複数の不動産を反復継続して売買すると宅建業免許が必要!何回で免許が必要になるのか…都庁で聞いてみた!
投資家さんが所有している不動産を複数回にわけて売却する場合や、地主さんが広い土地を分割して売却する場合、宅建業の免許(宅地建物取引士証ではありません!)が必要になるのをご存知ですか?不動産屋さんによっては「1年に3回まではOK」とか「3分割まではOK」とか…言うことが全然違うので、都庁で宅建業法違反になるケースをヒアリングしてきました!
2020年7月29日追記…
警察庁生活安全局のデータや取り締まり事例を追記!
不動産業界15年・宅建マイスター(上級宅建士)・2級FP技能士の「ゆめ部長」が心を込めて記事を執筆します!それでは、さっそく目次のチェックからいってみましょう~
宅建業の免許ってなんだろう…?
「宅建業の免許」というのは、宅建試験に合格した人がもらえる「宅地建物取引士証」とは異なります。宅地建物取引士証を「免許」と呼んでいる人がたくさんいますけど、これは間違っています!
不動産業を営む場合「国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けなければいけない」と宅建業法の規定で定められています。これが宅建業の免許になります。
宅建のような試験はありませんけど、会社を設立・保証協会へ加入・事務所要件を満たす・「登記されていないことの証明書」を揃えるなど、自分でやると結構大変な作業になります。
不動産屋さんは国民の大事な資産を取り扱う仕事をするわけですから、免許交付前に審査が行われ、交付後も検査や指導が行われます。
行政行為で厳しい順番に並べると次のようになるそうです。
「免許」>「許可」>「認可」>「届出」
1番厳しい「免許」になっていることを押さえておきましょう!
免許が必要になる場合を知っておく!
宅建業の免許が必要になるのは、不動産を自分で売買したり、他人の不動産売買を媒介(仲介)することを「業」として行う場合に必要となります。
わからないですよね…(汗)
分解して見ていきましょう。
不動産屋さんが建売住宅やリノベーション済みの中古物件を売却する場合、不動産仲介会社が不動産の購入・売却をサポートする場合には免許が必要になります。
しかし、不動産会社ではない個人がマイホームを売却する時には免許は不要です!なぜなら「業」として行うわけではないからです。
「業」というのは…不特定多数の人に反復継続して取引を行うことを言います。
親子や親族は「特定」
知人や友人は「不特定」
投資家がワンルームマンションを5部屋持っていたとします。5部屋それぞれを別々の知らない人たちに売却するなら「業」にあたり、宅建業の免許が必要になります。
不動産屋さん(仲介会社)に売却を依頼しても宅建業の免許は必要です。財テクでワンルームをたくさん持っているだけならいいですけど(自分で賃貸に出すだけなら免許は不要です。)それを1部屋ずつ売却する時は宅建業法違反になる可能性が高いと言えるでしょう。この場合は、1つの不動産買取会社にまとめて1回で売却(バルク売り)するか、宅建業の免許を取得することになります。
「業」と言えるかどうかの基準をもっと詳しく解説!
国が定めた包括的なガイドライン「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」によると、「業として行う」というのは…「宅地建物の取引を社会通念上事業の遂行と見ることができる程度に行う状態を指すものであり、その判断は次の事項を参考に諸要因を勘案して総合的に行われるものとする。」と記載されています。
少しわかりづらい表現ですけど、判断基準も記載しておきます。
判断基準…
■ 取引の対象者
広く一般の者を対象に取引を行おうとするものは事業性が高く、取引の当事者に特定の関係(親族間、隣接する土地所有者など)が認められるものは事業性が低い。
■ 取引の目的
利益を目的とするものは事業性が高く、特定の資金需要(相続税の納税、住み替えに伴う既存住宅の処分など)の充足を目的とするものは事業性が低い。
■ 取引対象物件の取得経緯
転売するために取得した物件の取引は事業性が高く、相続または自ら使用するために取得した物件(自己居住用の住宅、事業者の事業所、社宅など)の取引は事業性が低い。
■ 取引の態様
自ら購入者を募り一般消費者に直接販売しようとするものは事業性が高く、宅地建物取引業者に代理又は媒介を依頼して販売しようとするものは事業性が低い。
■ 取引の反復継続性
反復継続的に取引を行おうとするものは事業性が高く、1回限りの取引として行おうとするものは事業性が低い。
反復継続性は、現在の状況のみならず、過去の行為並びに将来の行為の予定およびその蓋然性(がいぜんせい=客観的な可能性)も含めて判断するものとする。また、1回の販売行為として行われるものであっても、区画割りして行う宅地の販売など、複数の者に対して行われるものは反復継続的な取引に該当する。
「業」になりそうなもの…
不特定の人に、利益を目的として、転売目的で取得した不動産を、自分で直接販売し、それを継続する場合。
「業」にならなさそうなもの…
特定の相手に、特定の資金需要の充足を目的として、相続または自ら使用するために取得した不動産を、不動産屋さんに売却の仲介を依頼し、1回だけの取引を行う。
都庁にヒアリングした結果としては、具体的な基準がないため、業に当たるかどうかは総合的に判断することになります。そのため「○回までの売買なら免許不要」とは言えないようです。
「1年に3回まではOK」とか「3分割まではOK」は本当?
