「一般」「専任」「専属専任」どの媒介契約がオススメ?不動産売却のプロが解説
不動産を売却するときに不動産屋さんと結ぶ契約を「媒介契約」と言います。「媒介」は「仲介」と同じ意味で、契約形態は「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。
専任媒介と一般媒介の違い、専属専任媒介と専任媒介の違い、メリットやデメリットをそれぞれ説明しながら、皆さまがどうやって選べば良いのか…参考になるように解説したいと思います。
この記事の内容を理解できていれば、あなたは不動産屋さんにとって「手ごわい売主」です。さぁ、一緒に勉強していきましょう!
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
不動産売却の媒介契約3つの形態
先ほども書いた通り、媒介契約は全部で3種類あります。大きな違いで分けると、1社の不動産屋さんにしか売却を依頼できない「専任」と、複数の不動産屋さんに売却を依頼できる「一般」の2つになります。
「専任」はさらに2つに分かれます。自分で買主さまを見つけても不動産屋さんを通して取引しなければいけない「専属専任」と、自分で買主さまを見つけたら不動産屋さんを排除して取引できる「専任」です。
イメージしづらいと思いますので、3つの媒介契約を順番に解説していきますね。
用語解説「レインズ」…
不動産会社専用の物件検索サイトのことです。 ここに情報登録すれば、東京都だけで2万社以上ある不動産屋さんのネットワークを使って購入希望者を探せるようになります。売却情報を簡単に拡散できるようになります!
参考記事…
【1】専任媒介契約
媒介契約を結んだ不動産屋さん1社に売却を任せることになります。複数の不動産屋さんに売却を依頼することはできません。
ここまでは次の【2】専属専任媒介契約と同じです。
「専任媒介契約」と「専属専任媒介契約」の大きな違いは、売主さまが自分で見つけた購入希望者と売買契約を締結する「自己発見取引」が認められるかどうか…です。
自己発見取引が認められるか??
専任媒介契約 :OK
専属専任媒介契約:NG
専任媒介契約は「OK」なので、売主さまが自分で購入希望者を見つけた場合、売却を依頼している不動産屋さんを排除して売買契約することが認められます。つまり、プロの不動産屋さんがいなくても自分たちで売買契約できるのであれば、仲介手数料を支払わなくて済むということです。
次に、不動産屋さんの義務を確認しましょう。
売主さまの制限が厳しい順番に並べると…
専属専任 > 専任 > 一般 となります。
売主さまの制限が厳しいなら、不動産屋さんも同じように制限が厳しくなるのは当然のことですね。では、具体的にどのような制限を受けるかと言うと…
■ 「レインズへの物件情報登録」は7営業日以内
■ 「媒介業務報告」は2週間に1回以上
となります。
【2】専属専任媒介契約
媒介契約を結んだ不動産屋さん1社に売却を任せることになり、複数の不動産屋さんに売却を依頼することができないのは、専任媒介契約と同じです。
異なる点は、自己発見取引が認められないということでしたね。
売主さまが自分で購入希望者を見つけてきたとしても、媒介契約期間内であれば、売却を依頼している不動産屋さんに仲介手数料を支払って売買契約を締結しなければいけません。
自己発見取引があるとすれば次のような場合でしょうか。
■ 会社の同僚・友達・親族が購入する
■ 近隣の人が購入する
■ 不動産買取会社を自分で探す(やらないでしょうけどね。)
不動産屋さんの義務を確認しましょう。
専属専任媒介契約は売主さまの制限が一番厳しいため、不動産屋さんの制限も一番厳しくなります。
■ 「レインズへの物件情報登録」は5営業日以内
■ 「媒介業務報告」は1週間に1回以上
専属専任媒介契約を締結しておきながら、「両手仲介を狙った囲い込み」をしてレインズに掲載せず、媒介業務報告も行っていない不動産会社はたくさんありますので注意してください!
