日本の不動産仲介は国際的ルールに合わせて変わる!?囲い込みと両手仲介をなくそう
日本の不動産取引がアメリカ型に変わっていく…この流れはこれから加速していくはずです。そこで、日本の不動産取引の問題点、なぜ、アメリカ型に変わっていくのか、そして、アメリカの不動産がどのように行われているのかについて、まとめてみたいと思います。
参考記事 : 「囲い込み」とは?
ブログ執筆:「上級宅建士・ゆめ部長」
日本の不動産取引(仲介)の問題点
日本の不動産取引の問題点をいくつか挙げてみます。
■ 物件情報が完全に公開されていない!
■ 販売されている不動産の情報が少ない!
■ 悪しき慣習「囲い込み」が残っている!
■ 宅建士でなくても仕事ができてしまう!
■ 不動産屋さんに継続学習する習慣がない!
パッと挙げただけでも、これくらい思いつきます。
実際、ゆめ部長が東京都で不動産売買の仕事をしていると、大手仲介会社も含めて、両手仲介をするために囲い込みをするのが常態化しています。
売主さまから不動産の売却依頼を受けると、その情報を自社で囲い込み、不動産屋さんのネットワークを使わず(つまり、レインズに登録しないってこと)買主さまを自分で見つけ出そうとします。
その結果、少ない購入希望者の中から買主さまを探すことになり、競争が起こりづらく、高値成約を目指せません。
この行為は、依頼者である売主さまへの「背信的行為」であり、絶対に許されることではないと言えるでしょう。
また、不動産屋さんのレベルが上がらないことも大問題です。
不動産取引は確実に難しくなっています。
直近の話題だけでも…
■ 民法改正(瑕疵担保責任から契約不適合責任へ!)
■ 建物状況調査(インスペクション)のあっせん
■ 水害リスク情報の説明義務
■ 羽田空港の新ルート
■ 消費税増税による税制改正
■ 建築基準法の細かい改正
法律・税金・建築・地域情報など、
いくら勉強しても追いつかない状況です。
他にも、住宅ローン商品の多様化があります。
各金融機関の審査基準もどんどん緩くなり、金利や団体信用生命保険の特約内容の競争も激化し、住宅ローン専門でやらないと全く追いつけないのでは…と感じています。
それでも、不動産屋さんは勉強していません。
宅建士に合格しない人がいまだにいますし、宅建士でも継続学習はしていないようです。少なくとも、ゆめ部長の周りを見てみると、日々の業務に忙殺されてしまい、積極的にセミナー参加・専門書での勉強・資格取得などに時間を費やす人は少数派です。
これで、高額な不動産を取り扱う資格があると言えるのでしょうか…?
不動産取引にもAIが導入され、少しずつ、誰でもできる簡単な作業は日々の業務から削減されていきます。そうすると、宅建士が生き残るには、次のような役割が求められるはずです。
■ コンサルタント
■ アドバイザー
■ ネゴシエーター
この役割を宅建士が果たせるのか??