都庁の担当者にヒアリングしましたら「グレーです。」との回答でした。「濃いグレー」なのか「薄いグレー」なのかによって判断は異なるようですけど、宅建業法で取り締まりを受けたという話を聞かないと言っていました。
「1年に3回まではOK」とか「3分割まではOK」は本当なの…?と聞かれれば、それは「ウソです。」と回答することになりますね。意外と取り締まりを受けないという話には、正直、驚きました。
地主さんが広い土地を自分で20区画に分割して、20人の別々のファミリーに売却したのであれば、明らかに宅建業法違反でしょう。また、投資家が10戸のワンルームマンションを所有していて、別々の投資家10人に売却した場合も同様ですね。
こんな明らかな場合だけではなく、微妙に思えるのであれば、宅建業の免許を取得するか、不動産買い取り業者へ一括売却するしかないと言えます。十分にお気を付けください。
2020年6月28日追記…
投資家さんをターゲットにしている後輩から聞いた話を追記しておきます。
投資家さんは複数の会社を持っていることがあるみたいですね。宅建業の免許はメンドウだから取得せず(一体、何がメンドウなんだろう?)1法人につき、毎年、1件までの取引であれば反復継続を指摘されていないみたいですよ。とのことでした。
ゆめ部長の調査から考えると…
ちょっと濃いグレーでアウトな気がするかな。
ここで一言!
不動産取引の現場では、宅建士が判断できない「曖昧なルール」が多すぎです!!グレーの濃さを総合的に判断しますって…いくらでも都合のよい取り締まりができてしまいそうですよね。
いろんな方向から目に見えない力が働いているんでしょうけど、通常の業務に支障が出ない範囲でも構わないので、宅建士が判断できる明確な基準を定めるように努力してほしいと願っています。
宅建業法違反を取り締まるのは警察!?
都庁にヒアリングしてみましたら、宅建業違反で取り締まるのは警察らしいです!
警察が宅建業法違反を取り締まる姿が思い浮かばないので、地主さん・投資家さんの周りの人が警察に通報して取り締まりを受けるとしか考えられないのですが、皆さまはどう思いますか…?
なお、地主さん・投資家さんが不動産を何度も売却していることを知りながら、不動産屋さんが売却依頼を受けると、宅建業法違反を幇助(ほうじょ=手助け)したことになります。そうすると、不動産屋さんも法律違反をすることになりますから、大手では、複数回の取引になると断られることがあります。
ゆめ部長が大手に勤務していたときは、本部から「そのお客さまは反復継続しているから取り扱いしたらダメだよ。」という連絡が来ているのを見ました。さすが大手!細かいところもしっかりしていますね。
2020年7月29日追記…
警察庁生活安全局が毎年発表する「生活経済事犯の検挙状況等について」で不動産事犯についてのデータが公開されていることを勉強したので追記しておきます。
【 人数 】
■ 検挙事件数
■ 検挙人員(うち逮捕)
■ 検挙法人数
【 態様 】
■ 無免許営業
■ 無免許広告
■ 免許不正取得
■ 商号届出義務
■ 名義貸し
■ 誇大広告
■ 書面交付義務
■ 報酬制限違反
■ 重要事項不告知等
■ 供託届出前の営業
■ 宅建士設置義務
■ 広告名義貸し
令和元年の無免許事犯は5件(8名)が検挙されています。
なお、数年前までのデータを見てみると、
無免許事犯は毎年10名弱~20名程度が検挙されているようです。
意外と少なく感じませんか??
不動産取引の現場感覚だと氷山の一角だと思います。
宅建業無免許の取り締まり事例
取り締まり事例も勉強したので併せて追記しておきます。
仲介会社が新築戸建用地を工務店へ紹介
↓
工務店は宅建業の免許なし
↓
工務店が建物を建築
↓
仲介会社が現地販売
↓
宅建業法第12条(無免許事業等の禁止)違反で通報
結果は…
工務店が宅建業法12条違反で捕まり、
仲介会社は宅建業法12条の幇助・教唆で捕まったそうです。
最後に…
“不動産の「悩み・不安・怒り」を解消するぞー✨ のお役立ち情報をツイート ✅ホンネで語るよ ✅業界の裏側…コッソリ教えるよ ✅役立つ知識を集めて発信するよ ✅さんへ優しく解説するね ✅ガンバル不動産屋さ…
— name (@yumebucho) YYYY年MM月DD日
関連した記事を読む
- 2020/11/28
- 2020/11/27
- 2020/11/27
- 2020/11/18