不動産売買の「持ち回り契約」を解説!
不動産の売買契約は、売主さま・買主さまが不動産屋さんの店舗に集まって行うのが一般的です。しかし、売主さまが遠方に住んでいたり・入院していたり・ご年配で移動が難しいということもありますし、お互いに、仕事・子ども・介護などで忙しいこともあるはずですよね。
このような場合、売主さま・買主さまが別の日程・別の場所で売買契約を行うことになります。このような売買契約方法が「持ち回り契約」です。この持ち回り契約には注意点がありますので、トラブルを防止してリスクを避けるために勉強しておきましょう!
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
不動産売買契約の成立要件
最初に不動産売買契約のキソ知識を確認しましょう。
実は…不動産の売買契約は「買います」「売ります」という話だけでは成立しません。民法の定めだと、意思が合致するだけで契約は成立しますけど、不動産の売買契約ではそうはいきません。
売買契約の成立要件は2つあります!!
■ 売主さま・買主さまの署名・捺印
■ 手付金の授受
持ち回り契約の場合は、手付金が振込になる場合があります。振り込みする時は着金確認できた日にちを契約成立日としますので、売買契約書の日付欄は空欄にしておくことになります。
ちなみにですけど…
弁護士先生が書いた書籍、宅建士講習のテキスト、Webページを見てみると、契約成立時期は個別具体的に判断されることが多いようです。売買契約書に記載した日付が契約成立日にならないこともありますから、争いになったら弁護士先生に相談するしかありません。もっと、ズバッと明確に定めて欲しいものですね。
参考記事…
売主さま・買主さまが署名捺印する順番も大事
持ち回り契約は、不動産屋さんが、売主さま・買主さまの自宅へ訪問することもありますし、別の日程で店舗へ来てもらうこともあります。
ここで1つ問題があります。
それは…「どちらが先に署名捺印するのか?」問題です。
「都合が良い方から署名捺印をもらえばいいじゃん。」と言う不動産屋さんもいますけど、実はこれ、大事な問題なのです。
■ 買主さまが先の場合
■ 売主さまが先の場合
2パターンに分けて、持ち回り契約の流れを解説しますね。
【1】買主さまが先に署名捺印する場合
買主さまが先の場合…と書きましたが、ゆめ部長は、売主さまが先に署名・捺印をしないと、その持ち回り契約をお断りすることにしています。
その理由を解説しますね。
売主さまは、不動産という高額な商品を売却することで、高額な手付金・残代金を受領する立場になるため、自分が本物の所有者であることを証明しなければいけません。
自分が所有者であることを証明する方法は次の通りです。
売買契約書には実印を押印し、下記資料のコピーを買主さまに提示することで所有者であることを証明します。
■ 権利証(または登記識別情報通知)
■ 実印と印鑑登録証明書
■ 運転免許証またはパスポート
■ 住所移転していれば住民票
権利証は所有者が持っている大事な書類ですし、印鑑証明・住民票・運転免許証は公的資料で信頼度が高いですよね。
【補足1】
持ち回り契約では、権利証(または登記識別情報通知)の原本を持ち運びできませんので、売主さまを担当する不動産屋さんが責任を持って原本確認を行い、必要書類の写しを保管しなければいけません。
【補足2】
住所移転している場合、1回の引越なら「住民票」、複数回の引越をしていれば「住民票の除票」を取得して住所移転を追って確認しましょう。
次に、上記書類を使って本人確認を行う手順をみてください。
売買契約書へ捺印している印鑑の印影
⇒ 印鑑登録証明書の印影確認
⇒ 住所・氏名確認
印鑑登録証明書・運転免許証・売買契約書で一致を確認
本人がいないため顔写真との照合は省略
⇒ 権利証で不動産の表示・住所・氏名が合っているかを確認
こんな流れになります。
このような作業を怠った結果、偽物の売主だと見破れず、手付金詐欺にあったら大問題ですよね。
不動産売買の持ち回り契約では、不動産屋さんが売主さまの本人確認と所有者確認を行い、売主さまが売買契約書へ公的書類と一致する住所と氏名を記入し、実印を押印した後でなければ、買主さまは署名捺印・手付金支払いをしたらダメ!ということを覚えておいてください。
参考記事…
【2】売主さまが先に署名捺印する場合
正しい順番通りに、売主さまが先に売買契約書へ署名する流れを確認しましょう。なお、この項目は、ゆめ部長が売主さま・買主さまの両方を担当する「両手仲介」前提で読んでください。
STEP.1…
