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2020年07月10日
不動産売買の流れ

不動産売買の実務では民法の定めを特約で変更することを知っておこう!

民法は総則・物権・債権・家族・親族の五編からなっていますが、第三編の債権法が大きく改正されました。「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」になった!と勉強した人もいるのではないでしょうか?

 

勉強熱心で素晴らしいと思いますが、この知識を元に不動産の売買契約をすると「あれ…?何かおかしくないかな?」と感じるかもしれません。なぜなら、不動産売買契約では民法の原則を「特約」で変更しているため、民法だけしか勉強していないと「騙されているのかな…」と不安になるほど内容が異なるからです。

 

本日の記事では、このあたりの知識を一緒に勉強していきましょう!

 

不動産業界15年宅建マイスター2級FP技能士の「ゆめ部長」が心を込めて記事を執筆します!それでは、さっそく目次のチェックからいってみましょう~

民法の基礎知識を勉強しておこう!

まずは、民法の基礎知識を確認しておきましょう。

 

民法は私法の一般法であり、近代私法には次の3原則があります。

 

私的自治の原則

権利能力平等の原則

所有権絶対の原則

 

1番目の「私的自治の原則」というのは、法律に違反しなければ、個人の法律行為(契約など)は自由に定めて構わないということです。「私的自治の原則」からは「契約自由の原則」が派生して次の4つに分類されます。

 

契約締結の自由

相手方選択の自由

内容決定の自由

方式の自由

 

つまり、契約内容をどのようにしてもOKであり、売主さま・買主さまの合意だけで売買契約を成立させることができ、契約形式は自由に決めてOKということです。

 

ただし、何でもかんでも自由とはいかず、

次の3つの例外で制約を受けることになります。

 

公共の福祉による制約

信義誠実の原則による制約

権利濫用の禁止による制約

 

「公共の福祉」とは、社会一般の利益です。

信頼を裏切ったらいけないし、

権利を濫用しすぎてもいけません。

 

全員が「自由」を主張すれば「衝突」が生じます。

だから、制約をする必要があるのは当然ですね!

 

ここまで、大丈夫でしょうか??

次にいきます。

 

民法には「任意規定」と「強行規定」があります。

 

任意規定:法令中の公の秩序に関しない規定

強行規定:公の秩序に関する規定

 

民法の多くは「任意規定」です。

 

というわけでまとめると…

 

「私的自治の原則」から「契約自由の原則」が派生し、契約に関する内容・方式などは当事者が自由に決めることができます。公の秩序に関する規定(強行規定)に関しては自由にできませんが、民法の多くが、法令中の公の秩序に関しない規定(任意規定)のため、民法とは異なる定めをできる余地が大いにある!ということになります。

不動産取引では民法の原則を特約で変更している!

民法の取り決めを変更できることはわかりましたね!

 

では、なぜ、変更する必要があるのでしょうか??

 

それは、民法が不動産取引に限って定められたものではなく、不動産取引の現場でそのまま適用するのが妥当ではないからだと考えています。

 

「所有権の移転時期」を例に見てみましょう。

 

民法の条文では、売主さま・買主さまの意思表示だけで所有権が移転することになっています。民法176条(物権の設定及び移転)の条文は次の通りです。


物権の設定及び移転は、

当事者の意思表示のみによって、

その効力を生ずる。

 

「売りますよー」「じゃあ、買いますね。」だけで

所有権が移転することになります。

 

でも、この条文では、具体的に「いつ所有権が移転するか」が明確にされていません。この点、判例・学説で移転時期が示されていますが、統一的な判断ではないそうです。

 

不動産のような高額な商品を売買するにもかかわらず、売買契約を締結し、売主さま・買主さまの意思が合致したことが明確だったとしても、民法の定めだけでは所有権移転時期が明確にならないわけですね。

 

そこで!!

 

不動産の売買契約では「所有権の移転の時期」について「契約条項(特約)」で具体的に定めています。実際に見てみましょう。

 

本物件の所有権は、

買主が売主に対して売買代金全額を支払い、

売主がこれを受領した時に

売主から買主に移転します。

 

これで、安心して取引できますね!

 

正直に白状すると…

 

契約条項を読みながら「何、当たり前のこと言ってんの!?こんなこと書くから契約書類がどんどん長くなるんじゃん(怒)」と、ずーっと思っていました。

 

でも、先ほど説明した民法の原則を理解すると、この条文がすごく大事であることがわかりますよね。

 

このように、民法の原則を契約条項・特約を使って変更することで、不動産取引が公平・円滑に行われているんですよ!

