相続で取得した空き家を売却して利益が出るなら「空き家に係る3000万円特別控除の特例」を確認!
「空き家に係る3000万円特別控除の特例」を知っていますか?相続した空き家を解体してから譲渡した場合、譲渡益から3000万円控除することで、所得税・住民税の納税額を減らすことができる特例のことです!
聞きなれない言葉が多くてちょっと難しいかもしれませんけど、不動産屋さんへ相談する前、税理士先生・税務署へ確認する前に記事を読んでおくと、話が分かりやすくなると思います。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
空き家に係る3000万円特別控除の特例とは…
数十年前に両親が購入したマイホームを相続したとしましょう。この不動産をマイホームとして使用せずに売却することになりました。
この場合、購入した金額が当時は安かったケースが多いので、現在の相場で売却すると利益が出ます。実は、ここに大きな税金(所得税・住民税)が課税されてしまいます。
例えば、40年前に購入したマイホームの取得費が2,000万円で、売却価格が5,000万円だったとします。単純化するために、とりあえず譲渡費用などはムシしてください。
このケースとですと、5,000万円-2,000万円=3,000万円が売却の利益となります。この3,000万円に対して、所得税・住民税が合計で20.315%課税されます。(短期譲渡所得なら39.63%)
3,000万円×20.315%=約610万円!!
この税金を納税するのって…かなり厳しいですよね。
自己居住用として住んでいる自宅(マイホーム)を売却するわけではないので、「3,000万円特別控除」を利用できず、本来はこの税金を支払う必要があります。
しかし、一定の条件を満たしている場合、売却利益から3,000万円を引いた金額に対して課税することにしてあげましょう。という特例ができたのです。
この特例が利用できれば、上記の具体例で見ると、3,000万円-3,000万円=0円になりますから、利益がなかったことになります。利益がないから課税もされない!めでたし~めでたし~~♪
空き家は街の景観の問題だけでなく、防犯・防災上も好ましくありません。動物の住処になったり、知らない人が住みつくこともありますし、放火や自然災害から守ることができませんよね。
管理されていない建物は老朽化が早まります。日本は空き家がものすごい勢いで増えていますから、このような制度が必要になっているのでしょう。
空き家に係る3000万円特別控除の特例…適用要件
適用要件が細かいのでチェックしてみましょう。
わかりづらい箇所は、自分で判断したり、不動産屋さんに確認を任せたりせず、必ず税理士先生・税務署へ確認を取ってくださいね。要件を満たせず特例を利用できなかった…ということがないように十分な注意が必要です!!
それでは全部で8つ見ていきます。
【1】相続開始直前において被相続人の居住用家屋であったこと
被相続人がマイホームとして住んでいなければいけません。もし、亡くなる直前に住民票を移転していた場合、この特例を利用することができなくなります。
なお、令和元年(2019年)4月1日以降の譲渡については、被相続人が要介護認定を受けていて、老人ホーム等に入居している場合などであれば、この特例を利用できることになりました。
「被相続人」は亡くなった方のことで、相続した皆さまは「相続人」です。
追記…
ゆめ部長のお客さまの案件で「店舗併用住宅」でもこの特例を利用できるのか?という質問がありましたので税務署へ電話確認しました。
税務署の回答は「店舗併用住宅」でも特例は利用できるとのことでした。ただし、利用できるのは「居住用部分」に限られます。
例えば、利益3,000万円で居住用部分が70%・店舗部分が30%だと、3,000万円×70%=2,100万円の部分から3,000万円を控除できるようです。このケースでは、居住用部分は非課税、店舗部分の900万円に対して所得税・住民税が課税されることになるでしょう。
【2】相続開始直前において被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
つまり、被相続人が1人で住んでいたということですね。
【3】昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
いわゆる「旧耐震基準」の建物です。老朽化が進んでいる可能性があり、早めの解体が望ましいためですね。登記簿の建築年月日を確認しましょう。
一戸建てが対象であり、マンションは対象外になります。
【4】令和5年12月31までに譲渡すること
この特例ができた時は平成31年12月31日までに売却すること…とされていましたが、期限が5年ほど延長されました。期限が付けられた時限立法はこのように延長されることがあります。空き家が増えていることを考えるとさらに延長されるかもしれませんね。
「譲渡」がいつになるのか…?これはわかりづらいので解説しておきます。
「譲渡」のタイミングは、原則としては「引渡日」ですが、「売買契約日」にできる可能性があります。譲渡期限が近づき、微妙な時期になった場合は税金の専門家へ必ず確認しましょう。
「売買契約日」を「譲渡日」とする場合、停止条件付売買契約や、手付金の受領が遅れていた場合などは注意が必要になるそうです。当てはまる場合は税理士先生へ相談してくださいね。
【5】相続開始日以降3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
う~ん、わかりづらい表現ですよね。簡単に言いますと、譲渡するまでにお正月を4回超えたらダメということになります。
平成28年6月1日に相続した場合…
3年を経過する日 = 平成31年6月1日
平成31年6月1日が属する年 = 平成31年
平成31年の12月31日までに譲渡しなければいけません。
【6】譲渡対価の額が1億円以下であること
