高齢者を狙ったマイホームの「押し買い(訪問購入)」被害が増えています!
高齢者を狙った「押し買い(訪問購入)」が問題となっているのを知っていますか?「押し買い」とは、買取相談・査定相談を受けていないにもかかわらず、自宅へ訪問して強引に買い取りする悪徳営業のことをいいます。この「押し買い」がマイホームでも行われていますので、Webページで注意喚起することにしました。
2022年9月6日追記…
マイホームの押し買い問題が周知されてきたからでしょうか…??この記事を読んでくれた方からの売却相談や、テレビからのお問い合わせが来るようになりました。どんどん情報が拡散されていくことで、被害者が増えないように祈っています。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
マイホームの「押し買い」を知っておこう
「マイホームの押し買い」は、高齢者に狙いを定め、相場よりかなり安い価格でマイホームを買い取ってしまう悪徳営業のことです。
悪徳業者は、売却相談を受けていないにもかかわらず、言葉巧みに訪問のアポイントを取り付けてきます。「売却しない!」と伝えても、諦めずに繰り返し訪問してきます。そして、何度も顔を合わせている内に「断りづらい雰囲気」を作り出し、少し隙を見せた瞬間に詰め寄り、いつの間にか売買契約を結ばされてしまいます。貴金属・着物・骨董品・自動車などが狙われてきましたが、最近は不動産も狙われるようになったそうです。
「押し買い」が悪徳営業であることは、これでわかったと思います。ここからは、ゆめ部長が「マイホームの押し買い」に関する記事を執筆するきっかけになった出来事をお話しながら、この問題について解説していきますね。
2021年のある日、ゆめ部長に相談メールが届きました。「両親が押し買いの被害に遭い、マイホームを売却する契約をしてしまいました。契約を解除したいのですが、どうしたらいいかわからないので相談に乗ってください。」との内容でした。
相談してくれた息子さんと何度かメールのやりとりを行い、後日、ご両親の自宅へ訪問してお話を聞いてみました。押し買い営業を受けた経緯、契約までの流れ、契約内容、売却動機などをヒアリングしてみたら、完全に不要な契約であることがわかり、その汚い手口に強い憤りを感じました。そこで、本来の業務外にはなりますが、相談者さんと一緒に早期解決を目指して動くことにしました。
悪徳業者側の動きが悪い上にしぶとく抵抗され、半年近くかかってしまいましたが、一応の解決ができましたので、事例の情報をボカしながら皆さまへお話します。
なお、この記事は、相談者さんの承諾・協力を得て、同じ被害に合う人を減らしたい!という想いからの注意喚起と、被害に合ってしまった人が解決の糸口をつかむヒントにして欲しいな…そんな想いを込めて執筆しました。
それでは、早速、相談事例を見てください。
ゆめ部長への相談事例
被害に合った不動産の概要は次の通りです。
■ 築40年以上のマンション
■ 神奈川県(人気駅・駅近)
■ 高齢のご両親が居住中
■ 相場は3,500万円~4,000万円
次は、相談事例の経緯をまとめます。
ある日の午前中。突然、ご両親が住んでいるマンションへ「自宅を売却しませんか?」との営業電話がかかってきました。不動産以外にもいろんな営業電話がかかってくるため、なぜ、電話番号を知っているのか?そんなことには疑問を持たず対応してしまったそうです。
自宅を売却するつもりがなかったため、「売却は考えていませんよ。」と伝えたました。ところが、とりあえず話だけでも聞いて欲しいとお願いされ、断りづらくて「話を聞くだけなら…」と訪問を承諾してしまいます。
その日の午後に2名の営業マンが訪問してきました。玄関口で話をするのかと思ったら、室内へあがってきて、「コロナ禍で不動産価格が上昇しているため売り時である」・「築年数が経過しているマンションだから価値がなくなる」・「60年持ったマンションは日本中で一軒しかない」・「50年で建て替えるのが一般的だからこのマンションは長く持たない」「生産緑地の2022年問題で今後は価値が下がるため2021年中の売却が最後のチャンス」など、売った方が良い理由を長々と説明してきたそうです。数時間話を聞かされたものの、なんとか、この日は帰ってもらいました。
