「物件状況報告書」を解説!虚偽記載は損害賠償!?
建物の不具合・周辺環境の問題・事件事故の履歴・物件資料の有無などを記載する「物件状況報告書」は、買主さまが購入する際に知っておきたい情報が満載の書類です。売主さまが販売開始前にこの書類と向き合い、しっかり記入することで、商品である不動産にどのような問題があるのかを把握できます。また、事前に物件資料をチェックすることでアピールポイントが見つかり、高値成約できる可能性を高められます。
売主さまにとっても、買主さまにとっても、重要な書類になる「物件状況報告書」について宅建マイスターが丁寧に解説します。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
「物件状況報告書」とは…?
「物件状況報告書」は、売買対象不動産について、売主さまだからこそ知っている内容を買主さまへ伝えるための書類になります。
物理的な不具合があればその状態を説明し、補修して引き渡すのであればその内容を記載します。もし、記載していない事項について不具合が判明した場合には、売主さまは買主さまに対して責任を負わなければいけません。(契約不適合責任免責でも隠していたことに関しては責任が生じます!)
しかし、予め伝えていた不具合に関しては「納得・了承して売買契約を締結した」わけですから責任は生じません。
なお、物理的な問題だけでなく、事件・事故などの心理的な問題や周辺環境に関する問題なども対象となりますので注意してくださいね。
ゆめ部長がいつも使っている物件状況報告書の「記入上の注意」を引用しておきます。ちょっと長いので、興味があれば…どうぞ。興味がなければ、紫の文字は飛ばして次にいってください!
公益社団法人全日本不動産協会の売買契約書では、売買契約締結後のトラブル防止や売主様が説明義務違反に問われないようにするため、売主様は、買主様に、売買物件について、売主様が知っている事柄やお伝えすべき事柄を本書「物件状況等報告書(告知書)」に記入して、説明いただくことになっています。
売主様には、本書を媒介契約締結後、速やかにご記入くださるようお願いいたします。また、本書の記載内容については、買主様だけではなく、購入検討のお客様に参考情報としてご提供させていただきますので、あらかじめご承知おき下さい。
本書は重要な書類ですので、下記内容を十分にご理解の上、記入漏れのないよう正確にご記入ください。
不動産売買契約では、売買物件の状況等が売買契約締結時にどのような状態であるのか、またどのような状態で買主様に引渡すかを明確にしておく必要があります。
特に既存物件(中古物件)の場合は、経年変化等により売買物件に損耗や不具合等が生じていることが一般的ですので、その状態を買主様に説明し、買主様はそれを了解してもらった上で取引することになります。
欠陥や不具合には、売買物件の物理的な欠陥や不具合だけではなく、「心理的影響があると推定される事実」についても、トラブル防止や売主様が説明義務違反に問われないようにするため、売主様が知っている事実を本書に記入して説明することが必要となります。
売買物件に欠陥や不具合があれば、本書にて買主様にあらかじめ説明することが必要です。売主様が知っていたにもかかわらず、買主様に説明しなかった欠陥や不具合については、不動産売買契約書に売主様がその責任を負わないという取り決めをしたとしても、、売主様に対して損害賠償請求等が発生し、トラブルになる場合があります。
売主様が知っている売買物件の欠陥や不具合を買主様に説明し、買主様がそれを知ったうえで売買契約を締結したときは、その説明した欠陥や不具合について売主様は責任を負う必要はありません(売主様が宅地建物取引業者の場合はこの限りではありません)。そのため、本書を通じて、できるだけ正確に買主様に説明することが、売主様にとって重要なことになります。
売主様が売買物件を相続等で取得し、実際に居住・使用したことがなく、売買物件の状況等詳細についてわからないといった状況である場合、売主様自身で現地確認や調査会社を利用して、本書を記入いただくことを推奨いたします。「確認困難なため「現在の状況」に記載せず」の説明をいただいたとしても、引渡し後、欠陥や不具合が発見された場合は、不動産売買契約の内容に基づき売主様が責任を負う場合があります。
物件状況報告書の記載事項
物件状況報告書は「マンション」と「土地・戸建」で記載事項が変わります。マンションであれば、管理費・修繕積立金・大規模修繕の予定などを記載しなければいけませんし、土地戸建であれば、越境・境界・ライフラインの配管状況・地盤・敷地内残存物などを記載しなければいけません。
マンションの大項目は…
■ 売買物件の状況
■ 管理費・修繕積立金等の変更予定および大規模修繕の予定等
■ 売買物件に関する資料等
土地戸建の大項目は…
■ 売買物件の状況
■ 売買物件に関する資料等
記載事項の詳細は下記の画像を見てください。
マンション用と土地戸建用の2種類があります。
民法改正で「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変更されたのに伴い、物件状況報告書の記載内容がだいぶ増えました。遅くなりましたけど、2020年8月に画像を変更しておきました。
【1】マンションの物件状況報告書
【2】土地戸建の物件状況報告書
物件状況報告書はいつ記入するべき?
