中古戸建の査定方法を宅建マイスターがわかりやすく解説します!
中古戸建ての査定では2つの査定方法を組み合わせて査定金額を計算しています。土地については「取引事例比較法」、建物については「原価法」です。土地の査定方法は下記記事を参考にしてもらい、この記事では原価法を使った建物の査定をまとめてみます。
参考記事 : 土地の査定方法
ブログ執筆:上級宅建士・ゆめ部長
「原価法」とは…
原価法とは、査定物件の建物を取り壊して、同じ建物をもう一度建てた場合の原価を計算し、その価格から建物設備が老朽化している分を経過年数に応じて差し引くことで査定価格を推定する方法です。
居住用の「中古戸建の建物部分」を査定するときに利用しています。
参考記事…
3つの不動産査定方法「取引事例比較法」「原価法」「収益還元法」を解説!原価法による建物査定 (簡易ver)
原価法による建物査定の計算式は下記のようになります。
再調達単価 × 延床面積 ÷ 耐用年数 × 残存年数(耐用年数-築年数)
この記事は計算方法を解説することが目的ですので、構造別データなどは記載せずに「木造住宅」を前提にします。木造住宅1㎡あたりの「再調達単価」は、平成30年度では168,500円になります。このデータは国土交通省の「建物の標準的な建築価額表 」によります。
木造住宅の「耐用年数」は税法で22年でとされていますが、実務では「おおむね20年~25年で残存価値10%程度」として計算しています。(耐用年数22年は「事業用」で「居住用」は期間が1.5倍の33年となるはずなのですけどね…。このあたり、よくわかりません。勉強したら追記します。)
具体例で計算してみましょう。
■ 築11年
■ 建物面積100㎡
■ 木造2階建て
建物の残存価値はいくらでしょうか…?
これだけなら難しくはありませんね。
168,500円×100㎡÷22年×11年 (22年-11年) = 約8,425,000円となります。
原価法による建物査定 (難ver)
上記の簡易verを見て気づいた人もいると思いますけど、下記のような問題点があると言えます。
■ 積水ハウス・地元工務店・建売が一緒の「再調達単価」でいいの?
■ 建物60㎡と建物200㎡の「再調達単価」は同じなの?
■ リノベーション工事の価値上昇分は評価してくれないの?
■ 太陽光発電システム・エネファームなどのオプションは見てくれないの?
■ 屋根と外壁メンテナンスをしてあっても、していない物件と同じ評価なの?
などなど。
上記の項目をムシされてしまえば、こだわってお金をかけた建物なのに評価してくれないの…?と悲しくなってしまうでしょう。
そこで、もう少し計算式を複雑にする場合があります。
その場合の計算式は…
再調達単価 × 品等格差率 × 規模修正率 × 原価率 ×メンテナンス補正率 × 延床面積
となります。
ここまで細かく見てくれるなら…「きっと納得できる査定額が出るだろう!」と期待してしまうかもしれませんが、残念ながら、そうはいかないのです。
この中で1番の問題は「品等格差率」です。理由は…
■ 建売住宅であれば×0.85
■ 地場工務店で×0.95
■ ハウスメーカーで×1.1~1.3
などと評価するからです。
大手の最上級仕様でも建売の1.5倍程度でしか見てくれないことになりますが、2倍~3倍が正しい数字だと思います。なお、有名設計士が建築した家や超高級住宅などは査定システムの対象外とされています。
さらに、もっと細かい部分まで査定するマニュアルもあります。
これはリフォーム履歴・インスペクション結果・耐震性を証明する書類の有無などまでチェックすることで、実際の築年数ではなく「実質的経過年数」を算出して利用します。
正直、宅建士がここまでやるのは困難ですから、使いこなせる人は少ないと思います。それに、正しく入力しても出てくる数字は「売れる金額」からズレるのは間違いないです。まだ精度が低すぎるということですね。
宅建マイスターのゆめ部長が建物を査定するときの計算式
ゆめ部長が査定するとき実際に使っている計算式と、その計算式を使っている理由などを公開しますね。
正直、不動産の査定書はどれもイマイチです。現場の営業マンが全く理解できないから、お客さまもわからない。日本人の悪いところで…「大手が作った分厚い査定書なんだから正しいんだ!」と、大きい会社を疑わずに信じようとしているのでしょう。
査定システムを使った査定書なんて、根拠が明確ではないのですから、わからないのが正解。ムダに小難しくする必要なんてないんです。
今までの経験をもとに査定金額と成約価格が近づけられる計算式を考えました。それでも100%正解になんてなりませんけど、本当に売れる金額を探るには、きっと役立つと思いますよ。それでは、一緒に見ていきましょう!
参考記事…
ゆめ部長の計算式を具体例付きで見てみましょう!
査定マニュアルがどうしてもシックリこないので自分なりに計算式を作りました。
建物の残存価値 = 中古になった瞬間の価格 - 建物価値減少分
次の具体例を使って一緒に机上査定にチャレンジしてみましょう!
