不動産を売却した利益に対する税金が安くなる3つの特例を解説!
前回の記事「 不動産を売却して利益が出た時の税金を宅建マイスターがわかりやすく解説します! 」では、譲渡所得税の計算方法を簡単に解説しました。
基本的な計算式は「 課税譲渡所得金額 × 所得税と住民税 」でしたね。
「課税譲渡所得金額」という「税率をかける元となる部分」を安くするために、不動産売却の利益から購入時と売却時の諸費用を引くことができ、条件を満たせば3,000万円を控除できるという解説をしました。
さらに、所得税と住民税の税率が3段階に分かれているということもお伝えしてあります。覚えていますでしょうか…?
今回は「3,000万円控除」と「所得税・住民税の軽減税率」について詳しく取り上げ、要件・注意点などをまとめておきます。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
不動産(マイホーム)の売却益にかかる税金を安くする3つの特例
居住用財産…つまりマイホームですね。これを売却して利益が出た場合の特例を3つ確認しましょう。損失が出た場合の2つの特例は別の記事で解説します!
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
あ~長ったらしくて嫌ですよね。税金の特例のタイトルを見ただけで眠くなります。「~の」「~の」「~の」特例みたいなネーミングがイライラします (笑)
でも、税金を安くしてくれる特例なので、ここはグっと我慢しましょう。
この特例は、マイホームを売却して利益(譲渡益)が出た場合、この利益に対して税率をかけるのではなく、3,000万円引いてから税率をかけてもいいよ!というものです。つまり、この特例を利用できれば、利益が3,000万円までなら、所得税・住民税は課税されなくなるんですね!
10年超所有軽減税率の特例
所得税と住民税は、売却する不動産をどれくらいの期間所有していたのかで税率が変わることを前回の記事で解説しました。
居住するためではなくて、利益を上げるために短期間保有して不動産を売却するなら(投機目的)、税率を高くして税金をたくさんかけちゃうけど、10年以上所有していたなら、逆に税率を下げてあげよう!という優しい特例です。
特定居住用財産の買換え特例
マイホームを買換えした場合… つまり、マイホームを売却して、さらにマイホームを購入した場合で、「売却価格 < 購入価格」になるなら、売却したときに出た利益への課税をしないでおこう!という制度です。
この特例は…正直なところあまり使わないのではないかと思います。なぜなら、税金を払わなくて済むのではなくて、課税を先延ばしするだけの特例だからです。(課税の繰り延べ)
そして、この特例は上記の3,000万円控除の特例と併用できません。
3,000万円控除を利用して税金を納めておいた方がお得な場合が多いはずなので、この特例を利用するケースは限定的なはずです。例えば…事業を行っている人で、その年の所得を減らしておきたい理由がある人など。
単純に、3,000万円控除の特例と比較して「どっちがお得なの…?」なんて計算をしている記事もありますけど、「非課税」ではなく「先延ばし」するだけである点に注意してください。非課税になると信じてしまうと、損をしてしまう可能性があります。
なお、この特例はあまり使わないのに計算がわかりづらいので、別の記事で解説します。今回は1つ目・2つ目の特例に集中しましょう!
というわけで、2つの特例を詳しく解説していきますね。
参考記事…
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
前回の記事をちょっと思い出しておきましょう。
譲渡所得税(不動産を売却して出た利益に課税する所得税と住民税)の計算式は、利益から諸費用を引いて、建物減価償却費を足して、特別控除を引いてから税率をかけるんでしたよね。
不動産を売却したお金
- 土地購入価格
- 建物購入価格
- 購入の諸費用
- 売却の諸費用
+ 建物減価償却費
- 特別控除
× 所得税・住民税
ココの項目で解説するのは下から2番目の「特別控除」に関してです。特例を受けるためのポイントをまとめますので確認していきましょう。
■ 現在、主として住んでいる自宅(マイホーム)を売却
居住用財産の特例ですから、事業用はNGです。
■ 居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売却
例えば、海外赴任していた3年間は賃貸に出していたけど、子どもが増えたので、帰国後に売却して住み替えることになった場合ならOK!ということです。
表現がわかりづらいですけど、住民票を移転してから3年後の年末までに売却の契約をできるかどうかで考えてください。
■ 家屋を取り壊した場合なら、住まなくなってから3年後の年末までの範囲内で、取り壊した日から1年以内に土地を売却する契約を締結
居住用財産なので建物がないと居住用ではありませんよね。でも、解体してから一定期間内であれば、居住用財産として3,000万円控除してくれるわけです。ありがたい!
