マイホーム(不動産)の持分を適当に決めたらダメ!贈与税を課税されない持分の決め方を解説!
マイホームを買うときは多額の資金が必要になります。住宅ローンを組んだり、夫婦で自己資金を出したり、両親から援助を受けるなどの方法でお金を集めることが多いでしょう。このとき「マイホームを誰がどれくらいの割合で所有するか?」を決めなければいけません。これが「持分」です。
この記事では、贈与税を課税されない「持分の決め方」の【基礎知識】をお話します。
簡単な案件であれば、この記事を読むだけで持分を決められるようになると思います。しかし、複雑な案件にまで対応できる内容ではありませんので、少しでも疑問が生じた時は、必ず、税務署または税理士先生へ確認してくださいね。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
「持分の決め方」を誰も教えてくれない理由
この記事を読んでいる人は、「持分を決めて連絡してください。」と言われたけど、「持分の決め方」を誰も教えてくれない。どうしたらいいの…?と悩んでいるのではないでしょうか。
こんな大事そうな内容を「自分で決めてください」と突き放されてしまえば、戸惑ってしまうのは当然のことだと思います。ゆめ部長も「ヒドイ!」と思いますよ。
そこで、この記事では、持分の計算方法だけでなく、こんな悩みが生じる原因、持分を適当に決めてしまったケースなどを紹介します。皆さまの悩み・怒り・不安を解消できるようにわかりやすくお話しますから一緒に勉強してみましょう!
まず、この悩みが生じる理由を説明しますね。
驚くかもしれませんけど、実は、不動産屋さんも「持分の決め方」がよくわかっていません。営業マンとして30年仕事をしている先輩も詳しくは知らないようでしたから、持分の計算方法を教えてくれるわけがないのです。さらに「持分はどうしますか?」と聞いてくる 銀行・司法書士先生 も教えてくれません。
なぜでしょうか…。
これは税法が絡むからです。税金は税法のプロにしか理解できないような仕組みになっていますから、間違って教えてしまうことで責任を負わされるのを恐れているのです。それに、具体的に税額を計算してしまえば「税理士法違反」に問われる可能性もありますからね。だから、宅建士は税法を積極的に勉強しないですし、銀行・司法書士先生は計算方法を知っていても法令遵守の立場で教えてくれないわけです。
ゆめ部長は、こんな消極的な姿勢でお客さまを悩ませたらダメだと考えています。
宅建士が「具体的な持分を計算する」のはNGです。でも「持分の決め方」をわかりやすく説明するだけなら問題はありません。計算方法だけわかりやすく説明しておけば、お客さまが「これは税務署・税理士先生に聞かなきゃダメだな。」という判断をしやすくなり、次の行動を起こしやすくなります。
宅建士が専門家へスムースに橋渡しできるように、最低限の内容を事前に説明することはできるはずであり、それがお客さまに求められているサービスだと思います。
勉強不足を突っ込まれないように、税理士法を都合よく持ち出すのではなく、お客さま目線で考え、必要な情報を提供できる宅建士を目指してほしいですね。
持分の計算方法をチェック
マイホームを共有名義で買うときは持分を決めなければいけません。この持分は登記事項証明書(登記簿謄本のことです。)に記載されますから、契約が終わったら、なるべく早く決めるようにしてください。計算式は次のようになります!
持分 = 自己資金 + 住宅ローン / 物件価格 + 諸費用
計算式キライ!という人は既に拒否反応があるかもしれませんね…。わかりやすくするために具体例を出しながら解説しますので、一緒に頑張って勉強していきましょう!
※ 念のため、税務署に計算方法を確認してあります。
持分計算の具体例
具体例1
ご主人名義の通帳から1,000万円、奥さん名義の通帳から300万円を支払い、残りの4,100万円をご主人が住宅ローンを組みました。
物件価格 :5,000万円
諸費用 : 400万円
夫の通帳 :1,000万円
妻の通帳 : 300万円
住宅ローン:4,100万円
ご主人の持分…
1,000万円+4,100万円/5,000万円+400万円
= 5100/5400
奥さんの持分…
300万円/5,000万円+400万円
= 300/5400
このとき、ご主人の持分を5100/5400にすると、登記事項証明書にこの数字が記載され、どれくらいの金額で買ったか予測できてしまいます。この登記事項証明書は誰でも他人の物を閲覧できますから、できれば、約分して数字をボカしておきましょう。
では、実際に約分してみますよ。
5100/5400ですから、
5100÷5400×100で計算すると、
ご主人の持分割合が94.4%となります。
94.4%は 約19/20(95%)ですので、
これくらいに丸めて良いと思います。
ちなみに…
18/20 =9/10 (90%) はダメです。
5,400万円×(94.4%-90%)=約240万円を
奥さんへの贈与とみなされ、
税率が高い贈与税が課税されるからです。
そこで、毎年110万円までは税金なしで贈与できる制度(暦年課税の基礎控除)を前提にして、110万円の範囲内で丸めるようにしてください。
今回の事例では…
19/20=95%ですから、
5,400万円×(95%-94.4%)=324,000円となり、
110万円の範囲内に収まります!
