「専属専任」媒介を取得する不動産会社のメリット
3種類ある媒介契約の中で「専属専任」を取得しようとする不動産屋さんがいます。なぜ「専任」ではなく「専属専任」なのでしょうか…?
仕事量を増やしたとしても「専任」ではなく「専属専任」を選んでおけばよかったなぁ…と悲しい気持ちになった被害体験を語りながら、不動産屋さんのメリット解説します。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
不動産売却する時の媒介契約3種類をおさらい!
別の記事で詳しく解説してありますので、簡単な復習だけしておきますね。
媒介契約の種類は全部で3つありました。
■ 一般媒介契約
■ 専任媒介契約
■ 専属専任媒介契約
1社の不動産屋さんにしか売却を依頼できない「専任」と、複数の不動産屋さんに売却を依頼できる「一般」の2つに分かれます。
「専属専任」と「専任」の違いは「自己発見取引」ができるかどうか。
自己発見取引というのは…売主さまが自分で買主さまを見つけたとき、売却を依頼している不動産屋さんを排除して、直接、売買契約を締結することです。
「専属専任」は自己発見取引NGで、「専任」は自己発見取引OKとなります。
拘束力の強さをお客さま視点で見てみると…
一般媒介契約 << 専任媒介契約 << 専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は1社にしか依頼できないし、自己発見取引もできないわけですから、売主さまは強い拘束を受けていますね。
売主さまを強く拘束するわけですから、不動産屋さんも同じく強く拘束されます。具体的には…
■ 媒介契約締結後5日以内にレインズへ情報登録
■ 媒介業務報告は1週間に1回以上行う
「専属専任媒介」を「専任媒介」にすれば、レインズは「7日」以内の登録になり、媒介業務報告は「2週間」に1回以上でよくなります。不動産屋さんにとっては業務量が増えて意外と大変なので、多くの不動産屋さんは専属専任を利用していません。
しかし!ゆめ部長が不動産取引の仕事をする中で考えてしまうのは…「専属専任以外はお断りしちゃおうかなぁ~」ということです。なぜそう思うのか。体験談を交えながらお話していきます。
参考記事…
専任媒介だと「抜き行為」が横行してしまう…
先ほど書いた通り、専任媒介契約は「自己発見取引」が認められる契約形態です。この自己発見取引と言うのが、実はかなりクセモノなので解説します。
「自己発見取引」…この言葉を聞いて、皆さまはどのようなイメージですか??
おそらく、こんな感じではないでしょうか…。
親戚・知人に自宅を売却することを話したら「私に売ってよ!」という嬉しい話をもらえた。あるいは、不動産屋さんに任せていても売れないから、自分で買主さまを探し、うまく見つけることに成功した!とか。
町内会や周辺で自宅売却のアピールを頑張ったり、人によってはTwitterのフォロワーに呼びかける!なんて人もいるかもしれませんね。
自分で努力して買主さまを探し出したぞ!というイメージだと思います。
ところが、この自己発見取引というのは、不動産屋さんから「売却しませんか?」という連絡を受け、売主さまが「売却しますよ!」と応諾した際にも該当する可能性があると都庁で言われました。
不動産を買い取って転売する目的で「不動産を売却しませんか!?」というDMを送っている不動産屋さんがいます。この不動産屋さんからのDMをきっかけとして不動産売却が決まった場合、売主さまが積極的に売却活動したわけではなく、受け身であったはずです。それでも自己発見取引になるというのが都庁の見解らしいです。
参考知識…
個人情報の塊にもかかわらず、誰でも取得できる「登記事項証明書(謄本)」を見れば、不動産の所有者情報(住所・名前など)がわかることが多いので、売主さまへ売却募集のDMを送付することができます。大手の不動産屋さんから、チラシのポスティングだけでなくDM攻撃も受けたりしていませんか?なぜDMできるのか…。これでわかりましたね。(参考知識・終)
この都庁の判断は微妙だと思うのでちょっとグチります。
一斉送付のDMだから特定の不動産をターゲットにしているわけではない…と考えているのかもしれませんが、送付先の不動産がレインズに登録されているかどうかは不動産屋さんなら数分で調べられることです。
登録がある不動産についてはDM送付リストから除外すればいいだけのこと。たったこれだけの作業をせず、売却活動中の不動産へDMを送っているのであれば、媒介物件を奪い取る「抜き行為」を狙った「悪意あるDM」である可能性が高いと簡単に想像できますよね。
売主さまの自己発見取引を容易に認め、一所懸命サポートした不動産屋さんの努力を評価しない考え方が、ゆめ部長には許せません!!