民法の原則を変更する不動産売買契約条項の中身

次の条件で利用する売買契約書の契約条項を見ておきましょう。

 

売主さま : 宅建業者(不動産屋さん)

買主さま : 個人(お客さま)

購入物件 : 新築戸建

 

売買の目的物および売買代金

手付金

売買代金の支払いの時期、方法等

売買対象面積

境界の明示

所有権の移転の時期

引渡し

抵当権等の抹消

所有権移転登記等

引渡し完了前の滅失・損傷

公租公課等の分担

契約不適合による修補請求、代金減額請求および損害賠償請求

アフターサービス

手付解除

修補の遅滞等を含む契約違反による解除・違約金

反社会的勢力の排除

融資利用の特約

担保責任(契約不適合責任)の履行に関する措置

印紙の負担区分

諸規定の継承

契約当事者が複数のときの特例

管轄裁判所に関する合意

規定外事項の協議義務

 

契約条項に記載がない内容でトラブルが生じた場合、民法の規定が適用されます。この点は、最後の「規定外事項の協議義務」で次のように記載があります。

 

本契約書に定めのない事項については、

民法、その他関係法規および不動産取引の慣行に従い、

売主、買主互いに誠意をもって協議します。

 

不動産取引をするだけであれば、民法の原則と比較しながら理解する必要はありません。上記の契約条項の内容をしっかり理解すればOKです!この記事はマジメに勉強したいお客さま・宅建士向けのなので安心してくださいね。

民法(一般法)に対する特別法を勉強しよう!

「一般法」とか「特別法」とか、聞くだけでも、ちょっとダルイですよね (笑)

 

簡単に説明すると…

 

一般法 : 適用対象が広い法律

特別法 : 適用対象が特定される法律

 

特別法は一般法に優先して適用されます。そのため、特別法が適用される場合、契約条項・特約で民法の定めを変更する必要があります。

 

この点について、解説しましょう。

 

最初の方で書きましたけど、民法は私法の一般法でしたね。民法の特別法としてこの記事で押さえて欲しい法律が3つあります。

 

消費者契約法…「事業者」を規制

商法…「商人」を規制

宅地建物取引業法…「宅建業者」を規制

 

細かい説明は抜きにします。

 

「人・当事者」を規制する対象が広い順番に並べると…

民法 > 消費者契約法 > 商法 > 宅建業法

 

宅建業者は不動産取引のプロです。

商人は商売に慣れている人たちです。

事業者はアパートを複数持つオーナーなどです。

 

この人たちと個人のお客さまが不動産の売買契約をする場合、どうしても、知識・経験に差が生まれてしまいます。差が生まれるということは…保護するべきですよね!

 

不動産取引においては次のようになります。

 

個人は最優先で保護するべきです。多少経験があるだけの事業者は、経験がある商人・宅建業者より保護するべきです。商売に慣れている商人でも、不動産取引においては宅建業者の方が強いため保護するべきです。つまり、宅建業者は1番厳しく規制される対象になります。

 

誰と誰が契約するか…力関係に着目して弱い方を保護します。そのために、契約条項・特約で民法の原則を変更しているわけです。

「全日」「全宅」「FRK」で書式が異なる!

不動産会社が加盟する主要な不動産流通団体は次の3つあります。

 

全日(ウサギ)

全宅(ハト)

FRK(大手)

 

それぞれの団体が、公平・円滑な取引を実現するために、オリジナルのひな型を用意しています。どこの不動産屋さんでも、統一された基準で売買契約をしているわけではない!ということは知っておくと良いでしょう。

 

FRKは大手が利用しているだけあり、使いやすく、わかりやすいと思います。全日はFRKに寄せて書式を作り直したみたいで見違えるほど良くなりました。個人的には、全宅は少しわかりづらいかな…と感じています。

 

ゆめ部長は全てのひな型を使ったことがありますし、全日の変更前・変更後も使ったことがありますので、独断と偏見による比較ですけど、これから独立する人には参考になるかもしれませんね。

 

なお、独自のひな型を使っている不動産屋さんもありますけど、それは危険だと思います。上記団体のひな型であれば、宅建業法などが改正されるたびに更新され、最新の法令を遵守したものになっています。(最新ひな型をダウンロードしていれば…ですけどね。)しかし、独自に作っている書式は改正に対応できていないケースがあり、内容も間違っていることがあるので要注意です!

最後に…

重要事項説明書・売買契約書は、民法や関係法令の知識がなければ理解できません。法律に詳しい人でなければ、初見で理解できる書類ではないにもかかわらず、契約当日になって初めて書類を見た…というのがあたり前になっています。

 

つまり、多くのお客さまは、契約書の内容を理解せずに売買契約を締結している可能性が高いということです。

 

ゆめ部長としては、不動産屋さんに熱く語っても何も変わらないため、お客さまへ注意喚起することで自己防衛してほしいと願っています。そうなれば、契約を急がせ、あやふやなまま押し込もうとする営業マンも減ってくるのでは…そう思うからです。

 

一所懸命な不動産屋さんが増えて欲しいなぁ~と願って書いた記事。少しでも多くの人に届きますように。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人
渡部 直人(ゆめ部長) ワタナベ ナオト
渡部 直人(ゆめ部長)
不動産取引の仕事一筋15年、仕事中心の生活をしてきました。ハッキリ言って仕事は趣味です(笑)でも…不動産業界にはなんか暗いイメージがあり、このままではダメだと思っています。そこで、ゆめ部長は考えました。お客さまが安心して取引できるだけでなく、才能あふれる人たちが楽しく働ける環境を作り、この暗いイメージを払拭・改善していこう!と。会社が幸せの発信基地になり、小さなHAPPYが拡がって欲しいと願っています。できることを1つずつ。コツコツ「幸せの種」をまいていきたいですね。
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