仲介手数料以外の経費を請求されたら…宅建業法違反かも!?
不動産売却活動は、皆さまが考えているよりもずっと経費がかかります。不動産屋さんの人件費だけでなく、区役所や法務局調査、管理会社からの資料取り寄せ、suumoなどのポータルサイトへの掲載料、間取図作成費用などなど…。ホント、悲しくなるほど、お金が飛んでいきます。
しかし、不動産屋さんはこの売却活動の経費を売主さまへ請求できません!もし、皆さまが経費を不動産屋さんから請求されているなら…それは「宅建業法違反」です。
というわけで、不動産屋さんからムダな経費を請求されないように、この記事を読んでしっかり勉強しておきましょう!
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
不動産屋さんは広告費用などを請求できない!
不動産屋さんは、売却の媒介契約を締結した不動産を成約させると、仲介手数料を受領することができます。この仲介手数料は、宅建業法で「成約価格×3%+6万円(税別)」が「上限」だと定められています。
簡単に仲介手数料の額を計算しておくと…
不動産価格3,000万円だと…
105万6,000円(消費税10%込)
不動産価格5,000万円だと…
171万6,000円(消費税10%込)
ちょっと驚くほど高額な報酬です…(汗)
これだけの報酬を受領できるわけですから、不動産売却活動でかかる経費に関しては、仲介手数料の中に含まれていると考えるのが妥当ですよね。
■ suumoなどのポータルサイトへの掲載費
■ 新聞折込広告費
■ 謄本取得・間取図発注などの細かい費用
などなど。
皆さまは、こういった経費を仲介手数料以外に請求されません。不動産屋さんは法律で厳しく規制されていることを知っておきましょう。
次は、法律・判例・媒介契約書をチェックしていきます。
宅建業法の報酬に関する定めを確認してみましょう!
根拠になる法律を一緒にチェックしてみましょう。法律名は宅地建物取引業表…略して「宅建業法(たっけんぎょうほう)」です。
宅建業法 第46条(報酬)
第1項
宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。
第2項
宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。
【補足】
国土交通大臣は、不動産屋さんの報酬額を「成約価格×3%+60,000円」が上限としています。
この条文を受けて、「昭和45年10月23日・建設省告示第1552号の第7(1)」で次のように定めています。
宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関し、第二から第六までの規定によるほか、報酬を受けることができない。ただし、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない。
不動産屋さんがsuumoなどのポータルサイトへ情報掲載したり、新聞折込広告をすることが、「依頼者の依頼によって行う広告」に該当するのであれば報酬を受け取ってもOKということです。
でも、通常は上記に該当しないと言われています。
なぜなら…
不動産屋さんが仲介手数料をもらうために行う業務の中には、お客さまを集客するための広告活動が含まれているのは当然ですから、この広告活動をお客さまから「依頼された」と考えるのはおかしいわけです。
不動産の広告費用に関する裁判事例を紹介します!
東京高裁 昭和57年9月28日 判決の要約を書いておきます。少し古い判例ですから、これを現代で適用するのはいかがなものか…と少し思います。だけどまぁ、とりあえず、参考にどうぞ!
Point.1
不動産屋さんが不動産売却活動を行うにあたり、通常必要になる広告宣伝費用は、営業経費として報酬の範囲に含まれていると考えられます。「建設省告示第1552号の第7(1)」が容認する広告料金とは、大手新聞への広告掲載など、仲介手数料の範囲で負担するのが厳しいほど高額になる特別な料金を意味しています。
Point.2
不動産屋さんが費用を受領できるのは、売主さまの依頼によって行う広告のみにした理由は… 売主さまの希望がないにもかかわらず、勝手に高額な広告宣伝を行い、その費用負担を売主さまに強要させないようにするためです。
Point.3
費用請求できる場合は次の通りです。売主さまから広告宣伝の依頼があり、費用負担について事前に承諾を得てから広告宣伝を行ったこと、また、費用負担を異議なく承諾した場合に限られます。
だんだん知識が増えてきましたね♪
媒介契約書の費用に関する項目も見ておきましょう!
