不動産売買契約の「印紙税」を解説!
不動産を売買する際に取り交わす売買契約書には印紙を貼付(ちょうふ)しなければいけません。今回の記事では、納得いかない税金ナンバーワン!不動産取引で課税される「印紙税」に関してまとめてみます。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
不動産売買契約で課税される印紙税とは…?
印紙税という税金は…「売買契約書を作成することで不動産取引の法律関係が安定するという経済的メリットに対して課税するもの」だそうです。
正直、意味がわかりませんよね…。
まぁ、そんなことを言っても課税はされるわけなので、「ふ~ん、そうなんだぁ~」という程度に確認しておけばOKでしょう。
どうでもいいことですけど、印紙を貼ることを貼付といいます。
「ちょうふ」⇒ ○
「てんぷ」 ⇒ ×
重要事項説明をする宅建士も「てんぷ」と言っていることがあります。宅建士の皆さんは読み間違いしないように気を付けましょうね!
不動産売買契約書に課税される印紙税額
2024年(令和6年)3月31日までに作成される 「不動産売買契約書」「建設工事請負契約書」については、印紙税の軽減措置が適用されています。(期限延長後)
ゆめ部長がメインエリアにしている東京都のマイホーム売買でよく使う「不動産売買契約書」の記載金額に応じた印紙税額を書いてみます。()内は軽減前の本則税額です。
■ 100万円超 ~ 500万円以下
1,000円(2,000円)
■ 500万円超 ~ 1,000万円以下
5,000円(10,000円)
■ 1,000万円超 ~ 5,000万円以下
10,000円(20,000円)
■ 5,000万円超 ~ 1億円以下
30,000円(60,000円)
■ 1億円超 ~ 5億円以下
60,000円(100,000円)
これ以上の金額は…まぁ見なくていいですよね (笑)
せっかくなので軽減率も書いておきます。
記載金額が1億円以下 … 軽減50%
記載金額が1億円超 … 軽減40%
記載金額が10億円超 … 軽減20%
50億円超の不動産を売買するなら印紙税は60万円!これが▲20%で48万円になります。ゆめ部長は60万円に驚いてしまいますけど、50億円超の不動産を売買する人にとっては気にならない金額なのでしょうね~
いくつか参考知識を書いておきます!
参考知識1…
「以下」はその金額を含み、
「超」はその金額を含みません。
5,000万円以下:5,000万円を含む
⇒ 50,000,000円:印紙税10,000円
5,000万円超:5,000万円を含まない
⇒ 50,000,001円:印紙税30,000円
参考知識2…
印紙税額を判断する不動産売買契約書の「記載金額」には建物消費税を含みません。物件価格5,150万円の新築一戸建ての建物消費税が150万円なら「記載金額」は5,000万円として考えます。印紙税は5,000万円に対して課税されますから10,000円になりますね。ただし、売買価格5,150万円【税込】のように、消費税額が明らかになっていない場合、5,150万円が「記載金額」となり、印紙税は30,000円になります。
消費税は土地は非課税で建物にしか課税されないため、土地・建物の内訳がわからないと消費税額も明らかにならない!ということです。まぁ、課税事業者である不動産会社から購入するのであれば、土地・建物・消費税額の内訳が書かれていますから大丈夫でしょう。
参考知識3…
平成26年4月1日に印紙税の軽減措置が拡充されました。2022年2月時点では2段階で下がっているということです!
よく契約する金額を2つだけ書いておきましょう。
■ 1,000万円超 ~ 5,000万円以下
20,000円 ⇒ 15,000円 ⇒ 10,000円
■ 5,000万円超 ~ 1億円以下
60,000円 ⇒ 45,000円 ⇒ 30,000円
左側:本則
真中:平成26年3月31日まで
右側:平成26年4月1日以降
金銭消費貸借契約書に課税される印紙税額
印紙税が課税されるのは不動産売買契約書だけではありません。銀行からお金を借りる契約「金銭消費貸借契約(きんせんしょうひたいしゃくけいやく・略して金消契約)」も印紙税が課税される課税文書になります。
税額は先ほど記載した印紙税額の()内に記載した本則です。つまり、売買契約書と違って軽減措置がないってことですね。
1つ例を見てみましょう。
6,000万円の中古マンションを購入して、4,000万円の住宅ローンをご主人が3,000万円・奥さんが1,000万円借りた場合の印紙税はいくらでしょうか…?
「不動産売買契約書」は30,000円ですね。
「金銭消費貸借契約書」はご主人と奥さんで税額が異なります。
ご主人…
1,000万円超 ~ 5,000万円以下:30,000円
奥さん…
500万円超 ~ 1,000万円以下:10,000円
というわけで、印紙税は合計70,000円(涙!)