それに、レインズに掲載されている不動産へ売却募集の営業をしたらいけない!という話を聞いたこともありますから、やっぱりこの判断は微妙なものだと言わざるを得得ませんね。
もう少しグチを続けます…
抜き行為により媒介契約が解除され、他社で契約したことに対して売主さまへ違約金を請求するなら、抜き行為があったことを立証する責任が違約金を請求する不動産屋さんにあるとも言われました。
こんなの立証できるわけがありませんよね。「レインズを見てDM送付してきた不動産屋さんとあなたが契約した証拠を掴みました!」とか言うんですかね??ムリでしょ…これ。
まぁ、都庁の担当者も人によって言うことが変わりますから、どこまで信用していいのか微妙ではありますけど。
「抜き行為」なのか「自己発見取引」なのかを判断しづらいことを利用して、不動産会社・売主さまが結託していることは結構ある!これが不動産取引の現場です。
売主さまに裏切られた…?悲しい被害体験
ゆめ部長が「専任媒介契約」で1年お付き合いした新宿区の投資用物件での被害体験をお話しましょう。
売主さまがリノベーション済みの部屋をサブリース付きで購入したワンルーム。サブリース契約付きで表面利回りが悪く、投資物件としては魅力があまりないためお問い合わせが全くありませんでした。
正直、このままでの成約は難しいので次の提案をしました。
■ サブリース契約を解除する
■ 賃借人が退去したら居住用として販売する
■ 最終的には値段を下げる
しかし、何もしてもらえず、気が付けば1年経過。サラリーマンとして勤務していた時の案件ですから媒介を断ることができなかったんですよね…これ。
売却活動が1年を超えた頃、売主さまからこんな相談メールが届きました。
最近、不動産屋さんから電話や手紙で何度も連絡が来ているんだけど、ゆめ部長に連絡するように伝えてもイイのかな??
もちろん、大歓迎のお話ですから、すぐに連絡先を伝えて欲しいとお願いしました。ところが…。その次の連絡が「自分の知り合いが購入したいと言っているので媒介契約を解除したい。」という申し出でした。
どう考えても、タイミングがおかしいですよね。
しかし、ゆめ部長が抜き行為を立証することができないため、この申し出を受け入れるしかありませんでした。
おそらく、これはこのワンルームを購入する不動産会社からの入れ知恵だったはず。「知り合いに売却することになったと言えば大丈夫」なんてアドバイスをしたのでしょうね。
結局、売れもしない高値で1年以上も販売サポートをしましたから、媒介報告書は「NO,30」くらいにまでなってしまいました。もう…本当にムダな時間を使わされてしまい悲しくなります(涙)
仲介手数料が成功報酬になっていることも、こんなタダ働きが増える要因です。ゆめ部長は、ハッキリ言って怒っているんですよーーー(怒)
ちなみに、なぜ売主さまがこの提案を受けるか…皆さん、わかりますか?
裏側を隠さず正直に言ってしまいますと、買い取り業者が直接買い取る場合は仲介手数料がかからないからです。
ゆめ部長が勤務していた会社が仲介に入ると、ゆめ部長の会社に対して、売主さまと買主さまの双方が仲介手数料を支払うことになります。この仲介手数料2つ分を削減することで、買い取り業者は希望金額にすることができたのでしょう。
投資家案件は何度かこんな体験をしてきました…。だから、ゆめ部長は投資用物件があまり好きではないんです。裏切られると、ホント、疲れちゃいますよね。
「自己発見取引を装った抜き行為」被害への対応策は?
専任媒介契約では自己発見取引がOK
だから「抜き行為」されるリスクが高い
というお話をしました。
この点、都庁にヒアリングした内容をまとめておきます。
明らかに怪しい経緯で媒介契約を解約するのであれば、自己発見取引の状況や誰と売買契約するのか…などについて、売主さまから報告を求めたいですよね。不動産会社からの入れ知恵でないことについて一筆もらうか、売買契約書の写しを見せてもらうとかの対応策ができないか聞いてみました。
「自己発見取引じゃなくて抜き行為だ!」という主張の立証責任はゆめ部長側にあるため、それができないのであれば、最初から「専属専任媒介」で契約を締結すれば良いとのことでした。
結局、どんなに一所懸命・マジメに仕事をしていたとしても、不動産屋さんが弱い立場に置かれてしまうみたいですね…。
というわけで、不動産屋さんが自分を守るためには「専属専任」が一番良い選択肢になるのです。
某大手仲介会社が「専属専任」ばっかりなのは、これが原因なのかもしれません…。勉強になったなぁ。
最後に…
被害を受けて気分が悪いし、都庁の回答も冷たいし…。それなら、媒介契約は全て「専属専任」にしようかなぁ~なんて考えたりもました。
でも、お客さまを信用せず、裏切られる前提でいるなんて…なんか寂しいですよね。だから、今まで通り「専任」で売却活動をサポートすることにしました。
ゆめ部長がサポートする場合をまとめておくと、
「真っ直ぐ売却プラン」:専任媒介
「0円売却プラン」 :一般媒介
となります。
「専任」or「一般」のみで「専属専任」は使いません。
そうだ。注意喚起をしておかなくちゃ。
媒介契約を悪用する方法も書いてしまいましたけど、皆さまは絶対にマネしないでくださいね!!媒介契約に違反した場合、仲介手数料相当額を違約金として請求される可能性もありますから、リスクは決して低くありません!
今日のお話は以上です。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
参考記事…
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