「物件状況報告書」は「付帯設備表」と一緒に販売開始前に記入することを強くオススメしています。
売買契約の場で記入を求める不動産屋さんがとても多いのですが、その場ではわからないことも出てくることがあるため、このような対応は絶対にNGです!実際に記入してみると、おそらく、わかりづらくて困惑すると思います。
後回しにしたくなる気持ちは理解できますけど、付帯設備表と同じで物件状況報告書もトラブルの温床になっていますから、不動産屋さんに協力してもらいながら早めに記入してしまいましょう。
それともう1つ。
高額な商品を売却する売主さまの責任として、記載されている内容を予め調べ切っておくのはあたり前のことだと考えてください。この作業を通して商品を磨いていくことをイメージすれば、やる気がみなぎりますよね!
アドバイス…
不動産屋さんから「自分で書いておいてくださいね~」なんて言われたら、その不動産屋さんは断ってしまった方がいいかもしれません。やる気が感じられませんし、プロの仕事ではないと思います。仕事ができるかどうかの目安にもなるでしょう。
物件状況報告書は誰が記入するの?
(公社)全日本不動産協会の売買契約書第10条「物件状況報告書」には次のように記載されています。
売主は、買主に対し、本物件について、本契約締結時における状況を別紙「物件状況報告書(告知書)」に記載して説明します。
つまり、物件状況報告書の記載事項については、売主さまが買主さまへ説明する義務があることになります。
また、国土交通省が定めた包括的なガイドライン「宅建業法の解釈・運用の考え方」を見てみますと…
協力が得られるときは、売主等に告知書(物件状況報告書)を提出してもらい、これを買主等に交付することにより将来の紛争の防止に役立てることが望ましい。
「物件状況報告書を提出するのは売主さま」と記載されていますから、記入するのは売主さまの責任ということです。
なお、都庁に確認しましたら…
「付帯設備表」や「物件状況報告書」の作成は「仲介業務」ではないとのことでした。売主さまから書類作成を依頼されることがありますけど、「仲介会社であるゆめ部長が責任を負って作成する書類ではない。」ということを知っておいてくださいね。
とはいえ…
売主さまだけで記入するのはけっこう大変です。
物件資料・マンションの管理・境界に関することなどは、売主さまでも把握していないことが多いわけですから、不動産屋さんがサポートするべきだと考えています。
そこで!ゆめ部長は次のように対応しています。
お客さまと一緒に現地で書類を作成
↓
情報をエクセルでまとめる
↓
売主さまに最終確認をしてもらう
↓
契約時に綺麗な状態でお持ちする
説明責任を請け負うのではなく、
説明責任を果たすためのサポートです!
