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2020年01月19日
不動産売買の知識

生産緑地解除で不動産価格は暴落しない!宅建マイスターが「2022年問題」を徹底的に解説します!

2022年に生産緑地が一斉に解除されることで市場に土地が大量供給され、不動産価格が暴落するかも!?と心配されている「2022年問題」について、宅建マイスターが徹底解説します!

 

生産緑地に関して勉強していない人たちが「2022年以降に不動産価格は暴落する!」と安易に発言しているのが気になっています。この問題の最新情報も踏まえてわかりやすく解説しつつ、ゆめ部長の意見も織り交ぜてみますので参考にしてくださいね。

 

不動産業界15年宅建マイスター2級FP技能士の「ゆめ部長」が心を込めて記事を執筆します!それでは、さっそく目次のチェックからいってみましょう~

生産緑地地区とは…?

上の写真のように、緑色に白抜き文字で「生産緑地地区」と書かれた看板を見たことがありませんか??ゆめ部長は東京都の練馬区に住んでいるので、ちょっとお散歩するだけでいくつもの「生産緑地地区」を発見することができます。

 

この「生産緑地地区」とは何か…?

まずは、ここから見ていきましょう!

 

「生産緑地地区」とは、良好な都市環境の形成を目指し、街づくりを進めていくエリア(市街化区域内)にある農地を保全するために定められる地区のことです。

 

市街化区域というのは、街づくりを進めていくエリアですから、農地を宅地に変えてどんどん住宅が建てられていきます。

 

しかし!

 

空地が少ない住宅街は「災害に弱い」ですし、

緑が少ない住宅街は「安らぎと癒し」がありません。

 

それに、

 

ヒートアイランドの緩和

食料自給率の上昇

農業体験を通した食育・情操教育

災害時の避難場所    etc ...

 

住宅街に緑や畑があるメリットはたくさんありますよね。

 

だからこそ、住宅街にある農地を「生産緑地地区」として保護し、無秩序な宅地化を防止する必要があるわけです。

生産緑地が定められた経緯

「生産緑地」が定められた経緯を確認しておきましょう。

 

1970年頃

 

人口増加で都市部の農地が急速に宅地され、緑地が大幅に減少した結果、住環境が悪化し、災害が多発するという問題が生じました。

 

1974年

 

「生産緑地法」を制定して農地を保全しようと試みましたが、「土地不足」「地価上昇」を止めることはできず問題は解決できませんでした。

 

1992年

 

生産緑地法改正。宅地化の需要を満たしつつ、農地も保全するために、市街化区域内の農地は下記の2つに区分されました。

 

保護する農地「生産緑地」

宅地化を進める農地「宅地化農地」

 

この法改正の効果により、「生産緑地」に指定された農地は保全され、24年間で約15%しか減少せずに済みました。詳細は次の項目「生産緑地地区の広さはどれくらい?」に記載します。

 

一方、「宅地化農地」に指定された農地は原則通りに宅地化され、22年間で約58%減少しました。総務省「固定資産の価格等の概要調書」によると、「宅地化農地」の面積推移は次のようになります。

 

平成  4年 … 30,628ha

平成26年 … 12,916ha

 

だいぶ減少していますけど、まだ、かなりの広さが残っているのがわかりますね。

生産緑地地区の広さはどれくらい?

生産緑地地区の地区数・面積については、国土交通省の都市計画現況調査で確認することができます。

 

2020年1月18日時点では平成29年調査結果まで公表されていました。興味があれば、次のリンクをクリックして確認してみてくださいね。ちなみに、平成29年度のデータを確認したい場合は次の順番でクリックします。

 

平成29年調査結果

№2 都市計画区域、市街化区域、地域地区の決定状況

(24)生産緑地地区

 

参考 … 国土交通省の都市計画現況調査

 

3年分のデータを見ておきましょう。

 

平成29年

61,207地区 12,972.5ha

 

