マンション・土地・戸建のAI査定(瞬間自動査定)の精度が低い理由を解説!
マンション・土地・戸建の査定金額を簡易的に調べるだけなら、不動産屋さんへ問い合わせをしなくても良い時代になりました。この記事を読んでいるほど勉強熱心な売主さまなら、AI査定(瞬間査定・自動査定)サービスを使ってみたことがあるかもしれませんね。
売却不動産のAI査定は「無料」かつ「気軽」に使える便利なサービスではありますけど、正直、査定精度がイマイチなのでオススメはできません。ゆめ部長の経験から、オススメできない理由を全力で解説しますので参考にしてください!
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
売却不動産のAI査定とは…
AIを使った瞬間査定(自動査定)というのは、成約事例などを大量に蓄積し、AIがそのデータを駆使して瞬時に査定金額を算出してくれるというサービスです。
売却するマンション・土地・戸建の情報を入力すれば査定金額をすぐに教えてくれるので、ゆめ部長も便利なサービスだなぁ~と思っています。特に、マンションであれば、マンション名・階数・バルコニーの向き・専有面積(パンフレットに記載されている壁芯面積)の4つだけ入力すればOKというAI査定サービスもあり、気楽さも大きなメリットだと言えるでしょう。
ちなみに、AI査定サービスは20とか30とかあるみたいです。試しに全部利用してみようかなぁ~と思いましたけど、会員登録者限定ばっかりになってしまったので断念しました。それにしても…こんなに似たようなサービスが乱立するあたり、IT業界の人たちから見ると、不動産業界は楽に稼がせてくれる対象なんでしょうね~
AI査定のメリットを箇条書きしてみると…
■ 不動産屋さんへ行かずに査定金額を確認できる
■ 不動産屋さんからの営業攻撃を避けられる
■ データに基づいた金額を確認できる(経験と勘ではない)
■ 賃料も一緒に教えてくれる
■ 物件の注意点を教えてくれるサイトも出てきた
こんなメリットがありますから、不動産屋さんへ問い合わせる前のファーストステップとして利用するなら、利用してみる価値はあると思います。でも、AI査定は成約価格とはズレる可能性が高いので注意してくださいね。
AI査定が成約価格とズレる理由を必ず把握しよう!
AI査定の精度は±3%前後まで改善されてきている…との記事を最近読みました。5,000万円で成約できた物件であれば、査定金額は4,850万円~5,150万円となりますから、これなら、かなり優秀だと言えますね。
ホンネを書いてしまうと、AI査定の金額とゆめ部長の成約実績を比べたら「±3%」にはなっていないので、正直、こんな高い精度を実現できているわけがないでしょ!?と疑っています。最近よく目にするような記事は、広告主が記事の執筆を依頼していることが多いため信用できないんですよね…。
話を戻します。
AI査定の精度はだいぶ上がっていますけど、査定金額を大きくハズしてしまう可能性はまだまだ高いと断言します。その理由を見ていきましょう。
理由1…
現在の日本の不動産取引では、全ての成約事例を調査することができません。実際、大手の仲介会社ですら、意図的にレインズに成約情報を登録していない…という情報を知人とお客さまから聞いたことがあります。直近の成約事例をすべて集められなければ、精度が高まるわけがありません。
理由2…
不動産は人によって使い方に大きな違いがあります。ニャンコ屋敷・ゴミ屋敷・DV夫が破壊しまくった部屋など、ちょっと困ったマンションや戸建がある一方、超綺麗好き・オシャレなリノベ好きの売主さまが売却する不動産だってありますからね。現場を見ないで査定することの限界がまだあると言えるでしょう。(次の項目でもう少し詳しく解説します。)
理由3…
サイト運営者の狙いは、AI査定サービスを無料にしてお客さまを集め、他のサービスへつなげることです。一括査定サイトなどの「稼げるサービス」へ誘導することが多いですけど、他のサービスへつなげることもあります。つまり、AI査定がフロントエンドになっていて、バックエンドで収益を上げようとしているサイトが多いわけですね。
