新築一戸建ての建物表題登記(表示登記)をわかりやすく解説!
新築一戸建てや新築マンションを購入した時、1番最初に行う登記を「表題登記」といいます。赤ちゃんが生まれた時の「出生届け」のようなもので「新しい建物が誕生しました!」と報告する手続き(義務)のことです。
聞きなれない言葉がでてくるためか…質問がけっこう多い印象なので、ゆめ部長がわかりやすく解説してみますね。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
建物表題登記とは…?
表題登記(ひょうだいとうき)とは、建物が完成した後に行う登記のことで「土地家屋調査士」先生が担当します。「新しい建物が誕生しました!」と報告する手続きなので、赤ちゃんが生まれた時の「出生届け」のようなものですね。
※「表示登記」と呼んでいる人もいます。
表題登記は新築建物を取得した日から1ヶ月以内に行う「義務」があるため、売買契約が終わってから引き渡しを受ける前までの期間で行うのが一般的です。
もう少し詳しく流れを見ると次のようになります。
売買契約
↓
住宅ローン本審査内定
↓
表題登記申請
↓
銀行契約(金銭消費貸借契約)
↓
表題登記完了
↓
残代金決済=引渡
引渡までの期間が短いとカツカツになるかもしれないので、できれば、売買契約時に書類を揃えられると安心ですよ!
表題登記は義務付けらている登記なので、登記に対して課税する税金「登録免許税」はかかりません。しかし、担当する土地家屋調査士先生の報酬は別途必要になり、費用は新築一戸建てだと10万円前後です。不動産屋さんからもらう「諸費用概算書」に項目がありますから確認してみてください。(ゆめ部長が購入した新築マンションでは税抜57,000円でした。マンション全体を一括で担当するため、新築マンションは少し安くなるのだと思います。)
この登記が完了すると、上の画像「全部事項証明書(登記簿謄本)⇒ゆめ部長のマイホーム謄本」ができあがります。まだ、何も登記されていないため「甲区」と「乙区」がなく「表題部」のみ記載されたシンプルな状態です。
この後、所有権を取得したことを主張するために「甲区」を作って「所有権保存登記」を行い、金融機関から住宅ローンの借り入れをする場合は「乙区」を作って「抵当権設定登記」を行います。
拒否反応が出てきましたか?? (笑)
がんばって付いてきてくださいよーー
ちなみに…
「所有権保存登記」は新築不動産の最初の所有者が行います。後日、この不動産を売却する時は、所有権「保存」ではなく、所有権「移転」登記になるわけです。そこから何度も転売が繰り返されると、甲区にはその履歴が積み重ねられていくことになります。まぁ、参考までに。
話を戻します。
表題登記が終わらないと登記簿謄本がこの世に存在しませんから、所有権保存登記 (甲区) ・抵当権設定登記 (乙区) を行う場所がないことになります。この状態では、金融機関が担保を取ることができないため、住宅ローンの融資を実行してくれません。
ここ、わかりますでしょうか…?
ちょっと解説しておきます。
金融機関は不動産を購入するための資金として、一般的には数千万円のお金を貸すことになります。
あたり前ですけど、貸したお金は利息を付けて返済してもらわなければいけません。しかし、悲しいお話ですけど、死亡・転職・退職・倒産・離婚・産休育休・給与減少など、いろいろな事情で返済できなくなることもありえますよね。
そこで、銀行は融資する不動産へ「抵当権」という権利を設定して保全を図ります。この「抵当権」を設定しておけば、貸したお金を返済してもらえなくなった場合、競売にかけて不動産を現金化し、他の債権者に優先してお金を回収することができるのです。
これで、「抵当権」を設定できる状態にならないと、金融機関がお金を貸してくれない理由は理解できたと思います。抵当権を設定するためには、登記簿謄本が必要。登記簿謄本を作るためには表題登記を完了しなければいけない!ということですね。
こういう事情がありますから、表題登記の必要書類を集めて土地家屋調査士先生へ早めに送る必要があります。というわけで、ご協力をお願いします!
新築一戸建ての表題登記は買主さまが行う!
新築一戸建ての表題登記を買主さまが行うことについて、疑問を持つ「鋭いお客さま」がいるので解説しておきたいと思います!