売買契約書の内容を不動産屋さんと一緒に確認します。ゆめ部長が担当する場合、日程や金額の部分を中心に説明しますが、どんなに短くても、説明だけで30分は時間がかかりますのでご了承ください。
STEP.2…
重要事項説明書・売買契約書だけでなく、付帯設備表・物件状況報告書へ署名・捺印をいただきます。その他に、私たちが保存する書類(個人情報同意書・顧客カード・仲介手数料支払約定書)などにも署名捺印をお願いします。
【補足1】
共同仲介の相手が大手仲介会社の場合、FRKの書式を使うため、付帯設備表と物件状況報告書は売主さまの直筆で作成しなければいけません。記入する時間で30分くらい追加で見ておいてください。
【補足2】
売買契約書には印紙を貼付して消印をしなければいけません。持ち回りをする数日の間に、買主さまの気が変わってキャンセルされる可能性がゼロではありませんので、心配な場合は印紙をお預かりすることもあります。なお、売買契約書の作成を1通にして印紙代を折半する場合、印紙をどちらが購入するか、売主さまの消印は必要か、なども相談しておきましょう。(印紙税の節約パターンはオススメするのを止めました。)
STEP.3…
買主さまから受領する手付金に対する領収証を作成します。この領収証を不動産屋さんに預けるのはNGです。必ず、預り証を発行してもらってください。
手付金受領の流れは次の通りです。
作成した領収証は不動産屋さんが預かります。不動産屋さんは、買主さまとお会いして契約書類に署名捺印をいただいたら、手付金受領と引き換えに領収証を交付します。この手付金を持って再度訪問しますので、預り証と現金を交換させてください。
なお、手付金を振込にすることもあります。
この場合の流れは…
売主さまが契約書類に署名捺印
⇒ 買主さまが契約書類へ署名捺印
⇒ 売主さま指定口座へ手付金振込
⇒ 買主さまへ領収証を郵送 または 不動産屋さんがデリバリー
この流れになるのが一般的だと思いますが、ラクしたい不動産屋さんは手続きを省略することが多い印象なので注意してくださいね。
共同仲介(仲介会社が2社以上)だと…ややこしくなる!
共同仲介というのは、2社以上の不動産屋さんが共同して売買契約を成立させるケースです。売主さまをゆめ部長が担当し、買主さまを別の不動産屋さんが担当する場合などを考えてください。
この場合は次のような流れになります。
売主さま担当:ゆめ部長
買主さま担当:仲介会社
■ ゆめ部長が売主さまから書類を受領
■ ゆめ部長が手付金領収証に対する預り証を発行
■ ゆめ部長が仲介会社に書類を持参
■ ゆめ部長が手付金領収証に対する預り証を受け取る
(仲介会社からゆめ部長へ発行されます)
■ 仲介会社が買主さま訪問
■ 仲介会社が買主さまから書類と手付金を受領
(仲介会社は手付金と手付金の領収証を交換)
■ 仲介会社が書類と手付金をゆめ部長へ持参
■ 書類受取・手付金と手付金領収証の預り証を交換
■ ゆめ部長が売主さまを訪問
■ 手付金と手付金領収証の預り証を交換
ちょっとわかりづらいですよね…。
領収証は「預り証」の発行なしで受け取れません。ゆめ部長が売主さまから手付金の領収証を受け取るときに「預り証」を作成し、他社さんへ手付金の領収証を渡すときにも「預り証」を作成してもらうことになります。
この流れを理解していない不動産屋さんが多くて、説明するのも、協力してもらうのも少し大変です。
そして、書類のデリバリーも結構大変な作業になります。
このように、持ち回り契約は通常の契約よりもかなりメンドウです。その結果、不動産屋さんはなんとかしてラクをしようとします。不動産屋さんがメンドウだと思うことで皆さまが無駄なリスクを負わされるかもしれない…そんな事実も知っておいてくださいね。
2020年4月12日追記…
共同仲介で持ち回り契約をする場合、このように領収証や契約書類のやり取りが複雑になります。そこで!ゆめ部長が売主さまをサポートする場合、できるだけ買主さまの契約にも同席することにしました。不動産屋さん同士が面倒くさがり、作業の押し付け合いをするのはイヤなものですから…。
持ち回り契約のリスク
ゆめ部長は「不動産売買での持ち回り契約」はリスクが高いと考えています。
直接会ってお話をすれば簡単に解決できたことなのに、持ち回り契約にしたことで後々トラブルになってしまうことがあります。特に、付帯設備表は「そんなこと聞いていない!弁償しろ!」というトラブルリスクが「極めて高い」書類なので要注意です。
また、先ほど説明した通り、運転免許証の顔写真と出席した本人の顔が同じかを確認できないため、詐欺に合うリスクも高くなると言えますね。見ず知らずの人に大金を支払うなんて、ゆめ部長はイヤなのですが…皆さまはどうでしょうか?