参考知識…
印紙税は紙の文書へ課税することを前提としているため、電子取引では印紙税が課税されません。ネット銀行の住宅ローンを利用した場合、印紙税がかからないケースを見るようになってきました。なお、銀行からの案内には「印刷してお客さまへ渡すことは禁止!」と記載されています。
印紙税の課税文書・非課税文書
印紙税が課税される文書・課税されない文書をいくつか書いておきます。
課税文書…
■ 売買契約変更の覚書
■ 土地交換契約書
■ 実測清算確認書
■ 借地権譲渡契約書
売買金額を変更する覚書の場合、増額した場合は「増額分を契約金額」として印紙税が課税され、減額した場合は「記載金額なし」となり200円でOKです。覚書の書き方を間違えると印紙税額が上がってしまう可能性がありますので、税務署・税理士先生に確認するようにしてください。
反対に、下記の文書は印紙税が課税されません。
非課税文書…
■ 媒介契約書
■ 重要事項説明書
■ 不動産購入申込書
それにしても…印紙に関する税金をこんなに難しくしなくてもいいのでは!?と思いませんか??国税庁のWebページを見ると…ますます税金がキライになりますよ。
興味がある!という不思議ちゃんはコチラ…
不動産売却時の領収証に印紙は必要なの?
マイホームを売却すると、買主さまに対して下記の領収証を発行します。
■ 手付金
■ 残代金
■ 清算金(固定資産税・都市計画税・管理費・修繕積立金など)
領収証は不動産屋さんが作成してくれますので、署名捺印して買主さまへ交付すればOKです。
このときによくある質問が…
「領収証の印紙はどうしたらイイですか??」
この質問への回答は…
「マイホーム売却なら領収証は不要」です。
なぜなら、営業に関しない領収証は非課税となっているからです。しかし、個人投資家が投資用不動産(ワンルーム・アパートなど)を売却する場合には印紙税が課税されますので気を付けてくださいね。
参考知識…
不動産屋さんが残代金・仲介手数料を受領した時に発行する領収証ですが、結構な印紙税がかかります。仲介手数料なら200円~1,000円くらいで済みますけど、残代金(売買金額-手付金)だと、5,000万円超~1億円以下で20,000円も課税されます。
そこで、領収証を発行せず、振込伝票の控えを領収証とすることがあります。脱税してるんじゃないの…?と疑われてしまいそうですけど、税務署に確認して問題ないとの回答でした。
「不動産屋さんを儲けさせる必要はない!」と思うかもしれませんけど、ムダな費用を1つずつ削減することは大事ですよね。
印紙は郵便局で購入して領収証は保管しましょう!
印紙は郵便局で購入できますので「収入印紙」を購入してきてください。郵便局の営業時間は平日の9:00~17:00ですから早めの準備をお願いします!
平日に郵便局へ行けず、売買契約が土日の場合、24時間営業している大きな郵便局に行けば購入可能です。例えば、次のような郵便局です。
■ 新宿郵便局
■ 豊島郵便局
■ 目黒郵便局
■ 世田谷郵便局
■ 神田郵便局
■ 武蔵野郵便局
などなど。
近場を探すなら「郵便局 24 時間」でググってみてくださいね!
なお、コンビニでは200円などの印紙は取り扱っていますが、高額な印紙は取り扱いがありませんのでご注意ください。
そういえば、金券ショップで印紙を購入してきたお客さまもいました。高額な印紙はあまり売っていないようで、5,000円×1枚・3,000円×1枚・1,000円×2枚を持ってきたのを見たことがあります。節約を考える時には良いかもしれませんね。
大事な注意点もお話しておきます。
印紙購入時の領収証は捨てないで保管しておいてください。将来、購入した不動産を売却する際に利益が出ると、所得税・住民税が課税されるのですけど、利益から印紙購入費用などを経費として差し引くことができます。この時に領収証が必要になります。
5年以内の売却で利益が出ると、所得税・住民税が39.63%もかかります。印紙代が1万円だと約4,000円、3万円だと約12,000円も税金を納めずに済むのです!
印紙税の節税を考える!売買契約書は原本1部でOK(2020年7月7日修正)
2020年7月7日(お詫びと訂正)…
印紙税の節税方法について下記に記載しましたが、これは好ましくない方法であることがわかりましたので、次の記事にて詳細を解説しました。興味があれば、この記事を読み終わった後に読んでみてください。
参考記事…
最初に書いた文章を残しておきます ⇒ ⇒ ⇒
なんとなく納得しづらい印紙税。
節税できるなら嬉しいですよね!
印紙税を節税しやすいのは「不動産売買契約書」に貼付する印紙です。具体的な方法を解説しましょう。
不動産売買契約書は、通常、売主さま・買主さまの双方が原本を保管します。しかし、原本を作成すると、そこには印紙税が課税されてしまいます。
ここでアドバイス!