不動産登記法47条(建物の表題登記の申請)を見ると「新築した建物を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。」と記載されています。
「新築した建物を取得した者」=「売主の不動産会社」であれば、建物が完成した段階で建物表題登記を行わなければいけません。だから、上記の疑問を持つお客さまが現れるわけです。勉強熱心ですね!!
しかし、新築一戸建ての取引では、購入した買主さまが建物表題登記を行うのが一般的になっています。おそらく…「新築した建物を取得した者」=「買主さま」と解釈できるからではないかと思います。
では、なぜ、売主の不動産会社はこのように解釈したいのでしょうか??
理由は…「節税」でしょうね。
実は「できあがった建物の所有者は私ですよ!」と主張するために「甲区」で行う「所有権保存登記」は、表題登記で作られた「表題部」に記載された所有者が行うことになっています。(不動産登記法74条)
つまり、売主の不動産会社が表題登記を行うと、あわせて所有権保存登記も行わなければいけないということです。そうすると、15万円~20万円くらいの出費になるため節税したくなるのは仕方ありませんね。
買主さまは納得いかないとは思いますけど、これが慣習となっているので受け入れてもらうしかありません…。なお、一応、買主様には次のようなメリットがあります。
売主さま表題登記
↓
売主さま所有権「保存」登記
↓
買主さま所有権「移転」登記
この場合、買主さまの所有権移転登記は税率が0.30%です。
買主さま表題登記
↓
買主さま所有権「保存」登記
この場合、買主様の所有権保存登記は税率が0.15%に下がります。
建売住宅で行う所有権保存登記の登録免許税は15,000円前後なので、お得になるのも同じく15,000円くらいでしょう。あとは、所有権移転よりも所有権保存の方が司法書士先生の報酬が3万円くらいは安いです。とはいえ、表題登記費用の10万円前後と比べると、大体5万円程度は損になりそうですね(涙)
「表題登記してもらうように交渉すればいいじゃん。」
そう考える人もいるでしょうけど
これは、やめておきましょう。
なぜなら…
「じゃあ、売らない。」で終わるからです。
おまけ…
ちなみに、新築一戸建てでも長い間ずっと売れないと表題登記+所有権保存登記がされていることがありますので解説しますね。
売主の不動産会社は、建売分譲を事業として行うために金融機関から融資を受けています。一般的には、金融機関から融資を受けられる期間は制限がありますので、築後1年を経過して「新築」と表記できなくなり「築後未入居」と表記する頃になると、事業資金の返済を迫られてしまいます。このとき、一括返済する事業資金があればいいですけど、手元資金が少ない場合、期間延長してもらうためには建物にも抵当権を設定しなければいけないことがあります。抵当権を設定するためには…表題登記が終わっていないとダメでしたよね。
まぁ、たまに見る例外です。
表題登記で必要な書類を確認しましょう!
新築一戸建てを購入した時の「表題登記」で必要な書類はお客さまごとに変わってきます。さらに、登記の税金を安くするために必要な「住宅用家屋証明(専用住宅証明)」を取得するための書類も一緒に集めなければいけません。
聞きなれない書類が多いにもかかわらず、不動産屋さんから丁寧な説明がなかったり、土地家屋調査士先生からもらう見本がすっごくわかりづらかったり…。また、土地家屋調査士先生によって、必要な書類が増えたり減ったりするのも悩ましいところだったりします。
というわけで、たぶん、不動産屋さんもよくわかっていないでしょうから、この記事で理解できるようにサポートしますね!
まず、どんな書類が必要なのか?見てみましょう。
共通書類…
■ 建物表題登記の委任状
■ 持分協議書(持分証明書)
■ 所有権保存登記の委任状
■ 所有権保存登記抹消の委任状
■ 登記原因証明情報(所有権保存登記の抹消用)
■ 印鑑証明書1通
※ 売主の不動産会社によって変わります。
※ 持分協議書は不要なこともあります。
(1) 引越前に住民票を移転できる場合…
■ 新住所・住民票(新居の住所)1通
(2) 引越してから住民票を移転する場合…
■ 旧住所・ 住民票(現在の住所)1通
■ 申立書
■ 現在の住居に関する書類(いずれか1つ)
・賃貸に居住中 ⇒ 賃貸借契約書
・社宅に居住中 ⇒ 社宅証明書(原本)
・持家を売却 ⇒ 売買契約書 or 媒介契約書
・持家を賃貸 ⇒ 賃貸借契約書 or 媒介契約書
・親族が居住する ⇒ 親族の申立書
上記の書類を理解するために必要な知識を解説していきますので、眠気と戦いながら頑張ってください!
