不動産屋さんを変更したらダメなの?|購入の「抜き行為」を考える
マイホーム探しで不動産屋さんにお世話になっているけど、担当の営業マンが「怖い…」「感じ悪い…」「信用できない…」などなど、この人には安心して任せられない!と感じることがあると思います。
「他の不動産屋さんにお願いしたいんだけど…ダメなの?」と疑問に思うお客さまが多いようですから、回答と注意点を宅建マイスターがしっかり解説しますね!
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
どこの不動産屋さんに依頼するかは消費者である皆さまの自由です!
マイホームを購入する時、皆さまはどこの不動産屋さんへ問い合わせをしますか…?三井さん・住友さん・野村さんなどの大手、センチュリー21さんなどのフランチャイズ、街の不動産屋さんなど、たくさんの会社がありますから、どこにお願いしようか悩んでしまいますよね。
大手会社は圧倒的な安心感、中堅会社は情報力、地元密着会社は信頼度、ベンチャー企業ではITを取り入れた斬新なサービス、零細企業では仲介手数料の割引など、それぞれの会社が自社の強みをアピールして競争を繰り広げています。
なぜ、これだけ競争するのでしょうか…?
それは、自社を選んでもらうためですよね!
なぜかこのことを忘れているお客さまがいますけど、いろんなサービスを打ち出す会社の中から、自分に合う会社を選ぶ権利は皆さまにあるんですよ!
不動産売買では打ち合わせが中長期になるのはよくあることです。長くやり取りをしていると、「相性が悪いな…」と感じることだって当然あります。それにもかかわらず、しばらくお世話になったからという理由だけで、不動産屋さんを変更できない…そんなのおかしな話だと思います。
もう1度、言いますね。皆さまは不動産屋さんを自由に選んでOKです!
不動産屋さんの立場で考えてみる…
不動産屋さんの仲介手数料は「成功報酬」ですから「0 or 100」「All or Nothing」となります。そのため、契約直前で「仲介手数料が高いから…」という理由だけで、他の不動産屋さんに変更するというのは、ちょっとヒドイ話なのではないかと思います。
ゆめ部長は仲介手数料無料でマイホーム購入をサポートすることがあります。しかし、他の不動産屋さんで現地を何回も案内してもらい、建物プレゼンを受け、住宅ローン審査で協力してもらって…という状況にもかかわらず「仲介手数料が安いからゆめ部長にお願いするね!」と言われても、迷わずお断りです。
特に、仲介手数料が「成約価格×3%+60,000円」かかることを知っていたり、仲介手数料が安い不動産屋さんがあることを知っていた場合はなおさらです。
裏切られた不動産屋さんからすれば「最後の最後でお客さまを奪われた!」と感じますからね。契約上の問題がない場合だったとしても「人としてどうなのか…」と思うのは不動産屋さん側だけではないと信じています。
仲介手数料を先に説明しない不動産屋さんは抜き行為だと文句は言えない!
媒介契約書の契約約款に「報酬の請求」という項目があります。ここに記載されている内容を見てみましょう。
報酬の額は、
国土交通省告示に定める限度額の範囲内で、
甲乙協議の上、
定めます。
媒介契約を締結する際に、仲介手数料額について、不動産屋さんとお客さまが協議して決めるようにしなさいよ!と記載されています。仲介手数料の「成約価格×3% +60,000円」は「上限」を定めたものであって、当然に満額を請求できるわけではないのです。
今までの不動産取引では、不動産購入申込を受ける直前に資金計算書を提示し、仲介手数料が「成約価格×3% +60,000円」かかるのが当然のこととされてきました。そして、売買契約の当日に媒介契約書に署名捺印をもらう…という流れだったのです。
これ…だまし討ち見たいですよね。
どんなに不動産屋さんが一所懸命仕事をしたとしても、お客さまが仲介手数料について理解していなかったり、3%かかることを納得していなかった場合、仲介手数料に関する協議は整わず媒介契約不成立。
この場合、仲介手数料は請求できません。
これは不誠実な仕事をした不動産屋さんに落ち度があります。お客さまが仲介手数料を安くしてくれる不動産屋さんを探すことになったとしても自業自得。この場合は抜き行為とはならないと思います。
というわけで!