ところが、その後も「住み替え先を探してきました!」など訪問理由を作っては家の中に入り込んできます。「お子さんの近くに住んだ方が安心なのでは!?」「お孫さんの顔を毎日見られたらうれしくないですか?」そんな話を聞かされ続けている内に洗脳され、「そろそろ売った方が良いのかもしれないなぁ」と考えるようになっていました。
そして、ついに、ご両親が折れてしまう日が訪れます。
しつこく訪問を繰り返されたある日、「このマンションを売ってください!!」とお願いされた時に、「いくらくらいで買ってもらえるの?」と聞いてしまいました。営業マンたちはこの隙を見逃さず、ここから、一気に話を詰めていきます。
営業マンから「2,000万円くらいですね。」と提示されたので、「購入した金額の2,500万円以下じゃあ売りたくないね。」と答えました。これで諦めてくれるかな?と思っていたのに、「それなら、すぐ上司に相談します!!」と言ってスマホを取り出し、ご両親の隣で会社へ電話をかけ、「なんとか金額を上げてください!」なんて話を始めてしまいました。
「いくらで購入したいのか?」その金額を聞いただけであり、「売却する」とは言っていないにもかかわらず、いつの間にか、2,500万円だったら売却することにされて話が進められていきます。きっと、被害に合ったご両親からすれば、何が起こっているんだ?という感じだったのではないでしょうか…。
ちなみに、相談者さんが近隣の不動産屋さんへ査定を依頼したところ、複数の査定結果が3,500万円~4,000万円なら売れるとのことでした。そうすると、最初の2,000万円で合意していたら、相場よりも40%~50%も安い金額でマイホームを奪われるところだったわけですね。こういうのって詐欺罪で捕まえられないのでしょうか??
話を戻します。
そして、10分たった頃に営業マンの電話が鳴りました。上司からの電話です。少しだけ話をした後に「ありがとうございました!」と嬉しそうな声で上司からの電話を切った営業マンは「上司が緊急会議を開いてくれまして、社内で検討したところ、2,500万円なら購入できるそうですよ!良かったですね!!」と伝え、今度は別の人に電話をかけました。すると、30分も経たない内に別の社員が売買契約書を持って訪問してきました。
またまた余談ですけど…
30分で契約書を作り、印刷して、持参することはできません。おそらく、予め契約書を作ってあり、近くで待機していたのでしょうね。それと、上司への相談も事前に仕組まれたものだと思います。劇場型犯罪ってこういう感じなのでしょうか?
わからないので話を戻します。
あれよあれよという間に話が進んでいくことに思考が追い付かなかったご両親。訪問から売買契約が終わるまでの5時間…ずっと休む暇もなかったそうですから、頭がボーッとするのは当然です。これも、彼らの作戦なのでしょう。気が付いたら、売買契約書に署名・捺印してしまっていたそうです。
後日、ご両親が息子さんへ電話をかけて相談したことで押し買いの被害が発覚。息子さんからゆめ部長へメール相談が届いたわけです。
相談を受けた時、すでに売買契約から2週間以上が経ち、手付解除期日を過ぎた後でした。このままでは、売買契約書通りに「違約解除」するか「契約履行(=引き渡し)」することになりますが、「違約解除」だと売買契約金額の20%が違約金となり損失が大きすぎますし、「契約履行」だと住む家がなくなってしまいます…。ゆめ部長は宅建士であって弁護士ではありませんから、解決策を一緒に探すことしかできませんが、できる限り力になってあげたいと思いました。
ここから、ゆめ部長が解決方法を探し、相談者さんと一緒に解決していく過程を書いていきます。
売買契約の解除方法について解説します
ゆめ部長が不動産取引の相談窓口に電話しました。4つの窓口でヒアリングした内容をまとめてみます。
【1】東京都庁 指導相談担当
「宅地建物取引業法」に違反しているかどうか…について相談できる部署です。
宅地建物取引業法は、売主である宅建業者に必要な規制をかけることで買主を保護する法律ですから、今回のように、宅建業者が買主であり、宅建業者ではない売主(ご両親)との売買契約においては宅建業法違反を問うことができないと言われてしまいました。