平成28年

61,839地区 13,187.6ha

 

平成27年

62,473地区 13,442.0ha

 

※ 1ha(ヘクタール)=10,000㎡

 

平成5年は15,164haなので、24年で約15%減少ペースです。

 

宅地化農地は22年で約58%減少していましたから、比較すると、ゆっくり減少しているのがわかりますね。

 

「東京ドーム○○個分」という表記をよく見るので計算してみました。

 

東京ドームは46755㎡だから4.6755ha

 

平成29年 … 2,775個分

平成28年 … 2,821個分

平成27年 … 2,875個分

 

「ふ~ん。」って感じですよね(笑)

 

なお、生産緑地地区は三大都市圏の市街化区域を念頭に置いた制度であるため、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・愛知県・大阪府で全体の80%を占めています。

生産緑地の指定要件

生産緑地に指定されるには次の要件があります。

 

現に農業の用に供されていること

 

良好な生活環境確保の機能を有すること

  公共施設等の用地として適していること

 

面積が一団で500㎡以上の農地であること

  ※ 条例で300㎡以上に緩和することができます。

 

農業の継続が可能であること

  ※ 原則として30年間の営農の意志があること。

 

1992年の生産緑地法改正で「生産緑地」に指定された農地は、30年後の2022年までは農業を継続してね!という制限が付けられました。この2022年があと数年でやってくるわけです。

 

生産緑地の写真を確認してみてください ↓ ↓ ↓

写真を見ると指定要件が頭に入りやすいと思います!

生産緑地の指定解除

生産緑地の指定が解除できるのは次のケースに限られています。

 

 生産緑地指定後30年経過

主たる従事者が死亡。相続人が農業を営まない。

主たる従事者が疾病・障害等で農業の継続が困難

 

これは、結構、厳しい条件だと思います。

 

農家は「高齢化」「後継者不足」「収益性が低い」という問題を抱えているそうです。収益性が低くて後継者がいない。高齢になり体力的にキツイ。でも、農業をやめられないってことですからね…。

 

「農家がカワイソウじゃないか!」と心配している人も安心してください。あとで解説しますけど、この問題を解決できるような法律改正がされています。

 

次に、指定解除の流れを確認しましょう。

 

市町村長に時価での買取申請

予算不足で買い取りNG

農林漁業希望者へのあっせん

あっせん不調

生産緑地解除

 

生産緑地を解除する手続きだけでも約3ヶ月かかります。

 

生産緑地が解除された場合の注意点!

 

注意点1…

 

猶予されていた相続税に利子税を加算して納税しなければいけません。

 

注意点2…

 

固定資産税・都市計画税の減税もなくなります。ただし、激変緩和措置があり、本来の税額になるのは5年後です。

農家のメリット・デメリット

生産緑地地区は税金の優遇を受けられるメリットがあるけど、「売れない」「貸せない」「建てられない」というデメリットがあると言われてきました。

 

この記事は「生産緑地2022年問題で不動産価格は暴落するか?」というテーマで執筆していますので、難しすぎる内容は省略して、生産緑地地区に指定された農家のメリット・デメリットを簡単に解説します。

メリット

1. 固定資産税・都市計画税の減額

 

生産緑地の多くは三大都市圏の市街化区域に指定されるとお話しましたね。三大都市圏の市街化区域は不動産価値が高く、固定資産税・都市計画税の課税額はかなり高額になります。

 

しかし、「生産緑地」に指定された農地であれば、固定資産税と都市計画税を計算する際の「評価」と「課税」が一般農地と同じようになり、大幅に減額されます。税額は数百分の一にまで下がるようです。

 

2. 相続税の納税猶予

 

相続や遺贈により生産緑地を取得して引き続き農業を営む場合、相続税の一部が納税を猶予され、相続人が死亡した場合には猶予税額が免除されます。

 

