土地の査定方法を宅建マイスターがわかりやすく解説します!
土地の査定では、3つある査定方法の中で「取引事例比較法」を使います。
この記事では、ゆめ部長が「取引事例比較法」を使って土地を査定する手順から解説します。また、国土交通省推奨の「価格査定マニュアル」の問題点や、路線価を使わない理由なども触れておきますので参考にしてください!
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
「取引事例比較法」とは…
取引事例比較法とは、「査定物件」と条件が近い「類似物件」の成約事例を集め、1坪 (約3.3㎡) あたりの単価をベースに、築年数・階数・方位・駅距離・間取り・室内状況・分譲会社・不動産市況など様々な要因を加味して査定価格を比較検討する方法です。
■ 居住用の「中古戸建の土地部分」
■ 居住用の「中古マンション」
を査定するときに利用します。なお、査定価格は「約3ヶ月」で成約できる価格です。
それでは、取引事例比較法を使った査定の手順から解説スタートします!
参考記事…
3つの不動産査定方法「取引事例比較法」「原価法」「収益還元法」を解説します!手順1:査定物件と条件が近い成約事例を集める
まずは、査定物件と条件が近い成約事例をレインズ (不動産屋さん専用の物件検索サイト) を使って集めます。できるだけ多くの事例を集めた方が、精度の高い査定書を作成できます。
同じ分譲地内で成約事例があったり、同じ道路に接道する成約事例があれば嬉しいのですが、なかなか都合よくはいきません。事例が少ない場合は 、次の点に注意しながら事例収集の範囲を拡げます。
■ 容積率が同じ土地を選ぶ
■ 住宅用地から選ぶ
■ 広すぎる土地・狭すぎる土地は除外する
■ 擁壁が必要な土地は除外する
■ 人気学区・人気住所に気を付ける
■ 建物価値0の中古戸建も探す (解体費を差し引いて利用する)
■ 借地権などは除外する
■ 再建築不可物件は除外する など。
それでも事例が集まらなかった場合は、下記のような条件でも集めておきます。
■ 高圧線化・線路沿い・計画道路内にある土地
■ 建物価値が残っている中古戸建
■ 間口が2mで車を止めるのが少し難しい土地 など。
手順2:査定物件と成約物件を比較する
査定物件の概要と特徴を下記のように整理しましょう。
■ 土地面積:120㎡ (約36.3坪)
■ 間口10×奥行12mの整形地
■ 東側5mの公道接道
■ 第1種低層住居専用地域 建蔽率50%・容積率100%
■ 最寄駅からの距離:10分 駅まで平坦
■ 浸水履歴なし
■ 古屋あり:解体費用で▲150万円
■ 万年塀老朽化傾き有 内壁につき解体後に販売 解体費用で▲10万円~15万円
■ 人気の高い学区域にあるため学区外の事例は比較しづらい
その他に、境界標があるか、越境していないか、測量する必要があるかを検討し、ライフラインの引込状況・ブロックフェンスの老朽化具合・桜などの伐根や井戸の埋め戻しがあるかなどを確認していきます。
また、建物プランがしっかり入るかを確認するために設計士先生にプランを引いてもらうこともあります。
細かく点数を付けていくことはしていませんが、プラスポイント・マイナスポイントをしっかりと分け、マイナスポイントを是正するためにかかると思われる費用もできるだけ提示します。
次は、成約事例の概要と特徴を整理しましょう。
成約事例は3件以上集め、条件が似ている物件から順番に成約単価を参考にします。
■ 成約までにかかった時間
■ 販売開始時の価格
などの情報も参考になります。
成約までに時間がかかっていれば、販売開始時の価格が「相場よりも高すぎた」可能性がありますし、販売してすぐに成約していれば「相場よりも安すぎた」可能性も考えましょう。
また、高圧線化や線路沿いの土地が@100万円で成約していれば、少なくともこの金額以上では成約できそうだな…という下限を見るのにも利用できますね。
このようにして、査定物件と成約事例のプラスポイント・マイナスポイントを踏まえて1つ1つ比較していくと狙いどころが見えてきます。
なお、土地の成約事例がなくて中古戸建の成約事例を使う場合、成約価格から建物価値を計算して引くことで土地の単価を求めることがあります。これは参考程度にしかなりませんので、事例がなかった時に仕方なく…という感じで使っています。
センスがない査定書は中古戸建を積極的に使っていますので、査定書の信用度を見極めたいときには参考にしてください!
手順3:査定金額と同額の販売物件を調査して微調整する
最後に別の視点でも販売価格を検討しましょう。
「自分が買うとしたら、査定金額で購入を検討するだろうか?」
を真剣に考えてください!
具体的には、査定金額と金額が近い競合物件がどのような条件で売りに出ているかをネットでチェックします。
そうすると…
「これならいけそうだな!」
「ちょっと高いかもな…」
という相場が見えてくるはずです。
ゆめ部長だって、成約事例が少ないエリアや初めて査定するエリアでは、市場に出ている物件と比較することで「査定金額が正しいかどうか」を確かめるようにしているんですよ。
上記の手順1~手順3を読んでみて「こんな感覚的な決め方でいいの?」と思ったかもしれませんけど、細かい数字を入力する査定システムは、営業マンの勘と「裏調整」が入りますので感覚で査定するのと変わりません。
実際、大手にいたときは「査定金額は○○○○万円にしよう。」と決めてから査定システムに情報を入力していました。先に決めておいた金額は「不動産屋さんの経験と勘」によるものであり、分厚い査定書で無理に説明できないものです。
覚えておいてください。
査定システムを利用すれば「妥当な金額」が自動的に算出されるわけではなく、営業マンが数字を調整することで査定金額へ誘導しているのです。
こんな査定は信用できないですよね!?だから、ゆめ部長から1つアドバイスを送ります!
