両手仲介は「双方代理」ではなく「準委任」だから違反ではない…宅建マイスターが問題点を指摘します!
両手仲介というのは、1つの不動産屋さんが、売主さま・買主さまの双方を担当して、仲介手数料を両方からもらうことを言います。高く売りたい売主さま、安く買いたい買主さまは利益が相反するので、売主さまを味方すれば買主さまが損をして、買主さまを味方すれば売主様が損をします。そして、不動産屋さんは、仲介手数料を稼げれば、どちらが得をしてどちらが損をするか…なんて全く興味がありません。
このような不動産屋さんの仲介業務が、民法108条に定める「双方代理の禁止」に該当して違法なんじゃないの?という話があります。法律的にどうなの…?という点だけでなく、宅建マイスターが実務で感じる問題点も織り交ぜながら解説してみますね。
不動産業界15年・宅建マイスター(上級宅建士)・2級FP技能士の「ゆめ部長」が心を込めて記事を執筆します!それでは、さっそく目次のチェックからいってみましょう~
参考記事…
法律の結論を先に確認しましょう
法律的な議論としては…
両手仲介は「違法ではない。」
不動産屋さんが、売主さま・買主さまの双方から媒介契約を結び、両手仲介することは「双方代理」には該当せず、「準委任」になるため違法ではありません!
う~ん 、、、
よくわからないですよね(汗)
不動産の媒介契約とはなにか…?から順番に説明していきましょう。
不動産の媒介契約とは…
不動産を売却するとき・購入するときに、不動産屋さんと結ぶ契約を「媒介契約」と言います。媒介契約に関しては、宅地建物取引業法 ( 略して宅建業法 ) 第34条の2に定められています。
【1】媒介契約は「代理」ではない
不動産取引における「媒介」と「代理」の違いを押さえておきましょう。
「媒介契約」で求められることは次の2つ。
■ 契約の成立に向けて尽力すること
■ 不動産売買の事務処理をサポートすること
それに対して「代理契約」では…
本人に代わって代理人が「売る」「買う」の判断をして、契約自体を成立させることが求められています。
ザックリ、こんな違いがあります。
媒介契約を結んだ不動産屋さんは、売主さまに代わって「売る」という判断をしないですし、買主さまに代わって「買う」という判断もしません。そのため、媒介契約は代理契約とは異なるわけです。
不動産仲介は媒介契約であって代理契約ではない。
だから…
不動産屋さんが行う両手仲介において、双方代理( 民法108条 ) を議論すること自体がおかしい!
ということになります。
参考知識ですけど、判例が蓄積され、売主さま・買主さまが承諾しているなら双方代理もOK!と法律が改正されています。
【2】媒介契約は「委任」ではなく「準委任」になる
次に、媒介契約の法的性質を見てみましょう。
「法的性質」というのは、法的にどう考えられるのか?というお話です。
媒介契約の法的性質は、民法の「準委任」です。売買契約を直接行うことを求められていれば「委任」ですけど、不動産屋さんは不動産取引のサポートしか求められていないので「準委任」になります。
⇒ 「委任」と「準委任」の違いは飛ばしてOKですよ~
では、「準委任」ではどのような義務が生じるのでしょうか。
準委任契約で生じる義務は2つあります。
■ 善管注意義務
■ 報告義務
善管注意義務とは、業務を委任された人の職業・専門家としての能力・社会的地位などから考えて通常期待される義務を負う不動産屋さんがプロとして通常期待される注意義務のことです。「依頼されたことは、プロとして責任をもってやろうね。」という感じでしょうか。
報告義務は、進捗状況や結果をきっちり報告することになります。
まぁ、どちらも当然のことですよね。
問題は法律論ではない!
不動産屋さんが両手仲介をしても、法律上、問題がないことはわかりました。
しかし、問題は法律論ではありません!!
双方代理が民法で禁止されている理由は次の通り。
「売主さま・買主さまどちらかの利益を害する恐れがある」
これは、現在、不動産業界で行われている両手仲介の問題そのものです。
不動産屋さんは仲介手数料をもらえればOK。だから、売主さま・買主さまのどちらかにターゲットを絞り、弱そうな方・折れてくれそうな方を見極めて説得しようとしてきます。
例えば…不動産屋さんが次のような事情を把握していたらどうでしょうか?
