください。
物件価格が1億円を超える外国人との売買契約はなかなか出会わないので、どうしても忘れてしまいそうになるんですよね…。
ケース2…
買主さまが個人であり、購入不動産を自己居住用または親族居住用で利用すること。
親族とは、配偶者・6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。簡単にお話しますと、お父さん・お母さん・おじいちゃん・おばあちゃん・子ども・兄弟姉妹・叔父さん・叔母さん・甥っ子・姪っ子などは親族に含まれています。
非居住者の売主さまが売買契約で用意する書類
売主さまが用意する書類一覧を見ておきましょう~
■ 在留証明(日本の住民票)
■ サイン証明(日本の印鑑証明書)
■ 売買契約の委任状(親族が代理人として契約する場合)
■ 運転免許証・パスポートなどの身分証明書
■ 権利証 or 登記識別情報通知
■ 固定資産税・都市計画税の納税通知書(直近)
在留証明・サイン証明は在外公館(日本大使館・総領事館)で取得してください。発行手数料は決してお安くありませんから、不動産屋さんに必要通数を確認しておきましょう。取得するのがちょっと大変ですから、1通ずつ余分に取得しておくと安心できると思います。
売買契約日と、残代金決済日(残代金を受け取って引き渡しを行う日)の2日ほど、日本に戻ってきていただくのが理想ですが、どうしても戻れない場合は、親族などが代理で手続きを行うことも可能です。
その際には委任状と司法書士先生への相談が必要になりますので、早めにお知らせくださいね。
最後に諸経費について簡単に触れます。
一般的な経費は次の4つです。
■ 仲介手数料
■ 印紙代
■ 司法書士先生の登記費用
■ 住宅ローン一括返済手数料
購入する場合と異なりだいぶ安くなりますよ!
外国人が当事者になる重要事項説明・売買契約
日本語が堪能ではない外国人のお客さまが売買契約の当事者になる場合の注意点を確認してみましょう。
まず、外国人が売買契約の当事者になる場合でも、日本の不動産売買では日本の法律である「民法」・「宅建業法」などが適用されます。
日本語がわからない外国人のお客さまに対して、民法の内容が書かれた小難しい書類を見てもらっても理解できるわけがありませんから、次のような対応をしています。
■ 通訳さんが同席し、通訳さんにも署名捺印をお願いする。
■ お客さまの費用負担で契約書類を翻訳する。
通訳さんに同席してもらうことが多いでしょう。
なぜ、このような対応になるかと言いますと、不動産屋さんはお客さまへ不動産売買に関する重要事項を説明する「義務」があるからです。重要事項説明書・売買契約書を「音読」すればよいわけではなく「理解」してもらう必要があります。
日本人のお客さまへ説明するのと同じように、外国人のお客さまへ日本語で説明した場合、不動産屋さんは説明義務違反になる可能性が高いと言えます。
ご理解・ご協力をお願いします。
最後に…
この記事を書きながら、不動産取引は本当に複雑だなぁ~と改めて感じています。不動産屋さんは「宅建士に合格したら勉強終わり!」という人が多いですけど、日々、前向きに勉強を続けることが大事だと言えますね。
自分にプレッシャーをかけながら、引き続き記事の執筆を頑張っていきます!!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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