「両手仲介・片手仲介(分かれ)」とは?不動産業界の闇に触れながら解説します
不動産売買では、「仲介会社」と呼ばれる不動産屋さんが、売主さま・買主さまの間に入ってサポートを行い、契約を成立させるケースが数多くあります。1社の仲介会社が、売主さま・買主さまの両方を担当するケースを「両手仲介」といい、2社の仲介会社が、売主さま担当・買主さま担当に分かれるケースを「片手仲介」といいます。
この記事では、両手仲介の仕組みだけでなく、両手仲介を狙う「不動産の囲い込み問題」や、「両手仲介が利益相反になるから違法ではないか?」という少し難しい疑問などにも触れていきます。不動産取引の仕組みを理解して、不動産屋さんに騙されない知識を身につけましょう!
ブログ執筆:上級宅建士「ゆめ部長」
両手仲介とは?
1社の不動産屋さん(仲介会社)が、売主さま・買主さま、両方の間に入って不動産取引を成立させた場合、不動産屋さんの報酬(=仲介手数料)は次のようになります。
売主さまから「3.3%+66,000円」
買主さまから「3.3%+66,000円」
合計「6.6%+132,000円」
このように、不動産屋さんから見て、右手の売主さま、左手の買主さまの両方から報酬(=仲介手数料)をもらえるので「両手仲介」と呼ばれています。
次は、「片手仲介」を見てみましょう!
片手仲介(分かれ)とは?
2社の不動産屋さん(仲介会社)が、売主さま担当・買主さま担当に分かれ、「仲介会社A」が売主さまを担当し、「仲介会社B」が買主さまを担当して不動産取引を成立させた場合、それぞれの不動産屋さんの報酬(=仲介手数料)は次のようになります。
「仲介会社A」
売主さまから「3.3%+66,000円」
「仲介会社B」
買主さまから「3.3%+66,000円」
このように、不動産屋さんから見て、右手の売主さまからだけ、あるいは、左手の買主さまからだけ報酬をもらえるので、「片手仲介」または「分かれ」と呼ばれています。
両手仲介を狙われる2つのデメリット
上記の通り、不動産屋さんの仲介手数料は、
両手仲介 = 片手仲介×「2」
儲けが2倍も変わりますね。
どの不動産屋さんも、みんな、稼げる「両手仲介」を狙っていることでしょう。もし、担当する不動産屋さんが、片手仲介を潰してでも両手仲介したい…そう思っているのであれば、お客さま(売主さま・買主さま)にデメリットが生じます。
そこで…
両手仲介を狙われてしまうと、どのようなデメリットがあるのか…不動産取引の最前線で働くゆめ部長が解説しましょう。
【1】不動産の囲い込み
まず、1つ目のデメリットです。
売主さまから、不動産売却を依頼された不動産屋さんが「両手仲介」を狙うなら、買主さまを自社で見つけなければいけません。
本来であれば、suumoなどのポータルサイトや自社Webページへ情報を掲載したり、ポスティングしたり、現地販売会を開催したりするだけでなく、不動産屋さんのネットワークをフル活用するために「レインズ(REINS)」にも情報を掲載するべきだと言えます。
しかし…
レインズ(REINS)へ売却物件情報を掲載した結果、他社の不動産屋さんに買主さまを見つけられてしまうと「片手仲介」になってしまいます。つまり、買主さまからは仲介手数料をもらうことができません。
ここで不動産屋さんは思いつきます…
「そうだ!物件情報を隠しちゃえ!!」
これが、不動産業界の悪しき慣習「不動産の囲い込み」です。買主さまを他社の不動産屋さんが探せないように、売却物件情報を隠してしまい、自社だけが販売できるようにするわけです。
売主さまからすれば、検討する買主さまが減ってしまうことで競争が起こらず、高値&早期成約を妨げるため絶対にやめて欲しいことでしょう。
買主さまからすれば、囲い込みをする悪い仲介会社を通さなければ購入できなくなってしまい、自分が選んだ不動産屋さんにサポートを依頼できません。高い仲介手数料はしっかり満額で請求されるのも残念なことですよね…。
【2】不動産屋さんが「敵」になる!?
次は、2つ目のデメリットです。
不動産屋さんは、売主さまが損をしても、買主さまが損をしても、売買契約が成立すれば仲介手数料をもらえるので、どっちが損をするか…については全く興味がありません。だから、不動産さんは弱みのある方を見極め、説得して、売買契約を成立させようとします。
買主さまが気に入っているなら…
「満額で買いましょう!」
売主さまが早く売りたがっているなら…
「ここで決めないと後悔しますよ!」
こうやって、
売主さまの利益ではなく、
買主さまの利益でもなく、
自分の利益を優先するわけです。
次は、両手仲介は違法なのか…について解説したいと思います。
両手仲介は違法ではない!