【3】一般媒介契約
複数の不動産屋さんに売却を依頼で、売主さまも不動産屋さんも制限をほとんど受けなくなります。
■ 複数の不動産屋さんへの売却依頼:OK
■ 自己発見取引:OK
■ レインズへの物件情報登録義務:なし
■ 媒介業務報告義務:なし
レインズ利用規定では、積極的にレインズへ登録することを要請していますけど、この要請を知ってか知らずか…レインズへ掲載しない不動産屋さんの方が多数派だと言えます。
平成29年4月1日で次のような改正がありました。
不動産屋さんは一般媒介契約を締結していたとしても、成約に向けて「積極的に」努力する義務を負うことになりました。今までは単純な「努力義務」だけでしたが、専任媒介と同じ「積極性」を求められるようになったのです。
「努力義務」から「積極的努力義務」
こんな改正をされなければいけない不動産業界って…悲しすぎます。
2018年10月21日追記…
都庁に聞いてみましたら…「積極的努力義務」になってもレインズへの登録義務はなしのままになるそうです。それで売主さまに対して積極性をアピールできるのかな…?と思いましたけど、よく考えてみれば、売主さまと不動産屋さんが約束した契約内容の中で積極的に頑張れば良いわけですから、必ずしもレインズに登録しなくてもいいんですよね。レンズへ登録しなければいけない義務が生じると、「手数料0円売却」は実現できなくなるところでした…。
専任・専属専任で「囲い込み」が横行している!
専属専任媒介契約と専任媒介契約では、レインズへの登録義務があることは説明しましたね。この義務は宅建業法で定められたものですから、期限内にレインズへ物件情報を登録しなければ法律違反になってしまいます。
ところが…レインズに情報を登録していない会社が信じられないほどたくさんあります。大手の仲介会社であれば、レインズに登録しないことはさすがに少ないですけど、販売図面を掲載しなかったり、担当者に取次ぎをしないことで、実質的に「囲い込み」をしていることは多くあります。
2024年10月現在も囲い込みが横行してヒドイ状況です。媒介契約の選び方を学んで問題点を把握し、不動産屋さんに騙されないように注意してください!
用語解説「囲い込み」…
売主さまと媒介契約を結んだ不動産屋さんは、自社で買主さまを見つけることができれば、売主さまと買主さまの双方から仲介手数料をもらうことができます。(両手仲介)しかし、他の不動産屋さんが買主さまを見つけてしまうと、買主さまから仲介手数料をもらえず(片手仲介)売上が1/2になります。自社の利益を優先するために、物件情報を業者間で共有せずに隠してしまう行為を「囲い込み」といいます。
参考記事…
「専任」と「一般」のメリット・デメリットを比較
【1】メリット
専属専任媒介契約と専任媒介契約
不動産屋さんは売主さまからの仲介手数料「3%+6万円」を確保することができますので、安心して広告掲載に経費を充てることができます。また、一般媒介と異なり、タダ働きになる可能性が低く、時間と労力も投入しやすくなります。
担当者のやる気を引き出すことができ、広告費をかけてもらえる。
これがメリットだと言えます。YouTubeなどを見ていると、この点に批判的な人もいます。しかし、大手・中堅・零細で勤務した経験から言わせてもらうと、絶対に大事なポイントだと思います。
一般媒介契約
「専任」で囲い込みをされてしまった場合、売主さまが自分で見破るのは難しいでしょう。物件情報を限られたお客さまにしか届けられなくなり、相場よりも安い金額で売却することになるリスクがあります。
それに対して「一般」であれば、依頼した不動産屋さんの全てが囲い込みをしたとしても、それぞれの会社が成約を目指して頑張って広告をしてくれます。また、「欲張って両手仲介を狙いタダ働きするくらいなら、片手仲介でもいいから利益を上げたい!」と考え、他社の仲介会社さんに物件を紹介させてくれる不動産屋さんも出てきます。
つまり、完全に情報がシャットアウトされることはない!ということです。
もう1つメリットをあげると、複数の不動産屋が査定価格を出してくれますから、相場からズレた「安すぎる金額」で売却するリスクも回避できるでしょう。
査定書を並べてみるとわかりますけど、「安く売却依頼を取れたらラッキー♪」と考えている不動産屋さんもいるので注意が必要です。この人たちは、安い金額で不動産買取会社に情報を流すことでお小遣い稼ぎしようとしています。(…内緒ですよ。)
【2】デメリット
専属専任媒介契約と専任媒介契約
とにかく囲い込みされるリスクが最大のデメリットでしょう。
