不動産売買契約が解除(解約・キャンセル)になっても仲介手数料を支払うの?
売買契約をせっかく締結しても、残念ながら、契約解除になってしまうことがあります。こんなとき、不動産屋さんへ支払う仲介手数料はどうなると思いますか??
「引き渡しを受けてないんだし…仲介手数料は支払わなくていいんじゃないかなぁ。」と考えるお客さまが多いみたいですけど、実は、支払わなくてOKなケースと、半額だけ支払うことになるケースなどがあります。契約解除になった場合、不動産屋さんとトラブルになる可能性もありますから、この記事を読み、基本的な知識を身に付けてくださいね。
仲介手数料を詳しく勉強したいなら…
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
不動産売買契約が解除・無効・取消しになるケース…
まずは、売買契約がどのようなケースで解除・無効・取消しになるのか…「帰責性がない場合」と「帰責性がある場合」にわけて見てみましょう。なお、帰責性(きせきせい)とは、責められるべき理由や落ち度のことです!
帰責性がない場合…
■ 住宅ローンが通らなかった
■ 居住できない問題が見つかった
■ 引渡前に地震で建物が傾いた
■ 賃借権譲渡承諾書を取得できなかった
■ 特約条件を満たせなかった
■ 詐欺・脅迫を受けて契約した
■ 判断能力がない高齢者だった
■ 未成年者だった
帰責性がある場合…
■ 自己都合(やっぱ、やーめた。)
■ 契約内容に違反した
■ 暴力団関係者であることが判明した
などなど。
帰責性がない場合・やむを得ない事情による場合…つまり「仕方ないよね。」と言えるなら、売買契約は白紙解除・無効・取消しになります。
一方、帰責性がある場合…つまり「解除する人に問題あり!あなたが悪い!!」と言えるなら、売買契約は白紙解除・無効・取消しにはならず、手付金放棄や違約金支払のペナルティーが科されます。相手が一方的に被害者になってしまうわけですから当然ですよね。
ここまではOKですか?
では、この記事の本題に入っていきます。
仲介手数料の取り扱いは
■ 白紙解除・無効・取消しになる場合
■ 手付解除・違約解除・合意解除になる場合
によって、異なります。
順番に見ていきましょう!!
白紙解除・無効・取消しされた場合の仲介手数料
まず、不動産の売買契約が白紙解除・無効・取消しになるケースは、帰責性がない場合・やむを得ない事情による場合でしたね。
基本的には、契約をサポートした不動産屋さん(仲介会社)にも落ち度はありませんけど、誰も悪くないわけですから、仲介手数料の請求権だけが残ってしまうのはバランスが悪いと言えます。
たとえば、住宅ローンが通らず、住宅ローン特約で白紙解除になって落ち込んでいるところに、「仲介手数料は支払ってください。」なんて請求したら鬼ですよね…。こんな酷いことにはなりませんから安心してください!
白紙解除になる場合、売買契約の効力が消滅するのと同時に、不動産屋さんの仲介手数料請求権も消滅することになります。無効であれば、最初から請求権は発生せず、取消しなら、発生していた請求権が消滅することになります。
もし、支払う必要がない仲介手数料を請求されてしまったら、東京都の不動産屋さんなら都庁に即TELしましょう。不動産屋さんは厳しく注意を受けるはずですよ。
手付解除・違約解除・合意解除した場合の仲介手数料
次に、不動産の売買契約が白紙解除・無効・取消しにならないケースは、帰責性がある場合でしたね。
考えられるのは次の3つでしょうか。
■ 手付解除
■ 違約解除
■ 合意解除
この場合、不動産屋さんには落ち度がありませんから、仲介手数料という成功報酬が「0円」になってしまったら、正直、辛すぎます…。
買主さまが「なんとなく住宅ローンを組むのがイヤだから契約を手付解除します。」というような場合は、完全な自己都合なので保護してあげる必要はありません。悪いのは買主さまだけですからね。
この場合は、不動産屋さんに仲介手数料の請求権が認められます。
仲介手数料の取り決めを媒介契約書で確認しよう!