売主さま側の事情
■ 売り急いでいる(会社の運転資金など)
■ 住み替えを急ぎたい
■ 最低売却金額のラインは▲500万円まで
買主さま側の事情
■ 買い急いでいる(賃貸借契約更新・保育園問題)
■ 予算にゆとりがある(両親援助・年収・自己資金)
■ とても気に入っているので本音は満額OK
当然、この弱みを攻めて契約を成立させようとするでしょう。何度も言いますけど、不動産屋さんは、高値で契約して買主さまが損をしても、安値で契約して売主さまが損をしても構わなくて、大事なのは、成功報酬の仲介手数料をもらえるか…だけだからです。「プロ意識」「誠実」「信頼」なんて、お金の前じゃあ、無力なんでしょうね。
こうやって見てみると、法律は準委任で双方代理じゃないから…なんて話はどうでもよくて、実質的には、双方代理が禁止されている理由(どちらかの利益を害する!)が生じてしまっているわけですから、「不動産取引の両手仲介は大問題だ!!!」と叫ばずにはいられなくなりませんか!?
両手仲介を狙った物件の囲い込みをなくすための意見
不動産取引で両手仲介が横行している理由は、
■ 仲介手数料が「成功報酬」であること
■ 仲介手数料の上限が「3%+6万円」に制限されていること
にあると、ゆめ部長は考えています。
成功報酬制は悪いことばかりではないですけど、今の不動産業界はタダ働きが多すぎます。また、仲介手数料の上限が低く設定されているため、アメリカのように売主さまから多めの報酬をもらうこともできません。
これが、どう問題なのか…。
次の箇条書きを見ながら考えてみてください。
■ 査定なんて無料で当然!10社に依頼しちゃうよ。
■ 10社に一般媒介を出して不動産屋に競争させよう。
■ 現地内覧は趣味なの。買わないけど、よく見に行くよ。
■ とにかく高く売りたいの。1年かかってもいいから。
■ この不動産屋ムカつく!今回も他の会社に変更だ!
■ suumoとかで不動産情報は無料でGET!
■ 無料でやってくれることは全部やって!
■1,000万円の不動産売却で仲介手数料36万円も払うの!?
こんなこと、考えたり・思ったりしませんか?
ゆめ部長は見るだけで少しイラッとするかも(笑)
不動産は高額な商品。だから、自分は「すごく大事なお客さまとして扱われるものなんだ!」と思っている人が多いような気がします。そうすると、上の箇条書きのような態度に自然となっていくのかもしれません。
しかし、これを不動産屋さんの立場で考えると…どうでしょうか。
不動産屋さんは、なんでも無料でやらされています。案内・住宅ローンシミュレーション・建物プレゼン・物件調査・契約書類作成・価格交渉・査定書作成・訪問査定・不動産情報のネット登録…などなど。
それに、不動産価格1,000万円を片手仲介(分かれ)で契約した場合、1つの不動産取引でMAX報酬が36万円になります。これだと、ちゃんとサポートするのは難しいものですよ。
つまり、不動産屋さんは
「タダ働きリスク」
「仕事に対する報酬が見合わないリスク」
を負わされていると言えるでしょう。
こんな状況だから「お客さまに損失を被らせても知ったこっちゃない!」と考える不動産会社が多くなっている可能性だってあると思うのです。
不動産屋さんが悪くて、お客さまの態度が悪化したのか、
お客さまが悪くて、不動産屋さんの態度が悪化したのか、
どっちが先かはわかりませんけど、お互いを理解すること。ここをスタートラインとして、より良い不動産取引が実現されるようになってほしいと願っています。
ゆめ部長は「仲介手数料の適正化」「仲介手数料の成功報酬制撤廃」を主張しています。もし、興味があれば次の記事も読んでみてください!
参考記事…
最後に…
宅建マイスターであるゆめ部長の意見は、「両手仲介」は認められていい場合があると思いますし、デメリットを理解していれば「物件の囲い込み」だってアリだと思います。
宅建業法違反をせずに、お客さまに本当にメリットがあるサービスを作ること。これが、今、ゆめ部長にできる最善の策だと考えています。お客さまの期待・利益に応えられるようにサービスを研究・開発していきますので、是非、期待してくださいね。
最後に、売主さま・買主さまへアドバイスをします。
「両手仲介をしていないか?」よりも、「どうやって自分の利益を確保するために頑張ってくれるのか?」という視点で、不動産屋さんを選んでみてください。実績があり、プロ意識が高い担当者に出会えれば、「両手仲介」・「物件の囲い込み」は問題になりませんよ。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
参考記事…
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