そうすると、査定金額があまりにも安いとお客さまが逃げてしまいますから、集客するためのフロントエンドは「高値査定」をしたくなってしまうわけです。お客さまから「会員登録したらなぜか査定金額が上がったんですけど…」という相談を受けたこともありますので注意してくださいね。
AI査定のデメリットをまとめますよ。
■ 査定精度がまだ低い
■ 査定金額が大きくズレる可能性はまだ高い
■ 「無料」の後ろにサイト運営者が儲かるサービスがある
参考記事…
AIが不動産屋さんの査定にまだ勝てない理由
先ほどの「理由2」を深掘りしていきます。
膨大なデータを集め、独自のアルゴリズムを使って査定をしたところで、物件ごとの事情を把握できなければ、個別性の強い不動産を正確に査定するのは難しいでしょう。
現場を見なければわからないこと。
例えば…
具体例【1】
301号室は目の前に建物があり真っ暗。1階上の401号室は視界が一気に開けて開放的だった。
具体例【2】
築10年しか経っていないのに室内がフルリノベーションされていた。だから高値で成約できた事例だった。
具体例【3】
不動産業者が買い取ったから成約価格が相場よりも安い事例だった。
具体例【4】
マンションの住人が飛び降りて売却物件付近で亡くなっていた。
具体例【5】
近隣の新築マンションが超高値で発表され、売却対象のマンションが一気に注目を浴びるようになったため価格が急上昇していた。
などなど。
現場を知っているかどうか?物件のヒアリングを含めた調査を行ったかどうか?によって、得られる情報の量と質に大きな差が生まれるものなんですよね。
公的機関が公表しているデータと成約事例をどんなに集めてきても、わからないことがたくさんあります。たとえば、特殊事情があり、たまたま「激安」だった・たまたま「超高値」だった…。こんな成約事例のデータに引っ張られて査定してしまうと、相場からズレるのは当然です。事例を適切に取捨選択できるのは、多くの不動産取引を成立させてきた不動産屋さんだからこそ!だと思います。
参考記事…
AI査定価格 < ゆめ部長の成約価格になった事例を紹介
ゆめ部長もAI査定の会員登録をしています。お客さまが利用しているサービスを理解していないと、正しいアドバイスができませんからね。
ゆめ部長が売却をサポートした案件で、
AI査定価格 <<< 成約価格
だった案件を紹介します。
なお、記事をリライトしている2023年時点だと、少し古い事例になっていることをご了承ください。(2023年時点であれば、分譲時よりも高値を狙いやすい状況です。)
【1】2つ上に同じ広さ・同じ向きの部屋がしばらく売れ残っていたタワーマンション
ゆめ部長が売却をサポートしたお部屋は…
成約価格:4,080万円
AI査定の価格:3,600万円~3,900万円
ゆめ部長が成約させた価格とAI査定の最低価格との差が最大で480万円も開きました。これは、ゆめ部長が「最大で13%」も「高値」で成約できたことになります。AI査定の最大価格と比べても「4.6%」の高値ですよね。(しかも、仲介手数料がお得になるオマケ付き!!)
タワーマンションは総戸数が多いので、成約事例のデータは複数集めることができました。そこで、分譲時の価格表を使い、成約価格が分譲時価格からどれくらい増減しているのか…?その増減率を計算しました。
その結果は…
分譲時価格-5%前後での成約事例が2件。
-15%前後の成約事例が2件。
さらに、現在販売中のお部屋として、2階上の部屋が同じ広さで販売中でしたが、1年近く成約していませんでした。(分譲時価格-5%程度の販売価格)
これらのデータを基にして考えると、分譲時価格-5%程度の成約を目指すのは難しいかな…とAIが判断するのは理解できるところです。
しかし、このお部屋には凄い魅力がありました!
