不動産申し込み「1番手」になる条件とは?「2番手」を優先する時の注意点
売却中の不動産に複数のお申し込みが同時に入ってくることがあります。本当にうれしいお話ですけど、どちらのお客さまに売るか…ちゃんと決めなければならず、悩ましい問題になるでしょう。そこで、この記事では、「1番手」「2番手」の決め方と注意点を解説したいと思います!
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
不動産購入申込が2件同時に入ったら…どうする?
早速ですけど、イメージしてください。
皆さまは中古マンションを5,000万円で販売しています。この物件に、なんと!購入申込が同時に2件入ってきました。それぞれのお客さまの条件は次の通りです。
先のお客さま…
2組目に内覧されたファミリーでした。とても気に入ってくれて、内覧したその日の内に4,900万円で申込してくれました。とても良い人たちですが、100万円の価格交渉があり、住宅ローン審査はこれからになります。
後のお客さま…
1組目に内覧されたファミリーで、奥さんとお子さんだけで先に内覧していました。申込が入ったことを知り、すぐにご主人も内覧して、満額の5,000万円で現金購入するから1番手にしてほしいと言っています。
さぁ、みなさんはどちらを選びますか?
難しい問題ですねぇ~
■ どのように決めればいいのか?
■ 注意点は何か?
一緒に考えていきましょう。
不動産申込の「1番手」とは…?
先に「1番手」「2番手」という言葉の定義を考えてみたいと思います。
不動産取引の実務では「1番手」について明確な定義づけがされていません。
たとえば、
■ 購入申込書を先に入れた
■ 住宅ローンの事前審査が通った
■ 事前審査が通って交渉も成立した
など、営業マンや不動産会社によって言うことが変わります。そこで、ゆめ部長が考える「1番手」の定義を書いておきます。
「1番手」の「番手」は交渉する権利の順番だと考えます。交渉する権利は、住宅ローンの事前審査が内定済みであり、不動産購入申込書の提示による意思表示ができていることで発生します。
先ほどの例で考えてみると…
先に申込をしたお客さまは、住宅ローンの事前審査を通していないので、後に申込をした現金購入のお客さまが「1番手」となります。もし、先に申込をしたお客さまの事前審査が内定済みであれば、不動産購入申込書を提示した順番通り、先に申込をしたお客さまが「1番手」、後に申込をしたお客さまを「2番手」とします。
「1番手」が交渉を開始。条件がまとまれば「契約予定」となり、原則として、1番手のお客さまと契約します。
なお、この時点では売買契約は成立していません。そのため、2番手を繰り上げるかどうか…再考の余地はあるでしょう。
ただし、2番手を優先するために1番手を断ってしまうと、2番手がキャンセルになったとき、1番手・3番手・4番手…と、どんどん縁が切れていくことがありますので、金額だけで判断しないようにしましょう。
2番手が入っても1番手に誠意をもって対応しよう!
購入申込を同時にもらえた時、どちらを優先するべきかについては、下記2点を踏まえて売主さまへアドバイスしています。
■ 交渉がどの段階まで進んでいるのか?
■ それぞれのお客さまが希望する契約条件はどうか?
次の2つにわけて考えてみましょう。
【1】価格交渉を承諾して契約日が決まっている場合
【2】ほぼ同時に申込が入った場合
【1】価格交渉を承諾して契約日が決まっている場合
価格交渉を承諾して契約日まで決まっていれば、既に「契約予定」になっている状態です。この場合は、1番手の申込を優先させるべきです。
交渉が通り、契約日をセッティングできた時点で、住宅ローンの審査・契約のための印紙購入・日程調整などの準備を進めています。それにもかかわらず、1度まとまった交渉を一方的に破棄すれば、信頼を裏切ることになってしまいますからね。
しかし、2番手の申込が満額であり、どうしても高値での成約を目指したい場合もあるでしょう。
この場合は、2番手のお客さまをすぐに繰り上げるのではなく、1番手のお客さまに「2番手のお客さまは価格交渉なしです。満額での購入を検討してください。」と連絡して、買い上げの機会を提供してください。
1番手のお客さまが「買い上げはNG!」という回答であれば、2番手を繰り上げるのは仕方ありません。1番手のお客さまは納得できないかもしれませんが、これなら誠意をもって対応したと言えるはずです。
ただし、2番手を繰り上げる場合は次のことも考えて総合的に判断しましょう。
(1)住宅ローン ある・ない
(2)価格交渉 ある・ない
(3)特約 ある・ない
(4)手付金額 多い・少ない
(5)契約可能日 早い・遅い
(6)引渡可能日 早い・遅い
(7)お客さまの人柄 良い・微妙…
少し解説を入れておきます。
自営業者・転職して間もない・営業職で年収の増減が激しい・契約社員・物件価格に対する年収がギリギリなど、住宅ローンの審査が厳しそうなら、確実に契約できそうなお客さまを優先させた方が良いと思います。
また、買主さまが住み替えで、自宅の売却が解約になったら購入の契約も解約する「買替特約」を付けて欲しいという要望があった場合も同様です。
このように、どちらのお客さまを優先させるか?は、個別に考えることです。2番手の購入申込も入った場合は、1番手で「契約予定」にしたお客さまが最優先であることを前提にしつつ、ゆめ部長と一緒に検討しましょう。
【2】ほぼ同時に申込が入った場合
ほぼ同時に申込が入ったのであれば、数時間の差は気にせず、条件が有利な方を選択してよいでしょう。