つまり、生産緑地指定から30年経過したことを理由に指定解除しても猶予税額は免除されないということです。さらに、相続税に利子税を加えて課税されますし、30年前は不動産バブルで土地の評価額が高いため、課税額が高額になることに注意が必要でしょう。

デメリット

生産緑地に指定されると農家には次のような義務が課せられます。

 

農業を30年間も営む義務がある。

農地として管理する義務がある。

建築物や工作物の新築、改築、増築の禁止

生産緑地の標識を設置する義務がある。

 

「売れない」

 

農業を30年営まないと生産緑地を解除できないので売却できません。30年経過後に「特定生産緑地」に指定したとしても、多くの農家が「相続税の納税猶予」を受けているため、さらに10年経過した後にも簡単には売却できないでしょう。

 

「貸せない」

 

農地を貸してしまうと、農地法により賃貸借契約が自動更新されるため、自己都合で返却してもらうことができませんでした。2018年9月に「都市農地の貸借の円滑化に関する法律(都市農地貸借法)」が制定され、賃貸借契約が自動更新されなくなりましたので、今は「貸せない」というデメリットはなくなったと言えるでしょう。

 

「建てられない」

 

生産緑地法第8条で「建築物や工作物の新築、改築、増築の禁止」が定められているため、不動産所得を得るためにアパートなどを建築することはできません。ただし、2017年の生産緑地法改正により、地元の農産物を使った商品の製造・加工・販売のための施設やレストランであれば建築できるようになりました。

 

農家のデメリットを解消することで農地を保護する方針に変わっていることがわかると思います。これからの時代は、農地を保全することで、自然と触れ合える緑豊かな街づくりが進められていくはずです。

2017年の生産緑地法改正

2017年の生産緑地法改正は3つのポイントがあります。

 

ポイント1…

 

生産緑地地区の面積要件(500㎡以上)が緩和され、市区町村が条例で300㎡以上に引下げできるようになりました。

 

多くの生産緑地地区を持つ、練馬区・世田谷区のWebページを確認してみましたら、どちらも300㎡以上でOKになっていました。

 

ポイント2…

 

生産緑地地区内において下記の建築物を設置できるようになりました。

 

農作物等加工施設

農作物等直売所

農家レストラン

 

これなら、農家が収益を上げやすくなりそうです。

 

ポイント3…

 

生産緑地地区として指定されてから30年経過した農地について、買取り申出可能時期を10年延長できる「特定生産緑地制度」が創設されました。

 

繰り返し10年の延長ができるため、農家の選択肢が増えたと言えますね。なお、「特定生産緑地」に指定されれば、固定資産税・都市計画税の減税も引き続き受けることができます。

都市農地の貸借の円滑化に関する法律(都市農地貸借法)

2018年に施行されたこの法律で生産緑地を人に貸しやすくなりました!2つのポイントを確認しましょう。

 

ポイント1…

 

農地法の法定更新が適用されません!「農地を貸してしまったら返してもらえない…」そんな悩みを解決できるようになりました。

 

ポイント2…

 

相続税納税猶予制度は継続されます!生産緑地は農地として管理する義務があり「人に貸してしまうと相続税の納税猶予が受けられなくなる…」という問題がなくなりました。

 

生産緑地は固定資産税などのランニングコストと管理する手間ががかかります。しかし、人に貸すことで管理をせずに収益を生うことができるようになりました。最近は「シェア畑」などの市民農園が人気を集めていますよね!