実は…不動産売買契約書の作成は1通のみでOKなんですよ。
原本を1通作成して、住宅ローンを利用する買主さまが原本を保有し、売主さまはコピーを保管するのです。新築一戸建ての売主業者さんからは「コピーでOKなので印紙代は買主さま負担でお願いします!」と言われることがよくあります。
これは脱税になりません。念のため税務署に電話して確認もとってありますので心配しないでください。ただし、この写しにも契約当事者が直筆で署名捺印してしまうと課税対象になるので、原本をコピーして保管するだけにしてくださいね。
印紙の負担方法は2つに分かれます。
1つ目は、原本を保有する買主さまが全額負担。2つ目は、折半。
どちらにしても、印紙の負担区分は重要事項説明書・売買契約書に記載するべきです。折半にする場合は、領収証のやり取りをしっかり行うことをお忘れなく!
印紙税の納税は印紙を消印して行う!
印紙税の納税は、売買契約書に印紙を貼付して「消印(けしいん)」することで行います。「消印」を「割印」と言う不動産屋さんが多いですけど、これは誤りですよ~
消印に関してよくある質問への回答をまとめておきます。
消印は印紙の再利用を防止することが目的です。そのため、売主さま・買主さま以外の人が消印してもOKですし、複数人いるときは代表者1人が消印すればOKです。また、売買契約書に捺印した印鑑で消印しなければいけないというルールもなく、署名でもOKになります。
消印として認められないのは次のようなケースです。
■ 「印」と表示するだけ
■ 斜線を引いたり・✔するだけ
■ 鉛筆や消せるペンなどで行った署名
正直、不動産取引の現場では「なんとなく」消印をしているだけで、誰も正確な知識は持っていないように感じています。現場で多く行われている消印は、捺印した印鑑を使って全員が押印する方法です。
収入印紙が偽造防止のために形式改正された!
印紙は全部で31種類あり、このうち、200円~100,000円の19種類が形式改正されました。(2018年7月1日~)
形式改正は偽造防止が目的です。
紫外線ランプを照射すると発行する特殊発行インキ・マイクロ文字・着色繊維・透かし入り用紙を使用します。1,000円以上の印紙は、見る角度を変えると複数の模様が現れる「メタリックビュー」という技術を採用しているそうです。
改正前の収入印紙が使えるかどうか…?この質問はよくありますけど、問題なく利用できますのでご安心ください。
印紙を間違えて貼付してしまった時の対処法
印紙を間違えて貼ってしまった場合…税務署へ申請することで還付を受けられることがあります。注意点などをまとめておきますね!
還付してもらえるケース…
■ 印紙税額を超えた収入印紙を貼付してしまった
■ 印紙不要の書類に貼付してしまった
■ 書類を使う見込みがなくなった
以前、こんなことがありました。
売買契約書へ署名捺印する際、買主さまが「売主様欄」に署名捺印を行い、売主様も気づかず「買主様欄」に署名捺印をしてしまいました。
これはどう考えても、ゆめ部長の注意不足ですね…。
お客さまに深くお詫びをして郵便局へダッシュ。
印紙を自腹で購入。
無事に契約は完了しました。
しかし…30,000円はサラリーマンとしてはイタイ(涙)
そこで!税務署へ相談に行ってみました。
印紙を貼付したけど消印はしていなかったから、なんとかなるんじゃないか!?と期待をしていましたが、「売主さま・買主さまの当事者が来ないと還付はできない」との回答。しかも、長時間待たされたうえに感じ悪い…(悲)
元気なく、事務所に戻って一休憩。
最後にネット検索してみたら…なんと!
金券ショップで買い取ってくれるじゃないですか!!
「1度貼ったらOUT」と書かれた記事もたくさんありましたけど、綺麗な状態であれば、その部分を切り取って郵送すると買い取ってくれるお店もあるのです。
買い取り金額は20%くらい下がったと記憶していますが、「税務署の対応がムカつく!!」なんて怒りに任せてシュレッダーにかけなくて良かったなぁ~。そんな恥ずかしい思い出話でした。
なお、通常であれば「印紙税過誤納確認申請書」を納税地の税務署へ提出して還付申請を行うことになります。わからないことは、とりあえず、税務署へ電話して確認しましょう。
最後に…
この記事を執筆する前、印紙税は書くことないから2,000文字くらいかな~と思っていたのに、勉強したことを追記して、間違っている箇所を修正してみたら、6,000文字の記事になってしまいました。知っておくべきことが多くて驚きです!
印紙税は、正直、イマイチ納得できない税金ではありますけど、印紙の貼り忘れで過怠税・延滞税がかかる可能性が意外と高い税金ですから、しっかり勉強してみてくださいね!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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