条件が良い方を1番手としたら、2番手になったお客さまには、不動産屋さんから丁寧に連絡してもらうようにお願いしてください。ちゃんと連絡・報告をしていれば「2番手を確保してほしい」と言ってもらえることもありますからね。
余談…(グチと批判なので読み飛ばしてOKです)
不動産屋さんは「1番手」を明確に定義づけしたくありません。なぜなら、他社から申込みが入っていても、自社で両手仲介できる可能性を残しておきたいと考えているからです。
わかりやすいように、よくある話を紹介します。
他社から申込が入りました。既に住宅ローンの事前審査が内定していて、満額購入で週末に契約予定となっています。「契約予定」の状況ですね。
この申込が入った後、自社のお客さまが「どうしても購入したい!」と言ってきました。他社のお客さまを断り、自社のお客さまを優先できれば、この不動産屋さんは「両手仲介」できることになります。
そこで、「契約予定」の状況であるにもかかわらず、「2番手のお客さまが現金購入なので、売主さまがこちらのお客さまと契約したいと言っています。」というウソを言います。なぜ、ウソなのかと言うと、実は、現金購入ではなく、住宅ローンの事前審査すら通していないことが多すぎるからです…。
ヒドイですよね(怒)
この話、売主さまにデメリットしかありません!売主さまは不動産屋さんが両手仲介できるかどうかなんて関係なく、確実に、高く、早く、安全に取引できることを期待しているからです。
「1番手」「2番手」「契約予定」などと言葉を明確にしておけば、売主さまが悪い不動産屋さんに騙されることがなくなり、取引の安全を図ることができますよね。このケースでいえば、売主さまは「2番手を優先する理由はなんですか?念のため、買主さまの住宅ローン事前審査の内定通知書を見せてください。」と言えれば、このウソを簡単に見破れます。まぁ、偽造したり、個人情報が…とか言って見せてくれない可能性もありますけど。
参考記事…
2番手を優先したらキャンセルされた ⇒ 1番手も契約にならない…「不動産あるある」
売却中の不動産に複数の申込が入った場合、2番手を優先すると、1番手は購入意欲を失う!という「不動産あるある」があります。特に、2番手を繰り上げるときに1番手を雑に扱うと、後でしっぺ返しをくらうことが多くなります。
こんな感じです ⇒
価格交渉がまとまって売買契約を日曜日にセット。ところが、木曜日に、現金・満額で購入したいお客さまが現れ、契約予定としていた1番手に即・お断りの連絡をしました。
ところが、土曜日の夜、2番手がキャンセル。
慌てて1番手のお客さまへ電話。
「良かったですね!」
「契約がキャンセルになりましたよ!」
蔑ろにされた1番手。
どう思うでしょうか?
ほとんどのお客さまが「ラッキー」とは思わず、気持ちが冷めきっているものです。それどころか、雑な扱いをされたことへの怒りもあり、営業マンにカウンターパンチを食らわせます。
「この物件はご縁がなかったと思います。」
「ガチャッ!!!」
「ツーツーツー…。」
その後、連絡はつながりません。
不思議なことに、この後、内覧が入ることすらなくなり、仕方なく値段を下げざるを得なくなる。こんなことが、実は、不動産取引ではよくあることなのです。
不動産売買契約は「買います」「売ります」の口約束だけでは成立しない!
不動産取引は口約束だけで成立する諾成契約 ( だくせいけいやく ) ではありません。売主さまが「購入申込書」を受け取り、買主さまへ「売渡承諾書」を渡したとしても、まだ売買契約は成立していないのです。(売買契約書への署名捺印+手付金の授受が契約成立のの要件になるのが一般的)
民法の定めでは、意思表示の合致で契約は成立しますから、「買いたいな!」「じゃあ、売るよ!」で成立します。不動産の売買契約は民法の定めとは異なるということを知っておいてくださいね。
参考記事…
「売主の立場」と「買主の立場」で言うことは逆転する!
住み替えをサポートしたお客さまの話。売る時と買う時で、1番手・2番手の取扱いに関して主張が変わってしまい驚いたことがあります。
売る時の主張…
少しでも高い金額で売りたいし、売主のリスクが少ない買主を選びたい!売買契約前であればノーペナルティでキャンセルできるわけだから、こちらの都合で売る相手を決めたっていいはずだ!なんで、1番手をキャンセルして2番手にしたらダメなんだ!?あなたは私たち売主の味方をする気がないのか!
買う時の主張…
価格・手付金額・引渡時期などの交渉がまとまって契約準備をしているのに、急にキャンセルして他の人と契約したいなんて、あまりにも不誠実で非常識だ!
売る立場と買う立場。立場が逆になると、主張も逆になる。まぁ、人間らしいな…と思うところですけどね(苦笑)
お客さまは「自分は大切に扱われて優遇されるはずだ。」と思い込んでいることが多く、相手の立場を考えられなくなるものです。「高額な商品を売買するんだからおもてなしされたい!」と心のどこかで思っているのでしょうね。そこを理解しておくと裏切られたときのキズが小さくて済むかもしれません。
最後に…
不動産売却は、売り方1つで大きく成果が変わるものです。申込が入った時に、迷わず自信を持って「GO!」を出せるように、信頼できる担当者と事前準備をしっかり進めておくようにしてください。特に、譲ってもOKな条件、絶対に譲りたくない条件については、しっかり話し合うことをオススメします。
皆さまの売却がうまくいきますように!!
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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