この事例を厳密に計算すると、奥さんからご主人に0.6%分の324,000円を贈与していることになりますが、この分を確定申告する必要まではないでしょう。税務署はとてつもなく忙しいですからね。
具体例2
次の事例は、奥さまも住宅ローンを組む場合です。ご主人名義の通帳から1,000万円出し、住宅ローンを半分(2,200万円)ずつペアで組みました。
物件価格 :5,000万円
諸費用 : 400万円
夫の通帳 :1,000万円
夫の住宅ローン:2,200万円
妻の住宅ローン:2,200万円
ご主人の持分…
1,000万円+2,200万円/5,000万円+400万円
= 3200/5400
奥さんの持分…
2,200万円/5,000万円+400万円
= 2200/5400
次に、約分してみます。
ご主人の持分が 3200÷5400×100 で
約59.3% = 3/5(60%)になります。
110万円の範囲内かを確認すると…
5,400万円×(60%-59.3%)=378,000円
セーフですね!
奥さんは残りの 2/5(40%)で問題ないでしょう。
持分を適当に決めているケースが驚くほどある!
ゆめ部長のお客さまの話を紹介します。
大手分譲の新築マンションを数年前に購入しましたが、転勤が決まって売却することになった案件でした。売却を任せてもらえることになり登記事項証明書を取得したら、持分が夫婦それぞれ1/2ずつになっていました。
すぐに「あれ…おかしいぞ…」と気が付きました。
ご主人は年収1,000万円オーバーでしたが、奥さんは年収300万円台。物件価格は8,000万円を超えますから、奥さんが自己資金を多く出さない限り、持分を1/2も持てるわけがないからです。
お客さまに「贈与税が課税される可能性がある持分設定ですけど大丈夫ですか?」と質問したところ、「担当者が1/2ずつでいいと言っていたんだけど…何かマズイことがあるの?」と不安そうな顔になってしまいました。
参考情報の追記 1 …
このマンションは売却中止になってしまい、サポートはできなかったのですが、売却することになった場合は、司法書士先生に「所有権の持分の更正登記」を依頼した方が良さそうです。住宅ローンの融資を利用していたので、おそらく、金融機関の承諾も必要になるのがメンドウかもしれません。「融資を実行する金融機関が気が付かなかったの?」とか「住宅ローン控除申請時に指摘されなかったの?」とか、いろいろ疑問が浮かびます…。(追記終わり)
分譲会社は財閥系の大手でした。税金関係でわからないことがあれば、すぐに税理士先生へ確認できる環境にあるにもかかわらず、こんな適当な持分設定をしてしまっていたのです。
持分の計算方法は銀行では教えてくれず、銀行担当者は不動産屋さんがアドバイスするように求めてきます。銀行は自分たちで責任を負いたくないからそうするのでしょうけど、不動産屋さんに任せたらもっと危ないことは知っているはずなんですが…。
結果、不動産屋さんが「夫婦で半分ずつにしたらいいんじゃないですか?」なんて適当なことを言ってしまうのでしょう。
この例はレアケースではありません。税務署に見つかれば贈与税を課税される危険がありますから十分に注意しましょう!!
なお、持分を決める場合は年収の割合を基準にしておくことをお勧めしています。ただし、奥さんがいずれ産休・育休・転職・退職を考えているのであれば、贈与税が課税されないように奥さんの持分は少なめにしておいてくださいね。
参考情報の追記 2 …
奥さんが育休後に復職しようとしたら、保育園に空きがなく職場復帰できなかったとします。そうすると、奥さまは収入がない状況ですので、奥さま単独の資産がなければ、ご主人が奥さんの住宅ローンを肩代わりすることになります。
この肩代わり分は贈与です。ただし、年間110万円までは非課税で贈与できますから、110万円÷12ヶ月で約9万円までならセーフになりそうですね。奥さまの住宅ローンが毎月9万円を超えることはあまりないとは思いますけど、超える場合は奥さまが贈与分を確定申告した方がよいでしょう。
まぁ、ここまで税務署が調査するかはわかりませんけどね。
この記事の内容は一般的なことですから、個別具体的な案件に関しては責任を負えません。必ず、専門家に相談するようにしてください!
自己資金になるもの・ならないもの
持分を計算する際に「自己資金」として扱えるもの・扱えないものがあるので注意してください。
よくある相談を1つ紹介します。
結婚前に奥さまが働いて貯金したお金があります。奥さまは「私は持分なんていらないから主人の単独名義にしたい。」と言ってご主人名義の通帳に送金。そのお金を使ってご主人がマイホームを購入したいという相談です。
ここまで読んでくれたならわかりますね。これは、奥さま→ご主人への贈与となりますから、奥さまも持分を持たなければいけないケースになるわけです。
というわけで、扱えるもの・扱えないものに分けて見ておきましょう。
自己資金になるもの…
■ 給料を貯金
■ 相続した財産
■ 贈与税を支払って受け取った資金
■ 住宅ローンの借入金
■ 両親からの借入金
自己資金にならないもの…
■ 配偶者名義の預金
■ 親名義の預金
■ 義理の親からの贈与
※ 「おしどり贈与の特例」があります。
婚姻期間20年以上なら2,000万円まで贈与税なし!