おそらく難しいでしょうけど、時代には求められることです。さぁ、どうしたものでしょうか…。
ここからは、不動産取引の悪しき慣習が改善を求められるであろう理由と、アメリカ型に変わっていく不動産取引がどうなるのか…アメリカの不動産取引を勉強しながら考えていきます。
不動産取引も国際的ルールとの整合性が求められている
TPP・TFA・EPAなどにより、不動産取引を含むあらゆる経済取引がグローバル規模で自由化され、海外企業との取引が増大しつつある現在、日本独自の不動産取引の慣行「両手仲介」や、これまで積み重ねられてきた判決の論理は、国際的な観点から見直されるようになるかもしれません。
■ TPP(Trans-Pacific Partnership Agreement)
環太平洋パートナーシップ協定
■ FTA(Free Trade Agreement)
自由貿易協定
■ EPA(Economic Partnership Agreement)
経済連携協定
参加した勉強会で習ったこと…
2020年4月の民法改正は、海外企業との取引に備えることも目的の1つだと考えられます。また、英語に翻訳しても明晰さを失わない民法があれば、海外企業が日本企業と取引する際に、日本法を準拠法として使用しやすくなる、そんな効果を見込めるようです。
しかし、せっかく民法を改正したのに、日本独自の不動産取引の慣行である「両手仲介」がネックとなり、外国人・外国企業との不動産取引が増加しない可能性があると考えられます。
なぜなら、アメリカの多くの州で「両手仲介は禁止」ですから、日本で不動産取引を行う外国人・外国企業からすれば、そんな契約は認められない!と主張されるかもしれないからです。今後は「両手仲介」が批判され、改善を余儀なくされる未来が待っているのかもしれませんね。
外国人・外国企業が、日本での不動産取引に対して積極的になれない理由は、両手仲介だけではありません。
主要な不動産流通団体が提供している不動産売買契約書類が統一化されていないことにも問題がありそうです。「全日」と「FRK」は似ていますが「全宅」は内容が少し異なっています。契約不適合責任の定め方も異なるため、どの団体に所属している不動産屋さんと契約するかで、契約内容・結果が変わってしまうのです。
この点、国土交通省から書式統一化の話が出たようですが、団体間での話がうまくまとまらず、民法改正後の書式もバラバラになっています。
外国人・外国企業は契約書を重視しますから、今後は国際的なルールとの関係で調整していく必要があるでしょう。なお、アメリカでは業務効率化のために共通契約書が使用されているそうです。
主要な3つの不動産流通団体…
■ 全日(ウサギ)
■ 全宅(ハト)
■ FRK(大手)
次に、アメリカ型の不動産取引について見ていきます。
今後は当事者の合意を重視する英米法系の法体系・制度になっていくと言われていますので、アメリカ型の不動産取引を学んでおく必要があるでしょう!
アメリカの不動産取引(仲介)
アメリカの不動産取引を簡単に解説しますね。
アメリカでは不動産の売却情報が一元化され、誰でも閲覧できるようになっています。
アメリカ最大の不動産業者団体である「全米リアルター協会(NAR = National Association of Realtors)」が管理するMLS(Multiple Listing Service)という物件情報のデータベースがあり、ここには、ほとんどの物件が登録されているようです。
一部、MLSに登録しないことがあるみたいなので、MLSの原則・例外・理由をチェックしてみましょう。
MLSの原則
物件の販売開始後、24時間以内に登録
例外【1】
販売開始前(=MLS登録前)であっても
「Coming Soon」という形で告知可能
⇒MLS未登録でも販売できる
例外【2】
売主の許諾があればMLSに登録することなく
販売を進めることは可能 (Pocket Listings)
これらの例外を利用してMLSに登録しない2つの理由…
理由【1】
両手仲介をしたい!
理由【2】
ユニークな物件情報として競合差別化に活用したい!
アメリカでもこのような取引が残っているんですね…。
勉強させてもらったページ…
米国不動産テックを震撼させたMLS新ルールとその影響を徹底解説
このMLSはUI(User Interface)が悪いため、物件検索で利用するユーザー・エージェントは少ないようです。
アメリカではMLSを通じて物件情報が複数のポータルサイトへ掲載されています。つまり、MLSにしっかり情報が登録されれば、ポータルサイトへ情報が転載され、ユーザーが物件を検索しやすくなっているわけです。
なお、各ポータルサイト「Zillow(ジロー)」「Redfin(レッドフィン)」などは、物件情報だけでは差別化できないため、価格査定情報・エリア情報などのオリジナルコンテンツをサイトで提供することでユーザーを獲得し収益化しています。
そもそも、MLSは、日本のレインズ(REINS)とは比較できないほど情報が充実しています。広さ・築年数・駅距離などの簡単な情報だけでなく、登記情報・過去の売買履歴・修繕履歴・災害リスクなども掲載されていますから、ポータルサイトのコンテンツと併せれば、かなり充実した情報を入手したうえで不動産売買を検討できる環境が整っているということですね。
次に、不動産取引に係る専門家について見てみましょう。
アメリカでは、ほとんどの不動産取引で、売主さま・買主さまの双方に別々の不動産屋さんが付いてサポートします。さらに、第三者のエスクロー会社が決済事務などを担当する分業制になっています。
そして、日本で問題視されている「両手仲介」については、州によってルールが変わっているのですけど、半分くらいの州では禁止されているそうです。許容されている州でも制限が定められているので下記3つの制限を見てください。
制限1…ニューヨーク州など
両手仲介を行う際には、売主さま・買主さまの双方に「両手仲介である」ことを伝えなければダメ!