室内がメチャクチャ綺麗で、ハウスクリーニングを入れたんですか…?と思うほどの美しさ。水回りもピカピカ。室内もスッキリしていて好印象!こういう部屋は、やっぱり高く売れるんですよね。
売主さまと相談して高値売却にチャレンジした結果、分譲時価格-3%弱の金額で成約させることができました。
これって、ネットでデータ収集しただけではわからないことです。そして、売主さまでさえ、室内の綺麗さを強力なアピールポイントだと認識していませんでした。「不動産屋さんのアドバイスと経験値も大事でしょ!?」そんなゆめ部長の主張を理解してもらえる事例だと思います!
【2】高層階と低層階が並んでいる高級マンション
複数の不動産屋さんで査定金額が2,000万円以上の差が出た案件です。
ゆめ部長の査定:6,000万円後半
AI査定:6,000万円~6,400万円
成約価格:大体7,000万円
このマンションの査定が大きくズレた理由は3つありました。
理由1…
大通り側に高層棟があり、その裏側に低層棟が建っていました。成約事例は2つありましたけど、どちらも低層棟の方で分譲時もあまり人気がなかったそうです。
理由2…
成約事例がマンション価格が高騰する前(平成24年)の事例と、価格が上昇し始めた頃(平成25年)の2件しかありませんでした。売却時期は価格高騰後だったので、安い時期の成約価格を基に算出したらいけません。ちなみに…成約事例の坪単価は全く同じでした。平成25年に売却した売主様は、不動産屋さんの査定を信じて損をさせられてしまったのでしょうね。
理由3…
売却対象のお部屋は高層棟で、南側の低層棟がちょうどなくなり視界が開けるお部屋でした。高台に建つマンションだけあって、抜群の風通しと開放感。当然、成約事例の低層棟と同じ評価なわけがありませんよね。
このマンション売却事例で言えることは、現地を実際に見て、成約事例データの信用度を分析して、売主さまから情報をヒアリングしたからこそ、正しい金額で成約できたということです。AI査定通りに売却していれば、最大で1,000万円も損をしていた可能性があった事例でした。
AI査定は戸建ても査定してくれるようになったけど…
ReTech(不動産テック)の流れで新しいサービスの開発競争が激化していますから、どんどん精度は高まってきていると思います。新しく発表されたサービスを使ってみると、ゆめ部長の査定とほぼ同じ数字を出してくれることも出てきました。
最大限、物件の魅力を引き出して、相場よりも少し高値を狙っているゆめ部長の査定に合わせてくるというのは…お見事ですね。まぁ、たまたまかもしれないので、もう少し使って精度を確かめたいと思います。
なお、今まではマンションばかりでしたけど、最近は戸建の査定までできるようになりました。本当にすごいな…と素直に驚きますけど、ちょっとだけ、注意事項を指摘しておきます。
戸建の査定は、土地の評価だけでなく建物評価も難しく、不動産屋さんに査定を依頼しても査定価格に差が生じやすいと言えます。つまり、不動産屋さんを味方につけ、工夫して販売すれば、高値を勝ち取れる可能性がマンションよりも高いということなんです。あまりAI査定を信用し過ぎず、売却活動をスタートする前には、参考程度にしておくのが良いでしょう。
参考記事…
査定額の妥当性は成約事例とネット情報で大体把握できる!
不動産売却で損をしたくない!という気持ちはよくわかります。「損をしたくない!」「高く売りたい!」だから、いろんな不動産屋さんに問い合わせをする…という誤った判断をしてしまうのだと思います。そこで、AI査定や一括査定なんかに頼らなくても大丈夫!ということを解説しましょう。
いろんな不動産屋さんに問い合わせる理由は、査定金額が正しいかどうかを確認したいからですよね?それなら次のように解決するのはどうでしょうか??
まず、何よりも、担当者(エージェント)探しが最重要です。良いエージェントを見つけられたら、次に、そのエージェントが所属する会社のサービスが優れているのか??確認しましょう。
エージェントと会社については、Webページ・SNSでの発信・面談・メールや電話でのやり取りを通じて確認してください。ここは手を抜いたら絶対にダメな部分です。今はエージェントをネットでも探しやすくなりましたから、頑張って相性の良いエージェント・会社を見つけてくださいね。
この人なら安心できるぞ!と思えるエージェントが見つかったら、早速、査定書を作ってもらいます。物件情報・成約事例や販売中の物件情報・査定書をGETできますから、自分でこの内容を精査してください。店舗付き住宅・二世帯住宅・注文建築などは少し難しいかもしれませんけど、築年数が20年未満の木造戸建てやマンションであれば難しくはありませんよ!