では、いきます!!
■ 建物表題登記の委任状
■ 住民票
土地家屋調査士先生へ委任するために必ず委任状が必要です。住民票は原本還付してもらうことができるため、次の「住宅用家屋証明」取得時にも再利用します。
■ 住民票
■ 申立書
■ 現在の住居に関する書類
「住宅用家屋証明」の取得で必要です。セカンドハウスではなく、自己居住用の不動産を購入するから税金は安くしてよね!と主張するために必要な書類になります。土地家屋調査士先生が取得することもあれば、 司法書士先生が取得することもあります。
■ 所有権保存登記の委任状
■ 所有権保存登記抹消の委任状
■ 登記原因証明情報(所有権保存登記の抹消用)
■ 印鑑証明書(現在の住所でOK)
「錯誤による所有権保存登記の抹消」で必要な書類です。詳細は3つ下の項目「表題登記を錯誤抹消するための委任状を解説!」を見てくださいね。
表題登記の注意事項
表題登記申請書類に関する注意事項・確認事項をまとめておきます!
【1】
「申立書」および「建物表題登記の委任状」への押印は認印で構いませんが、その他の書類は全て実印で押印してください。なお、土地家屋調査士先生によっては実印を求められることがあります。
【2】
購入不動産を複数人で共有する場合は「建物表題登記の委任状」へ持分を記入してください。
【3】
「申立書」および「賃貸借契約書・社宅証明書・売買契約書(いずれか1つ)」は「住宅用家屋証明」を取得する際に使用します。引越前に住民票を移転する場合は不要ですが、代わりに新住所の住民票(コピー)が必要です。なお、新住所の住民票を用意できる場合でも「申立書」を求められることがたまにあります。
【4】
「住宅用家屋証明」は自己居住用不動産が対象になりますので、セカンドハウスや法人名義の場合は取得できません。書類が準備できず「住宅用家屋証明」を取得できなくても登記はできますけど、税金がかなり高くなりますので注意しましょう。
【5】
「賃貸借契約書」は「住所を特定できるページ」・「署名捺印ページ」をコピーしてください。心配な場合は全ページをコピーしてもらえるとありがたいです。
【6】
「社宅証明書」は原本が必要です。発行まで時間がかかることがありますので早めに総務部などに依頼しておきましょう。時間がかかる場合は引越前に住民票を移転する「新住所登記」をオススメしています。
【7】
「住民票」は共有者全員分が必要になります。夫婦共有名義の場合はご主人さま・奥さまが記載されている住民票であれば1通のみで構いません。マイナンバーと本籍の記載がない物を取得してください。たまにですけど、「コンビニで取得した住民票は利用できない!」と主張する先生に出会うことがあります。
【8】
「新住所」で登記するか?「旧住所」で登記するか?というお話は「所有権保存登記」と「抵当権設定登記」についてです。「表題登記」は「旧住所」で登記してしまいます。理由は2つ。① 表題登記も新住所にすることはできるけど時間がカツカツになりやすい。② 表題登記を旧住所で登記しても売却時に住所変更登記がいらないから。実は、表題登記に記載される所有者(住所・持分・名前)は、所有権保存登記が行われるとアンダーラインが引かれて抹消されるのです!ちょっと難しいかな…。下の画像と次の参考記事も読んでみてもらえると理解が進みます!
参考記事…
住宅用家屋証明で登録免許税がこれだや安くなる!
「住宅用家屋証明」を取得するのは、しつこいようですけど、登録免許税を安くするためです。つまり、買主さまである皆さまのために取得する書類なのです。「えーメンドクサイなぁ~」という人もいますけど、別に税金をいっぱい払うつもりであれば、取得する必要はありません。
ただし、そう思う人も、どれくらい違うのか?