不動産は1点もので1人が気に入ってくれればOK。
相場+αのチャレンジ価格でスタートしよう!
あとは売却にかけられる時間との相談ですから、信頼できる営業マンと戦略を練ってくださいね。
大手仲介会社の査定書で使う計算式
土地の計算式…
成約事例の坪単価 × (所有物件の評点 / 成約事例の評点) × 面積(坪)
簡単な具体例をいれておきます。
■ 成約事例の坪単価(1坪=約3.3平米)が@100万円
■ 成約事例の評点が100点
■ 査定不動産の評点が120点
100点の不動産が1坪あたり@100万円で成約したなら…
120点の査定物件はいくらで売れるのかな?
成約事例1点あたりの1坪単価は…
100万円÷100点=1万円
査定不動産の評点は120点だから1坪単価は…
1万円×120点=120万円
土地が30坪なら3,600万円
土地が50坪なら6,000万円
実際には次のステップで平均値を算出します。
■ 成約事例を3件選定
■ 成約坪単価×(査定不動産の評点/成約事例の評点)で1坪単価を計算
■ 平均の1坪単価を計算
簡単に計算してみましょう。
評点120点、面積30坪の査定不動産を査定してみます。
3つの成約事例は下記の通りとします。
成約事例1:成約坪単価100万円・評点110点
成約事例2:成約坪単価120万円・評点130点
成約事例3:成約坪単価80万円・評点100点
事例1:100万円×120点/110点=@109万円
事例2:120万円×120点/130点=@111万円
事例3:80万円×120点/100点=@96万円
事例1~事例3の平均値:@105万円
@105万円×30坪=3,150万円
査定不動産も成約事例も現場を見ていないのに、なんで評点を付けられるのか…。上場企業に勤務しているお客さまも、なぜか、この査定書を見て納得してしまうという謎。弁護士先生も裁判官も大手の査定書が大好き。看板の強さが光りますねぇ~
国土交通省推奨の「価格査定マニュアル」は使えない!
(公財) 不動産流通推進センターが、国土交通省推奨の価格査定マニュアルを作っているのですが、内容が細かすぎて宅建士が使うには難しすぎるものになっています。大手の査定書でさえこんなに細かく作り込んでありません。
完璧に入力したら相場にあった金額をしっかり算出できるならまだいいのですが、逆に大きくズレる結果も多々ありますから、最終的には「市場調整率 85%~110%」の範囲で自分が思う金額に修正するはめになります。
他の記事でも書いたことですが、現場を見ていなければ判断できない項目や、建築士先生に現場を見てもらったり、インスペクションを受けていなければ評価できない項目が多すぎる査定システムになっていることがまず問題です。
結局のところ、勘で点数を付けることになってしまい、不動産屋のオジさんが「オレの勘は当たるから大丈夫!」と言っているのと変わらず意味がありません。
ゆめ部長が作成している「査定書」は、不動産鑑定士先生が作成する「鑑定評価書」とは異なるものです。あくまでも意見価格を伝えるための資料であり、裁判や相続などで使用するものではありません。
それにもかかわらず、宅建士にここまで求めていることにムリがあるということを認識しなければ、本当に価値のある査定システムはできないと思います。
余談ですけど…
「価格査定マニュアル程度を使いこなせないで不動産屋をやってられるか!」という意見を聞きました。
しかし、ゆめ部長はこの意見に賛同できません。なぜなら…
宅建士にとっては大事なのは、価格査定マニュアルを使いこなすために必要な建物知識ではなく、早期・高値で成約させるための知識・技術・経験だと思うからです。
宅建士では対応できないところは専門家先生に頼りつつ、不動産取引の最前線で戦うために必要な知識・技術・経験を地道に磨く方がお客さまのためになります。
不動産業界はやることが猛烈な勢いで増えすぎています。現場が混乱しているというより、諦めているようにさえ感じられます。宅建士のレベルに合わせて求めることを厳選し、優先順位を付けてほしいと願っています。
参考サイト…
マイホーム査定には路線価を使わない!
路線価は実勢価格(売れる金額)の70%前後になると言われています。
しかし、路線価を実勢価格に直したとしても、実際の成約価格とズレているケースが圧倒的に多いため、査定金額算出では路線価を使ったらいけません。
路線価は国税庁のWebページで7年分を確認できますから、
■ 路線価の推移を見る
■ 成約事例と査定物件の路線価比率を確認する
程度であれば利用価値はあると思います。
参考サイト…
最後に…
不動産はこの世に全く同じものがない1点ものですから、数式でズバリの金額を計算することは難しいと言えます。そのため、査定書を参考にしながら、不動産屋さんと一緒に妥当な金額を考えてみてください。
厚みのある査定書にダマされて安い金額で売ってしまわないように、この記事の考え方を参考にしていただければ嬉しいです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
参考記事…
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