■ 築10年
■ 延床面積80㎡ (約24.2坪)
■ 木造2階建・建売住宅
まずは「中古になった瞬間の価格」を計算します。
中古になった瞬間に建物価値が「-30%」になるとして計算します。建物は建売住宅の中では少しグレードが高めで1坪あたり@60万円としましょう。
@60万円 × 24.2坪- 30% = 1,016万円
次に、25年で残存価値10%になるとして10年での「建物価値減少分」を計算します。
毎年の建物価値減少分は、中古になった瞬間に下がる30%と残存価値10%を引いた金額を25年かけて定額で減ると考えて計算しています。つまり、100% - 30% - 10% = 60%を25年かけて減価させるということです!(毎年の減価率は … 60% ÷ 25年 = 約2.4%)
(@60万円× 24.2坪-40% ) ÷ 25年 ×10年 = 348万円
以上の数字を最初の式にあてはめると…建物の残存価値は、1,016万円 - 348万円 = 668万円 と計算できます。
新築から中古になった瞬間に建物価値は20%~30%金額が下がる!
ゆめ部長は新築から中古になった瞬間に建物金額が20%~30%下がると考えています。理由は下記の通り。ちなみに、固定資産税の家屋評価は1年目で0.80です。
■ キレイでも中古。日本人は新築が大好き!
■ 売却時に住宅ローン控除が最大400万円から200万円に下がる (個人が売主の場合)
■ 分譲会社のアフターフォローや10年保証を引き継げない場合がある
なお、下がるのは「建物」だけですから注意してください!
おバカなファイナンシャルプランナーが言うには「新築は不動産会社の利益がのっているから、中古になった瞬間に不動産価値が20%以上下がる」と。
付け加えると、YouTubeの広告でも「新築は鍵を開けた瞬間に価値が20%下がる!」とか寝ぼけたことを言っています。
もう…本当に素人はどっかにいって欲しいですね!
それが正しいなら、5,000万円で購入した新築一戸建てが中古になった瞬間に5,000万円×20%=1,000万円も値下がりして4,000万円になるということになります。
そんな金額で売っていいならゆめ部長に連絡ください。3日でお申込みをもらって証明してみせますから!いや、不動産買取会社でも検討してもらえるから1日かも。
FPのテキストや売れている住宅ローンのテキストにも間違ったことが書かれていましたから、皆さんは騙されないでください。
住宅ローンの事前審査書類の書き方もわからないFPが宅建免許を取得して「FPが○○する不動産会社」として開業したのを見ました。実務経験がないのにできる仕事ではありません。不動産仲介の仕事を軽く見過ぎですからね (怒!!)
話が脱線したので戻します。
思い出したら熱くなってしまい失礼しました。
建物価値は築後20年~25年で残存価値10%程度と見る!
最近の建物は品確法のおかげでメンテナンスしやすくなっていますから、新しければ、残存価値が10%になるのは25年以降でよいと思います。しかし、正直なところ昔の建売は状態が悪い物件も多いですから、現場を見て20年とすることもあります。
あとは築15年あたりで外壁・屋根のメンテナンスをしていれば、残存価値は10年前後伸ばしても良いでしょう。
また、価値を増大させる工事をしている場合…例えば、フルリノベーション工事・防音室設置工事・太陽光発電システム設置工事などがあれば、かかった費用を15年程度で減価償却させてプラスしています。
フルリノベーションであれば残存価値も伸ばしてよいでしょう。
建物の再調達価格はもっと高い!
先ほど記載した「建売住宅であれば×0.85、地場工務店で×0.95、ハウスメーカーで×1.1~1.3」で計算すると、延床面積80㎡の建売が1,128万円、ハウスメーカーで1,725万円になってしまいます。これでは再建築することが難しいです。
そこで、ゆめ部長が査定する場合は次のように計算しています。
建売や地元工務店の2階建ては@50万円~@65万円、3階建ては@60万円~@70万円 (ビルトイン車庫部分は半額で計算) 、積水ハウス・大和ハウス・三井ホームなどが建築する建物は80万円~100万円くらい。
これが絶対に正しいとは言えませんが、査定マニュアルの数字よりは「売れる金額」に近づけられます。
なお、延床面積が狭いと建築単価があがります。なぜなら、浴室・キッチン・トイレなどの設備は、広くても狭くても必要だからです。延床面積70㎡と200㎡では建築費の差はけっこう大きくなります。
最後に…
これから査定システムの精度向上が図られていくものと期待していますが、おそらく、時間はかなり必要だと思います。
不動産仲介の仕事を19年以上頑張ってきたゆめ部長でさえ、
■ インスペクション (住宅診断)
■ 耐震に関する証明書
■ 住宅性能評価
などを査定金額にどう反映させるべきか、イマイチよくわかりませんから…。
同じような名称の団体が同じような名前の商品を出し、資格もなにがなんだか…。だいたい漢字を10コも並べたら、誰だって拒絶反応が出てしまいます。制度・名称を整理して、わかりやすく1箇所で管轄して欲しいものです。不動産屋さんがわからないのですから、一般消費者が理解することを期待するのは間違っていますよね。
皆さまは、まず、不動産査定システムが難しすぎて宅建士が現場で使いこなせていない!という事実を知っておいてください。それがわかっていれば、査定書の見方も変わるはずです。
納得のできる売却を実現できるように応援しています。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
参考記事…
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