低廉(400万円未満)な空き家等の売却は仲介手数料が198,000円になる!?
価格が400万円未満の「低廉(ていれん)」な「空き家など」を売却する場合、不動産屋さんが売主さまへ請求できる報酬額が、「仲介手数料」と「物件調査費」を合算して「18万円+消費税(198,000円)」まで上げられる…という特例ができました。
不動産屋さんもよくわかっていないこの特例。ネットの記事を読んでも「あれ…?この解説間違っていないかな?」と思うものがありましたので、わかりやすく、まとめておきたいと思います。
仲介手数料を詳しく勉強したいなら…
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
低廉な空き家等の売却は報酬増額|最大198,000円
低廉(ていれん)というのは金額が安いということです。具体的には…400万円未満の不動産(空き家等)を売却するときのお話になります。「400万円のどこが安いんだ!」と怒られてしまうかもしれませんけど、不動産は金額が高い商品になりますから、一般的には400万円だと金額が安い…という評価になってしまうわけですね。
この特例により、不動産屋さんが「低廉な空き家」を売却するお手伝いをした場合、「売主さま」からもらえる最大金額は、既定の仲介手数料に調査費用相当額(人件費も含む)を加算した「18万円+消費税(198,000円)」になりました。
例えば、100万円の空き家で考えてみましょう。
今までの規定では「100万円×5.5%=55,000円(税込)」が仲介手数料の上限となっていました。ところが、この特例ができたことで、不動産屋さんは最大で198,000円(税込)受領できるようになり、報酬が143,000円ほど増えたわけです。
200万円なら … +8.8万円
300万円なら … +4.4万円
400万円なら … ±0万円
では、なぜ、このような特例ができたのでしょうか??
不動産屋さんの報酬(仲介手数料)は、物件価格が高ければ高いほど上がり、物件価格が低ければ低いほど下がってしまいます。
具体例を見てみましょう。
不動産売却のサポートをした時に、売主さまからもらうことができる仲介手数料額は次の通りです。(消費税率10%で計算)
200万円 … 110,000円
300万円 … 154,000円
400万円 … 198,000円
1,000万円 … 396,000円
5,000万円 … 1,716,000円
1億円 … 3,366,000円
不動産取引の仕事は、金額が高いから難しくて、安いから簡単だという関係にはありません。逆に金額が安い物件の方が難しくて、5,000万円前後の新築一戸建てなどは簡単かな…と言えるくらいです。それにもかかわらず、200万円の不動産と1億円の不動産では、報酬額が30倍以上も変わっていますね。
5,000万円の不動産であればニコニコお手伝いできるけど、300万円の物件だと「できたら契約したくない…」と考えてしまうことは、ある程度は仕方がないお話だと思います。なぜなら、物件調査費用や人権費などを考えると、売却をサポートした不動産屋さんが「赤字」になってしまう可能性すらあるわけですからね…。
しかし、このように不動産屋さんが消極的になってしまうと、不動産の「流通性」が下がってしまいますし、売りたい人・買いたい人の需要を満たすことができなくなります。
そこで、100万円・200万円・300万円などの空き家を売却する場合であれば、売主さまからもらえる報酬は「仲介手数料」だけではなく「現地調査等の費用」も請求できるようにしよう!ということになったわけです。
【参考】仲介手数料の計算式
200万円まで … 物件価格×5.5%
200万円~400万円 … 物件価格×4.4%
400万円超 … 物件価格×3.3%
物件価格が300万円なら(200万円×5%)+(100万円×4%)で14万円と計算します。ちなみに、毎回わけて計算するのはメンドウなので、物件価格が400万円以上なら「速算式」を使います。速算式は「物件価格×3%+60,000円(税別)」です。
増額対象は400万円未満の「低廉な空き家等」を売却する売主さまだけ!
この特例にはいくつか要件が定められています。わかりやすく箇条書きにしながら一緒に確認していきましょう。
要件1
低廉な「空き家等」の売買であること。
要件2
通常の売買契約と比較して現地調査等の費用がかかること。
要件3
仲介手数料以外に調査費用を請求できるのは売主さま限定であること。
要件4
報酬額について売主さまへ説明・合意しておくこと。
さらに、国土交通省が定めた包括的なガイドライン「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」には次のように書かれています。
■ 買主には現地調査等を請求できない
■ 現地調査等の費用には人件費も含む
また、公益財団法人 不動産流通推進センター 不動産相談「低廉な空家等の売買取引における媒介報酬額の特例」を読んでいたら次のように書かれていました。
仲介手数料以外に受け取る報酬額について、あらかじめ売主さまへ説明して合意するという要件を満たすために、媒介契約書を締結する際、「売主さまは、現地調査等に要する費用相当額を支払います。」と記載するのが望ましい。
言った・言わないというトラブル防止のためには必要な措置ですね。
ちょっと注意喚起だけしておくと…
金額が安い不動産ほど、不動産屋さんの対応が雑になる可能性が高くなります。たとえば、売買契約の当日に媒介契約書へ署名捺印を求め、その中にコッソリ「調査費用を支払う」という文言を盛り込まれている可能性があるかもしれません…。本来は売却を依頼した時に締結する書類ですからね。気を付けてください。
不動産屋さんはこの特例を理解できていない…?
