複数の不動産を反復継続して売買すると宅建業免許が必要!何回で免許が必要になるのか…都庁で聞いてみた!
投資家さんが所有している不動産を複数回にわけて売却する場合や、地主さんが広い土地を分割して売却する場合、宅建業の免許(宅地建物取引士証ではありません!)が必要になるのをご存知ですか?不動産屋さんによっては「1年に3回まではOK」とか「3分割まではOK」とか…言うことが全然違うので、都庁で宅建業法違反になるケースをヒアリングしてきました!
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
宅建業の免許ってなんだろう…?
「宅建業の免許」というのは、宅建試験に合格した人がもらえる「宅地建物取引士証」とは異なります。宅地建物取引士証を「免許」と呼んでいる人がたくさんいますけど、これは間違っています!
不動産業を営む場合「国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けなければいけない」と宅建業法の規定で定められていて、これが宅建業の「免許」になります。
宅建業免許の取得では、宅建のような試験はありませんけど、会社を設立・保証協会へ加入・事務所要件を満たす・「登記されていないことの証明書」を揃えるなど、自分で準備すると結構大変な作業になるので、行政書士先生に依頼する場合が多いようです。
なお、不動産屋さんは国民の大事な資産である不動産を取り扱うわけですから、免許交付前に審査が行われ、交付後も検査や指導が行われます。
行政行為で厳しい順番に並べると…
「免許」>「許可」>「認可」>「届出」
1番厳しい「免許」になっていることを押さえておきましょう!
免許が必要になる場合を知っておく!
宅建業の免許が必要になるのは、不動産を自分で売買したり、他人の不動産売買を媒介(仲介)することを「業」として行う場合に必要となります。
わからないですよね…(汗)
分解して見ていきましょう!
「業」とは…
「不特定多数の人」に
「反復継続」して
取引を行うことを言います。
不動産屋さんが建売住宅やリノベーション済みの中古物件を売却する場合や、不動産仲介会社が不動産の購入・売却をサポートする場合は、事業として、不特定多数の人に反復継続して取引を行うため宅建業の免許が必要になります。
しかし、
不動産会社ではない個人がマイホームを売却するなら宅建業の免許は不要です!なぜなら、反復継続していないので「業」にあたらないわけですね!
「特定」「不特定」とは…
親子や親族は「特定」
知人や友人は「不特定」
投資家がワンルームマンションを5部屋持っていたとします。5部屋それぞれを別々の知らない(不特定)人たちに反復継続して売却するなら「業」にあたり、宅建業の免許が必要になります。
なお、不動産屋さん(仲介会社)に売却を依頼しても宅建業の免許は必要です。財テクでワンルームをたくさん持っているだけならいいですけど、それを1部屋ずつ売却する時は宅建業法違反になる可能性が高いと言えるでしょう。(自分で賃貸に出すだけなら免許は不要です。)この場合は、1つの不動産買取会社にまとめて1度で売却(バルク売り)するか、宅建業の免許を取得しなければいけません。
「業」と言えるかどうかの基準をもっと詳しく解説!
国が定めた包括的なガイドライン「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」によると、「業として行う」というのは…「宅地建物の取引を社会通念上事業の遂行と見ることができる程度に行う状態を指すものであり、その判断は次の事項を参考に諸要因を勘案して総合的に行われるものとする。」と記載されています。
少しわかりづらい表現ですけど、判断基準も記載しておきます。
判断基準…
■ 取引の対象者
広く一般の者を対象に取引を行おうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係(親族間、隣接する土地所有者など)が認められるものは事業性が低い。
■ 取引の目的
利益を目的とするものは事業性が高く、特定の資金需要(相続税の納税、住み替えに伴う既存住宅の処分など)の充足を目的とするものは事業性が低い。
■ 取引対象物件の取得経緯
転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続または自ら使用するために取得した物件(自己居住用の住宅、事業者の事業所、社宅など)の取引は事業性が低い。
■ 取引の態様
自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするものは事業性が高く、宅地建物取引業者に代理又は媒介を依頼して販売しようとするものは事業性が低い。
■ 取引の反復継続性
反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い。
反復継続性は、現在の状況のみならず、過去の行為並びに将来の行為の予定およびその蓋然性(がいぜんせい=客観的な可能性)も含めて判断するものとする。また、1回の販売行為として行われるものであっても、区画割りして行う宅地の販売など、複数の者に対して行われるものは反復継続的な取引に該当する。
「業」になりそうなもの…
不特定の人に、利益を目的として、転売目的で取得した不動産を、自分で直接販売し、それを継続する場合。
「業」にならなさそうなもの…
特定の相手に、特定の資金需要の充足を目的として、相続または自ら使用するために取得した不動産を、不動産屋さんに売却の仲介を依頼し、1回だけの取引を行う。
都庁にヒアリングした結果としては、具体的な基準がないため、業に当たるかどうかは総合的に判断することになりそうです。そのため、「○回までの売買なら免許不要」とは言えません!
「1年に3回まではOK」とか「3分割まではOK」は本当?