直近の成約事例、現在販売中の物件がどれくらいの期間販売しているのか?値下げしたことはあるのか?をチェックすれば、大体の相場をつかめてくるでしょう。相場をつかめたら、査定書の金額と見比べ、自分なりの査定金額を考えてください。
ここまでできたら、その査定金額±5%で実際に販売している近隣の物件をネットで検索してみます。スーモ・アットホームなどのポータルサイトや、三井不動産・野村不動産などのWebページでチェックしてみるのがオススメです。「自分が探しているならこのマンション・戸建・土地を購入するかな?」という視点でチェックするとわかりやすいでしょう。
簡単な具体例を挙げてみます。
築10年・3LDK・南道路接道・駅徒歩12分の自宅(戸建)を5,000万円と査定しました。4,500万円~5,500万円の中古戸建・新築一戸建てを検索してみたら、次の新築一戸建てがヒットしたとします。
■ 新築・3LDK・南道路接道・駅徒歩15分が5,200万円
■ 新築・3LDK・南道路接道・急行停車駅徒歩10分が5,500万円
自分でこの3件を比較したら…どれを選びますか??
少なくとも、この条件だと、自分が売却したい中古戸建を選ぶ可能性は低くなりそうですよね。ということは「5,000万円だと高い」ということです。風水にこだわった家・超人気学区域にギリギリ入っているなどのプラスに働く事情がなければ、金額を下げる判断をしてくださいね。
かなり簡単な事例でお話しましたけど、資料を集めて、自分が購入するつもりになってじっくり見てみたら、もらった査定書の金額が妥当かどうか…はある程度わかるものです。10社に査定してもらう必要なんてありませんよ!
逆に、10社から査定をしてもらうと、口がうまい営業マンに騙されてしまうリスクが高まります。「私は騙されない!」と思っている人の方が騙しやすい…そんな話を聞いたことありませんか…?十分、気を付けてくださいね。
ちなみに…
「相続税路線価」を使って土地の金額を算出する人がいますけど、土地・戸建の査定では使っちゃダメですよ。不動産鑑定士とか一級建築士のサイトとかに「路線価も参考に…」とか書いていますけど、これは本当に参考でしかありません。路線価を基に計算したら間違う可能性大!!です。相場の70%・80%を前提にしても間違いますからご注意を。
査定より高い金額で販売スタートしてOK!という当然の事実を忘れずに!
信頼できるエージェント・魅力的なサービスがある会社を選び、そこで査定をお願いします。その金額が自分の思う金額より安いのであれば、ちょっと高めに販売をスタートしてもらえるようにエージェントと相談してください。断られることはまずありませんから安心して大丈夫です!(相場+10%とかだとキツイかな…)
「希望の金額よりも査定金額が安かったから…」そんな理由で高値査定をしてくれる不動産屋さんを探す…これはハッキリ言って悪手です。
高値査定するだけなら簡単。
問題なのは「販売力」ですからね。
最後に…
AI査定はもっと精度が高まれば積極的に利用してOKだと思います。現時点では、信用し過ぎたらダメですけど、少しずつ役に立つサービスにはなってきていると感じています。うまくサービスを使って納得のいく不動産売却を実現してください!
なお、このWebサイトではAI査定を導入しないの?という声もありましたけど、他のサイトで確認できるから、それで良いのかな…と思っています。AI査定をこのページに設置することは可能です。でも、月額利用料が発生します。それなら、AI査定を入れずに仲介手数料を下げた方が良いよね??と考え、設置は予定していません。ごめんなさい。(自社開発は費用がかかるのでムリです…。)
というわけで、本日はここまでです!
長文記事を最後までお読みいただきありがとうございました。
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