この特例…実は多くの不動産屋さんがちゃんと理解できていません。
なぜそう思うのか…というと、ゆめ部長が執筆した記事を読んでくれた人からの質問メールがいくつか届いたので読んでみたら、不動産屋さんの対応が間違っていることが判明した案件がいくつかあったからです。
例えば、こんな質問がきました。
土地を購入しようとしています。200万の土地で仲介手数料が19万8,000円、この中には調査費や広告費が入ってると言われました。私の認識では、200×5%+消費税で11万円が上限だと考えていますけど間違っていますか…?
これは、不動産屋さんが間違っている…という結論なのですが、どこが間違っているのか?皆さまならわかりますよね。
「買主さま」には調査費用を請求できません!不動産屋さんがこのお客さまへ請求できるのは、通常通り「200×5.5%(税込)」だけになります。19万8,000円まで請求できるのは「売主さま」だけなので注意しましょう。
報酬額アップは空き家問題対策につながる
物件価格が400万円未満の不動産は日本中にたくさん存在しています。ゆめ部長のように、東京23区をメインにしている会社では目にすることが少ないですけど、地方には売りたくても買い手が見つからない低廉な不動産がありあまっています。
実際、「空き家問題」は多くの人が知っていますよね?人口が減少し、都心へ人口が集中しているため、地方には住む人がいなくなり、放置されている空き家がたくさん存在しているのです。
2013年時点のデータでも日本の空き家は820万戸あり、空き家率は13.5%でした。現在は1,000万戸を超えているでしょうし、空き家率は30%台になる…そんな予測もあると聞いたことがあります。
空き家は、犯罪防止・自然災害の防災対策・近隣トラブル防止のためにも数を減らしていくべきです。そのために、空き家を求めている人へ所有権を移転し有効活用することを検討しなくてはいけません。
その対策の1つとして、請求できる報酬額を上げることで不動産屋さんのモチベーションを上げるために報酬額の改定を行ったのでしょう。
宅建業法の条文もチェックしましょう!【参考】
宅建業法第46条(報酬)第1項には次のように定められています。
宅建業者が宅地または建物の仲介をした際に受け取れる報酬額は「国土交通大臣」の定めるところによる。
で、国土交通大臣は「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号)において、仲介手数料額の「上限」を定めています。
200万円までは 【5.5%】
200万円超~400万円以下は【4.4%】
400万円超は 【3.3%】
この定めの一部が、2017(平成29)年12月8日に改正され、低廉な空き家については、不動産屋さんが売主さまからもらえる報酬額は「18万円+消費税(198,000円)」が最大となったわけです。(48年ぶりの改正)
宅建業法が改正されたのかと思っていましたけど、こうやって調べてみると、宅建業法の改正ではないようですね…。ブログ記事を書くって、勉強になります。
ゆめ部長が考える仲介手数料の適正化
正直、低廉な空き家等の報酬額に関する特例ができたとしても、不動産屋さんがやる気になって流通性が上がるほどの影響力があるとは考えられません。
この特例は「売主さま」だけですから、「買主さま」から受領する報酬には変わりがありません。そもそも、遠方で現地へ行くのも大変なわけですから、調査費用だけ請求できたとしても、仕事量に対する報酬としては十分なものにはなりえません。
仲介手数料を「制限」されてきた不動産業界ですから、このような特例ができたことは、最初の一歩・小さな変化としては歓迎すべきことだと思っていますけど、まだまだ不十分だと思います。
これからは、高すぎる仲介手数料は値下げをして、安すぎる仲介手数料は値上げをすることで、消費者であるお客さまと不動産屋さんの双方が納得できる報酬制度へと変えていくべきなのです。
ゆめ部長は「仲介手数料の適正化」をこれからも求めていきたいと考えています!
最後に…
「不動産屋の報酬が上がるなんて…とんでもないことだ!!」と考えていた人も、この記事を読んだ後なら、「まぁ、ちょっとくらい上がるのは仕方がないかもね。」と考え直してもらえたんじゃないかな?と思います。
不動産屋さんの報酬は現在のルールに縛られるべきではない!ゆめ部長のこんな考えが少しずつ拡散され、議論が進んでくれたら嬉しいです。
追記…
仲介手数料が198,000円になったわけではないので注意してください。増えたのは「仲介手数料」ではなく「物件調査費」だけですからね。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
“不動産の「悩み・不安・怒り」を解消するぞー✨ のお役立ち情報をツイート ✅ホンネで語るよ ✅業界の裏側…コッソリ教えるよ ✅役立つ知識を集めて発信するよ ✅さんへ優しく解説するね ✅ガンバル不動産屋さ…
— name (@yumebucho) YYYY年MM月DD日