仲介の法的性質は「代理」ではなく「準委任」
不動産を売却するとき・購入するときに、不動産屋さんと結ぶ契約を「媒介契約」と言います。媒介契約に関しては、宅地建物取引業法 ( 略して宅建業法 ) 第34条の2に定められています。なお、「媒介」=「仲介」です。
参考記事…
媒介契約は「代理」ではない
不動産取引における「媒介」と「代理」の違いを押さえておきましょう。
「媒介契約」で求められることは次の2つ。
■ 契約の成立に向けて尽力すること
■ 不動産売買の事務処理をサポートすること
それに対して「代理契約」では…
本人に代わって代理人が「売る」「買う」の判断をして、契約自体を成立させることが求められています。
ザックリ、こんな違いがあります。
媒介契約を結んだ不動産屋さんは、売主さまに代わって「売る」という判断をしないですし、買主さまに代わって「買う」という判断もしません。そのため、媒介契約は代理契約とは異なるわけです。
不動産仲介は媒介契約であって代理契約ではない。
だから…
不動産屋さんが行う両手仲介において、双方代理( 民法108条 ) を議論すること自体がおかしい!
ということになります。
参考知識ですけど、判例が蓄積され、売主さま・買主さまが承諾しているなら双方代理もOK!と法律が改正されています。
媒介契約は「委任」ではなく「準委任」になる
次に、媒介契約の法的性質を見てみましょう。
「法的性質」というのは、法的にどう考えられるのか?というお話です。
媒介契約の法的性質は、民法の「準委任」です。売買契約を直接行うことを求められていれば「委任」ですけど、不動産屋さんは不動産取引のサポートしか求められていないので「準委任」になります。「委任」と「準委任」の違いは飛ばしてOKですよ。
では、「準委任」ではどのような義務が生じるのでしょうか。準委任契約で生じる義務は2つあります。
■ 善管注意義務
■ 報告義務
善管注意義務とは、業務を委任された人の職業・専門家としての能力・社会的地位などから考えて、通常期待される注意義務のことです。「依頼されたことは、プロとして責任をもってやろうね。」という感じでしょうか。
報告義務は、進捗状況や結果をきっちり報告することになります。
まぁ、どちらも当然のことですよね。
両手仲介は利益相反だから禁止するべき!
不動産屋さんが両手仲介をしても、法律上、問題がないことはわかりました。しかし、問題は法律論ではありません!!双方代理が民法で禁止されている理由は次の通りです。
「売主さま・買主さまどちらかの利益を害する恐れがある」
これ…
両手仲介で生じる問題そのものですよね?
法律上は「準委任」で「双方代理」じゃないから…なんて話はどうでもよくて、実質的には、双方代理が禁止されている理由(どちらかの利益を害する!)が生じてしまっているわけですから、「不動産取引の両手仲介は大問題だ!!!」と言わざるを得ません。
最近、依頼者であるお客さまの利益のために業務を行う義務「フィデューシャリー・デューティー(=受託者責任)」が求められるようになってきました。これから、日本の不動産取引でも両手仲介ができなくなる日が来るのかもしれません。
詳しくは…
追記(2023年8月)…
真っ直ぐ不動産の両手仲介を売主さまが承諾できる場合に限り、両手仲介を解禁する売却プランを作りました。なぜ、解禁したのか…?その理由は、両手仲介を禁止すると、広告が他社の不動産屋さん任せになり、物件の魅力を伝えきれないケースがあると感じたからです。両手仲介OKにすれば、ゆめ部長がsuumoなどに情報掲載できるため、写真・動画・VR内覧を使って魅力をちゃんと引き出せるだけでなく、コメントも充実させることができます。その結果、物件のアピール力が大幅に上昇して売主さまにもメリットが生じます。真っ直ぐ不動産が売却物件に惚れ込み、買主さまへ魅力を全力でアピールする!そんな売却プランを売主さまが選択できるようにするべきだ!!という結論になりました。
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両手仲介禁止!エージェント制の導入
両手仲介のデメリットと問題点は理解してもらえたと思います。
実は、このデメリットと問題点を解消するために、不動産屋さんが両手仲介することを否定し、どちらか一方のみを担当する「片手仲介専門の仲介」が生まれました。
それが、
売主さまだけの味方になる
「セラーズエージェント」
買主さまだけの味方になる
「バイヤーズエージェント」
です。
売主さまは高く売りたい。
買主さまは安く買いたい。
そうるすと、仲介会社の理想的なサポートのイメージは、「結婚の仲人」ではなく「離婚訴訟の弁護士」のはずですよね。
ここで、このエージェント制に興味をもってもらえる読者さんに向けて、ゆめ部長の売却サポート(セラーズエージェント)と、バイヤーズエージェントの問題点に関する記事を紹介させてください。
参考記事…
「バイヤーズエージェント」が日本の不動産仲介業で実現できない理由
この「エージェント制」が導入されることで、お客さまにどんなメリットがあるのか…次の項目でまとめてみます。
両手仲介を禁止する4つのメリット
エージェント制が導入され、両手仲介が禁止されることで、お客さまに生じるメリットを4つ紹介しましょう。
【1】レインズに全物件が登録される!
【2】不動産会社を選べる!
【3】担当者(エージェント)も選べる!
【4】不動産屋さんのレベルが高くなる!
順番に解説します!
【1】レインズに全物件が登録される!