仲介手数料を3%請求するのであれば、不動産屋さんは次の2点を常識とするべきでしょう。
■ 最初に仲介手数料額について協議する
■ 媒介契約書を早めに締結する
ちょっとずつでも改善していくとイイですよね。
(2020年6月28日追記)
どこまでサポートしてもらったら不義理になるか…。勝手な意見を述べてみます。
不動産屋さんを途中で変更する場合、どれくらいサポートしてもらっているかで「不義理」と言えるかが変わってくると思います。
まず、6つの箇条書きを見てください。下に進むにつれて不動産屋さんのサポートが増えていきます。
■ 物件紹介を受けた
■ 現地を車で案内してもらった
■ 建物プレゼンを受けた
■ 住宅ローンの審査を通してもらった
■ 価格交渉を通してもらった
■ 契約書類が完成していて明日契約予定
さぁ、皆さまなら、どこまで行ったら不義理になると感じますか…?
ゆめ部長の考えを書いてみます。
仲介手数料がかかることを直前まで伝えなかった、説明に不備があったなど、信頼関係が崩れてしまったのであれば、どの段階でも途中変更は仕方がないと思います。ただし、不動産屋さんに対しては仕方ないですけど、その先には複数の関係者がいますから、契約直前での変更は控えるようにするべきでしょう。
不動産屋さんに何も落ち度がなく、丁寧に対応してくれるから自己都合で便利に利用しただけ…。という場合であれば、1回の現地案内だけでも不義理でしょう。業務妨害と言えるかもしれません。たった1回と思うかもしれませんけど、準備・移動・やり取りの時間で最低3時間はかかりますし、その時間で大切なお客さまへ対応できたかもしれない…と思うと悲しい気持ちになります。
お客さまを奪った=「抜き行為」ではない!
他の不動産屋さんに問い合わせをして現地を内覧した後、ゆめ部長が再度現地を案内してお申し込みをいただいた案件に対して、「ウチで対応していた客だぞ!抜き行為で宅建業法違反だ!」みたいなことを他社さんから言われたことがあります。
この話の解説をするために、「抜き行為」に関して説明しておきます。
マイホーム購入での「抜き行為」というのは、買主さまが不動産屋さんと媒介契約を結んでいるにもかかわらず、他の不動産屋さんが買主さまを奪って売買契約を結ぶことを言います。
不動産屋さん同士では、お客さまを「奪った・奪われた」でトラブルになることがあります。それだけでなく、お客さまに対して「損害賠償請求をするぞ!」と脅してくる悪質な会社もありますから、しっかり知識を身に付けて自己防衛しましょう。
さて、この件に関して、不動産屋さんの免許権者である都庁にヒアリングをしてみました。そこで言われたことをまとめますと…
買主さまが不動産屋さんと「媒介契約」を結んでいないなら「抜き行為」にはなりません。しかし、民事では別の問題ですから、場合によっては民法・商法で問題になる可能性はあるかもしれません。とのことでした。
タダ働きさせることになると知りながら、不動産屋さんを便利に使っていたのであれば、業務を妨害したと言われても反論のしようがありませんよね。これは悪質ですからアウトで良いと思います。
しかし…「しっかり説明をしてくれない」「横柄な対応がイヤ」「強引に契約させようとしてくる」「仲介手数料がかかることを直前で聞かされた」などの問題があって他の不動産屋さんへ変更するのであれば、話は別でしょう。
媒介契約をしていなければ、不動産屋さんへ正式に依頼をしていない状態ですから「抜き行為だ!」と主張される筋合いはありません。上記の定義でも、「媒介契約を結んでいるにもかかわらず…」という要件が書いてありましたね。
都庁の担当者さんの話では…「初めて会った時に媒介契約を結ぶのがベスト。少なくても購入申し込みを受ける時点では媒介契約をもらうべきですよ。」とのことでした。
なお、不動産屋さんがお客さまに対して「宅建業法違反だ!」というのは間違っています。この法律は、消費者であるお客さまを不動産屋さんから守るための法律ですから、規制対象はお客さまではなく不動産屋さんだからです。
たまにいるんですよね。なんでもかんでも宅建業法違反だと言う人…。
2020年6月28日追記…
媒介契約を締結していない不動産会社が「抜き行為だ!」と怒って仲介手数料を請求してきた場合どうなると思いますか?