(公益社団法人)全日本不動産協会では、専任媒介契約書の第10条に「特別依頼に係る費用」が記載されています。
甲(売主さま)が乙(不動産屋さん)に特別に依頼した広告の料金または遠隔地への出張旅費は甲の負担とし、甲は、乙の請求に基づいて、その実費を支払わなければなりません。
次に、国土交通省が定めた包括的なガイドラインである「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」を見てみます。
第34条の2関係
3. 標準媒介契約約款について
(3) 標準媒介契約約款の運用について
⑤ 特別の依頼に係る費用について
指定流通機構への情報登録はもちろんのこと、通常の広告、物件の調査等のための費用は、宅地建物取引業者の負担となる。また、宅地建物取引業者は依頼者から特別に広告の依頼や遠隔地への出張の依頼を受けたときは、あらかじめ、依頼者に標準媒介契約約款の定めに基づき請求する費用の見積りを説明してから実行すべきである。
なお、費用の請求は、成約の有無に関わらずできるものである。
やっぱり、ポータルサイトへの掲載費用などは認められていませんね。でも、ここでは遠隔地の出張旅費は請求してOKとなっています。
だいぶ知識が深まったと思いますけど、ゆめ部長の記事はここで終わりません!東京都庁の不動産業課で気になることを質問してきましたので、もう1歩、勉強を進めてみましょう。
広告費用に関する都庁の見解を聞いてきました!
ゆめ部長の質問と都庁の回答は次の通りです。補足として、ゆめ部長の意見も書いておきますね。
質問1.
最近はマンションの管理会社から取得する「重要事項調査報告書」などの費用が高騰しています。昔は3,000円程度だったものが、いつの間にか20,000円請求される案件も出てきました。売却に時間がかかった場合、再取得する必要があるので費用がかさみます。そのため、物件価格が安く、仲介手数料額が少ない案件に関しては、報告書の取得費用を請求できないものでしょうか?
回 答
宅建業法でNGとされていますから許可できません。以上。
時代の変化に対応してほしいですが、免許権者には逆らえませんから諦めました。ちょっとグチを続けますと… 2年前に弁護士先生から紹介された物件の価格は200万円。仲介手数料が10万円にしかならないのに、調査費用は約2万5,000円。交通費もかかりましたから、人件費を考えると完全に赤字です。これで不動産屋さんに対して「親身になって対応してね。」は鬼だと思います。
質問2.
suumoでは「ネットレポートプレミアム」というサービスがあります。ゆめ部長は写真や情報の質を重視していますので、お客さまが希望すればこちらに登録して高値成約を全力で応援することを考えています。しかし、広告費がかなり高くなりますので、お客さまからの要望があれば費用を請求しても良いでしょうか?
回 答
裁判事例ではTVや新聞掲載などで多額な費用がかかれば…と書いてありますけど、ずいぶん古い判例なので微妙ですね。売主さまが承諾して、媒介契約書の特約に文言を入れてあれば、合理的と認められる余地があるとは思いますよ。(ハッキリ言ってくれないんだよなぁ~)
広告費請求の規制は売主さまを守るためのものです。そのため、早期・高値での成約を目指すために、積極的に広告したいと考える売主さまの行動を制限するものではありませんよね。不動産屋さんがしっかり説明し、売主さまが承諾し、費用を明示すれば問題はなさそうに思いますが、いかがでしょうか…?
不動産屋さんに費用請求されたら都庁に即相談を!
不動産屋さんに不動産売却費用を請求されて困っているなら、宅建業法違反ですから行政に相談してみてくださいね。
【担当部署】
東京都都市整備局・住宅政策本部・住宅企画部・不動産業課
【直通電話】
03-5320-5072
【相談窓口】
新宿区西新宿2-8-1 都庁第2本庁舎3階北側 不動産業課内
【受付時間】
都庁開庁日9:00~11:00、13:00~16:00
都庁は消費者の味方ですよ!なお、東京都庁は東京都の宅建業者を監督する立場にあります。他県の方は県庁へ電話してみてくださいね。
最後に…
不動産仲介業は業務内容が激しく難化しています。そして、IT業界・広告業界に稼いだ報酬の大部分を吸われているのが現状です。
つまり、稼ぐのが難しくなっている仕事だと言えるでしょう。
法律違反は理解していても、背に腹は代えられず、売却活動の経費を請求する不動産屋さんが増えることも考えられます。
不動産業界だけが悪いとは思えません。でも、このような状況であれば、お客さまが自分の身を自分で守る意識が必要になるのは間違いありません。
不動産業界の現状を把握し、不動産取引の知識を学ぶことで、自己防衛できるようになってください。ゆめ部長がこのWebページを通してサポートしますので、一緒に勉強していきましょう!
というわけで、本日の記事はここまでです。本日も最後までお読みいただきありがとうございました!
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