建物解体後の土地を賃貸その他の用に供した場合は特例は使えない!という条件に注意してください。更地で放置しておくのがもったいないからって100円パーキングとかにしたらアウトです!
■ 転勤で単身赴任している場合で、配偶者などが居住している不動産を売却
単身赴任先で居住用不動産を購入しているなど、2件所有しているなら主として利用している方だけしか利用できません。
■ 共有の居住用財産を売却した場合は、共有者の持分の範囲内でそれぞれ適用できる
例えば、夫4/5・妻1/5ずつ所有していた居住用不動産を売却したら利益が5,000万円出たとします。この場合の計算式は…
夫:5,000万円×4/5-3,000万円=1,000万円 ←ここに課税
妻:5,000万円×2/5-3,000万円<0 非課税!
■ 住宅ローン控除との重複適用は不可!
この要件は重要ですね。マイホーム売却で利益が出て買換えをするなら、3,000万円控除と住宅ローン控除を税理士先生に計算してもらいましょう。
住宅ローン控除は、消費税が課税される物件だとMAX400万円ですけど、宅建業者ではない個人が売主で消費税が課税されない物件ではMAX200万円になります。この点は注意が必要です。
売却時はご主人が住宅ローン控除・奥さまが3,000万円控除を利用するようにアドバイスした案件もありました。
■ 売却する相手が配偶者、親・子などの直系血族、生計を一にする親族、同族会社等ではないこと
■ 居住期間・所有期間は制限なし!
他の特例の要件とごちゃ混ぜになりやすいですよね。
■ 1年前・2年前にこの特例を受けていないこと
「連年適用の制限」と言います。
10年超所有軽減税率の特例
「10年超所有軽減税率の特例」の要件は、先ほど長々と書いた「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と同じです。
異なるのは所有期間です。「10年超」と言っていますからね!
売却した年の1月1日において、所有期間が10年を超える土地・建物の譲渡なら税率が次のように下がります!
■ 保有期間10年超
・利益6,000万円以下の部分…
所得税 10.21% 住民税 4% 合計 14.21%
・利益6,000万円超の部分…
所得税 15.315% 住民税5% 合計 20.315%
■ 保有期間が5年以下(短期譲渡所得)
所得税 30.63% 住民税 9% 合計 39.63%
■ 保有期間が5年超(長期譲渡所得)
所得税 15.315% 住民税5% 合計 20.315%
ちょっとわかりづらい部分を解説しますね。
「売却した年の1月1日において、所有期間が10年を超える」という表現がわかりづらいと思います。
これは、「お正月を11回迎えているかどうか?」と置き換えてください。余計なことは考えず、11回のお正月を数えてみましょう!
そしてもう1つ。「譲渡」はいつが基準になるのか?です。
「譲渡」というのは、売買契約日・引渡日・引越日のどれなのさ…?と疑問になりますよね。このあたりの解説が不十分だからわかりづらくなるのだと思います。
これは、「契約日」でも「引渡日」でもOKです。原則は「引渡日」ですけど、例外として「契約日」を譲渡した日として構いません。
「取得日」は原則通り「引渡日」
「譲渡日」は例外規定で「契約日」
こんな選択をしても良いそうです。なお、建築中の物件や注文建築などの場合は、原則通り「引渡日」に取得したことになりますのでご注意ください。
最後に…
「不動産を売却して利益が出たら40%も税金で取られるって本当ですかー?」という質問がよくありますけど、この記事を読めば大丈夫ですね!
3,000万円控除を利用できれば、まぁ、通常は課税されないでしょう。
最後に「3,000万円控除」と「所得税・住民税の軽減税率」で特に気を付けて欲しいことを書いておきます。
■ 相続した不動産は取得費が安いから3,000万円控除しても課税されるかも!
■ 住宅ローン控除との選択適用になる!
■ マイホームが対象になる特例だってこと!
具体的な計算は「必ず」税理士先生・税務署へ相談してください。不動産屋さんが皆さまの税額を計算したら税理士法違反ですし、税法は複雑なので不動産屋さんが間違わずに対応するには無理がありますからね。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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