実は、媒介契約を締結せずに仲介手数料を請求するのは宅建業法違反であり、7日以内の業務停止処分を受ける可能性があります。
「抜き行為だ!」と主張した不動産会社は、宅建業法上の処分を受けるのは避けたいため、民事上で損害賠償請求すれば勝てたとしても強気には出づらい状況になるわけですね。
専任媒介契約を結んでいたら…
不動産屋さんと専任媒介契約(または 専属専任媒介契約)を結んでいながら、他の不動産屋さんと媒介契約を結んで売買契約を行った場合、「約定報酬額に相当する金額の違約金の支払いを請求できる」と定められています。
ちょっとわかりづらいので、具体的例を交えながら見ていきましょう。
皆さまは地元密着の不動産会社A社から新築一戸建てを案内してもらいました。建築中だったので、完成施工例を内覧させてもらい、建物のプレゼンテーションも聞かせてもらいました。諸費用の概算見積もりの提示と住宅ローンシミュレーションを確認して「これなら大丈夫。」と納得できました。住宅ローンの審査も通ったので、A社と専任媒介契約を結んでから不動産購入申込書に署名捺印をした…とします。
署名捺印をしたときはテンションが上がっていましたが、家に帰ってから冷静になり、諸費用の「仲介手数料」を調べてみたら…どうやら宅建業法で定められた「上限」額を請求されていることに気が付きました。値引き交渉をしましたが受け付けてもらえなかったので、情報を集めるためにググってみると、ゆめ部長のように仲介手数料無料で購入できる会社があることを知りました。
そこでA社には悪いと思いながらも、仲介手数料が無料になる会社へ連絡を取り翌日に売買契約を行いました。費用を節約して購入できたことを喜んでいたら、後日、A社から連絡があり「仲介手数料を請求します。」とのこと…。
結論は、この請求は妥当なものであり、結局A社に仲介手数料を支払う義務は生じてしまいます。満額支払うのか、半額で済ませてもらうのかは、弁護士先生に入ってもらう案件となるでしょう。
一般媒介契約を結んでいたら…?
一般媒介契約は通常「明示型」で契約を行います。つまり、複数の不動産屋さんに依頼することはできるけど、他の不動産屋さんにも重ねて依頼したら、そのことを報告しなければいけないということです。
先ほどの例でいうと、一般媒介契約を結んで不動産購入申込書に署名捺印をしていたのに、仲介手数料が安い別の不動産屋さんと一般媒介契約を結び、売買契約を行ったという場合です。この場合は、A社に対して、他社と一般媒介契約を結んだと報告しなければいけません。
この義務を怠った場合は「費用償還請求」をされることがあります。しかし、この金額は大した金額にはならないでしょう。理由は、国土交通省が定めた包括的なガイドライン「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に次のように書かれているからです。
費用を請求する不動産屋さんが、交通費・物件調査費用・広告費などの明細書を作成し、領収証で金額を立証しなければいけません。なお、人件費は精算が不明確なため、請求しないのが望ましいです。
人件費は請求しないのが「望ましい」と書かれているところが少し心配ですが、不動産取引では消費者保護で考えられることが多いので、不動産屋さんが人件費を請求するのは難しいのではないかと考えています。
最後に…
不動産屋さんと「媒介契約を結んでいない」=「購入サポートの依頼をしていない」ということですから、別の不動産屋さんに変更するのは買主さまの自由です。
「今までかかった経費を請求する!」と言われたとしても、応じる必要はないでしょう。仲介手数料は成功報酬であり、お客さまへ経費を請求できないと決められていますからね。
ただし、不動産屋さんに対する対応が悪質だと判断されれば、民事上の問題になることはありますから、不誠実なことはやめましょう。ゆめ部長だって、他社の不動産屋さんと無駄なトラブルに巻き込まれるのはお断りです!
もっと明確にルールを作った方が良いと思いますが、消費者保護をしやすくするために(不動産屋さんを罰しやすくするために)あやふやにしているような気もしてしまいました。
トラブルなく、気持ちの良いお取引を実現したいものですね。
困った場合はここに連絡しましょう。味方になってくれますよ!
令和元年7月23日追記…
平成31年4月1日より都市整備局に「住宅政策本部」が設置されました。それに伴い、宅地建物取引業の免許・指導、適正な不動産取引の促進などに関するお問い合わせ窓口が変更になりましたので下記修正してあります。
担当部署:東京都都市整備局・住宅政策本部・住宅企画部・不動産業課
直通電話:03-5320-5072
相談窓口:新宿区西新宿2-8-1 都庁第2本庁舎3階北側 不動産業課内
受付時間:都庁開庁日9:00~11:00、13:00~16:00
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
参考記事…
フォロー・チャンネル登録してくださいね!
■ 2020年06月28日 投稿
“不動産の「悩み・不安・怒り」を解消するぞー✨ のお役立ち情報をツイート ✅ホンネで語るよ ✅業界の裏側…コッソリ教えるよ ✅役立つ知識を集めて発信するよ ✅さんへ優しく解説するね ✅ガンバル不動産屋さ…
— name (@yumebucho) YYYY年MM月DD日