「不動産の囲い込み」は違法ではない?|基準・罰則・通報などを都庁で聞いてきた
週刊誌などでも取り上げられて批判されている、不動産業界の悪しき慣習「不動産の囲い込み」ですが、都庁で確認してみたら…なんと!囲い込みをするだけなら宅建業法違反ではないそうです(驚!!)都庁でヒアリングした内容を踏まえて、「売却不動産の囲い込み」に関する「違法」「違反」「罰則」「通報」などの情報をまとめてみます。
なお、この記事を理解するために「不動産の囲い込み」とは?両手仲介を狙う不動産業界の闇を解説 を読んでおいてください!
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
不動産の囲い込みは「宅建業法」違反?
ゆめ部長は先日まで「不動産の囲い込み」は宅建業法(宅地建物取引業法)違反だと信じて疑いませんでした。
ところが!
都庁(不動産業課・指導相談担当)で「不動産の囲い込み」への対応方法を相談していたら…「宅建業者の皆さんが勘違いしていますけど、不動産の囲い込み自体は宅建業法違反ではないんですよ。」という話がありました。
そう言われてみると、明確な根拠条文を見たことがありません。宅建業法や国土交通省が定めた包括的ガイドラインなどを確認してみたら、「成約できるように積極的努力をしなさい!」と書いてあっても「物件を囲い込んだらOUT!」とは書いていませんでした。
ただし、専任媒介(専属専任 or 専任)なのに、レインズへ登録せず、売却不動産の囲い込みをした場合は宅建業法違反です。
レインズへの登録義務【宅建業法】
専属専任:あり
専任 :あり
一般 :なし
ここまでは、宅建業法=行政のお話でした。
次は、法律外の扱いを解説します!
不動産の囲い込みは「レインズ規定」違反?
宅建業法で罰則がないなら、次は、他の規制を検討するしかありません。そこで考えるのが、不動産屋さん専用の物件検索サイト「レインズ(REINS)」の利用規定違反です。
レインズの利用規定を見ると…
売主さまを担当する不動産屋さんが、買主さまを担当する不動産屋さんから問い合わせをもらったら、「正当な事由」がない限り、売却不動産の紹介や内覧依頼を断れません。もし、違反したら、「是正勧告・注意・戒告」を受けることがあります。
と書かれています。
つまり、他社の不動産屋さんから「内覧したい!」との連絡を受けたのに、売主さまの承諾なく断ったらレインズの利用規定違反でOUT!になります。
不動産屋さんはレインズを使えなくなると非常に困りますから、利用規定を無視するわけにはいかないと思います。ただ、この規定を知っている不動産屋さんは少数派でしょう。ゆめ部長でさえ、ブログ記事を勉強するために初めてマジメに読んだくらいですからね。(…反省。)
参考に規定の抜粋を貼っておきますけど
読みたくなければ飛ばしてOKですよ (笑)
レインズ利用規定 第 18 条(客付業者からの物件照会等)
元付業者は登録物件に関し、客付業者から物件詳細照会、現地案内申込みの連絡を受けた場合には、正当な事由がある場合を除いて拒否してはならない。
レインズ利用規程細則 第7条(正当な事由)
規程第 18 条及び第 19 条で定める正当な事由とは次のとおりとする。【1】既に書面による購入等の申込みを受けていること【2】売却等希望価格と購入等希望価格との著しい乖離【3】売却等希望条件と購入等希望条件との乖離【4】依頼者の意思(同時に複数の購入等の申込みの連絡があった場合においては、依頼者及び元付業者が選択権を有するものとする。)
処分規定別表 (3) 業務
物件の不紹介 … 是正勧告・注意・戒告
参考(PDF)…
不動産の囲い込みは「セーフ or アウト?」都庁の回答
次は、都庁でヒアリングしてきた内容とゆめ部長の意見をまとめます!
都庁へのヒアリング結果は…
「売主さまの承諾があるなら」他社の不動産屋さんへ「物件の不紹介=囲い込み」をしても構わないとのことでした。ただし、内覧依頼を断ったのであれば、媒介業務報告書で売主さまへしっかり報告する必要があるそうです。「○○不動産の内覧依頼を断りました。」という感じでしょうか??
