「居住用財産譲渡の3,000万円特別控除」と「住宅ローン控除」どっちがお得なのかを考える!
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」と「住宅ローン控除」は選択適用になり、2つの制度を一緒に利用することができません。そこで、どっちがお得になるのか…?を簡単な事例で考えてみましょう!
なお、皆さまの税金が実際いくらになるのか?を不動産屋さんが相談に乗ることは税理士法違反でNGになりますから、必ず、税理士先生・税務署へ確認してくださいね。
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
居住用不動産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例とは…?
先にそれぞれの制度を簡単に確認しておきましょう。まずは、「居住用不動産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」です。
「購入金額」よりも「売却金額」の方が高くて売却益が出た場合、「所得税・住民税」が課税されます。5年以内の短期譲渡だと39.63%・5年超の長期譲渡だと20.315%(条件を満たすと14.21%)もの税率になるので、かなりイタイ出費になります。
そこで、一定の条件を満たしたなら、この利益から3,000万円を限度に控除してあげよう!という特例があるのです。例えば、3年後に売却した利益が2,000万円だったとして考えてみましょう。
特例なし…
2,000万円 × 39.63% = 792万6,000円
特例あり…
(2,000万円 - 3,000万円)× 39.63% = 0円
売却利益が出るならぜひ使っておきたい特例ですね!!
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)とは…?
「住宅ローン控除」は「住宅ローン減税」と呼ぶこともありますけど、正式な名称は「住宅借入金等特別控除」です。漢字が10コも並んでいるから見るだけで拒絶反応ですよね (笑) ちなみに、ゆめ部長は「住宅ローン控除」と呼んでいますよ!
この住宅ローン控除は、終了したと思ったら復活する…を繰り返しています。2022年の税制改正では、年収が高いお客さまには「改悪」、年収が平均的なお客さまには「あまり影響はない」という感じになりそうです。
2022年の住宅ローン控除を【 新築住宅・中古買取再販 】と【 既存住宅 】に分けて見てみましょう!
【 新築住宅・中古買取再販 】
■ 新築一戸建て
■ 新築マンション
■ リノベーション戸建
■ リノベーションマンション
などが該当します。
なお、買取再販(リノベーション物件)に該当させるためには次の要件を満たす必要があります。① 新築後10年以上経過している ② リフォーム工事費が建物価格の20% または 300万円の小さい方以上など。(参考サイト:国土交通省のWebページ)
建物の省エネ性能によって、住宅ローン控除の効果(所得税・住民税の控除額)が変わりますので、順番に見ていきます。
■ 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅
最大控除額:455万円
■ ZEH水準省エネ住宅
最大控除額:410万円
■ 省エネ基準適合住宅
最大控除額:364万円
■ その他住宅
最大控除額:273万円
【 既存住宅 】
リノベーションしていない居住中のマンションや戸建などが該当します。
■ 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅
■ ZEH水準省エネ住宅
■ 省エネ基準適合住宅
最大控除額:210万円
■ その他住宅
最大控除額:140万円
住宅ローン減税の恩恵をMAXで受けるのは難しいですけど、自己資金が減った状況で税金の還付を受けられるのはかなり大きいですよね!住宅購入をバックパップしてくれる心強い制度だといえます。
参考記事…
「居住用財産譲渡の3,000万円特別控除」VS「住宅ローン控除」の具体例
精度の概要を抑えたところで、次の事例から比較検討してみましょう!
■ 7年前に3,500万円のマンションをマイホームとして購入
■ マンションの内訳 土地:1,600万円 建物:1,900万円
■ 購入時の諸費用:250万円
■ 4,200万円で売却成功!
■ 売却時の諸費用:150万円
■ 6,000万円の新築一戸建て「省エネ基準適合住宅」を購入
■ 住宅ローン:5,000万円
補足…
住宅ローンの残債は10年後に4,000万円以上あり、所得税・住民税は年額28万円以上支払い続ける前提とします。なお、2022年の住宅ローン控除は、購入する新築一戸建てが「省エネ基準適合住宅」であれば、住宅ローンの残債(MAX4,000万円)×0.7%×13年です。
計算の流れは次のように行います。
【1】居住用3,000万円控除を利用した場合の譲渡所得税
【2】居住用3,000万円控除を利用しない場合の譲渡所得税
【3】住宅ローン控除額の確認
では、いってみます!!
まずは…譲渡所得税を計算するために利益(譲渡所得金額)を計算します。計算式は次のようになります。
不動産を売却したお金
- 土地購入価格
- 建物購入価格
- 購入の諸費用
- 売却の諸費用
+ 建物減価償却費
- 特別控除
× 所得税・住民税
ここでは「建物減価償却費」・「所得税・住民税」を事例から考える必要がありますね。それぞれを確定させましょう。
まずは「建物減価償却費」からです。
マンションは「鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造」で見ます。今回はマイホームとして購入していますから、「非事業用」で償却率は「0.015」です。このケースでの計算は次の通りです。
建物取得費 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
1,900万円 × 0.9 × 0.015 × 7年 = 1,795,500円
計算が大変なので、丸めて、約180万円とします。
参考記事(計算式を確認したければどうぞ!)…
不動産売却の利益計算…建物減価償却費の加算を忘れていませんか?