「1年に3回まではOK」とか「3分割まではOK」は本当なのか…都庁の担当者にヒアリングしたら「グレーです。」との回答でした。「濃いグレー」なのか「薄いグレー」なのかによって判断は異なるそうですけど、宅建業法で取り締まりを受けたという話を聞かないと言っていました。
「1年に3回まではOK」とか「3分割まではOK」は本当なの…?と聞かれれば、それは「ウソです。」と回答することになりますね。意外と取り締まりを受けないという話には、正直、驚きました。
地主さんが広い土地を自分で20区画に分割して、20人の別々のファミリーに売却したのであれば、明らかに宅建業法違反でしょう。また、投資家が10戸のワンルームマンションを所有していて、別々の投資家10人に売却した場合も同様ですね。
こんな明らかな場合だけではなく、微妙に思えるのであれば、宅建業の免許を取得するか、不動産買い取り業者へ一括売却するしかないと言えます。十分にお気を付けください。
2020年6月28日追記…
投資家さんをターゲットにしている後輩から聞いた話を追記しておきます。
投資家さんは複数の会社を持っていることがあるみたいですね。宅建業の免許はメンドウだから取得せず(一体、何がメンドウなんだろう?)1法人につき、毎年、1件までの取引であれば反復継続を指摘されていないみたいですよ。とのことでした。
ゆめ部長の調査から考えると…
ちょっと濃いグレーでアウトな気がするかな。
ここで一言!
不動産取引の現場では、宅建士が判断できない「曖昧なルール」が多すぎです!!グレーの濃さを総合的に判断しますって…いくらでも都合のよい取り締まりができてしまいそうですよね。いろんな方向から目に見えない力が働いているんでしょうけど、通常の業務に支障が出ない範囲でも構わないので、宅建士が判断できる明確な基準を定めるように努力してほしいと願っています。
宅建業法違反を取り締まるのは警察!?
都庁にヒアリングしてみましたら、宅建業違反で取り締まるのは警察らしいです!
警察が宅建業法違反を取り締まる姿が思い浮かばないので、地主さん・投資家さんの周りの人が警察に通報して取り締まりを受けるとしか考えられないのですが、皆さまはどう思いますか…?
なお、地主さん・投資家さんが不動産を何度も売却していることを知りながら、不動産屋さんが売却依頼を受けると、宅建業法違反を幇助(ほうじょ=手助け)したことになります。そうすると、不動産屋さんも法律違反をすることになりますから、大手では、複数回の取引になると断られることがあります。
ゆめ部長が大手に勤務していたときは、本部から「そのお客さまは反復継続しているから取り扱いしたらダメだよ。」という連絡が来ているのを見ました。さすが大手!細かいところもしっかりしていますね。
2020年7月29日追記…
警察庁生活安全局が毎年発表する「生活経済事犯の検挙状況等について」で不動産事犯についてのデータが公開されていることを勉強したので追記しておきます。
【 人数 】
■ 検挙事件数
■ 検挙人員(うち逮捕)
■ 検挙法人数
【 態様 】
■ 無免許営業
■ 無免許広告
■ 免許不正取得
■ 商号届出義務
■ 名義貸し
■ 誇大広告
■ 書面交付義務
■ 報酬制限違反
■ 重要事項不告知等
■ 供託届出前の営業
■ 宅建士設置義務
■ 広告名義貸し
令和元年の無免許事犯は5件(8名)が検挙されています。なお、数年前までのデータを見てみると、無免許事犯は毎年10名弱~20名程度が検挙されているようです。意外と少なく感じませんか??不動産取引の現場感覚だと氷山の一角だと思います。
宅建業無免許の取り締まり事例
取り締まり事例も勉強したので併せて追記しておきます。
仲介会社が新築一戸建て用地を工務店へ紹介
↓
工務店は宅建業の免許なし
↓
工務店が建物を建築
↓
仲介会社が現地販売
↓
宅建業法第12条(無免許事業等の禁止)違反で通報
結果は…
工務店が宅建業法12条違反で捕まり、
仲介会社は宅建業法12条の幇助・教唆で捕まったそうです。
売却益を狙って転売を繰り返す投資家は宅建業免許を取るべき!
宅建業の免許を取得せず、不動産の売却益を狙って転売を繰り返す…そんな個人投資家さんが結構いるみたいですね。個人投資家さんが宅建業の免許を取得すると、次のようなデメリットがあるため、宅建業者にはなりたくないのかもしれません…。
デメリット1…
宅建業免許の取得に200万円くらいのお金がかかる。また、年会費などランニングコストも考えなければいけない。
デメリット2…
契約不適合責任の重さが異なります。個人・法人・宅建業者によって契約不適合責任を負う期間が次のように変わりますし、法人や宅建業者は契約不適合責任を免責にすることができません。
個 人:3ヶ月
法 人:1年
宅建業者:2年
おそらく、デメリット1の経費ばかりに目が行き、デメリット2の契約不適合責任まで考えていない個人投資家さんの方が多いのではないでしょうか。でも、買主さまの立場で考えれば、「宅建業の免許を取得しない」=「違反」をされた結果、契約不適合責任「2年」とするべきところを契約不適合責任「免責」にされてしまったら…大きな損害になってしまいますよね。
というわけで、宅建業免許の取得をオススメします。
最後に…
「不動産屋さんに仲介をお願いすれば大丈夫。」そう考えてもおかしくないとは思いますけど、知らず知らずのうちに宅建業法違反を犯さないように注意してください!特に、サラリーマン大家さんなどは知識不足・誤認識が多いように感じられますので、しっかり勉強して、自分のことは自分で守れるようになりましょう。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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