なお、「専属専任媒介契約」や「専任媒介契約」はレインズへの登録を義務付けられていますが、この場合でも「売主さまの承諾があれば」レインズに登録した売却不動産の内覧を断っても問題ないと言われました。
「売主さまの承諾」があるということは、「正当な事由」があることになりますから、物件の不紹介=囲い込みをレインズから咎められることもないわけですね。
宅建業法に関して判断する都庁の結論は…
不動産の囲い込みは
宅建業法だとアウトではない!
ただし…
囲い込みするなら
売主さまの承諾を得る必要があり
内覧を断ったら報告しなければダメ!
う~ん…。
不動産会社から「儲けたいから囲い込みしていいですか?」って聞かれて「OK!囲い込んで稼いじゃってよ!」なんていう売主さまがいるのでしょうか。親戚ならOKすることもあるのかな?…いや、しないですよね。
ここからは、ゆめ部長の意見。
ハッキリ言ってしまうと、
これは、絶対ダメだと思います!!
専任物件のレインズ登録義務化の意味がなくなり、不動産の囲い込みを狙う不動産会社に悪用されるリスクが高すぎるからです。
そもそも…「売主さまの承諾」を得て「囲い込み」していることをどうやって確認するのでしょうか?レインズで下記のように書いてくれますか?
取引状況 :公開中【内覧NG】
取引状況の補足:売主許可あり
これなら、レインズ登録証明書記載のID・パスワードで REINS TOWER へログインすることで、売主さまが自分で確認できますからね。まぁ…ありえないでしょうけど。
専任媒介で売却依頼を受けているのであれば、レインズへ登録⇒不動産屋さんのネットワークをフル活用⇒積極的な販売活動を行う!という義務があるわけなので、やっぱり納得できません。売主さまの希望により、特定の不動産会社だけ紹介しないケースであれば理解できますけど、それよりも、レインズへ登録する義務がない「一般媒介」で契約するように指導してほしいものです。
不動産の囲い込みに対する罰則
不動産の囲い込みにはどんな罰則がありえるのか…まとめておきます。
■ 行政責任
宅建業法違反や宅建業者から損害を受けた場合には、国土交通省・都道府県庁に相談することで、宅建業者は「指示処分」や「業務停止処分」の監督処分を受けることがあります。
■ レインズ(REINS)
物件の不紹介については、レインズへ相談することで、宅建業者は「是正勧告」「注意」「戒告」を受けることがあります。
■ 刑事責任
不動産の囲い込みは仲介業者の不正行為にあたり、「詐欺罪」や「背任罪」として刑事責任の対象となることがあるそうです。
■ 民事責任
不動産の囲い込みは仲介業者の不正行為にあたり、「損害賠償責任(不法行為・債務不履行)」も生じる可能性があります。媒介契約書には宅建業者の義務として「契約の成約に向けて積極的に努力すること」が記載されていますから、囲い込みをしたら契約違反になりますよね。
詳細な解説は弁護士先生のWebページで勉強してみてください⇒ 弁護士法人 みずほ中央法律事務所【囲い込み・その他の不正×法的責任|行政/刑事/民事責任】
不動産の囲い込みは通報できる?
不動産の囲い込みは、売主さま・買主さま・他社の不動産屋さんの全員にとって、極めて迷惑な行為です。では、この不動産の囲い込み被害にあってしまったとき、どこかに通報して是正を求めることはできるのでしょうか?
通報するなら…
■ 国土交通省(不動産仲介業者を監督)
■ 都道府県庁
■ レインズ
あたりになるかと思います。
宅建業法違反(専任媒介契約なのにレインズへ掲載しない)なら、国土交通省や物件所在地の都道府県庁に通報、物件不紹介についてはレインズ(東日本・西日本・中部・近畿があります)に通報することになりそうです。
不動産の囲い込みを都庁・レインズに通報してみた!
