2番手の購入申込を受け付けるときは要注意!そもそも1番手にする条件は…?宅建マイスターが売主さまの注意点を解説します!
売却中の不動産に複数のお申し込みが同時に入ってくることがあります。本当にうれしい悲鳴ですが、どちらのお客さまに売却するかをきちんと決めなければいけません。この記事では、2つの申込のどちらを選ぶのか…選び方と注意点を解説話したいと思います。
不動産業界15年・宅建マイスター(上級宅建士)・2級FP技能士の「ゆめ部長」が心を込めて記事を執筆します!それでは、さっそく目次のチェックからいってみましょう~
不動産購入申込が2件同時に入ってきたら…どうしますか?
早速ですけど…頭の中でイメージしてみてください。
皆さまは5,000万円で中古マンションを販売しています。この物件に、なんと!購入申込が同時に2件入ってきました。それぞれのお客さまの条件は次の通りです。
先のお客さま…
2組目に内覧されたファミリーでした。とても気に入ってくれて、内覧したその日の内に4,900万円でお申し込みをしてくれました。とても良い人たちですが、100万円の価格交渉があり、住宅ローン審査はこれからになります。
後のお客さま…
1組目に内覧されたファミリーで、奥さんとお子さんだけで先に内覧していました。申込が入ったことを知り、すぐにご主人も内覧して、満額の5,000万円で現金購入するから1番手にしてほしいと言っています。
さぁ、みなさんはどちらを選びますか? 難しい問題ですねぇ~
どのように決めればいいのか、注意点は何か?一緒に考えていきましょう。
不動産購入申込者の「1番手」とは…?
先に「1番手」「2番手」という言葉の定義を考えてみたいと思います。
不動産取引の実務では「1番手」という言葉の定義が曖昧で、明確な定義づけをされていません。もしかしたら定義はあるのかもしれませんが、みんな使い方がバラバラです。
■ 先に不動産購入申込書を入れたから「1番手」
■ 住宅ローンの事前審査が通ったから「1番手」
■ 事前審査が通って交渉も成立したから「1番手」
など、営業マンによって、両手仲介を狙う会社都合によって、言うことが変わってきます。そこで、ゆめ部長が考える「1番手」の定義を書いておきます。
「1番手」の「番手」は交渉する権利の順番だと考えます。交渉する権利は、住宅ローンの事前審査が内定済みであり、不動産購入申込書の提示による意思表示ができていることで発生します。
先に申込をしたお客さまが住宅ローンの事前審査を通していなければ、現金購入のお客さまが「1番手」となります。事前審査が内定済みであれば、不動産購入申込書を提示した順番通り「1番手」「2番手」とします。
「1番手」が交渉を開始して条件がまとまれば「決定」となり、原則として1番手のお客さまと契約します。
なお、民法の定めと異なり、この時点では契約がまだ成立したことにはなりません。そのため、2番手を繰り上げる再考の余地はあるでしょう。ただし、次の2点は注意が必要です。
注意1…
契約直前に自己都合で申込をキャンセルすれば、損害賠償請求されるリスクはあるそうです。
注意2…
せっかくのご縁を自己都合で切ってしまうと、他のご縁も全て切れてしまうことがあります。(不動産あるある)
1番手で即決定してOKなパターンはこんな感じです。
■ 現金購入(住宅ローンなし)
■ 満額購入(値引き交渉なし)
■ 即日契約OK
■ 人柄も良くて安心!
■ 引渡期日が1ヶ月半後
■ そのほか条件なし
2番手が入っても1番手の購入申込に誠意をもって対応するのが大原則!
ゆめ部長は下記2点を踏まえて売主さまへ対応策をアドバイスしています。
■ 交渉がどの段階まで進んでいるのか…?
■ それぞれのお客さまが希望する契約条件はどうか?
交渉の進捗状況を2つにわけて説明しましょう。
【1】価格交渉を承諾して契約日まで決まっている場合
価格交渉を承諾して契約日まで決まっていれば、既に「決定」している状態です。この場合は、1番手のお申し込みを優先させるべきです。
交渉が通り、契約日をセッティングできた時点で、住宅ローンの審査・契約のための印紙購入・日程調整などの準備を進めています。それにもかかわらず、1度まとまった交渉を一方的に破棄すれば、信頼を裏切ることになってしまいますからね。
しかし、2番手の申込が満額であり、どうしても高値での成約を目指したい場合もあるでしょう。
この場合は、2番手のお客さまをすぐに繰り上げるのではなく、1番手のお客さまに「2番手のお客さまは価格交渉なしです。買い上げを検討してもらえませんか?」と説明して、買い上げの機会を提供してください。
1番手のお客さまが「買い上げはNG!」という回答であれば、2番手を繰り上げるのは仕方ありません。1番手のお客さまは納得できないかもしれませんが、これなら誠意をもって対応したと言えるはずです。
ただし、2番手を繰り上げる場合は次のことも考えて総合的に判断しましょう。
(1)2番手の住宅ローンの難易度は?現金購入?