 

参考に写真を掲載しておきます ↓ ↓ ↓

「生産緑地 2022年問題」とは…

ここまでの知識を使って「生産緑地2022年問題」をまとめます。

 

1992年に生産緑地に指定され、2022年に30年の期限を迎える農地は、約13,000haのうち約80%の10,000ha強もあります。

 

もし、この10,000ha(1億㎡=約3,000万坪)が生産緑地を解除する場合、市区町村が買い取ったり、農林業業希望者へあっせんできるのは少数でしょうから、かなりの土地が市場に出回ることになります。

 

三大都市圏にある好立地の生産緑地地区が宅地として一斉に市場へ開放されれば、住宅供給が増え、空き家問題はさらに深刻化するのは間違いありません。また、一気に需要を上回る土地が供給されると土地価格が暴落する可能性も否定できないでしょう。

 

これが「生産緑地2022年問題」と 言われていた ものです。

 

「言われていた」と書いた理由を説明します。

 

理由1…

 

2018年に生産緑地法が改正され「特定生産緑地指定制度」が創設されました。この制度により、30年経過した生産緑地地区は買取申出可能時期を10年延長できるようになります。さらに、10年後に再延長も可能ですから、農家が生産緑地を解除せずに農地を保全する選択肢ができたわけです。

 

理由2…

 

多くの農家が生産緑地のメリット「相続税の納税猶予制度」を利用しています。もし、30年経過して生産緑地を解除してしまうと、猶予されていた「相続税」と猶予期間の「利子税」を支払わなければいけません。30年前はバブル期で土地価格が高い時期ですから、この時期の土地評価額に対して課税される相続税は相当高額になるはずです。また、毎年課税される固定資産税・都市計画税の値上がりも生活を圧迫する可能性がありますよね。

 

上記2つの理由から、2022年に30年の営農義務を終えた生産緑地の多くは「特定生産緑地」になり、一気に不動産市場へ開放されないと考えられます。「2022年問題」は2018年の生産緑地法改正前に主張されていたことなのです!

 

ゆめ部長の結論!

 

中長期の視点で見れば、生産緑地の解除は土地の供給量増加につながりますから、不動産価格の下落は避けられません。しかし、2022年に需給バランスが崩れて不動産価格が「暴落」する…という社会問題には発展しないでしょう。

安易にアパートを建築しないで!

生産緑地が解除された土地は立地条件が良いため、次のような需要が見込まれます。

 

マンション・一戸建て

アパート

マンション

トランクルーム

ビル(店舗・事務所)

駐車場

社会福祉施設(自治体があっせん)

市民農園(国土交通省・市民農園等整備事業)

 

などなど。

 

生産緑地解除を営業チャンスとみて、「アパートを建築して収益をあげましょう!」という提案をする不動産会社がたくさん出てくることでしょう。

 

しかし、日本は「人口減少・少子化・超高齢社会」という大問題を抱えていますから、これ以上、賃貸住宅を増やしたところで供給過剰になるのは間違いありません。

 

今後の賃貸需要も予測したうえで「不動産の最有効使用」する方法を不動産のプロと検討してみて欲しいと願っています。

最後に…

国や自治体が生産緑地の減少を食い止める対策を検討するようになりました。市民農園の需要が高まっていることからもわかる通り、緑地を残してほしいと考える住民が増えた結果、生産緑地は「保全」から「活用」する時代になってきたのでしょう。

 

これからの不動産取引を考察するためには重要な知識になるテーマですから、もっと勉強して記事の内容をパワーアップさせていく予定です。これから数回は記事のリライトを行いますので、興味を持っていただけたら、また読みに来てくださいね。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

お知らせ…

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この記事を書いた人
渡部 直人(ゆめ部長) ワタナベ ナオト
渡部 直人(ゆめ部長)
不動産取引の仕事一筋15年、仕事中心の生活をしてきました。ハッキリ言って仕事は趣味です(笑)でも…不動産業界にはなんか暗いイメージがあり、このままではダメだと思っています。そこで、ゆめ部長は考えました。お客さまが安心して取引できるだけでなく、才能あふれる人たちが楽しく働ける環境を作り、この暗いイメージを払拭・改善していこう!と。会社が幸せの発信基地になり、小さなHAPPYが拡がって欲しいと願っています。できることを1つずつ。コツコツ「幸せの種」をまいていきたいですね。
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