「概算取得費5%」で計算したくない!購入時の売買契約書がない時の対処法
不動産を売却して「利益」が出ると、その「利益」に対して「所得税・住民税」が課税されます。税額を計算をする際、購入時の売買契約書を紛失してしまっていると取得費が「概算5%」で計算されてしまいます。そうすると、利益が大きくなり過ぎて納税額が大幅に増えてしまう可能性があるのです。
そこで、売買契約書を紛失していたとしても、「概算取得費5%」で計算しないで済む方法を解説したいと思います。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
不動産を売却した利益に課税される税金の計算式
まず最初に、不動産売却益(譲渡所得)に対する「所得税・住民税」の計算式を確認しておきましょう~~
記事を連続で読んでくれている人からすると…しつこいですよね(汗)でも、数字は若干変えていますので復習するつもりでお付き合いください!
不動産を売却したお金
- 土地購入価格
- 建物購入価格
- 購入の諸費用
- 売却の諸費用
+ 建物減価償却費
- 特別控除
× 所得税・住民税
具体例 ➡ ➡ ➡
15年前に4,000万円(土地2,500万円・建物1,500万円)で購入した新築一戸建てを4,500万円で売却しました。購入時の諸費用は300万円・売却時の費用は200万円・建物減価償却費が600万円とした場合、納税する税金はいくらになるでしょうか?
4,500万円
- 4,000万円(2,500万円 + 1,500万円)
- 300万円
- 200万円
+ 600万円
- 3,000万円
× 14.21%
600万円 - 3,000万円 < 0 で税金はかかりません!!
概算取得費(5%)で計算すると…
「概算取得費」とは何か…を解説しておきます。
購入した不動産の売買契約書を紛失してしまい、購入価格がわからなくなってしまった場合、売却金額の5%を購入価格として計算させられる…というルールがあります。これが「概算取得費」です。
数十年前は今とは貨幣価値が異なっていますから、不動産価格は現在のように高くありませんでしたよね。しかし、数十年前だったとしても「5%」とみなされてしまうと、利益が膨らみ過ぎてしまいます…(悲)
具体例を見る前にもう1つ。
購入価格がわかっていれば計算式は次の通り…
【土地・建物(購入価格) + 購入時諸費用 - 建物減価償却費 】
「概算取得費5%」で計算する場合は、購入時諸費用と建物減価償却費を含めて「5%」で計算することになります。
ということで、先ほどの具体例をイジって具体的に見てみましょう!
15年前に購入した新築一戸建てを4,500万円で売却しました。(この時にかかった売却諸費用は200万円)購入時の売買契約書を紛失してしまい、購入時の価格を証明する書類がありません。この場合、納税する税金はいくらになるでしょうか?
4,500万円
- 225万円( 4,500万円 × 5% )
- 200万円
- 3,000万円
× 14.21%
1,075万円 × 14.21% = 152万7,575円
概算取得費を選んでしまうと大変なことになりましたね!
前置きが長くなりましたけど、購入時の売買契約書を紛失したとしても、客観的にみて相当の根拠があると認められれば、( 土地 + 建物 + 購入時諸費用 - 建物減価償却費 )で申告することができる可能性があります。
というわけで…詳細を解説していきます!