(2)金額と条件を比較してどちらが有利?
条件:契約日・引渡日・手付金の額・特約の有無など
(3)物件の人気度
(4)相場と物件価格
(5)「不動産あるある」リスク
(6)お客さまの購入動機・意欲
自営業者・転職してばかり・営業職などで年収の増減が激しい・契約社員・物件価格に対する年収が不足気味など、住宅ローンの審査が厳しいと判断できるなら、確実に契約できそうなお客さまを優先させた方が良いと思います。
また、買主さまがマイホームの買い替えで、自宅の売却が解約になったら購入の契約も解約する「買替特約」を付けて欲しいという要望があった場合も同様です。
このように、どちらを優先させるかは個別具体的な案件ごとに考えることです。1番手で「決定」したお客さまが最優先であることを前提にしつつ、一緒に考えましょう。
【2】条件交渉中の場合
1組目の住宅ローンが内定済みでも、条件交渉中であれば、まだ「決定」はしていない状況です。そのため、2番手も住宅ローンが内定したら、条件が有利な方を選択することができます。ただし、条件がほぼ同一であれば「1番手」を優先して「決定」しましょう。
グチと批判で余談を…
不動産屋さんは言葉を明確に定義づけしたくありません。なぜなら…他社さんから申込みが入っていても、両手仲介できる可能性を残しておきたいと考えているからです。わかりやすいように、よくある話を紹介します。
他社さんから申込みが入りました。既に住宅ローンの事前審査が内定していて、満額購入で週末に契約予定となっています。「決定」の状況ですね。
この申し込みが入った後、自社のお客さまがどうしても「購入したい」と言ってきました。このお客さまを優先できれば、この不動産屋さんは「両手仲介」できることになります。
そこで「決定」している状況であるにもかかわらず「2番手のお客さまが現金購入なので、売主さまがこちらのお客さまと契約したいと言っています…」という話を作り上げてきます。
…「作り上げる」と言っているのは、現金購入ではなく、住宅ローンの事前審査すら通していないからですよ。
この話、売主さまにデメリットはあってもメリットがありません!売主さまは不動産屋さんが両手仲介できるかどうかなんて関係なく、確実に、高く、早く、安全に取引できることを期待しているからです。
「1番手」「2番手」「決定」などと言葉を明確にしておけば、売主さまが悪い不動産屋さんに騙されることがなくなり、取引の安全を図ることができますよね。
このケースでいえば、売主さまは「買主さまの住宅ローン事前審査の内定通知書を見せてください。」と主張すれば、このウソを簡単に見破れます。まぁ、偽造したり、個人情報が…とか言って見せてくれない可能性もありますけどね。
いかがでしたか…?呆れましたよね?
売主さまの利益を損なう両手仲介を企てた場合、営業停止にできないものでしょうか!?大手であれば1店舗を営業停止にすればよし。依頼者の利益を無視するなんて異常な業界だと思います!
参考記事…
「2番手を優先してキャンセルになると1番手もダメになる」…「不動産あるある」に注意!
売却中の不動産に複数の申込が入った場合、2番手以降を繰り上げると、1番手も3番手以降もダメになる!という「不動産あるある」があります。特に、2番手以降を繰り上げるときに1番手を雑に扱うと、後でしっぺ返しをくらうことが多くなります。
この「あるある」を少し考えてみましょう。
「他の人が検討している」という話を聞くと、「急がなくちゃ!」「こんな良い物件二度と巡り合えないかも!」と、焦って競争してしまいそうですよね。なんとなく、人生経験の中で思い当たる節があると思いますが、どうでしょうか?
営業マンが「この物件は人気物件で、他にも検討している人がいます!」こんな三流トークを繰り返しているのは、それだけ、人の競争心理が強いからなのです。
しかし、この2番手のお客さまは、ふとした瞬間に冷静になり、悪びれることもなくあっさりキャンセルしてきます。激戦を勝ち抜いて競争に勝ったことを認識すると、人は満足して気を緩めてしまうのでしょう。
「焦って契約しようとする人は、キャンセル率がメチャクチャ高い!」これは何度も痛い目に合って学んだ不動産業界の常識です!