心配な場合は、信頼できる不動産屋さんへ依頼しましょう。
大手仲介会社ならかなり安心できるはず。もし、小さい会社だったとしても、ゆめ部長のように、実名・顔出しで情報発信しているなら安心できます…よね??
2020年7月17日追記…
ゆめ部長 :買主さまを担当
勉強しない不動産屋さん:売主さまを担当
この場合、次のようなリスクもありそうです。
持ち回り契約ではゆめ部長が売主さまと面談しないため、高齢者の売主さまが認知症だったとしても、それに気が付くチャンスがありません。もし、判断能力がなかったと認定されてしまえば、売買契約が取り消される可能性があります。つまり、購入したマイホームから出て行かなければいけないのです。
仲介をした不動産屋さんに対して、善管注意義務違反で損害賠償請求できるとは思いますけど、それでも、損失が大きいですよね…。
【 余談 】
高齢者の不動産売買について、知り合いの不動産屋さん・弁護士先生・司法書士先生・都庁・協会などいろんな人に質問しましたけど、みんな言うことが違います。もちろん、高齢者である売主さまの状況によって異なるので仕方がない部分はあります。しかし、これでは不動産屋さんが適切な対応をできるわけがないんじゃないかな…と心配しています。
【 参考 】
大手仲介会社との取引について追記します。大手では「持ち回り契約禁止」の店舗がありました。また、持ち回り契約の場合、担当者が相手方との契約にも必ず同行するというルールを定めている店舗もありました。
それだけ、リスクがあるということですね。
不動産取引で持ち回り契約は例外です!
不動産取引は対面での売買契約が原則であり、持ち回り契約は例外です!
ここでは、不動産屋さんの大変さを語らせてください。
持ち回り契約になると、不動産屋さんは、あっちこっち移動しなければいけません。移動時間も含めたら3時間~5時間はかかりますから、2度・3度と訪問すれば、負担が大きくなってしまいます。
また、持ち回り契約をする理由が「お客さまの忙しさ」にあれば、勤務先まで行かなければいけなかったり、夜22:00に自宅へ訪問しなければいけないことだってあります。
お客さまのために契約を成立させるべく頑張っているのに、「もう遅い時間で疲れているから早くしてくれる!?(怒)」と文句を言われて絶句した経験もあるんですよ。
「忙しいのに契約してあげている」と思うなら、契約しなければイイじゃん。
なんて、ちょっとしたグチでした (笑)
リスクが高くて、仕事が大変過ぎる。
だから、持ち回り契約は例外なのです。
なお、離婚が成立した奥さんと売買契約をしなければいけない…など、売買契約に同席したくない案件でしたら、お気軽に相談してくださいね。ゆめ部長は頑張るお客さまの強い味方です!
最後に…
現場から1つお願いがあります…。
持ち回り契約の時は不動産屋さんにできるだけ協力してください。遅い時間・遠方への出張でも気持ちよく対応してくれているなら、それを当然のことだと思わず、ねぎらいの言葉をかけてもらえたら嬉しいです。
不動産屋さんとお客さま。お互いが協力しあい、気持ちよく笑顔でお引き渡しの時を迎えられたら最高ですね!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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