販売力がある会社でならまだいいですけど、賃貸がメインで売買はよくわからない…という会社に囲い込みをされてしまうと、いつまで経っても成約にならず、最後は疲れて安い金額で投げ売りしてしまうこともあり得ます。
売却力はなくても、口がうまい。それが不動産屋さんですからね。
一般媒介契約
会社からの広告費が削られて、担当者は仕事の優先順位を下げる可能性大です。なぜなら…他社で成約になればタダ働きになるだけでなく、広告費分が赤字になるからです。
せめて、集客したお客さまを他の物件へ振り替えられるならいいですけどね…。
一所懸命働いて損をするなんて、そんなの誰でもイヤだと思います。家族を守るために慈善事業でタダ働きしている暇はありませんし、信用して売却を任せてもらえていない時点でやる意味なんてありません。だから、ゆめ部長は一般媒介契約を受けていないのです。
雑誌・ブログなどでは「一般媒介で不動産屋さんに競争させましょう!」という記事をよく見ますけど、上記のような業界の問題点を理解できていれば、本気の競争を期待できないことはすぐにわかると思います。
ちなみにですけど…。
ゆめ部長が買主さまを担当する場合で、ご案内する物件が一般媒介なら「価格交渉のチャンス!」だと考えます。なぜなら、売主さま側の担当者さんは、タダ働きしたくないから売主さまを必死に説得してくれる可能性が高いからです。
この時ばかりは、いつもは係わりたくないゴリゴリの営業会社を選んで価格交渉をお願いしちゃいます(笑)
参考記事…
3種類の媒介契約からどれを選べばいいの?
【1】不動産屋さんの立場
広告費をたくさんかけられることや、複数の会社に依頼すると管理が大変になることをアピールして「専任媒介契約」を強く勧めてきます。
「専任媒介契約」なら両手仲介できなくても、成約価格×3%+6万円の仲介手数料を確保できるため安心して仕事に取り組めます。「専属専任媒介契約」だと媒介業務報告が大変だし、「一般媒介契約」だと他社に決められてしまえばタダ働きになるからです。
ゴリゴリした会社ですと「専属専任」を取ろうとしてきます。なお、不動産屋さんが「一般」を勧めてくることはまずないと言えます。売主さまが「一般」にしたいと言うので仕方なく受け入れているのです。
もし「一般」を勧めてくるのであれば、媒介報告が不要で、レインズへの掲載義務がないからでしょう。つまり、囲い込みをする気満々だということですね。気を付けてください!
【2】住宅情報誌・FP・一括査定サイトなどの立場
もっともらしく説明することができますので「一般」を推しています。
「不動産屋さんに騙されないために1社に任せたらダメなんですよ!」という注意喚起をすれば、なんとなく良いこと言っている感じになりますよね。不動産取引の現場を知らないFP(ファイナンシャルプランナー)に、いったい何がわかるというのだろう…というのがゆめ部長の意見です。
一括査定サイトへ誘導しようとする記事は特に要注意です。
記事を読んでいると「不動産取引のシロウト」がアフィリエイト広告を稼ぐために、不動産屋さんの査定を受けさせようとして必死です。「一括査定」の情報は全く信用できません。
一括査定サイトへの誘導目的の記事は、FPだけでなく不動産鑑定士が作ったサイトでも変わりません。アフィリエイト広告を狙わないといけないほど、本業で稼ぐことができないんですかね…。
参考記事…
【3】ゆめ部長が自宅を売却する立場なら…
ゆめ部長が自宅を売却するのであれば、信用できる不動産屋さんを1社選びます。
このとき、担当者さんとの相性も大事ですから、指名できるのであれば自分で選びたいですね。その会社が囲い込みをしないと確信できるか? 担当者さんに営業力と実績があるか?をチェックします。
問題がなければ「専任媒介」で担当者さんに全力で頑張ってもらいます。
しかし、必ずしも納得できる会社・担当者に出会えるとは限りません。その場合は仕方がないので3社に「一般」でお願いします。
多すぎたらダメですし、少なすぎてもダメです。1社は大手、2社目は地元でよく聞く会社、3社目はネットに強い会社にします。まぁ、これは次善策です。
信じて任せる1社は、自分の利益だけを優先してくれる専属エージェントがイイですね。良い条件での成約を目指して一緒に戦ってくれる存在は間違いなく心強いでしょう。
ゆめ部長の売却サポートなら、早期・高値での成約を目指して綺麗な写真や資料を全力で準備します。他社の不動産屋さんを味方に付けて、ネットワークをフル活用。この写真や資料と一緒に売却情報をうまく拡散できれば、「一般」で10社以上に依頼するよりも大きな効果を期待できます。買主さま同士で勝手に競争してくれる状況を作れるのがベストですね!