さらに、重要事項説明書の説明が不十分だったことについて「説明義務違反」を問うことは難しく、また、手付解除期限が2週間しかないこと、違約金が20%と高額であること、高齢者との契約について当日中に契約したことなどについても、宅建業法違反ではないため、この部署で指導対象事案として取り扱うことはできないそうです。
電話に出てくれた担当者さんが「それは…押し買いですね。」と理解してくれ、弁護士先生の無料相談を紹介してくれました。
東京都庁 不動産取引紛争の民事上の法律相談
電話番号:03 – 5320 – 5015
対象は都民限定です。
【2】不動産適正取引推進機構
不動作取引に関して情報発信している団体です。
「裁判になれば契約無効となる可能性は高そうに感じられる。相手の業者がどう出てくるかはケースバイケースであり、たまに裁判で戦おうとする会社もいる。契約自由の原則があるとは言え、公序良俗に反する契約内容であるため、高齢者の意思確認が不十分などの理由で契約無効を争えるかもしれない。ただ、簡単に判断できる内容ではないため、弁護士先生への相談を勧める。」とのことでした。
高齢者が意思能力を欠く状態で締結した契約は無効にできる可能性があるため、この点について相談員さんからヒアリングされました。しかし、ご両親はしっかり話ができますし、悪徳業者には、売買契約時点で判断能力があったことをビデオカメラで撮られているため、意思能力がないことを理由にするのは難しいだろうと伝えました。なお、複数回、自宅訪問を許してしまったことは不利に働くそうです。
【3】不動産流通推進センター
ゆめ部長が保有している「宅建マイスター」などの資格を管理している団体です。
「押し買いのトラブルは最近増えている問題だから、都庁が対応してくれないのであれば、消費者センター または 弁護士先生に相談するべき。」との回答でした。
【4】消費者センター
不動産流通推進センターのアドバイスに従い、消費者センターへ相談してみました。ところが、売買契約が成立してしまっている状況のため、消費者センターができることはないとの話でした。また、「クーリング・オフ」は買主を保護する制度のため、売主には適用されないとの説明がありました。
結論としては、高齢者の判断能力不足による契約解除、クーリングオフ、宅建業法違反による解除などで争うのは難しいため、弁護士先生へ相談するしかない。とのことでした。悪徳業者は法律の穴をしっかり理解した上で狙ってくるということですね…。
弁護士先生への相談に関するお話をする前に、もう1つ、不動産取引に携わる者として考えられないことが起こりましたので、ここに書き残したいと思います。
司法書士も悪徳業者の言いなり(怒)
悪徳業者がこのままご両親と話をしてしまうと、勝手に手続きを進められるかもしれない…そんな危機感をもった息子さんは、「契約を解除する方向で検討していますので、今後のやりとりについては、両親ではなく自分へ連絡してください。」と伝えました。
ここで、悪徳業者は焦ったのでしょう。
司法書士を通して信じられない内容の書類・案内をご両親へ郵送してきました。
「不動産売却手続用委任状」という題名で、売買代金振込確認・所有権移転登記関係書類の授受 および この書類への署名捺印・その他付帯する一切について司法書士へ委任するという内容です。しかも!!「登記済権利証」 および 「印鑑証明書」の 原本 を郵送するように記載されていました。
もし、この書類を全て郵送してしまっていたら、悪徳業者が売却決済・登記手続きを勝手に行うことができてしまいます。それほど、重要な書類なのです!!おそらく、「売りたくない!契約を解除したい!」と伝えたから、それを阻止するために、司法書士へ売却手続きを委任させ、息子さんの知らないところで引渡手続きを進めようとしたのでしょう。
司法書士はご両親と1度も面談していないし、電話で売却意思確認も行っていないにもかかわらず、委任状と原本郵送の案内を送ってきました。こんなことをして、この司法書士は懲戒処分を受けないのでしょうか?問題が解決しなかった場合は、司法書士会・法務局へ問い合わせするつもりでした(怒)完全にプロ失格です!
