不動産売却の利益計算…建物減価償却費の加算を忘れていませんか?
不動産を売却して利益が出ると「所得税・住民税」が課税されます。この利益の計算方法は少し複雑で、「売却金額 - 購入金額」という単純な計算ではありません。
この計算をする際、多くのお客さまが勘違いしやすいんですけど、 建物の減価償却費は「利益に加算」して計算しますから、ここにも税金が課税されてしまいます。「建物減価償却」という言葉を聞くと、利益から差し引いてくれるような気がしてしまいますよね…(涙)
というわけで、本日は不動産売却の利益を計算する時に注意するべき「建物の減価償却費」について解説してみます。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
建物の「減価償却費」ってなんだろう?
まずは簡単に内容を確認しておきましょう。
建物の減価償却(げんかしょうきゃく)とは、高額で長期間使用する「建物」の購入代金については、購入した年に全てを経費として計上しないで、毎年一定金額ずつ分割して計上する手続きのことです。
まぁ、毎年、一定金額ずつ目減りさせるってわけですね。
一定額減るのが「定額法」
一定率減るのが「定率法」
で、使うのは「定額法」です。詳細はこの後、解説していきます~
不動産売却の利益はどうやって計算するの?
いろんなテキストを見ても正直よくわかりません。だから、簡単に書きますよ!
不動産を売却したお金
- 土地購入価格
- 建物購入価格
- 購入の諸費用
- 売却の諸費用
+ 建物減価償却費
- 特別控除
× 所得税・住民税
具体例を見ておきましょう。
15年前に5,000万円(土地3,500万円・建物1,500万円)で購入した建売住宅を9,000万円で売却しました。購入時の諸費用は400万円・売却時の費用は300万円・建物減価償却費が650万円とした場合、所得税・住民税は合計でいくらになるでしょうか?
単純に上の式に数字を入れていくと…
9,000万円
- 5,000万円(3,500万円 + 1,500万円)
- 400万円
- 300万円
+ 650万円
- 3,000万円
利益950万円 × 14.21% = 134万9,950円
次に、一応、難しい計算式も書いておくと…
譲渡所得税の計算式:課税譲渡所得金額 ×「所得税・住民税」
課税譲渡所得金額 = 譲渡所得 - 特別控除
譲渡所得 = 譲渡収入金額 -( 取得費 + 譲渡費用 )
取得費 = 土地価格 + 建物価格 + 購入諸費用 - 建物減価償却費
まぁ、わかりづらいですよね。この式をわかりやすく書くと、縦に並べた上の計算式になります。
この記事で解説する注目ポイントは…
-(-建物減価償却費)
「-」が2つ重なると「+」になりますよね。建物減価償却費は譲渡収入金額(売却代金)にプラスされるということです。
節税するためには譲渡所得という「利益」を少なくしたいところですね。
この譲渡所得を計算する際、売却価格から建物購入価格を引くんですけど、引ける金額が「建物を減価償却した後」の金額になってしまいます。
利益を少なくしたいのに、引ける金額が減るから利益が多くなってしまう…。つまり、納税額は増えるという残念な結果になるということです。
まぁ、わかりづらいので、建物減価償却費は利益として計算する!と覚えておけばいいんじゃないでしょうか!?
建物減価償却費の計算方法
ゆめ部長が取り扱う不動産は「非事業用」資産…つまりマイホームなどの居住用不動産が多いので、その前提で書いていきます。まずは計算式をチェックします。
減価償却費 = 建物取得費 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
分解して解説していきますね。
■ 建物取得費
購入代金または建築費、固都税の清算金、仲介手数料、税金、司法書士報酬などの合計額になります。
土地・建物共通項目の取得費については、建物 /( 土地 + 建物 )で計算してよさそうです。例えば、マンションで土地と建物の割合が…土地40%・建物60%、仲介手数料(諸費用)が100万円の場合、建物分の仲介手数料は100万円 × 60% = 60万円という計算です。
具体的な計算は、必ず税理士先生・税務署へ相談してくださいね。
売買契約書に建物の購入代金が記載されていないなら…次の記事をチェックしてください!
参考記事…
建物の減価償却費を計算するとき「建物取得費」はどうやって調べるの?
■ 0.9
非事業用資産は「×0.9」にしますが、事業用資産は「×0.9」しません。建物減価償却費は利益として課税される計算ですから、「×0.9」してくれたら利益が減って嬉しいな!と考えるとわかりやすいですね。
■ 償却率
定額法を使って計算します。下記の数字に基づき、毎年、建物の構造に応じて決められている額を減価償却させてください。なお、非事業用資産の耐用年数は、事業用資産の耐用年数を「×1.5」した年数です。
■ 経過年数
6ヶ月以上の端数は1年でカウントし、6ヶ月未満は切り捨てます。
住宅の法定耐用年数…
全部書いてしまうとわからなくなるので、よく使う「木造」「鉄筋コンクリート造」「鉄骨鉄筋コンクリート造」を書いておきますね。
■ 木造
【非事業用】耐用年数:33年 償却率:0.031
【事業用】 耐用年数:22年 償却率:0.046
■ 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造
【非事業用】耐用年数:70年 償却率:0.015
【事業用】 耐用年数:47年 償却率:0.022
建物減価償却費を具体例で計算してみよう!
次の具体例で建物の減価償却費を計算してみましょう~~
平成10年5月に2,500万円で木造の建物をマイホームとして建築し、平成20年12月に1,500万円かけて増改築工事をしました。この建物を平成30年9月に売却した場合、建物の減価償却費はいくらになるでしょうか??
新築部分と増改築部分に分けて計算します。
■ 新築部分
平成10年5月建築 ⇒ 平成30年9月売却
所有期間は20年4ヶ月
6ヶ月未満は切り捨てるので所有期間は20年
2,500万円 × 0.9 × 0.031 × 20年 =1,395万円
■ 増改築部分
平成20年12月増改築 ⇒ 平成30年9月売却
所有期間は9年9ヶ月
6ヶ月以上は1年としてカウントするので所有期間は10年
1,500万円 × 0.9 × 0.031 × 10 = 418.5万円
以上の計算により、減価償却費は…
1,395万円 + 418.5万円 = 1,813.5万円
この約1,800万円が利益に加えられることになる…これって結構ビックリですよね??購入と売却の諸費用を差し引けばプラスマイナス0で税金はかからないよな…と油断しそうじゃありませんか!?
プラスマイナス0で大丈夫だろうと油断していたところに、減価償却費の約1,800万円が利益に加算…。この部分に14.21%も税率を課税されると、約260万円も納税しなければいけません(涙)
住み替え先で「住宅ローン控除」を利用するのが得か、「3,000万円控除」を利用して売却利益を消した方が得なのか…?税理士先生に計算してもらわないと大損する可能性があるということです。
気を付けましょうね!
最後に…
数字が多くて読むのがメンドウなこの記事。最後まで読んでもらえたということは、記事のタイトルを見て「ドキッ!」としたからですよね。
でも、これで大丈夫。油断したら危険だとわかれば、税理士先生・税務署へ相談に行こうと思えるはずです。税金は難しいので、メンドウでも、相談料がかかっても、専門家に確認しましょう!
ということで、本日はここまで!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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