制限2…コロラド州,メリーランド州など
同一人物による両手仲介は禁止だけど、同一支店内・同一会社内で売主さま・買主さまをそれぞれ別人物が担当するならOK!
制限3…フロリダ州など
売主さま・買主さまのどちらの立場にも立たないならOK
なお、仲介手数料は売主さまが6%を支払い買主さまの負担はありません。この6%を売主さまを担当する不動産屋さんと、買主さまを担当する不動産屋さんで分け合うのが一般的な仕組みです。
他にも次のような専門家が係わります。
■ 弁護士
■ モーゲージ・ブローカー(住宅ローン)
■ アプレイザー(不動産鑑定士)
■ ホームインスペクター(住宅診断士)
■ エスクロー・オフィサー
■ タイトルカンパニー(所有権移転など)
日本では専門家と相談しつつ宅建士が取引を進めますが、複雑化する不動産取引においては、やはり、専門家が最初から係わるのが前提になっている方が良いと思います。日本の不動産取引もアメリカのような仕組みになってほしいなぁ。
不動産屋さんの違いもチェックしてください!
日本では、国家資格の「宅建士」でなくても不動産仲介の仕事ができます。重要事項説明などだけ宅建士に対応してもらえれば、その他の業務は全て宅建士でない不動産屋さんが行えてしまいます。
そして、宅建士は事務所に5人に1人以上いればOK…。
一方のアメリカでは、資格がなければ不動産取引の仕事ができません。
「Salesperson」の上級に「Broker」があります。
「Broker」は Pre-License Educationを受講して
全米リアルター協会の会員になることで
「Realtor」を称することができるようになります。
医者・弁護士と並ぶステータスを持つ「Realtor」は、3年で45時間の講習を受けなければいけないそうです。
宅建士にも上級資格が2つあります。
■ 宅建マイスター
■ 不動産コンサルティングマスター
ゆめ部長はどちらの資格も保有していますが、
正直、どちらもマイナーです。
お客さまも全然知らない資格でちょっと悲しい…
社会的ステータスがないこともやる気が起こらない原因なのでしょうか??
いや…。きっと、これはプロ意識の問題ですよね。Twitter見てると「宅建士より稼げる営業マンの方が偉い!」なんて不動産屋さんのツイートをよく見るし。
今日はこのあたりで終わりです。
アメリカの不動産取引の見習うべき点・問題点を探り、不動産テックの最前線も勉強してみたいです。インプットしたら、少しずつ、記事を書いてアウトプットしていこうと思います!!
最後に…
日本の不動産取引に悩み続ける毎日。
アメリカで1度 働いて見たかったなぁ~
英語だけでも勉強しておけばよかった…残念(涙)
今からでも英語の勉強は遅くないだろうけど、不動産のこと、勉強したい内容が山積み過ぎて英語の勉強にまでは手が出せそうにないから仕方ないですね。
40歳にもなってアメリカで働くのは厳しいから、日本の不動産取引を良くしていけるような活動に時間を使っていこうと思います。国際的ルールに合わせようとすれば、きっと、問題が噴出するはず。その時に現場の最前線で働く宅建士として問題解決に尽力できたら嬉しいです。
よし、今日も深夜まで勉強を楽しむぞ!
ということで、本日の記事はここまでです。
いつも最後まで読んでいただきありがとうございます。
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