仲介手数料の取り決めは「媒介契約書」に記載されています。(公社)全日本不動産協会の専任媒介契約書をチェックしながら、仲介手数料の取り扱いを見ていきましょう。
第7条(報酬の請求)
不動産屋さんの媒介によって目的物件の売買契約が成立したとき、売主さま・買主さまに対して報酬を請求することができる…と書かれています。つまり、売買契約が成立すれば、仲介手数料を全額請求できるのです。
第8条(報酬の受領の時期)
第1項には、売買契約書を作成し、売主さま・買主さまに交付した後でなければ仲介手数料を受領することができないと書かれています。また、第2項では、融資の不成立が確定し、これを理由として契約を解除した場合、不動産屋さんは約定報酬の全額を遅滞なく返還しなければなりません。とあります。
第7条と第8条第1項を併せて読むと、売買契約が成立して売買契約書を手渡した後であれば、不動産屋さんには仲介手数料の請求権があるということですね。また、第8条第2項により、住宅ローンの本審査が内定しなければ、受け取った仲介手数料は返還することになりますから、請求権は消滅することになります。
ただし!
手付解除・違約解除・合意解除になった場合、仲介手数料を全額受領できるかというと…微妙なんです。理由を見てみましょう。
第3条(宅地建物取引業者の義務等)
不動産屋さんは、登記・決済手続等の目的物件の引渡しに係る事務の補助を行うこと。とあります。つまり、売買契約完了で仕事が終わるのではなく、引渡しまでしっかりサポートしなさいよ、と書かれているのです。
しかし、売買契約が解除になれば、引渡業務の一部を残して終了になりますよね。だから、この状況でも全額の仲介手数料を請求できるのか…?という問題が生じます。
国土交通省からのお達しでは、仲介手数料の受領は、売買契約成立時に半金・引渡時に半金とするべきだとされています。
また、福岡高裁の裁判例では、仲介手数料の金額は、取引額、仲介の難易、期間、労力その他諸般の事情を斟酌して定めるべきとしています。つまり、媒介業者の業務に見合った金額だけしか請求しないでね!ってことです。
これらの情報をまとめると…
売買契約時に仲介手数料の半金を支払っていれば返還されないけれど、残りの半分は支払わなくても済むケースがある。ということになります。
契約解除した際の仲介手数料については、トラブル防止のために媒介契約書の特約で明確にしておいたほうが良いでしょうね。⇒ ゆめ部長は特約を記載して対応していますよ!
参照…
買主が手付解除したら売主は仲介手数料を支払うの?
買主さまが手付解除したら、売主さまは不動産屋さんへ仲介手数料を支払う必要があるのか?この問題を解説するために、次の事例をイメージしてください。
仲介会社:ゆめ部長
買主さま:手付解除した人
売主さま:手付解除されてしまった人
成約価格:3,000万円
物件種別:中古マンション
ゆめ部長は、買主さま・売主さまの両方を担当する「両手仲介」をしていた…とします。
ここまで、イメージできましたか?
OKなら、話を進めます。
ゆめ部長のサポートで無事に売買契約が締結され、買主さま から 売主さまに対して手付金「200万円」が支払われ、ゆめ部長は買主さま・売主さまの両方から、仲介手数料の半金(税込:528,000円)を受領しました。ところが、買主さまが「両親に大反対されたから契約を解除したい」と申し出て、手付解除されてしまったのです(涙)
買主さま:手付金200万円が損失
売主さま:手付金200万円が利益
この場合、不動産屋さんの仲介手数料請求権はどうなるの?という問題です。
答えは…
買主さま・売主さまのどちらも仲介手数料の1/2は支払う必要があるでしょう。なお、1/2なのか2/3なのか3/4なのか…については、不動産屋さんの仕事量・契約解除のタイミングなどによって判断がわかれると思われます。
つまり、
買主さまの損失は…
手付金200万円+仲介手数料52.8万円
=-252.8万円
売主さまの利益は…
手付金200万円-仲介手数料52.8万円
=+147.2万円
なお、売主さまの利益は一時所得として所得税・住民税が課税されますので、利益を得た翌年に確定申告をしてくださいね。
ここまで理解できれば十分でしょう!!
最後に…
売買契約が解除になると、不動産屋さんの態度が悪くなり、本来は支払う必要のない仲介手数料を請求してくるかもしれません…。その場合は、都庁や県庁、不動産会社が所属する団体(FRK・全日・全宅)、弁護士先生などに相談してください。
手付解除・違約解除・合意解除の場合、仲介手数料の支払額については判断がわかれる可能性が高いため、不動産屋さんの言いなりにならず、しっかり交渉することをお勧めします。
本日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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