建物の減価償却費を計算するとき「建物取得費」はどうやって調べるの?
建物の減価償却費は不動産を売却した利益に加算される…というお話を前回の記事でしましたね。今回の記事では、建物の減価償却費を計算する際の「建物取得費」をどうやって調べたらいいのか…?この点を解説したいと思います。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
前回の記事…
建物取得費の調べ方を確認してみよう!
「建物取得費」は下記項目を合計した金額になるということを前回の記事で解説しましたね。
■ 購入代金または建築費
■ 固都税の清算金
■ 仲介手数料
■ 税金
■ 司法書士報酬 など
実は、上記項目の中で「購入代金」はいくらになのか…?を確認するのが意外とメンドウだったりします。
普通、不動産売買契約書に建物金額がちゃんと記載されていると思いますよね?ところが…「売買代金」は記載されているけど「建物金額」は記載がない、ということがよくあります。
さぁ、どうしたものか…と悩むことになるわけです。
税法を確認してみると、土地建物の金額を区分する方法は明確な定めはなくて「合理的な算定方法で計算すればOK」とされています。
合理的な方法は4つありますので一緒に見ていきましょう!
■ 消費税から建物価格を逆算する
■ 「建物の標準的な建築価額表」で建物価格を計算する
■ 固定資産税評価額の比率で按分(あんぶん)する
■ 土地の時価を算定して残りを建物価格とする
では、順番に解説しますね。
【1】消費税から建物価格を逆算する
不動産の売買契約書には「売買代金」が記載されています。しかし、売主さまが消費税の課税事業者でなければ、土地と建物の内訳まで記載しないのが一般的です。
例えば、居住中の中古マンションを個人が売買する場合、不動産売買契約書には次のように記載されます。
売買代金 :金 50,000,000 円
土地価格 : ------------------ 円
建物価格 : ------------------ 円
消費税 : ------------------ 円
「えっ!そうなの!?」と驚いた人が多いでしょうから、まず、この点を解説しておきますね。
「消費税の課税事業者」というのは、課税売上高が1,000万円を超える会社や個人事業主などのことを言います。
課税事業者は「建物」には消費税が課税されますから、売買代金のうち、建物金額がいくらかを決める必要があるわけです。なお、不動産売買契約書に記載された「売買代金」は内税で消費税込みの金額になっていますので覚えておいてください!
消費税が決まっているのに、売買契約書は土地・建物の内訳が記載されていない…なんてケースは見たことないですけど、消費税が決まっている場合に使える「建物価格」の計算方法を具体例を使って説明しておきます。
売買金額5,000万円・建物消費税120万円・消費税率8%(売却不動産の購入時期:平成27年4月10日)を具体例にして計算してみましょう…
建物消費税が8%で120万円ですから建物価格は
120万円 ÷ 8% = 1,500万円
5,000万円の物件で建物が1,500万円・消費税が120万円なので、土地価格の計算は簡単ですね。
5,000万円 - 1,500万円 - 120万円 = 3,380万円
まとめると…
売買代金 : 金 50,000,000 円
土地価格 : 金 33,800,000 円
建物価格 : 金 15,000,000 円
消費税 : 金 1,200,000 円
減価償却費を計算する時の「建物購入代金」は1,500万円だとわかりました。
注意点としては、購入時の消費税率が適用されるということです。
平成1年4月1日 ~ 平成9年3月31日:3%
平成9年4月1日 ~ 平成26年3月31日:5%
平成26年4月1日 ~ 令和元年9月30日:8%
令和元年10月1日 ~ :10%
上記の計算が8%になっているのはこれが理由です。消費税が10%へ増税されたのに更新をさぼっている…というわけではありませんよ!
【2】「建物の標準的な建築価額表」で建物価格を計算する
建築年ごとに、構造別の建築費用が記載された「建物の標準的な建築価額表」というものがあります。
これは、国土交通省の「建築着工統計」の「構造別:建築物の数、床面積の合計、工事費予定額」を基に、1㎡あたりの工事費予定額を算出したものです。
まぁ、詳しい解説はムシして構いません。この表に書かれた数字で建物取得費を計算すればいいだけですからね。
詳細は上記のPDFファイルを見てください。今回はいくつか抜粋して具体的に計算してみたいと思います。
平成元年
木造:123,100円/㎡
鉄骨鉄筋コンクリート:237,300円/㎡
鉄筋コンクリート:193,300円/㎡
鉄骨:128,400円/㎡
平成28年
木造:165,900円/㎡
鉄骨鉄筋コンクリート:308,300円/㎡
鉄筋コンクリート:254,200円/㎡
鉄骨:204,100円/㎡
平成30年
木造:168,500円/㎡
鉄骨鉄筋コンクリート:304,200円/㎡
鉄筋コンクリート:263,100円/㎡
鉄骨:214,100円/㎡
2019年10月22日追記…
「建物の標準的な建築価額表 国土交通省」の最新版はありませんけど、平成30年度の数字を見つけましたので追加しました。平成28年から平成30年で鉄骨鉄筋コンクリート以外は全て上昇しています。(追記・終)
平成元年1月に専有面積75㎡・鉄筋コンクリート造の新築マンションをマイホームとして購入しました。建物価格はいくらになるでしょう…?