話を進めていきます。
残念ながら、繰り上げしてあげた2番手が突然キャンセルになりました…。そこで、営業マンが慌てて1番手のお客さまへ電話をします。
「良かったですね!キャンセルになりましたよ!!」と。
しかし、既に1番手のお客さまは気持ちが冷めているものです。雑な扱いをされたことへの怒りもあり、営業マンにカウンターパンチを食らわせます。
「この物件はご縁がなかったと思います。」
「ガチャッ……ツーツーツー…。」
その後は連絡が途絶えてしまうのは仕方ないことですね。
そして、営業マンにはさらに悲しい出来事が続きます。そうです。3番手以降も同時に熱が冷めてしまっているのです。
不思議なことに、その後は誰からも見向きもされず、売れない状況が続き、値段を下げざるを得なくなるのはよくあること。
高い金額での成約を狙った結果、1番手にも3番手以降にも嫌われ、逆に安い価格でしか売れない。そんな「不動産あるある」リスクがあることを知っておいてください。
不動産業界が水曜日定休なのは「契約は水物」だと言われているのも理由の1つらしいですよ~
参考記事…
不動産売買契約は「買います」「売ります」の口約束だけでは成立しない!
不動産取引は口約束だけで成立する契約諾成契約 ( だくせいけいやく ) ではありません。売主さまが「購入申込書」を受け取り、買主さまへ「売渡承諾書」を渡したとしても、まだ契約は成立していないのです。
民法の定めでは、意思表示の合致で契約は成立しますから「買いたいな!」「じゃあ、売るよ!」で成立します。不動産の売買契約は民法の定めとは異なるという点も踏まえて考えてくださいね。
参考記事…
申込が入った後に値段を上げての再販売はOK?NG?
複数のお申し込みが同時に入ると「もっと高く売れるんじゃないの!?」「金額を上げて再販売してよ!」というお客さまが少なからずいます。
この意見には、賛成できる場合と、できない場合があります。
反対したい場合…
査定書の金額に納得して販売開始したにもかかわらず、お申し込みを受け付けない場合です。売主さまを担当する不動産屋さんだけでなく、買主さまを担当する不動産屋さん、現地を見に来てお申し込みをしてくれた買主さまの信頼まで裏切ることになってしまいます。人をあっさり裏切るのは絶対にやめるべきです!
それに「たまたま」高値でもいいから買いたい人が現れただけかもしれません。売り時を見誤って損をすることがないように、売却する前に近隣相場を調べ、信頼できる担当者を見つけておいてください。
賛成できる場合…
もっと高い金額で販売したかったのに、不動産屋さんに強く説得されて希望よりも安い金額で販売をスタートしてしまった場合です。信頼できない人に任せてしまったという点に落ち度はありそうですが、強引な担当者に「NO!」と言えない人は少なくありません。この場合、1番悪いのは不動産屋さんになりますから、再販売もアリだと思います。
「売主の立場」と「買主の立場」で言うことは逆転する!
上記のお話の中で、売主さま・買主さまがそれぞれどんなことを言っているのか?現場でのやりとりをお伝えしながら、注意点をまとめてみます。
売主さまの主張…
少しでも高い金額で売りたいし、こちらのリスクが少ない買主さんに買ってほしい!売買契約前であればノーペナルティでキャンセルできるわけだから、こちらの都合で売る人を決めたっていいはずだ!なんで、1番手をキャンセルして2番手にしたらダメなんだ!?あなたは私たち売主の味方をする気がないのか!
買主さまの主張…
価格・手付金額・引渡時期などの交渉がまとまって契約準備をしているのに、急にキャンセルして他の人と契約したいなんて、あまりにも不誠実で非常識だ!
それぞれの主張…どう思いましたか?
実はこれ、同じお客さまが住み替えした時に言っていたことなんですよね…。売る立場と買う立場。立場が逆になると、主張も逆になる。まぁ、人間らしいな…と思うところでもありますけどね(苦笑)
お客さまは「自分は大切に扱われて優遇されるはずだ。」と思い込んでいることが多く、相手の立場を考えられなくなるものです。「高額な商品を売買するんだからおもてなしされたい!」と心のどこかで思っているのでしょうね。そこを理解しておくと裏切られたときのキズが小さくて済むかもしれません。
最後に…
“不動産の「悩み・不安・怒り」を解消するぞー✨ のお役立ち情報をツイート ✅ホンネで語るよ ✅業界の裏側…コッソリ教えるよ ✅役立つ知識を集めて発信するよ ✅さんへ優しく解説するね ✅ガンバル不動産屋さ…
— name (@yumebucho) YYYY年MM月DD日
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