現地を一緒に確認できない場合は、ゆめ部長が現地で作成した書類をメールで送り、間違いがないかを契約日より前に売主さまにチェックしてもらうようにしています。
大手仲介会社との売買契約では「売主さまが直筆しないとダメ!」と言われることもありますけど、この対応はいかがなものか…と思っています。文字が小さくて見づらい書類ですし、書き方もわかりづらいですから、誤記入などでトラブルが起こらないような対応を心がけたいものです。
※ 複写式の場合は仕方ないですけど…。
物理的瑕疵(かし)だけでなく心理的瑕疵も記載する
建物の物理的瑕疵(かし)というのは、建物の故障不具合などのことです。雨漏り・シロアリ・給排水管の故障・腐食など、建物に発生している問題を買主さまへ伝えます。
瑕疵は物理的瑕疵だけではなく、心理的瑕疵も報告しなければいけません。心理的瑕疵というのは、事件・事故・自死(自殺)などのことです。
心理的瑕疵をどこまで報告するかは難しい判断ですが、知っている内容であれば、すべて書くべきだとゆめ部長は考えています。人によっては霊感が強く「目に見えないものが私には見える!」と主張されることもありますからね。
下記のような状況であれば、物件状況報告書への記載をお願いしています。
例1…
ご主人がお風呂で倒れ、救急車で運ばれた先の病院で亡くなられた。
例2…
近隣や同じマンション内で起こった重大事件・重大事故・自殺。飛び降り自殺は意見が分かれるところですが、知っていることは全て告げるべきです。亡くなった場所の特定ができない場合もありますけど、低層階の場合は気にする人の方が多いと言えます。
例3…
お年寄りが孤独死され、数か月後に遺体で発見された。既に建物が解体されていたとしても報告するべきです。
心理的瑕疵があっても、その後に何人か人が入れ替われば告知しなくてOKと考えている営業マンがいますけど、周知の事実であり、有名な話で風化していなければ告知するべきです。
近所でヒアリング調査しても何もわからなかったけど、情報通のおばちゃまだけは知っていた…という場合は調査しきれませんから、このような場合は、事件・事故・トラブルなどは「特になし。」という記載で良いでしょう。
参考記事…
環境に影響を及ぼす事項は必ず説明する
「近隣でタワーマンションが建築されるらしい…。」
「ゴミ焼却場が移ってくるらしいよ…。」
「道路が拡幅されて交通量が増えるらしいよ…」
こういう話は、居住者であれば噂を耳にすることがあるはずです。
「たまたま噂を聞いただけだから…」そんな言い訳は通用しません。皆さまが聞いたということは、周知の事実になっている可能性があります。買主さまが引っ越しをした後に「こんな有名な話を知らなかったんですか?」なんて言われたら…トラブルに発展しそうだと容易に想像できますよね?
こういう視点で記載するべきかを判断するとわかりやすいでしょう。
騒音・振動・臭気は人によって感じ方が違うからできるだけ記入する!
車・電車・船・飛行機・学校・公園・河川・海・宗教施設・工場・商業施設など、生活していると、いつの間にか気にならなくなっていることでも、新しく生活を始めた時は、騒音・振動・臭気などが気になってしまうことは十分にあり得る話です。
「現場を見たらわかるでしょ?」と言わず、メンドウでも報告しましょう。このような姿勢は、買主さまの印象アップにもつながりますよ!