簡単ですね。
193,300円 × 75㎡ = 14,497,500円
ついでなので減価償却費の計算も復習しておきましょう。このマンションを平成30年10月に売却しました。減価償却費はいくらになるか計算してみてください!
これも、前回の記事を読んでいたらカンタン!
平成1年1月~平成30年10月まで所有していたわけですから、所有期間は29年9月。6ヶ月以上は1年とカウントするので減価償却は30年分になります。鉄筋コンクリート造の償却率は0.015でしたね。
14,497,500円 × 0.9 × 0.015 × 30年 = 5,871,487円
問題ないでしょうか!?
【3】固定資産税評価額の比率で按分(あんぶん)する
固定資産税評価額は「評価証明書」「関係証明書(公課証明書とも呼んでいます)」などで確認することができます。上記の赤枠部分を見てください。
この参考書類の土地評価額がものすごく高額になっているのは、マンション全体の土地価格が記載されているためです。実際は、この土地評価額に対する持分で計算をすることになります。
上記の金額だとわかりづらいので、簡単な数字に直して見ていきましょう。
売買金額:4,200万円
土地・固定資産税評価額:4億5,000万円
持分:6,000/300,000
建物・固定資産税評価額:500万円
この事例で建物金額を計算してみます。
まず土地の固定資産税評価額を計算しましょう。
4億5,000万円 × 6,000/300,000 = 9,000,000円
次に土地と建物価格を比べます。
土地900万円:建物500万円
この比率で建物価格を計算すると…
4,200万円 × 500万円/1400万円 = 1,500万円
こんな感じで計算するみたいです。
【4】土地の時価を算定して残りを建物価格とする
周辺に多くの成約事例があり、物件ごとの特性を踏まえて対象不動産と比較検討することで「時価」を算出する方法です。これは…かなり難易度が高いと思います。
ちょっと想像しながら考えてみてください。
皆さまは新築一戸建てを購入しました。地型は間口8m・奥行き12mの整形地。2階建て4LDKで延床面積は96㎡。南側5m公道に接道しているため陽当良好の物件です。
次の4つの近隣成約事例があります。
周辺事例1…
旗型の不整形地。建物に囲まれていて圧迫感あり。1坪あたり@150万円で成約。
周辺事例2…
前面道路は車が入れない1間道路(約1.8m)の私道。再建築はできるけど…。1坪あたり@120万円で成約。
周辺事例3…
北道路に接道した250㎡の整形地。土地が広くて値段が高いため2年売れませんでした。成約価格は1坪あたり@135万円。
周辺事例4…
南側6m・東側6mの東南角地の整形地・120㎡。駅から5分の閑静な住宅地に立地。超人気学区!即成約で1坪あたり@180万円で成約。
さぁ、皆さまの土地は1坪あたりいくらでしょうか…?
「合理的な算定方法」で土地価格を求めなければいけません。
そうすると、なかなか難しいな…と感じますよね。この方法で計算するなら、不動産屋さんに査定書を作成してもらう必要があるでしょう。それでも「合理的」と言えるかどうかは税理士先生・税務署の判断が必要だと考えられます。
4つの方法を解説してきましたけど、自分で計算することはあまりオススメしません!相談料はかかりますけど、ぜひ、税理士先生へ相談するようにしてくださいね。
最後に…
前回の記事でもお話したように、建物減価償却費は売却利益に加算される項目であり、意外と大きな金額となります。
心配だからちゃんとチェックしておこう!と思っても、売買契約書には建物金額が記載されていない…。「よくわからないぞ(怒)あぁ…もうメンドウだ!」とイライラしてしまわないように、この記事で簡単な計算方法を確認しておいてくださいね。
難しい記事が続いてしまい心苦しいですけど、引き続き一緒に頑張っていきましょう。ゆめ部長は皆さまを全力で応援しています!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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