税務署が信憑性あり!と認めてくれるかもしれないケース
方法1…
手付金・残代金の支払い履歴を通帳の出金履歴で証明できる場合。謄本の所有権移転時期などと出金時期が一致していれば、このお金は不動産を購入するのに使ったんだな!と認めてくれそうですよね。
方法2…
住宅ローンの融資金が振り込まれた履歴が通帳にあり、その後の住宅ローン返済状況が確認できる場合。数千万円のお金が口座に振り込まれ、そこから毎月決まった日にちで引き落としされていれば、不動産購入で住宅ローンを組んだんだろう…と推測できますね。
ただし…自己資金をしっかり準備して購入していた場合、借りた金額分しか証明できない可能性もありそうです。それでも「5%」よりかはマシだと思います。
方法3…
住宅ローンを借りるために金融機関と締結した契約書(金銭消費貸借契約書)や、住宅ローンの返済予定表などがある場合も、借りた分だけは証明できますね。
方法4…
謄本(登記事項証明書)の権利部「乙区」に抵当権設定金額が記載されている場合も大丈夫でしょう。方法2・3と同様に借りた金額までの証明になります。
なお、事業を行っている借主さまが設定する「根抵当権」の場合は証明になりません。根抵当は「極度額」を設定するものですから、根抵当権設定額 ≠ 住宅ローン借入額である点に注意が必要になるとのことでした。(税務署へ電話相談したことがあります。)
方法5…
購入時の販売図面・価格表が残っている場合。マンションであれば分譲時の価格表を不動産屋さんが取得できることが多いです。全てのマンションで見つけられるわけではありませんので、ご自身で保管していないか…再度の確認をお願いします。
以前、弁護士先生から依頼された相続案件では、先生から分譲時価格表を請求されたことがあります。まぁ…これで証明できそうではありますけど、分譲時価格を上げた(新価格)・下げた(値下げ)というのも見ますから注意は必要だと思います。
「地価公示」「市街地価格指数」「建物の標準的な建築価額表」を利用して計算する方法
土地については、一般財団法人 日本不動産研究所が公表している「市街地価格指数」や、国土交通省が公表している「地価公示」を基にして計算することもできるそうです。
例えば、昭和50年の地価公示が1㎡あたり150,000円で、売却した平成30年は1㎡あたり600,000円だったとします。売却金額が80,000,000円(8,000万円)だった場合、購入時の金額はいくらだったと想定できるでしょうか…?という考え方をします。
購入時と売却時を比べると…150,000円 ⇒ 1600,000円ですから4倍になっていますね。ということは、購入時は8,000万円の1/4で2,000万円だっただろう…という感じになります。
ここで注意が必要なことをお伝えしておきましょう。
「市街地価格指数」は「全国」「六大都市」「東京限定(昭和60年~)」とうい3つがあります。昭和50年の東京都の物件だと「東京限定」がまだないため、「全国」「六大都市」を使うことがあるかもしれません。
しかし…これを使用するのはやめた方が良いそうです。東京23区などは高度経済成長に地価が大きく上昇しているため、購入時の価格が高く算出されやすいのです。購入時の価格が高くなると売却利益が減りますから、税務署は「脱税」を指摘してくる可能性があるわけです。
裁判でも否定された事例があるようですから、税務署からも否定される可能性が大いにある気がするんですよね~~
あくまで、上記の5つのケースを補完する目的で使用する程度にしましょう。
次は建物。国土交通省が公表している「建物の標準的な建築価額表」を参考に計算します。
前の記事でも書きましたけど、「建築年・建物構造」ごとに1㎡あたりの金額が記載された表になります。標準的なものになりますから、グレードが高い建物や、大手ハウスメーカーが建築した建物の場合は金額が安くなりすぎてしまうという欠点があります。
参考記事…
最後に…
「概算取得費5%で計算しても、3,000万円控除があるからいっか。」そうやって簡単に考えたらダメですよ!!
「3,000万円控除」は「住宅ローン控除」と選択適用ですから、「3,000万円控除」を使ったら「住宅ローン控除」は使えなくなってしまいます。数百万円の節税に繋がる可能性があるわけですから、税理士先生・税務署へ相談して、できるだけ概算取得費を使わずに済む方法を探してくださいね。
皆さまの不動産売却がうまくいくように祈っています!!
追記…
この記事に記載した内容に対する個別具体的なお問い合わせは…「税金のプロ」へお願いします。この記事は「不動産取引のプロ」として勉強した内容をまとめただけであり、ゆめ部長には、個別具体的な案件へ回答するだけの知識・資格がありません。税金に関する相談は税理士先生・税務署にお願いします!
“不動産の「悩み・不安・怒り」を解消するぞー✨ のお役立ち情報をツイート ✅ホンネで語るよ ✅業界の裏側…コッソリ教えるよ ✅役立つ知識を集めて発信するよ ✅さんへ優しく解説するね ✅ガンバル不動産屋さ…
— name (@yumebucho) YYYY年MM月DD日