弁護士先生へ依頼した結果について…
弁護士先生から悪徳業者へ受任通知を内容証明で郵送した後、合意解除に向けて話をしたい旨、連絡してもらいました。
ゆめ部長としては、預かっている手付金だけ返還して終わりにする「白紙解除」が妥当だと考えていました。相手の出方によっては、最悪、手付金額分だけ負担する「手付解除」でも仕方がないのかな…という意見です。
ところが、悪徳業者は「白紙解除」どころか「手付解除」も認めず「違約解除」を主張してきました。その後、何度かやり取りをしていった結果、違約解除は諦め、「手付解除」で合意することになりました。
ご両親は100万円の手付金を返還し、さらに100万円支払いました。つまり、100万円 + 弁護士先生への相談費用(約70万円)が損失になったということです。大きな損失ではありますが、悪徳業者は20%の違約金(2,500万円×20%=500万円)を請求してきましたから、傷口を小さく抑えることができたのかもしれません。
ご両親は大きな損失が出てしまいましたけど、悪徳業者へ振り込んで契約解除できた日から落ち着いて眠れる生活に戻れたそうです。
プチ解説…
ご両親の負担を解除の種類で比較すると ⇒
白紙解除:負担なし
手付解除:100万円マイナス
違約解除:500万円マイナス
参考記事…
裁判になってしまった場合 ⇒
次の点をしっかり説明して、説明義務違反による契約解除(詐欺取消)、公序良俗違反による契約解除を主張する予定でした。
■ ご両親に売却を急ぐ理由がなかった
■ 売却すると住む場所を見つけるのに苦労する
■ 売買契約が相場よりも安すぎた
ゆめ部長のコメント…
これはゆめ部長の勝手な思い込みかもしれないですけど、弁護士先生は、最初から「白紙解除」で話をする気がなかったのではないかな…と思っています。早く、楽に終わらせるために、最初から悪徳業者が譲りやすい条件で交渉を進めていたような気がするのです。もちろん、裁判になったら大変ですから、この判断が間違っているとは言えません。ただ、本当に悩み苦しんでいる依頼者に寄り添っていたのか…と言えば、答えは「NO」だったのではないでしょうか。弁護士先生は最後の砦。勇気を振り絞って相談しているわけですから、頼れる存在であってほしいと願います。
国民生活センターからの注意喚起
全国の消費生活センターへ不動産の押し買い相談が寄せられているため、2021年6月24日、独立行政法人・国民生活センターから注意喚起がされました。
詳細は次のページを確認してください ⇒
高齢者の自宅の売却トラブルに注意-自宅の売却契約はクーリング・オフできません!内容をよくわからないまま、安易に契約しないでください-
グチばっかりで申し訳ないですけど、「押し買い」という言葉があるのであれば、もっと高齢者を保護する策を考えて欲しいです。法律違反をしていない悪徳業者はお咎めなしで、マジメな人・優しい人が騙されて傷ついていく…こんなの絶対におかしいと思います。
【 参考 】
もし、ちゃんとした不動産屋さんに売却を任せたい!と考えているなら、ゆめ部長の「真っ直ぐ不動産」が作った売却サービスを見てください。売主さまに寄り添ったサービスとはどんなものなのか?よくわかると思います。(営業しているようで申し訳ないです…。)
最後に…
正義が勝ち、悪が懲らしめられる世の中ではありません。法律も不動産関連団体も善良な人を守ってくれるわけではないみたいですし、最後の砦である弁護士先生も親身に相談に乗ってくれる先生ばかりではありません。(なんか、寂しいですね。)
両親が高齢であれば、家族が守ってあげるしかない!ということが今回よくわかりました。良い人ほど、優しい人ほど悪徳業者に狙われて騙されます。判断能力がなくなっているからではなく、人の善意につけこむ手口なのです。ウチの両親は認知症の疑いもないくらい元気だから大丈夫だよ!と安心したらダメなのです。
「家を買いたいって不動産屋が来たんだよ。」と電話を1本くれるだけで、悪徳業者の未遂で終わらせることができますよね。この記事を読んでくれた人に高齢のご両親がいるなら、今すぐに電話して、「不動産の押し買い」について話してもらえたら…と心から願います。
というわけで、今日のお話はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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