マンションなら管理費・修繕積立金に関して内容を把握しておく
マンションの修繕積立金は年々高くなっていくものです。数年後に予定されている大規模修繕では積立金が足らず、管理組合が数千万円のお金を借り入れる予定があったり、一時金で数十万円~100万円程度の支出を求められている場合があります。
また、修繕計画を修正するために、数年おきに積立金額をアップすることもあります。マンションによっては、数年以内に2倍・3倍になることもありますから、報告しなければトラブルになるのは当然ですよね。
住宅診断・耐震診断・リフォーム履歴はアピールポイントになる
建物の状況を買主さまはとても気にしています。そのため、建物のメンテナンス履歴・リフォーム履歴があるのは大きなプラスポイントになります。また、住宅診断(建物の状況調査・インスペクションとも言います)や耐震診断をしていれば、その事実をしっかりアピールしましょう。
せっかく調査しているのに、何もアピールしていない不動産屋さんが多くいますけど、すごくもったいないと思います。高値成約を目指したいなら、積極的な情報開示をして、買主さまを安心させるようにしてください。
なお、旧耐震基準のマンションで耐震診断をした結果、耐震補強工事が必要だと判明した場合、その補修費用や補修工事の予定なども重要事項です。もし、補修が高額過ぎて管理組合が諦めているなら、必ず不動産屋さんへ相談しておいてください。
耐震性の不安だけでなく、住宅ローンが組めないかも…という問題も生じます。
虚偽報告・重要事項の不告知は損害賠償請求の対象になる可能性がある
売主さまの心理として「バレなさそうなら言いたくない。」と考えてしまうものです。その気持ち…わからなくはありませんが、絶対に隠すのはやめましょう。虚偽報告・重要事項の不告知は損害賠償請求の対象になる可能性があり、後々にトラブルになると大変です!
タワーマンションでの経験をお話すると…
タワーマンションなどの高層マンションでは、第三者が侵入して高層階から飛び降り自殺してしまうケースは意外と多くあります。不謹慎なことを言ってしまい申し訳ないですけど、エントランスで亡くなった場合はちょっとキツイですよね…。
このような事件事故が発生すると「エントランスの出入りでは、第三者が入ってこないように注意してください。」こんな注意書きが配布されることもあります。また、掲示板に張り出されたり、総会議事録に加筆されている場合もあります。
このような場合、売主さまがこの事件を本当に知らず「事件・事故は特になし。」と記載してしまったとしても、知らなかったことに責任あり!と判断される可能性があると言えます。
掲示板・配布物・総会議事録・臨時総会資料などは必ず目を通しておき、買主さまが気になりそうなことは物件状況報告書へ記載しておきましょう。
なお、しっかり物件状況報告書へ記載をして説明してあれば、売主さまは責任追及されずに済みます。自分を守るためにも頑張ってくださいね。
購入時の資料は全て揃えてから記入する
新築時に購入したのであれば、分譲時パンフレット・図面集・設計図書などの書類は全て不動産屋さんに見せてください。
ゆめ部長は、これらの資料を全てお預かりし、いつでもお客さまに提供できるようにPDF化しています。「鉄は熱いうちに打て!」です。興味を持ってくれたお客さまにアピールできる書類は完璧に揃えておくのがあたり前ですよね!
マンションであれば、管理規約・長期修繕計画・総会議事録直近3年分も集めましょう。集めた資料を確認しながら、物件状況報告書に詳細を書き込みます。
土地戸建なら、隣地や私道所有者と取り交わした覚書などがある場合もあります。また、ゴミ置場・町内会などもしっかり確認して書き込んでおくと、買主さまの安心感を得ることができますよ。
建設住宅性能評価書は大事!
建設住宅性能評価書というのは、建物の通信簿のようなものです。耐震等級が1・2・3など、項目ごとに等級を数字化して評価しています。
この書類があることで、税金の軽減を受けられたり、地震保険料の割引を受けられたりします。そのため、住宅性能評価制度を利用しているのであれば、アピールポイントになりますから、必ず準備するようにしましょう。
なお、紛失している場合は発行元に連絡することで再発行してもらえる場合があります。数万円の出費になりますけど、不動産は簡単に100万円単位で成約価格に差が出ますからお金をケチったらいけません!
最後に…
物件状況報告書の記入はちょっと大変に感じられると思います。でも、この作業を頑張れば、トラブル防止・お客さまの信頼獲得・アピールポイントの整理に役立ちますから、前向きな気持ちで頑張ってくださいね!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
参考記事…
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