「所得税・住民税」は長期譲渡所得ですから合わせて20.315%
これで数字が出そろいました!計算式に当てはめて不動産売却の利益を計算すると…
不動産を売却したお金 4,200万円
- 土地購入価格 1,600万円
- 建物購入価格 1,900万円
- 購入の諸費用 250万円
- 売却の諸費用 150万円
+ 建物減価償却費 180万円
=480万円
この480万円の利益をどうするか?を【1】~【3】の流れで検討します。
【1】居住用3,000万円控除を利用した場合の譲渡所得税
480万円 - 3,000万円 < 0
3,000万円控除を利用すれば利益が0円になりますから、所得税・住民税は非課税となりますね。
【2】居住用3,000万円控除を利用しない場合の譲渡所得税
480万円 × 20.315% = 約100万円
【3】住宅ローン控除額の確認
4,000万円 × 0.7% × 13年 = 364万円
結論は…居住用財産譲渡の3,000万円控除を使うと節税効果は100万円に対して、住宅ローン控除を使うと節税効果は364万円なので、この事例では、住宅ローン控除の勝利!ということになりました。
この事例を見て理解してもらえたと思いますけど、条件が異なれば結果は変わってしまいます。だからこそ、個別具体的な案件に関しては専門家に聞くべきなのです。この記事の目的は、ザックリ概要を知ること・税金の難しさを実感することにあります。
夫「住宅ローン控除」・妻「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」を利用した事例
中古戸建の売却に大成功!新築一戸建てへ住み替えたゆめ部長のお客さまの事例を紹介します!(注意事項:この事例は少し前のものです。当時の住宅ローン控除は、購入した新築一戸建ての住宅ローン残債(MAX4,000万円)×1.0%×10年でした。)
■ 夫婦ペアローンで4年前に購入した一戸建てを売却
■ 持分…ご主人3:奥さん2
■ 売却利益は驚きの約500万円
■ 購入時は奥さま育休中のため住宅ローンなし
■ ご主人が住宅ローンを使って単独で購入
■ 購入物件は新築一戸建て5,500万円
タイトルにも書いた通り、ご主人が「住宅ローン控除」を使い、奥さんは「3,000万円控除」を利用しました。その理由を簡単に解説していきます。
まず、ご主人はどちらが有利かを検討しますね。
ご主人の売却利益を計算すると…
利益500万円・持分3/5・税率は長期譲渡所得で39.63%
500万円 × 3/5 × 39.63% = 約120万円
次に、住宅ローン控除を見てみます。
10年後に残債が4,000万円以上ありました。年収が800万円でしたので、所得税・住民税を合計して毎年40万円以上です。
4,000万円 × 1% × 10年 = 400万円
120万円 < 400万円
ご主人は「住宅ローン控除」でOKですね!
次に、奥さまを見てみます。
奥さまの売却利益を計算すると…
利益500万円・持分2/5・税率は長期譲渡所得で39.63%
500万円 × 3/5 × 39.63% = 約80万円
奥さまは住み替えた新築一戸建てで住宅ローンを組んでいませんから、住宅ローン控除を利用することができません。そうすると、選択することもなく「居住用財産譲渡の3,000万円控除」を利用することになります。
80万円 - 3,000万円 < 0
3,000万円控除して利益が0円になりましたので非課税!
というわけで、奥さまは「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」ですね。
確定申告時期は税務署が忙しすぎるため、丁寧な対応を期待できません。そこで、ゆめ部長が確認してほしい要点を事前にまとめて伝えておきました。複雑な場合は事前に税理士先生への確認を強くオススメしますが…
このケースでは、ゆめ部長がまとめた内容を税務署で確認してもらったところ「この計算で大丈夫ですよ!!」と言ってもらえたそうです。
なお、不動産を売却したことで「損失」が出た場合、確定申告すれば給与所得などからその損失分を差し引ける制度があります。払い過ぎた所得税の還付を受けられたり、翌年の住民税が安くなるため、損失の一部を補うことができちゃいます。
ただし、この制度を利用するためには「自宅を売却したお金で住宅ローンを完済できなかった場合」や「損失が出たのに住み替え先でも住宅ローンを組んで購入する場合」に限られるという条件があります。
損失が出ているんだから、もっと優しくしてよ…と思ってしまいますね(涙)
最後に…
簡単ではないですけど、ゆっくり、1つ1つ丁寧に計算していけば、それほど難しくはなかったかな…と思います。ただ、実際に税額を計算するときは、土地建物の内訳がわからなかったり、短期になるのか長期になるのか…など、いろいろ悩むことが多すぎてイヤになってしまうはずです。
少しお金はかかってしまいますけど、税理士先生へ相談してほしいなぁ~と、ゆめ部長は心から願っています。申告ミスがあって税務署から指摘を受けると、延滞税まで納めなければいけない可能性がありますから、本当に注意してもらえたら幸いです。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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