持分を計算するときに「物件価格」「諸費用」になるもの・ならないもの
持分の計算では「物件価格」「諸費用」になるもの・ならないものがあります。しかし、ここまで細かく税務署が見ている暇はないはずですし、登記申請の段階で全ての諸費用が確定しているわけではありませんので、そこまで神経質になる必要はないと思います。
実際、下記のようにしっかり選別して持分を計算しているのを見たことがありません。心配な方は、税理士先生・税務署に計算してもらいましょう。
物件価格になるもの…
■ 土地と建物代金
■ 解体費用
■ 測量費用
■ 擁壁築造・整地などの費用
■ 設計費用
■ 増改築リフォーム費用
■ エアコンや給湯設備など建物に附属する設備
諸費用になるもの…
■ 税金(印紙税・登録免許税・不動産取得税)
■ 司法書士先生の報酬
■ 仲介手数料
■ 固定資産税と都市計画税の精算金
■ 住宅ローンの事務手数料
■ 住宅ローンの銀行保証料 (借入日~使用開始までの期間分のみ)
■ 住宅ローンの金利 (借入日~使用開始までの期間分のみ)
物件価格にも諸費用にもならないもの…
■ 火災保険料、地震保険料、家財保険料
■ インターネット加入料やCATV使用料
■ 管理準備金、管理費、修繕積立金
■ 引越費用
■ 家具や家電購入費用
■ 町内会費
■ つなぎローンの事務手数料と金利
「まとめ」で事例を見てみましょう
イメージを掴むための概算事例を見てみましょう。下記の事例でご主人が支払う諸費用分はいくらでしょうか?また、持分の割合はどうなるでしょうか?
新築一戸建て 物件価格:5,000万円
■ ご主人自己資金:500万円 + 諸費用分
■ ご主人住宅ローン:3,000万円
■ ご主人お父さんから借入:500万円
■ 奥さん自己資金:200万円
■ 奥さんお父さん自己資金:800万円
諸費用一覧…
■ 仲介手数料:165万円
■ 固定資産税と都市計画税精算金:10万円
■ 登記費用:60万円
■ 銀行事務手数料:3万円
■ 印紙代:3万円
■ 銀行保証料:60万円
■ 火災保険料:30万円
■ 家具家電購入費用:100万円
■ 引越費用:30万円
それでは、計算してみましょう。
まず、ご主人が物件価格に充当する500万円以外に支払う諸費用を計算します。上記の諸費用一覧を見ますと、仲介手数料~印紙代までが諸費用に含められる項目で、合計で約240万円となります。銀行保証料は数日分だけ諸費用に含められますが、通常は誤差の範囲ですので「約」240万円で吸収します。
次に持分を見てみます。
ご主人が自分のお父さんから融資を受けていますから、この分はご主人の自己資金として認められます。奥さんの自己資金は奥さんの持分に、奥さんのお父さんの自己資金は融資でも贈与でもないため、800万円分はお父さんが持分を持つことになります。以上のことから計算すると…
ご主人:500+3,000+500+240/5,000+240 = 4240/5240
奥さん:200/5240
奥さんのお父さん:800/5240
約分すると、ご主人81/100・奥さん4/100・奥さんのお父さん15/100になります。
税金に関することは税理士先生・税務署へ確認しましょう!
税金は本当に難しいです。税理士先生でさえ「不動産の税金は難しい」と言っていましたから、素人判断はとっても危険だと言えます!
税法は時限立法で期限が定められているものがあり、数多くの特例もありますので、不動産屋さんが対応するには無理があります。宅建士は税理士先生・税務署への橋渡しをスムースにすることまでが仕事になりますので、この点はあらかじめご了承ください。
不動産売買をするときは、必ず税理士先生・税務署へ相談に行くものだと考えておきましょう。相談するためのキソ知識をこのWebページで勉強してから相談に行くのもいいですし、ゆめ部長と面談して、ある程度内容を整理してから相談に行くのも良いと思います。
最後に…
この記事で学んでほしいことは次の3つになります。
■ 税金は複雑過ぎて不動産屋さんに聞くのはムリ
■ 税理士先生・税務署への確認は必須
■ 大手でさえ不動産屋さんのアドバイスは適当で危険
持分を考えて決めておけば、相続・離婚などでトラブルになる可能性が減ると思います。マイホームを買うときにイヤなことは考えたくないのは理解できますけど、自分を守るためにもしっかり勉強しておきましょう!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
参考記事…
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■ 2019年09月04日 更新
■ 2021年07月10日 更新
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