譲渡対価には、なぜか、固定資産税・都市計画税の清算金も含まれています。
例えば…売買金額が9,980万円、固定資産税と都市計画税の清算金が50万円だった場合、譲渡対価は1億30万円になってしまい、OUT!ということです。
1億円「以下」ですから1億円はセーフ。清算金が20万円ジャストならOKです。
もう1つ。売主さまに現金の手持ちがなくて解体費用を支出できない場合で「解体費用を買主さまが負担することとし、その分を売買金額から差し引く」というような特約を結んでいた場合、この解体費用も譲渡対価に含まれてしまいます。
売買金額を販売価格9,980万円から解体費用300万円を差し引いた9,680万円とした場合で、清算金が50万円だとOUT!になるということですね。
税理士先生による講習会で「不動産取引の実務をわかっていない人が適用要件を作るからこんな変なことになるんだ!」と言っていました。ホント、なんで実務でミスを誘発するような制度にするのか謎すぎます。
【7】耐震工事または建物解体後の譲渡であること
「耐震工事」の要件…
譲渡時において、建物が地震に対する安全性に係る規定等に適合していること。
旧耐震基準の建物だから、耐震診断をして、必要なら耐震補強工事をしてくださいね!ということになります。
「建物解体」の要件…
建物を解体した後に土地を譲渡すること。
両方にあてはまる要件…
相続時から譲渡時までの間で、事業用・貸付用・居住用として使用していないこと。
空き家にしておくのがもったいない!と考えて、賃貸に出して家賃収入を得ていたりすると、この特例を利用することができなくなってしまいます。お金のことをしっかり考えている人が損をする…というのは悲しいですね。
【8】被相続人の居住用建物と土地を取得すること
土地と建物を一体として取得しなければいけません。
土地 … 長男1/2・長女1/2
建物 … 長男1/2・長女1/2
これならOK!
土地 … 長男
建物 … 長女
これはNG…
長男は建物の持分がなく、長女は土地の持分がないため、2人ともにこの特例を利用することができなくなります!
空き家に係る3000万円特別控除の特例…注意事項
ゆめ部長がこの制度を勉強して「気を付けなきゃ…」と思ったことをまとめておきます。
■ 建物は売主さまが解体する!
相続人が売却不動産から離れた場所に住んでいると「建物を解体しないで現況で売却したい。」と考えるかと思います。しかし、これはNGです!建物は相続人である売主さまが解体してください。
■ 10年超所有軽減税率の特例は併用できない!
この特例は、売却不動産(マイホーム)を10年を超えて所有していた場合、税率がさらに安くなり、6,000万円以下の利益に対しては税率を14.21%にしますよ!という特例です。併用できないため、税率は最安で20.315%になります。
■ 自己居住用の3,000万円控除と併用できる!
同一年度に「空き家に係る3000万円特別控除の特例」だけでなく、自宅を売却して「自己居住用の3,000万円控除」を利用することは可能です。ただし、限度額は2つの制度を合わせた6,000万円ではない点に注意してください。2つ合わせて最大で3,000万円が限度になります。
■ 住宅ローン控除との重複適用ができる!
マイホームで住宅ローン控除を利用しながら、相続した空き家を売却した際に3,000万円控除の特例を重複して利用することができます。ただし「住宅ローン控除」と「自己居住用の3,000万円控除」は重複適用できません。
■ 建物解体の領収証などを保管しておこう!
建物を売主さまが解体したことを証明する書類が必要です。税務署に電話確認してみたところ、現場写真は必要なくて、解体費用を支出したときの領収証を提出することになるそうです。
その他にも細かい注意点があります。この制度を利用する時は必ず税理士先生か税務署へ相談するようにしてください。ここは手間を省略できません!
相続人1人あたり3000万円控除できる!
相続人が複数いた場合、全員の合計で3,000万円控除できるのかな…?という疑問を持つかもしれませんが、この点は安心してください。それぞれの相続人1人あたり3,000万円控除することができます。
例えば…40年前に購入したマイホームの取得費が2,000万円で、売却価格が9,000万円だったとします。単純化するために、今回も譲渡費用などはムシしてください。共有者は2人で長男・長女がそれぞれ1/2ずつとしましょう。
(9,000-2,000万円)÷2 = 3,500万円
これが1人あたりの売却利益。ここから3,000万円控除できるわけですから、
3,500万円-3,000万円 = 500万円
この利益に対しして税率がかけられます。
500万円×20.315% = 約102万円
長男・長女ともに約102万円の所得税・住民税がかかる計算になりました。
最後に…
少し難しいお話になってしまいましたけど、節税効果が大きな特例ですので内容を理解しておくことをオススメしたいです。
特に、購入した時の売買契約書などを紛失している場合、取得費が売却価格の5%とみなされてしまう可能性があり、所得税・住民税の納税額が高額になる恐れがありますから、特例を利用できないか必ず相談してくださいね。
なお、ゆめ部長の感覚では、この特例を知らない不動産屋さんの方が多いと思います。不動産屋さんを信用せず、自己防衛のために勉強しておきましょう。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました!
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■ 2019年10月14日 投稿
“不動産の「悩み・不安・怒り」を解消するぞー✨ のお役立ち情報をツイート ✅ホンネで語るよ ✅業界の裏側…コッソリ教えるよ ✅役立つ知識を集めて発信するよ ✅さんへ優しく解説するね ✅ガンバル不動産屋さ…
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