一応、チェックしておきましょう。
所有権保存登記は、-62.5%
抵当権設定登記は、-75.0%
わかりやすい抵当権設定登記だけでもみておくと…
借入金額が4,000万円の場合、
家屋証明なしだと、160,000円
家屋証明ありだと、 40,000円
これだけで120,000円も変わってきます。取得費が報酬込みで10,000円かかったとしても断然お得ですよね!!
表題登記を錯誤抹消するための委任状を解説!
「表題登記を錯誤抹消するための委任状」は、実印を押印・印鑑証明書を添付して売主さまへ預ける書類です。普通の感覚からすると、なんで印鑑証明書も渡さなきゃいけないんだろう…と不安に感じられるかと思います。
そこで、錯誤抹消の委任状をお預かりする理由を解説していきますね。
表題登記が完了した後に皆さまが売買契約を解除した場合、完了した表題登記を抹消しなければいけません。なぜなら、先ほど説明した通り「所有権保存登記」は「表題部」に記載された所有者が行う…と、不動産登記法74条に記載されているからです。
表題部の所有者は、契約解除した皆さまのまま。
↓
所有権保存登記できるのも、皆さま。
↓
新しい買主さまは…所有権保存登記できない。
↓
商品にならない…(売主さま涙)
みんな困りますよね。
ここで、表題登記を抹消する手続きを見てください。
表題登記完了
↓
所有権保存登記(必ず行う)
↓
所有権保存登記の抹消
↓
表題部含めてすべての登記記録が閉鎖
↓
表題登記の抹消完了
抹消する前提で所有権保存登記を経由しなければいけないなんて…非効率極まりない気がしますけど、こんな流れを踏まなければいけないルールです。
だから、司法書士先生に対して「所有権保存登記」および「所有権抹消登記」の両方を依頼する委任状が必要になるのです。そして、これらの書類は重要な権利変動を行うものなので実印+印鑑証明書が求められます。
ちょっと怖いかもしれませんけど、不動産屋さんが悪さをしようとしているわけではないので大丈夫ですよ。なお、無事に引渡が完了したときに委任状と印鑑証明書を返却してもらえますので、忘れずに受領しましょう。
もう少しだけお話をしておきます。
「売買契約を解除することになってから、委任状と印鑑証明書を渡せばイイんじゃないの?オレは渡さないよ。」と考える人…きっといますよね??
でも、ちょっとだけ考えてみてください。
トラブルが原因で契約解除になってしまった場合、委任状と印鑑証明書を預れるかどうかわからないと思いませんか?「お前に印鑑証明なんか預けるか!バカモノー!!」と、買主さまが怒り出すかもしれませんからね。売主の不動産会社はこのようなリスクも想定しておかなければいけないわけです。
ご理解・ご協力いただけましたら幸いです。
2021年10月23日追記…
表題登記抹消費用について土地家屋調査士先生へ聞いてみたら20万円~25万円もかかるそうです。なお、費用負担が買主さまになることを確認するために「念書」を作成して署名捺印を求められた現場もありました。契約解除はすごく大変です…(汗)
最後に…
ちょっとだけ営業させてください。
ゆめ部長は新築一戸建ての購入を仲介手数料無料でサポートしています。よかったら、次の記事を読んでもらえると嬉しいです!⇒ 新築一戸建てを「仲介手数料無料 + 諸費用節約」で購入しよう! 皆さまからのお問い合わせを心よりお待ちしています♪
営業はここまでです(笑)
ふぅー。この記事を書くのに2日かかってしまいました。過去の表題登記申請書類を集めて、その中からわかりやすい委任状を探して…なんてやっていたので仕方ないですけどね。でも、このおかげで知識の整理が爆速で進んでいます。
ちなみにですけど…。この記事を書いた後にネットで表題登記の件を調べてみたら「あれ…これ、間違ってるんじゃない??」と思った情報がたくさんありました。ゆめ部長が新人時代に先輩から教えてもらった説明も間違っていましたから、きっと、多くの不動産屋さんが正しい知識を覚えていないのでしょう。
みんなで勉強して正しい知識を共有しなくちゃダメですよね!ゆめ部長も勉強を一所懸命がんばります!!というわけで本日のお話はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。
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