不動産売買契約が解除(解約・キャンセル)になった場合の仲介手数料はどうなる…?宅建マイスターが解説します!
大変な思いをしてせっかく売買契約を締結したのに、残念ながら契約解除になってしまうこともあります。その際に仲介手数料がどうなるのか…は気になるところだと思います。「引き渡しを受けていないから仲介手数料は支払わなくてもいいんだよね?」そんな疑問に回答します。
不動産業界15年・宅建マイスター(上級宅建士)・2級FP技能士の「ゆめ部長」が心を込めて記事を執筆します!それでは、さっそく目次のチェックからいってみましょう~
不動産売買契約が解除になるケース…
まずは、売買契約がどのようなケースで解除になるのかを一緒に見てみましょう。
解除する側に帰責性がない場合…
■ 住宅ローンが通らない
■ 住むことができない問題が見つかった(瑕疵担保責任)
■ 引渡前に建物が使えなくなった(自然災害など)
■ 借地権物件の場合…賃借権譲渡承諾書を取得できない
■ 特約条件を満たせなかった
解除する側に帰責性がある場合…
■ 自己都合(「やっぱ、やーめた。」というケース)
■ 契約内容の違約
■ 暴力団関係の問題が見つかった
などなど…売買契約が解除になるケースはいろいろあり得ます。
やむを得ない事情による場合、上のケースですと上段の5つです。売主さま・買主さまのどちらにも帰責性…つまり、どっちも悪くないと言える場合、売買契約は白紙解除になります。
白紙解除というのは、売買契約が最初からなかったことにする…ということです。
一方、帰責性がある場合、上のケースですと下段の3つですね。この場合は、解除される相手が一方的に被害者になりますから、解除を主張する側にペナルティーを科す必要あります。具体的には、手付金の放棄や違約金の支払いです。
白紙解除になる場合と、ならない場合で、仲介手数料の取り扱いは異なります。
不動産売買契約が白紙解除になる場合の仲介手数料
不動産の売買契約が白紙解除になるケースは、売主さま・買主さまのどちらにも帰責性がない場合でしたね。この場合、不動産屋さんに落ち度はありませんけど、誰も悪くないわけですから、不動産屋さんだけ報酬をもらえるというのはバランスが悪いと言えます。
住宅ローンが通らず落ち込んでいるところに「仲介手数料を支払ってください。」なんて…鬼ですね。こんな酷いことにはなりませんから安心してください!
白紙解除になる場合、売買契約の効力が消滅するのと同時に不動産屋さんの仲介手数料請求権も消滅することになります。支払う必要がないのに請求されたら、東京都の不動産屋さんなら都庁に即TELしましょう。必ず、何とかしてくれます。ついでに、不動産屋さんは困るほど注意を受けます。
不動産売買契約が白紙解除にならない場合の仲介手数料
不動産の売買契約が白紙解除にならないケースは、売主さま・買主さまのどちらかに帰責性がある場合でしたね。この場合、不動産屋さんには責任がありませんから、仲介手数料という成功報酬が「0円」になってしまったら、正直辛すぎます…。
買主さまが「なんとなく住宅ローン組むのがイヤだから契約は解除します。」と言った場合は自己都合ですから保護されるべきではありません。悪いのは買主さまだけですよね。
この場合は、不動産屋さんに仲介手数料の請求権が認められます。
仲介手数料の取り決めを売買契約時の書類で確認しておきましょう!
仲介手数料の取り決めは媒介契約書に記載されています。(公社)全日本不動産協会の書類の文言をチェックしながら、仲介手数料の取り扱いを解説します。
第8条(報酬の請求)では…
不動産屋さんの媒介によって目的物件の売買契約が成立したとき、売主さま・買主さまに対して報酬を請求することができると書かれています。つまり、売買契約が成立すれば仲介手数料を全額請求できるのです。
第9条(報酬の受領の時期)では…
第1項には、売買契約書を作成し、売主さま・買主さまに交付した後でなければ仲介手数料を受領することができないと書かれています。また、第2項では、融資の不成立が確定し、これを理由として契約を解除した場合、不動産屋さんは約定報酬の全額を遅滞なく返還しなければなりません。とあります。
第8条と第9条第1項を併せて読むと、売買契約が成立すれば、不動産屋さんには仲介手数料の請求権があるということですね。また、第9条第2項により、住宅ローンの本審査が内定しなければ、受け取った仲介手数料は返還することになりますから、請求権は消滅することになります。
ただし、買主さまの一方的事情で手付金放棄による解除になった場合、仲介手数料を全額受領できるかというと…微妙なんです。理由を見てみましょう。
第4条(宅地建物取引業者の義務等)では…
不動産屋さんは、登記・決済手続等の目的物件の引渡しに係る事務の補助を行うこと。とあります。つまり、売買契約完了で仕事が終わるのではなく、引渡しまでしっかりサポートしなさいよ、と書かれているのです。
契約が解除になれば、引渡業務の一部を残して終了になりますよね。これで全額の仲介手数料を受領できるのか…?という問題があるわけです。
この媒介契約書類は、国土交通省が定めた標準媒介契約約款に基づくものですから、不動産屋さんが従わないわけにはいきません。なお、国土交通省からのお達しでは、仲介手数料の受領は、売買契約成立時に半金・引渡時に半金とするべきだとされています。
これらの情報をまとめると…売買契約時に仲介手数料の半金を支払っていれば返還されないけれど、残りの半分は支払わなくても済むケースがある。ということになります。
2019年8月追記(都庁でヒアリングしたこと)…
媒介契約書には「引渡業務もサポートする」と書かれているわけですから、不動産屋さんが引渡業務を怠れば、民事上の損害賠償を請求される可能性はあります。しかし、宅建業法上、仲介業務は売買契約の成立を目的にしているため、引渡業務のサポートをしないことで宅建業法違反を問われることはないそうです。(追記終わり)
宅建業法…
仲介業務は売買契約までが対象であり、契約成立時点で仲介手数料全額の請求権が発生することになります。
媒介契約書…
売買契約後の引渡業務もサポートするように書かれています。
国土交通省…
契約成立時点で仲介手数料は半金の50%にして、引渡時に残りの半金をもらうようにしましょうね!と言っています。
わかりづらい…。
宅建業法の対象を「売買契約」だけでなく「引渡業務」までとしてしまえばイイのに…と思いませんか?
「仲介業務=売買契約」とするから、住宅ローンのサポートを宅建業法で定められた業務外と捉え「住宅ローン代行手数料」を請求する不動産屋さんが出てくるのではないでしょうか。
「わかりづらさ」を悪用する不動産屋さんはたくさんいます。まぁ…悪用する気はなくて、知識がないだけの不動産屋さんも多いですけどね。気を付けてください。
最後に…
結論としては、売主さま・買主さまに帰責性がなく売買契約を解除する場合、仲介手数料は支払わなくてOKですが、帰責性があって解除する場合、約定報酬額の半金は請求される可能性が高いということです。
それと、住宅ローンが通らなかったなら、仲介手数料を支払う必要はありません。支払った分があれば返還を受けられますので安心してください!
不動産屋さんが仲介手数料の半金を売買契約時に請求するのは、契約解除になると仲介手数料を請求しても支払ってもらえずトラブルになるからです。この記事を読んでおくと、不動産取引がわかってきますね。
アドバイス…
判断に困ったり、不動産屋さんが高圧的で悩んでいるときは…即、都庁へTELです。泣き寝入りする必要なんてありませんからね。不当な請求はハッキリNOと言いましょう。あなたは1人ではありません。都庁は消費者の味方だということをお忘れなく。
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