ゆめ部長が仲良くしている宅建士仲間(悪徳不動産バスターMさん)が、不動産の囲い込み被害にあって物件を案内できなかったので、一緒に都庁・レインズへ通報した結果を公開します。(2020年)
購入をサポートしているお客さまから、悪徳不動産バスターMさんへ連絡がありました。「築5年で希望エリアの中古戸建をネットで見つけたんだけど、一緒に見に行ってくれませんか?」
メールに貼ってくれたリンクから情報を確認してみたら、予算・エリアのどちらもドンピシャ。これは、早く内覧予約を入れなくちゃ!と思い、すぐにレインズを調べてみたら…「未登録」でした。
お客さまが見ていたホームズには「専任媒介」と記載があります。専任媒介なら、媒介契約締結の「翌日」から「休業日を除き7日以内」にレインズへの登録することが宅建業法で義務付けられています。ホームズの掲載日を見ると、火曜日・水曜日が定休日ならギリギリ期限内でしたので、少しだけ待ってみることにしました。
しかし…
1日経過しても、
2日経過しても、
レインズには登録されません。
そこで、
ホームズに掲載している
会社へ直接電話をしてみたら…
仲介会社
「その物件紹介できないんですよね。」
悪徳不動産バスターMさん
『レインズの登録期限過ぎてませんか?』
「ガチャ。」
「ツーツーツー…」
そんな態度で宅建業法違反するのか。
それなら、こっちにも考えがあるぞ(怒)
Mさんから電話を受けたゆめ部長。これは酷い…と思い、明らかな違反だから都庁とレインズへ通報してみよう!という話になり、Mさんが電話しました。
■ 東京都庁:不動産取引相談課
■ レインズ:東日本不動産流通機構
2箇所で囲い込み被害を相談しました!
東京都庁・不動産取引相談課の回答
当事者(売主さま)からの訴えでないと何もできません。当事者が媒介契約書と本人確認資料を持って相談に来れば対応します。
な…なんだと~~
宅建業法34条の2「媒介契約」に違反していることは明らかなのに、処罰するつもりがないと!?レインズの登録義務違反を取り締まってくれないと??「不動産会社からの訴えでは動けない」ということは、売主さまが自分で動くことは考えづらいから、実質的には処罰されないということじゃないか!
そもそも、売主さまは囲い込み被害に気付いていないのだから、買主さま側からの通報でも行政側が動いてくれないと、囲い込み被害をなくすことはできませんよね。
正直、失望しました…。
仕方ありません。次は、レインズの「是正勧告・注意・戒告」狙いです。
レインズ(東日本不動産流通機構)の回答
売主さまから不動産会社に対して、レインズへ登録するように伝えてもらってください。登録完了後に「レインズ登録証明書」を受け取り、それでも、レインズに登録されていないのであれば相談を受け付けます。その際は媒介契約書と本人確認資料が必要です。
いやいや…。それってどうなの?
宅建業法には「国土交通省令で定める期間内にレインズへ登録すること」って書かれているじゃないですか。それを守っていない不動産会社に対して「宅建業法違反は目をつぶるので、レインズに早く登録してください」と「お願い」しなければいけないんですか?信じられない…。
この2つの回答からわかったこと!
レインズの登録義務違反で「両手仲介を狙った売却不動産の囲い込み」をしたとしても、厳しく指導するつもりはなく容認する方向性らしい。
たしかに、囲い込み自体は宅建業法違反ではありません。しかし、専任媒介契約を締結したにもかかわらずレインズへ掲載しないのであれば、積極的に取り締まって罰則を与えるべきでしょう。なんで、不動産会社が守られるのか…。「不思議な力」が働いているのかもしれませんね。というわけで、今回は我々の完全敗北に終わりました。
ゆめ部長からのアドバイス。
行政がダメなら…弁護士先生に相談して民事・刑事で戦ってもらいましょう。きっと、これが悪徳不動産会社にとっては1番痛手になると思います。
弁護士先生への相談は被害にあってしまった後の話ですから、できれば、囲い込みをする悪徳不動産会社の被害者とならないように、不動産会社とエージェント(担当者)をしっかり選んでほしいです!ゆめ部長のような売却専門の「セラーズエージェント」も少しずつ増えていますからね。
最後に…
売主さまの信頼と期待を裏切り、自社の利益だけを追求するための「不動産の囲い込み」は、不動産業界全体で排除していかなければいけません。仲介手数料を支払ってくださるお客さまを裏切ってどうするのでしょうか!?依頼者であるお客さまの利益のために業務を行う義務「フィデューシャリー・デューティー(=受託者責任)」を果たす不動産屋さんが増えることを願っています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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