参考記事…
【4】一般・専任・専属専任のウエイトに関するデータ
2015年1月実施の少し古いデータですけど、「一般財団法人土地総合研究所アンケート調査」によると、各媒介契約のウエイトは次の通りです。
一般 | 専任 | 専属専任 | |
ほぼ100% | 7.3% | 13.0% | 8.5% |
75%~ | 7.7% | 22.7% | 8.1% |
50%~75% | 8.9% | 13.4% | 3.2% |
25%~50% | 13.4% | 8.9% | 4.0% |
~25% | 31.6% | 15.4% | 13.4% |
ほぼ0% | 21.5% | 18.2% | 45.7% |
無回答 | 9.7% | 8.5% | 17.0% |
合計 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
1番多いのが「専任媒介」
次に使われるのが「一般媒介」
あまり使われないのが「専属専任媒介」
不動産取引の現場で働く感覚とも一致しています!
2022年5月度・レインズの新規登録データ…
■ 1位が専任で18,659件(55.3%)
■ 2位が一般で 9,627件(28.5%)
■ 3位が専属で 5,454件(16.2%)
自己発見取引OKを悪用した取引が行われている!
ちょっと余談を…
自己発見取引が認められることを悪用した取引。実務では結構あるよなぁ…と感じています。ゆめ部長も「裏切り行為だよね…これ。」と思った案件はいくつかあるので事例を紹介しておきます。
ゆめ部長が専任媒介契約で売却依頼を受けた、新宿区・1LDK・投資用区分マンションがありました。高い金額で売れないにもかかわらず、売主さまの要望に合わせて1年ほど売却活動をサポートしましたが、ある日「友達が購入したいと言っているので直接契約することにしました。」とのメールが届き、一方的に媒介契約を解除されてしまいました。
しかもですよ!!
「媒介契約を解除したことを証拠として残したいので、解除した旨を記載したメールを急いで送ってください。」なんて言われました。こんなこと、たいして不動産取引に詳しくもない人が言いますかね~。いや、言うわけがないし。
数か月前から「不動産会社から買取の電話やDMが送られてくるんだけど、これはどうしたらいいの?」という相談がありましたから、おそらく「抜き行為」を狙った不動産会社のアドバイス?に従ってゆめ部長との媒介契約を解除したのでしょう。
…こういうことを平然と行うのが投資家。だから、投資物件はキライ。
都庁に確認してみましたら、不動産会社から送られてくる「売却募集のDM」で購入希望者を見つけても自己発見取引に当たるとの回答でした。「そりゃあ、おかしくないですか!?」と言ってみたら「それを回避したいなら専属専任にすればいい。」とのアドバイスがありましたけど、納得できなくてガッカリです…。
大手勤務時代に「レインズに掲載されている物件にDMを送るのはNG」だと聞いたことがあるんですけど、どちらが正しいのでしょうね…。
長くなったので、グチ混じりの余談はこの辺で終わりにします。
最後に…
信頼できる会社・担当者に出会えたら、迷わず「専任」を選びましょう。
信頼できる会社・担当者に出会えなければ仕方がありません。次善策で3社に「一般」です。10社に「一般」なんてどこの会社も真剣にやらないので、良い条件で成約できるわけがありません。何十人もの不動産屋さんをタダ働きさせておきながら、何も感じないような人に良い結果は訪れないと思います。
戦略を練るのが好きな人って思ったよりも多いんですよね。果たして、不動産屋さんが本当に思い通りに動いてくれるのか?この記事を読み、不動産取引の現場を知ってから考え直してみてくださいね。
ナマイキなことを書きましたけど、皆さまの売却活動を心より応援しています!本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
参考記事…
“不動産の「悩み・不安・怒り」を解消するぞー✨ のお役立ち情報をツイート ✅ホンネで語るよ ✅業界の裏側…コッソリ教えるよ ✅役立つ知識を集めて発信するよ ✅さんへ優しく解説するね ✅ガンバル不動産屋さ…
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