不動産屋さんが両手仲介を狙うと…
■ レインズに情報を登録しない
■ レインズに登録しても紹介はさせない
ということが起こります。なお、専任媒介・専属専任媒介なのにレインズへ登録しなければ「宅建業法違反」になり、レインズに登録しても、紹介NGにしたら「レインズの運用規定違反=物件の不紹介」です。
こんな違法・違反状態があたり前の不動産業界で、「両手仲介禁止!」&「エージェント制導入」を実現できたら、売却依頼を受けた不動産屋さんは、レインズを通して他社の不動産屋さんにお客さまを探してもらわなければいけなくなります。レインズを有効活用するしかないため、囲い込みができません。
つまり、全ての売却物件が完全公開され一元管理されるのです!!
売主さま :嬉しい
買主さま :嬉しい
不動産屋さん:悲しい
さぁ、どうしますか??
次の話にいきます。
【2】不動産会社を選べる!
囲い込みがなくなれば、お客さまが、マイホーム購入をどこの不動産会社に任せるか…?を選べるようになります!!
■ やっぱり安心!大手仲介会社
■ 地元密着で信頼できる老舗会社
■ 仲介手数料を安くしてくれる会社
■ 安心サービスが魅力的な会社
■ FPや建築士が対応してくれる会社
などなど。
自由に選びましょう!!
少しだけ余談を…
おそらく、大手仲介会社(三井・住友・野村・東急など)は、1契約での仲介手数料が3%しかなければ経営は成り立たないはずです。両手仲介禁止にできない理由はこういう所にもあるのでしょうね…。
【3】担当者(エージェント)も選べる!
【4】不動産屋さんのレベルが高くなる!
物件情報がフルオープンになり、お客さまが会社・エージェントを選ぶ時代になると、不動産屋さんのレベルは上がると思います!
不動産売却・不動産購入に分けて考えてみます。
不動産売却…
セラーズエージェントになると、
■ 不動産の魅力を引き出すアイディア
■ 問題点の整理・解決能力
■ 高値成約の提案力・実績
などで比較されるでしょう。
写真・動画・VRなどを使い、魅力を伝えるコメント力を高めなければいけません。また、室内の見せ方の提案なども大事になります。
築年数で税金の優遇を受けられないのであれば、耐震基準適合証明書を取得して、買主さまの税金を安くしてあげるように準備もします。
解体して更地で売却するのではなく、リノベーションで価値を高め、収益不動産として高値売却を目指すのが最適解かもしれません。
売主さま・買主さまをマッチングするだけではなく、問題解決・提案などの付加価値を加えられるか…こんなところが勝負になってくるでしょう。
不動産購入…
バイヤーズエージェントになると、
■ 住宅ローンの幅広い知識
■ インスペクションなどの建築知識
■ 購入意欲を高めるリノベーション提案
■ ハザードを含めた地域情報
■ 接客対応力
■ 資格取得・プロ意識
■ SNSなどでのセルフブランディング
■ 未公開物件を集める情報網
などで比較されるでしょう。
「物件力」や「情報力」に頼らず、不動産屋取引のプロとしてレベルを上げなければいけません。お客さまに選ばれるための努力が必須になるはずです。
ここまで、両手仲介=「悪」というスタンスでお話をしてきました。でも、全てが「悪」ではなく、逆に「善」になるケースもありますので、最後に解説しておきます。
両手仲介が悪いと言い切れないケース
ゆめ部長が、両手仲介せずに片手仲介する場合、売主さま or 買主さまのどちらかを他社の不動産屋さんが担当して「共同仲介(2社以上での取引)」することになります。
共同仲介の場合、「仕事ができない担当者」にあたってしまうと、トラブルが発生するリスクが大幅に高まってしまい、困ってしまうことがあるのです(涙)
たとえば…
■ 賃貸専門の担当者
■ 宅建に合格していない担当者
■ 契約後にやる気がなくなる担当者
■ 約束を守らない担当者
■ 新人さん
などなど。
これなら、ゆめ部長が、売主さま・買主さまのどちらも担当した方が、スムースに取引を終えられる可能性が高いでしょう。
こんなケースもあるということです。
ただし!
不動産取引の透明性
VS
スムースな取引
この2つの価値を天秤にかけると、不動産取引の透明性を高めることの方が重いのではないかな…と考えています。
なお、仲介手数料に上限がある現状では、価格が安い不動産を片手仲介してしまうと利益にならないため、両手仲介せざるを得ない…という問題もあります。不動産取引の透明性を高めるためには、両手仲介の禁止とあわせて、仲介手数料の上限撤廃・自由化なども議論されていかなければならないでしょう。
最後に…
不動産取引の最前線から情報発信することで、少しでも、正しい知識と問題意識が拡散されていったら嬉しいな…と願いながら、今日の記事を終わりにしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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■ 2019年12月27日 投稿
■ 2023年08月22日 リライト
“不動産の「悩み・不安・怒り」を解消するぞー✨ のお役立ち情報をツイート ✅ホンネで語るよ ✅業界の裏側…コッソリ教えるよ ✅役立つ知識を集めて発信するよ ✅さんへ優しく解説するね ✅ガンバル不動産屋さ…
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